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アート、エンターテインメント×医療(全4記事)

“治療は痛くて辛いもの”というイメージを変えられるか? アート・エンタメ・医療の融合の可能性

2017年12月5日~6日にわたり、「Health 2.0 Asia-JAPAN 2017」が開催されました。「Health 2.0」は、2007年に米国カリフォルニアではじまり、医療・ヘルスケアにおける最新テクノロジー(ヘルステック)とそれを活用した先進事例を紹介する世界規模のカンファレンスです。本パートでは、辛くて痛い医療のイメージを、アートとエンターテイメントで、楽しく目標意識をもって取り組めるものに変えるための事例について話し合いました。

アート、エンタメと医療の融合

大室正志氏(以下、大室):みなさん、こんにちは。今回は「アート、エンターテインメント×医療」という、今までとはちょっと毛色の違ったテーマで今回のセッションさせていただきます。私は医療法人同友会で産業医をしています、大室といいます。よろしくお願いします。

(会場拍手)

白岡亮平氏(以下、白岡):私は医療法人社団ナイズとメディカルフィットネスラボラトリー株式会社の代表をしております、白岡と申します。私は都内で5つのプライマリケアのクリニックを運営して、地域の方々にそのような医療を提供しています。

あとは産業衛生であるとか、医療機関に対して、セルフメディケーションのソリューションを提供する事業を行っております。医療というと今まで「非常に辛い」とか「痛い」とか、そのようなイメージが大きかったと思うのですが、実際に医療を提供している中で、それを「楽しい」とか「うれしい」とか、ポジティブなイメージに変えていくことが今、必要ではないかと感じております。

さらに、昨今は予防医療などについて言われていますが、そこで必要になってくるものは、最終的には人の心を動かすコンテンツではないかと思っております。

コンテンツを作っていくためには、エンターテインメントの可能性が非常に大きな役割を担ってくると思います。今日は、医療とエンターテインメントがどのように融合して、人の行動を変えていくのかをディスカッションできたらなと思っております。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

大室:今回は「アート」と(スクリーンに)大きく出ていますが、最初に注意点というか、アートという言葉は、アート業界の方から言わせると、いわゆる現代アートシーンやギャラリー、ある種、世界の狭い限られた……数学オリンピックではないですが、そのような非常に狭義なものです。

ですが、ここで使っている「アート」という言葉は、今、「心を動かす」という話が出ましたが、ある種、医療・サイエンスのような、すべてを定量的に評価できるものとは対の概念、対義語としての「アート」です。少し広い意味での言葉だと理解していただければと思います。

健診情報が見れるアプリ「KenCoM」

大室:今日はさまざまな分野の4名の方が、アートとエンターテインメント、医療を繋げて活動されているということなので、1人あたり5分くらいで、デモをしていただきます。さっそくですが、まずは、ディー・エヌ・エーの執行役員 ヘルスケア事業本部長でもある大井さんから、お願いします。

大井潤氏(以下、大井):おはようございます。DeSCヘルスケアの大井と申します。今日は「KenCoM」というサービス、これは健康保険組合向けに提供しているデータヘルスのサービスなのですが、それについて今、大室先生が言ったようなアートという意味での技術を使って、どのように活用促進しているかというお話ができればと思います。

まず「KenCoM」は、基本的にはアプリでの(利用を)推奨をしているのですが、今80健保、290万人の方にサービス提供できる状況になっています。基本的には健康保険に加入している人たちの健康をサポートするサービスになっていまして、実際に立ち上げると、ファーストサイトが出てきます。

まず、健康保険組合と一緒に行っているという意味での特徴をご紹介すると、健診データです。健康保険組合は健診のデータがありますので、このように本人の健診情報は普通、紙だと、もらってもすぐ捨ててしまうものですが、手元のアプリで見られるます。

かつ「自分は、どこに注意したらいいんだろう」と。この人でいえば、不健康太郎さんという方なのですが、血圧・血糖のところ。「その血圧ってどんな状況なんだっけ?」というところで見ていくと、前回の判定からどうでしたかとか、同世代と比べるとどうですかとか、これはどういう傾向にあります、といったことが、その方のスマホで見られる、そういう価値があります。

それから、あとは医療費や、薬とかジェネリックとか、そのようなデータも手元で見られるという特徴があります。

健康意識を高める3つのポイント

大井:これが、健康保険組合と提携しているKenCoMが提供する価値になっています。一方で、これだけだと、なかなか健康に取り組むということにはなりませんので、我々は今の話にあったようにゲーム会社(ディー・エヌ・エー)として、人をエンゲージメントさせるアート(技術)を持っています。そのような中で、今日はどのような取り組みをしているのか、3つほど、活性化に向けた取り組みをお話しできればと思います。

1つは記事です。キュレーションされた記事なのですが、まず、今の不健康太郎さんで言えば「血圧や血糖にこのように注意しなきゃいけません」ということで、個人の健診情報に応じて、記事が出し分けされます。100人いれば100通りの記事の出し分けがされるということになっています。ですから、これは毎朝見ても、毎朝記事が違うということで、日々接する機会になる、パーソナライズということを活かしています。

それからもう1点は、ポイントです。記事を見たり、例えば、健康的な行動をしたりするとポイントが貯まります。ポイントが貯まるとアプリでギフトのチャレンジができます。例えば、Amazonギフトを選択しますと、このようにルーレットが回ります。ルーレットを止めて……たぶん今回はならないとは思いますが。

