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加速するメディアのアプリシフト マーケットリーダーの2018年の戦略とは(全4記事)

Webメディアにはない“アプリの強み”は何か? データの質が左右する、AI時代のサービスの伸ばし方

2018年2月7日、この1年間で著しい成長を遂げたスマホアプリを表彰するイベント「App Ape Award2017」が開催されました。イベントでは表彰だけでなく、業界のトップランナーたちを招いたアプリマーケットセミナーも実施。世界中で進むアプリシフトの現状と今後の潮流を紐解きます。SESSION2「加速するメディアのアプリシフト マーケットリーダーの2018年の戦略とは」には、日本を代表するアプリメーカー3社が登場。各社の現状と戦略を紐解きます。

不動産業界からも注目されるVR

岡田雄伸氏(以下、岡田):次はちょっと変わったご質問をご用意しました。「AI、AR、VR、ブロックチェーンなどさまざまなテクノロジーが生まれている中で、とくに注目されているテクノロジーなどがあれば教えてください」というご質問を用意したんですけれども。

とくにここのあたりは事前で話をしていて、金子さんの話がおもしろそうかなと思うのでぜひ聞きたいんですけど。

金子泰章氏(以下、金子):私がこういう事業をやってるからということもあるんですけれども、不動産テックや暮らしを豊かにするようなリビングテックの領域ってこれからもっと盛り上がっていくんじゃないかなと感じてますね。

例えば国として国土交通省さんも後押しするみたいな動きもありますし。この業界ってアナログなところで業務が進んだりとか(笑)。そういうのがけっこう多いと思うので、仲介とか売買とか査定とか、業務改善のところですし。あとスマートホームとかそういうところもより盛り上がってくるんじゃないかなぁということを感じています。

例えばLIMIAでもハウスメーカーさんやリフォーム会社さん、不動産会社さんとお取引がけっこうありますので、そういう会社様から昨年からVRのご相談が非常に多くて。

岡田:VR!

金子:メディアとしてリーチだけじゃなくて、そういう制作の相談もけっこうありまして(笑)。

岡田:枠を超えてますね(笑)。

金子:一部簡単に内見の360度のVRが作れるようなものを販売していまして。実はそういうところでも取引が数十社くらいあります。メディアとしてコンテンツを作りつつそれをどうつないでいくかみたいな。そういうまるっとした上流からのご相談がけっこう増えてきたかなというのはありますね。

VRと言ってもいろんなVRがあると思うんですけど、1,000万くらいかけてやるのもありますし数万円くらいでやるというのもあるんですけれども。私がやってるのは数万円くらいで、ツール的なかたちでiPhoneで簡単に作れるようになってまして。

岡田:未来ですね。

スマホで物件の内見をする時代に

森川亮氏(以下、森川):自動走行が進むと不動産業界はまたずいぶん変わると言われてますよね。私はLIFULLの役員をやってまして。ちょっとアプリと関係ないですけどHOME'S系のいろんなデータ化をしたりとか。最近CMで(流れているように)内見をスマホでやるみたいなね。

岡田:そうですよね。ライブのやつですよね。

森川:とは言えね、不動産業界は古い人が多いので進みすぎるとよくないみたいなね。ちょっとさじ加減が重要みたいな話が出たりしてますけどね(笑)。

金子:まさに内見のところという感じですね。1物件にかけられるコストというところでいくと逆算で出てくるものがありますので。そういうかたちで数万円くらいの予算でいけるような。そういう不動産会社さん向けにはウケてるかなというところですね。

岡田:お問い合わせめちゃくちゃ多いんじゃないですか?

金子:そうですね。最近また増えてきましたね。LIFULLさんもそうですけど、ポータルさんもけっこうそのあたりのVR体験とか積極的にやってきているので、関心を持たれている会社さんはすごく増えてきたなというのが肌感覚でありますね。

岡田:ありがとうございます。ここ、森川さんか菅野さんから何かありますか?

IDFAでユーザーの属性を管理することが重要

森川:全体的にはビッグデータ×AIみたいなところが当たり前になるかなという中で、「自社でAIを持ち続けるのか?」みたいなところが今後の課題かなと。

AIだけのクラウドサービスみたいなのがどんどん出てきてるじゃないですか。とは言えそこにデータを渡すのも悔しいなと思いながら(笑)。これはどうなんですか? 菅野さんは?

菅野:そうですね。このへんはとくにいっぱい話したいことがあるんですけど(笑)。けっこうAIって、「とりあえずそうやって言っとけばええやん」みたいなところがすごくあるじゃないですか。

岡田:広告系でもAIとか多くなってきてますよね。

菅野:そうなんですよね。僕の実感で言うと、機械学習/AIが意味のあるタイミングとデータ量って、本当にデータがないと、「普通に人の手で最適化したほうがよっぽどいいよね」みたいなのは僕らが事業をやっててもともと思っていたところです。

というのは、動画事業って映像の流通がたくさん増えないと、人だったりメディアだったりのクリエイティブの組み合わせでのデータポイントというものがあまり貯まっていかないので。

それを例えば「提携メディアさんで月に何千万インプレッションあります、これをAIで賢くします!」って、たぶん「アホなんですか?」みたいな言われ方をするんですね(笑)。

