リハビリが楽しすぎて時間を忘れる
“受けたくなる医療”への挑戦

アート、エンターテインメント×医療 #3/4

Health 2.0 Asia - Japan 2017
に開催

2017年12月5日~6日にわたり、「Health 2.0 Asia-JAPAN 2017」が開催されました。「Health 2.0」は、2007年に米国カリフォルニアではじまり、医療・ヘルスケアにおける最新テクノロジー(ヘルステック)とそれを活用した先進事例を紹介する世界規模のカンファレンスです。本パートでは、企業の産業医として活躍する大室氏が、予防医療分野の課題を解説します。また、吉岡氏がデジタルアートを取り入れたリハビリの事例を紹介。人は「健康になれる」だけでは、努力を続けられないからこそ、モチベーションやインセンティブを組み合わせる医療の大切さを語ります。

なかなか行動に繋がらない予防医学

大室正志氏(以下、大室):ここからは、みなさんお揃いになりましたので、セッションに移りたいと思います。最初に、僕は昔、ジョンソン・エンド・ジョンソンという会社の産業医の仕事を5年間していまして、今は約30社くらいの会社で産業医の仕事をしています。

そうすると、保健師さんなど、そういった方の中で、何人もの人たちが、予防医学について、「私がいくら言っても運動してくれない」とか「こうしてくれない」ということを非常によく言うんです。

予防医学の方々にとっての医療職のあり方の一つの問題点として、「自分たちがやっていることは、世の中に対して、非常にすばらしいことだから、私の意見は聞いてもらって当然である」という思いがどこかに強くあるわけです。

ただ一方で、みなさんもたぶん、お分かりのように、確かに「予防医学に興味がありますか」と聞かれたときには、YesかNoで言ったら、ほとんどの人がYesと答えるのですが、みなさん、予防医学をするために生まれてきたわけではないので、それ以外のところでの優先順位という意味では常に1位になることってあまりないんですよね。

ですから、総論では賛成だけれども、各論ではなかなか動いてくれないという(状況です)。会社の中とかで、保健師さんや僕ら産業医がいくら言っても、なかなか動いてくれない。

一方で、ディー・エヌ・エーはもともとゲーム会社の側面もありますけれども、人の興味、関心を惹きつけるという意味では非常に技をたくさん持っていますよね。そのときに今回の事業(「KenCoM」)を立ち上げるときにゲームの事業部の方との連携はあったんですか? 大井さん、どうでしょうか?

大井潤氏(以下、大井):実際に、我々のメンバーの中にも、ゲームに携わっていた人間もいます。でも、やはりお話にあったとおり、健康な人に「健康な活動をしましょうよ」と言っても、なかなか難しいです。今のゲームは、日常の隙間にどう入っていくか、隙間に入っていって、それをどう継続してもらうかというところが非常に重要だと思ってます。その辺りのノウハウを「KenCoM」にも活かしながら進めていきたいです。

イメージを塗り替えるインセンティブ

大室:今回の(「KenCoM」の)ページの色合いもどちらかというと、予防医学や、いわゆる医療分野と言われる人が作る色のトーン、なんとなく「メディカル」という感じのする色合いとは、ぜんぜん違うポップなデザインでしたけれども、あえてそうしてるわけですか?

大井:そうしています。やはり使い続ける理由というか、「健康になるから、歩きなさい」と言っても歩かないので。「歩くと、このようなインセンティブがあるよ」とか「歩くとこういう仲間と会話ができるよ」とか、そのような別のかたちをつけてあげることが重要なのかなと我々は考えています。

大室:ちなみに今日、ここでパネリストとして、いらっしゃっている白岡先生のクリニックは、一応、小児科が中心ですよね? やはり、デザインだったり、あえて少し普通の病院とは違う感じにしているんですか? 

白岡亮平氏(以下、白岡):小児科の場合には、子どもたちが来るので、やはり医療機関に対して、「痛い」とか「辛い」というイメージがあるんです。そのイメージを払拭させて、しっかりとクリニックに来て、健康を保っていく習慣を、子どもの頃からつけてもらいたいという思いがあります。

今、私たちは、ニューヨークのセサミ・ワークショップとともに、セサミストリートのキャラクターを使った共通コンテンツを配信をしています。それをはじめてから子どもたちが健康に対してすごく興味を持ってくれるようになりました。そのような新しい取り組みもすごく必要なんだなと感じています。

リハビリを「もう一回やりたい!」

大室:ちなみに吉岡さんは今、子どもに対する取り組みに注力していますが、僕でも、大人が「体重が増えてきて歩かなきゃいけない」というと、なんとなくその思考は追えるんですが、子どもがどのようなものに興味を持ったり、どのようなところにウケが(あるか)。やってみて、何か気づきみたいなものはありますか?

吉岡純希氏(以下、吉岡):先ほどお見せしたムービーの話ですと、例えば、寝返りだったり、ずり這いという動作をふだんやっているリハビリテーションは、だいたい20分くらいという話を聞いてるんですが、本人は「もう一回やりたい」という感じになっていて。(もともと)20分だったものが、そのときは気づいたら1時間くらいになっていると。そのような時間的な効果は得られました。

大室:僕も今、初台リハビリテーション病院というリハビリ系のけっこう有名な病院のグループ全体の産業医をしているのですが、子どもって「リハビリ行きたくなーい!」って、けっこうぐずるじゃないですか。それを、「(もっと)やりたい!」と言ってくるというイメージがあまりないのですが……。

吉岡:そうですね。目標ムービーの中にもありましたが、だったらプロセスのなかに、なるべく自分の好きなものを入れる。あの(ムービーの)Kくんの場合は、クジラや車が好きなんです。その世界観をどのように落とし込むかは、個別に作っていくことが、その子たちのモチベーションを上げていくうえで、すごく重要だなと思います。

大室:「この子はクジラが好きそうだから、そこ(のモチベーション)を上げていく」と。

吉岡:あとは本人の気持ちを聞いたりとか。なのでどちらかというと、技術ドリブンというよりも、医師が立てたケアプランドリブンで、かつ本人の気持ちをもとにしながら作っていく手法を取っていますね。

大室:本人の好き嫌いの部分で最適化していくことによって、そのリハビリの成績が上がる、というデータなどをすでに取りはじめているんですか?

