メディアのマネタイズが課題

岡田雄伸氏(以下、岡田):2017年の振り返りをさせていただきましたので、2018年はどういうふうに考えられているかという部分をぜひおうかがいしたいんですけど。こちらのほうもぜひ森川さんのお考えとかを聞かせてください。

森川亮氏(以下、森川):いろんなメディアが出てきてすごく盛り上がっていて、おそらくこれからいろんなところがIPOをしたりバイアウトしたりみたいなところがあるかなと思う中で言うと。

そろそろマネタイズのプレッシャーというか(笑)。各社から出てくるかなと思います。BuzzFeedさんなんかもだんだん売上にかげりが見えてきて「イグジットどうするの?」みたいなところもあったりするので。

おそらくメディアからマネタイズのいろんな手法が出てくるのかなと思ってます。もちろんアドセンスとか動画ネットワークもありながら、そこにECが出てくるのか、新しいものが出てくるのか。

そこに触れたソリューションというか、そこに特化したマネタイズの会社も出てくるかなというところで、そのあたりいろいろ期待したいなと思ってます。

岡田:そうですね。ベンチャー、イグジット、メディアみたいなものがっていうのは2017年はすごいあれですね(笑)。

森川:昔で言うとソーシャルゲームのブームがあったり、あとはグルーポン系のブームがあったりして。

岡田:そうですね、ありましたね(笑)。

森川:ここ数年はキュレーションメディアとかのブームがあって。みんなマネタイズに苦労している部分もあって。SEOで伸ばしたんだけどそれが難しくて、「じゃあアドセンスどうなの?」みたいなところもあったりするので。そこらへんの何か新しいやり方のノウハウが出てくるのかなぁと思ってます。

プラスアルファのユーザー体験へのチャレンジ

岡田:なるほど。ありがとうございます。LIMIAの金子さんはどうですか?

金子泰章氏(以下、金子):我々もそうなんですけど、2017年にアプリ化というかアプリのメディアを立ち上げましたという会社様は多いかなと思ってまして。

見る読むというところのレベル感でいくと、かなり高いレベルまでのぼってきてるサービスが多いのかなと思っています。2018年にいくとその一歩先のプラスアルファのユーザー体験をどう作っていくか。そういう次元でのチャレンジがけっこう増えてくるんじゃないかなと思ってますね。

プラスアルファのところって各社いろんなやり方があると思います。例えばLIMIAでいくと「記事を読みます」とか「写真を見ます」というような「見る読むのユーザーさん」が多いんですけれども、そこに一歩先の「投稿する」とか「いいねをする」「コメントをする」というような「コミュニティに参加するユーザーさん」ってやっぱり継続率もいいですし、たくさん見ていただけるので。そういうロイヤルユーザーさんをどう作っていくか。

さらに先ほどもあったように広告にプラスしたマネタイズというところにもチャレンジすることがLIMIAとしてのこれからのチャレンジかなと思ってますので、そういうところはけっこう意識していますね。

岡田:とくにLIMIAさんはものを作るみたいなメディアになので、たぶん実購買への影響という部分でよく求められたり期待されたりってありますよね?

金子:そうですね。住まい・暮らし系のメディアをやってますので、いわゆる生活に根ざしたものが多いので。

岡田:そうですよね(笑)。

金子:実際に「LIMIAの記事を見て買いました」とか、ちょっと生々しいですけど「アフィリエイト系の売上が立ってきました」ということがあると、やっぱりLIMIAを通してものが売れるとか何か成約するというのがファクトとして出てくると、その先例えばECとかそういうのもポジションとしてはあり得るなと思います。そこは先々の事業オプションとしては考えていますね。

アプリを通してものが売れる

岡田:アプリを通してものが売れると言えばC Channelさんはめちゃくちゃマクドナルドさんとの企画をやったりとか、すごくされてますよね?

森川:そうですね。あそこにいる鈴木君ががんばってやってます。けっこうクーポンの利用率が高くてみなさんびっくりしてます。最近でも本当に牛丼屋に1時間並んでどうのこうのみたいな問題もあるんですけど(笑)。お金を使いたくない人が多いんですよね。DIYなんかも100均のDIYみたいなのが好きな人はけっこう多いですもんね。

岡田:確かにそうですよね。実購買につながるという部分だと本当にアプリの使われ方も変わってきたのかなとすごく感じています。

その中で、いわゆる広告主さんの動きって逆に菅野さんの立場でどう変わりましたか? 2018年、まあ今初動だと思うんですけど、こういうトレンドの中っていう感じなんですけど。

菅野圭介氏(以下、菅野):そうですね。動画広告の事業をやってるので「本質的に僕らはメディアさんとかアプリの事業者の方に何をしなきゃいけないんだっけ?」っていうのを考えるわけなんですけど。やっぱりフォーマットが変わって初めてインターネット広告がテレビのマーケットにアプローチできてるというのが今のトレンドになりますね。

岡田:あ~なるほど!