そうですね、外れてしまいました。このように自分で貯めたポイントを使いにくる。ポイントのインセンティブということで、エンゲージメントを高める工夫をしています。

このようなパーソナライズやインセンティブに加えまして、バーチャルな世界だけではなく、リアルの世界でも取り組みを進めているところです。(スクリーンを指して)これは「みんなで歩活」というイベントになります。

健康保険組合ですので、職場が対象になります。「1人で健康活動やっていても、つまらないよね」ということで、いわゆるピアプレッシャーというものを活かしたかたちになるのですが、各職場でチームを組んでもらいます。それぞれチームを組んで、誰が何歩、歩いているかということが可視化されます。

そうして、お互いスタンプでコミニュケーションをしたり、チームのランキングだったり、これによって行動変容が加速されるという特徴があります。このような取組を通じて、今はアプリについて言いますと、マンスリーアクティブ(ユーザー率)がだいたい70パーセントという驚異的な数字を叩き出しています。

それからこのサービスの特徴として、先ほど申し上げたように健康保険組合の持っている健診データや、それに合わせたライフログもありますので、そのようなものを活用してサービスを拡充したりとか、健康保険組合にご協力いただいた上で、新しいサービスを作っていくという取り組みを行っているところです。今は健康保険組合だけではなく、健診機関であるとか、生命保険会社などにもサービスの提供を開始しているところでございます。私からは以上です。

大室:どうもありがとうございました。

(会場拍手)

今までの予防医学と言われるような分野の人たちから見ると、あまり見たことのない色合いのページで、非常に興味深かったです。大井さん、ありがとうございます。

目標に結びつかない、リハビリの単純動作

次は吉岡さんです。吉岡さんはNPO法人(の所属)です。医療とエンターテインメントとアートに関する活動をされているということで、説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

吉岡純希氏(以下、吉岡):よろしくお願いいたします。NPO法人Ubdobeが進めている「デジリハ」というプロジェクトの開発に関わっております。看護師の吉岡と申します。本日はよろしくお願いします。

我々はデジタルアートを用いて、子どもの視点で作るリハビリ、デジタルアートとリハビリテーションを繋げるということを進めています。リハビリテーションには単純動作があります。

想像してもらえたらと思うのですが、脳梗塞だったり、事故にあったりしたときに、片麻痺や麻痺が生じてしまう。そうなったときに、例えば、(リハビリとして)右腕をあげる必要があると。

腕を何度も何度もあげる必要性があるリハビリテーションのときに、子どもたちにとって、腕をあげる行為と、自分の将来の目標がなかなか結びつかないということがあります。

そこで、デジタルアートの力を通して、この先を見つけていくためのサポートができないかと考えて、全体のプロジェクトを進めています。簡単なデモンストレーションを準備しているのですが、今、想像してもらった腕をあげる動作について、見てもらえたらと思います。

腕をあげる動作が必要な人たちには、リハビリテーションプランをもとに、手(の動き)に反応するセンサーを着けます。例えば、手をあげたり下げたりすると(画面上の手のマークが)動きます。(画面の上部に)丸い穴があるのですが、「その先の世界を見てみたいなぁ」と。そこで、いつもは少ししかあがらない手を「うーん、うーん」とがんばって、その穴にタッチすると(穴が拡がり)新しい世界が見えてきます。

このようにデジタルアートを効果的に用いることによって、これから先に自分がどういう行為をしていくか、ということを自然に促すことができると思っています。

目標設定ができるリハビリの仕組み

吉岡:このように我々はリハビリテーションプランをもとに、デジタルアートの開発を行っています。ここでイメージを変えますが、今回は少しサービスのような感じですが「Health 2.0」と表示してみました。このように個別の状況や好みに合わせた表示ができます。ここからムービーを見ていただきたいと思うのですが、腕を上げる事例とは、別の事例で脳性麻痺のKくん。ずり這いと寝返りの動作の獲得は、すごく努力が必要で、その子のために作ったデジリハのムービーを見ていただけたらと思います。

「デジリハ」のプロジェクトでは、その子の好きなものを(映像に)差し込んだりしています。この動画はKくん専用の「デジリハ」のプログラムになります。このプロジェクトに関わっているのは、実は僕らだけでではなく、同年代の「キッズプログラマー」ということで、プログラミング教室を通しながら、リハビリをがんばる子どもたちのサポートを実施しています。その子たちが、実際に障害を持った子と会う機会を作って「何が好きなの?」という話を聞きながら進めていきます。

さらに完成度を上げていくために、イラストレーターや音楽が作れる人、もちろん医療の専門家の人たちがディスカッションを繰り広げながら効果のある、そして目標設定がしっかりできるリハビリテーションを目指しています。

このようにリハビリが必要とされている子どもたち、なかなか目標設定がしにくい子どもたちというのは少なくとも日本で14万人いると言われています。それは小児慢性特定疾患だけで14万人なので、これからもっともっと増えていくかと思っています。

我々は個別性に応じたリハビリを開発しながら、さらにそれを病院に届け、そしてリハビリとしてのエビデンスを蓄えていった後、プラットフォーム化して、いろいろな人たちに届けていきます。2030年には14万人のすべての子どもに届くような仕組み作りをしていきたいと思っています。応援、よろしくお願いします。

(会場拍手)

大室:どうもありがとうございました。本日のために「Health2.0」(映像の文字を)を作っていただいたということです。ありがとうございます。

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