吉岡:これから提携する病院があるので、そこから細かく(データを)取っていく感じです。

大室:データが出てくるとまたひとつ、日本の医療界が変わるのかもしれないですね。

保守的な医療業界にどう理解してもらうか

白岡:1ついいですか? 実際に医療機関でそのようなものを提供するときに、その必要性であるとか、それをしっかりと理解してもらえるケースが多いのか、逆にそのエンターテインメントというものに対して少し敬遠されてしまう傾向にあるのか、その肌感を知りたいなと。

吉岡:なるほど。実はこの「デジリハ」プロジェクトをリリースしてから、たぶん3ヶ月ぐらい(経ちます)。僕は3年前くらいから病院で、デジタルアートをするということをスタートしてきたのですが、入り方、持っていき方次第で、敬遠されないという傾向があります。

進め方として技術シーズとか、「こういうことできます」と言うのではなく、「何が困っていますか?」「医療に何か貢献できませんか?」というスタイルで持ち込むことによって、けっこうマイルドな感じで入っていける感覚はあります。

白岡:医療業界ってすごく保守的で、新しいことがなかなか受け入れられない業界でもあるので、その先に何を目指しているのか? ということをしっかりと医療者に伝えていく、そこの心を動かすといいのかなとすごく思ったので。

吉岡:そうですね。

白岡:医療者自身の心を動かしてあげると最終的に患者さんの心も動いていくということを、私はすごく感じていています。

吉岡:おっしゃるとおりです。一緒に手を取り合えるような環境をどのように作るか。エンジニアリングと医療をどのように繋げていくかが、けっこうポイントになるかなと思っています。

AIで医師の効率を高める

大室:ありがとうございます。ちなみに今回、デイビットさんにおうかがいしたいのですが、アメリカは医療費が非常に高い、ということが世界的に有名で、お医者さんにかかると、少し相談をしただけでもコンサルフィーが非常に高いと。

今回の対話型のAIが生まれたのは、やはり普通のお医者さんにかかる費用が非常に高いというところも1つの開発の原動力にはあるわけですよね?

デイビット・コリン氏(以下、コリン):医療費は確かに重要なトピックになります。これまで、AIの世界では、AIを医療に適用しようとしたとき、多くの人が医師を(AIに)置き換えるという事を考えるわけです。

しかし、我々が考えているのは、もっと弱いリンクです。すなわち、医師というのは常にポジションとして一番強いわけです。「もっと先生方の効率性を高めよう」ということをやっていきたいんです。

例えば、医師は患者さんと、夜間など、継続的にコンタクトを取っていくことができないわけですよね。そのようなところを補完しようということを我々は考えているわけです。当然、そのようにすればコスト的にも効率的に行うことができます。

ところで、先週わかったのですが、「オタク」と呼ばれて、その定義を見てみたんです。そこで「いいな」と思ったわけです。「AIオタク」というのは、私のことだと思うのですが、この医療の世界でAIを使ってアプリケーションを導入していく。そこに携われることは、とてもいいことだと自分で思っています。

患者から信頼を得るAIキャラクター

白岡:実際にそのAIのキャラクターと話した患者さん、サービスを受ける側の満足度として、どういう反応なのかを知りたいなと思います。

コリン:アプリケーションは2つあって、それをもとにヘルシーを出しています。1つはメンタルヘルスなのですが、ここで重要なのは、ただ単に患者の満足度だけではなく、そのキャラクターが患者から信頼を得るということです。

そうすれば患者の方から問題を話してくれるわけです。その問題点を他の人だけではなくて、そのキャラクターにも話してくれるということが重要です。

それからまた、テキストベースになりますが、ここでアバターを加えることによって、さらに40%くらい満足度が高くなりました。そして、コミュニケーションの70%はノンバーバルとなっています。それでもユーザーの感情を理解することができ、そしてまた感情を返すことができます。より効率的に、よりいい仕事ができるものになっています。

大室:ありがとうございます。ちなみに先ほどのアバターは若い女性でしたけれども、よく日本人だと、人間じゃないキャラクター、ミッキーマウスとか、ポケモン、そのようなものに話しかけることが好きだったりするのですが、それによって、反応が違ったりするんですか?

コリン:我々は両方、行っています。アニメのキャラクター、漫画のキャラクター、ポケモンのアプリケーションとも協業しています。例えば、ポケモンバトルの戦略、どうしたらいいのかというアドバイスを提供することもやっています。

よりリアリスティックなキャラクターも使っています。アプリケーションごとにニーズが違うんです。例えば、愛知県にある大手の自動車メーカーともお仕事をしています。「初音ミク」など、アメリカ人は知らないと思うのですが、おそらくそれぞれのアプリケーションに対して、適切なキャラクターがあると考えています。

大室:まさか、某自動車メーカーと活動しているとは知りませんでした(笑)。ありがとうございます。

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