菅野:オンラインのプロモーションだけじゃなくて、いわゆるナショナルクライアントのテレビCMのご予算を「LIMIAというおもしろいアプリがあって」「C Channelというアプリがあって」と、(オンラインで)当たり前に出稿できるという状態をどう作るかがまず大事だと思っていて。

それってさっきマネタイズのプレッシャーみたいなところを森川さんがおっしゃってましたけど、メディアさんが運営されている中では広告の売上収益ってある程度の計算をしてるはずなのでやっぱりそこをやらないと。

インターネット広告を意味のあるものに

菅野:いま、インターネットが歴史上初めてテレビ広告の市場を捉える……スマートフォンがこれだけ普及してアプリケーションにいろんなバーティカルでのメディアがたくさん出てきて、今初めてそれが起きつつあるという状況の中で。

例えばビューアビリティというものを聞いたことがあるかもしれないですけれども、「広告枠が実際にユーザーの目に触れていたのか?」ということを測っていこうという議論があります。インターネット広告って、これまではクリックを通貨にしてたんですよね。もしくはコンバージョンを通貨にしていた。それを、視聴して広告主のメッセージがユーザーさんの頭にどれだけ残ったかというところに初めて価値を出し始めようとしている。それがやっと意味のあるものになりそうっていう状態かなと思っていて。

ビューアビリティはその最低限のものさしですよね。たぶんこれがみんなの共通言語になるので、そこをベースにやっと起きてくるのかなと。取引やテレビにおけるGRPのようなかたちも含めて。

それに合わせて良質な媒体か、ブランドにとって価値があるメディアか、という選別がかなりはっきりと進んでいくであろうと思っています。

というのは、先ほどのアドテクノロジーでとにかくなんでも良いから効率的にクリックを拾うというところも、広告主さんはキャンペーンの目的としてありますし。一方で、はっきりとしたテーマを持つアプリがユーザーの価値観を育てているという側面もあるわけです。例えば、雑多な掲示板でナイキの靴を見るよりも、おそらく読者の価値観を育てている「Number Web」みたいなところで見たほうがアガるわけじゃないですか。

でもそれって今の広告の仕組みだと同じ1インプレッションとしてカウントされちゃう。アプリ運営者からすると、「いや、それは違うじゃないですか」とどう理解してもらえるかというところがチャレンジだと思います。逆に言うと、それがアプリを運営されるみなさんにとってのアップサイドだと僕は思っています。

森川:本当にそうですよね。ネット広告って今まで獲得系中心で。これからブランディングをどうするかというところで。

この前、ある方の講演を聞いてたら、「ブランディングはBS(貸借対照表)で、獲得がPL(損益計算書)だ」って言われました。まさにそうだなと思うんです。どれだけブランディング広告を資産として価値を高めるかというところを大手代理店とか広告主の方にはちゃんと向き合ってほしいなということと。

あと具体的にやるにはやっぱりクリエイティブの問題があります。我々もやってますけど、スマホに合った動画広告ってどうあるべきかみたいなところ。実際にテレビCMを作るときに同時にそっちのほうも作って在庫をいっぱい増やしておかないと。とくに縦長在庫が少ないというところもあって、そこもぜひ業界全体として取り組んでいきたいなと思います。

薄れていくインプレッション単価

岡田:Webとアプリのインプの価値ってぜんぜん変わってきてると思っていて。昔はやっぱりWebだと「Yahoo! JAPAN」のトップバナーが1インプの価値として「高かったです」みたいなことが、インプレッション単価の話で出てたんですけど。

なんかそれを一周通りこして、インプ単価という概念って薄くなって。さらにアプリという概念になって、ニューアビリティみたいな発想になってきてどんどん価値が変わってきて。

それこそ「テレビ番組の放映をアプリ広告でやりましょう」っていう案件も今すごく出てきてると思います。そこらへんとかまさに……金子さんが何か言いたそうな(笑)。言えそうな(笑)。

金子:ランディングとかクリエイティブのところでいきますと、例えばメディアとしてはリーチをちゃんとお約束するというのが重要だなと思ってはいるんですけれども。

メディアとして大きくなるにつれて、LIMIA上のタイアップというのはもちろんなんですけど、さらにそこを活かして店頭であったり、冊子を一緒に作りましょうであったりとか。

あとは企業様のホームページのところまで、まるっとクリエイティブのご相談とかランディングのところまでいただけるような話もけっこう出てきまして。そういうのはやっぱりパフォーマンスだけでない、ブランディングパートナーとして評価していただいているのかなと嬉しく思いますね。

岡田:おっしゃる通りだと思います。アプリ広告とかWeb広告とかって本当にパフォーマンスだけで区切っちゃうとぜんぜん見えない成果が出てきてしまうと思うので。2018年はそこのあたりですね。パフォーマンス以上みたいな話で、みなさまお答えいただいたということでありがとうございます。