それが一定規模、今ちょうど(インプレッションが)10億回20億回になってきて、やっとそれが機械学習のモデルに落とせそうっていうことをやっています。これはデータの部分で言うと、意味のある量のデータを貯めるというのは非常に重要です。

あと、メディアさん側があまり意識してないデータで、去年と比べてもより貴重になっていくデータがあると思っています。

それはIDFA(注:iOS用の広告に用いる端末識別ID)ですね。広告文脈で言うとcookieが使いづらくなってるじゃないですか。AppleさんのIDPだったりとかも含めて、アフィリエイトもそれで影響受けたりということがあると思うんですけど。

IDFAってその名の通り、広告のための識別端子。そこにメディアさんの自社ユーザーの属性データとかをきっちり持って管理しているだけでけっこう強いはず。それをやってるメディアさんはけっこう少ないと思ってます。

そこのありなしというのは自分のメディアなので自分のユーザーさんの属性をちゃんと知っていくと、商品に使いやすいですし。なによりcookieと違って基本的には端末を変えない限りはそれは同一の人だとずっと言えるわけですよね。

そこの識別端子の保存期間は長いからデータとしても安定しているので、積極的に使っていったらいいんじゃないかなぁっていうのがデータAIみたいなところで感じていますね。

森川:そこらへんの紐付けが非常に重要なんですけど、その分取りこぼしがあるリスクもあったりして。

菅野:小さくなっちゃうみたいな?

森川:そうなんですよね。ドロップしちゃうところがあって。単価がどのくらい上がるんですかね?

(会場笑)

すみません、いやらしい話で(笑)。最近マネタイズに注力してるもので(笑)。

IDFAの有効活用で収益を上げる

菅野:正直な話、例えばFacebookさんって日本だとログインレートは全員をカバーできているわけではないと思うんですけど、ログインしているユーザーに関してはすごく強いわけじゃないですか。というのは「この人誰だ」ってわかってるからマッチングする力が強い。メディアさんから言うと収益力が高いという状況。

でも全員がFacebook を利用しているわけではないなかで、僕らとしては残り70パーセントをどれだけカバーしていけるかというのは今年のチャレンジですし。とくにLINEグループになった1つの大きな目的でもあるので。そこの部分でみなさんを支えていきたいなと個人的には思っています。

森川:それはいいですね。LINEログインで。

菅野:データの精度を高めていくことが重要かなぁと思っています。IDFAを基盤にしていろんなデータが使えるはずなんですよね。あと広告主さん……まだしゃべっていいですか?(笑)。

岡田:ぜんぜん大丈夫です! ぜんぜん大丈夫ですよ(笑)。

菅野:広告主さんもスポットのコミュニケーションだけじゃなくて、アプリを利用するユーザーさんとで定常的に接触をして、「1回の打ち上げ花火」じゃなくて顧客育成したいという発想が強くなってきています。成果のポイントもそれにあわせて変わってきています。

そういう意味では、IDFA含めたデータのうまい活用、これはたぶんプライバシーポリシーとか各メディアさんのポリシー的なところにも依存する部分だと思うんですけど。そのへんはまだまだ活路がある。

みんなたぶん広告主さん側の視点で言うと、データといえばcookieっていう頭がまだすごくあるので、逆にチャンスなんじゃないかなと思っています。

岡田:cookieってけっこう突き詰めて考えられてるところはWeb時代からあるかなと思いますけど、まだアプリの部分とかってうまく使われてないからこそ、うまく使われ始めたらたぶんメディアさんの収益とかめちゃくちゃ上がりますよね。

IDFAの活用範囲が課題

岡田:ちなみにIDFAの有効活用ってリミアさんはいかがですか?

金子:まだそんなに活用してないんですけれども。まさにこの1ヶ月はけっこうホットにそこを考えてましたね。

岡田:おお(笑)。

金子:集客だったり、あとはマネタイズだったり、メディア内の回遊とか。そこはもっと効率化できるというか質を上げていけるかなと考えていまして。DMPと言うんですかね。そのあたりはけっこう意識はしてますね。

岡田:IDFAっていうのは具体的な使い方はC Channelさんはいかがですか? ちょっとテクノロジー的な話になっちゃいますけど(笑)。

森川:いろいろと準備はしてるんですけどね。それでどれだけ単価が上がるのかなというところが。

岡田:さっきうかがってましたよね(笑)。

森川:そこらへんのバランスをどうやっていこうかなという(笑)。

岡田:確かにそうですよね。

森川:もちろんデータが必要で。データがあったほうが説得力があるんですけど。出れば出るほどまずいデータも出るリスクがあるかなと。どの範囲でやるべきかなと悩むところもありますね。

岡田:IDFAだとさっき言った通り、ユーザー側から敬遠されるみたいな可能性とかもメディアさん側だと思うところもあります?

森川:まぁそれもあるし。実際クライアントによっては「それを見て店頭で何人が買ったの?」みたいなところが通ったりしてる会社さんもあって。そうすると「見たのに買わなかった」みたいな感じに。

岡田:あ~なるほど。

森川:のちのち買うかもしれないというところも含めて業界的に説得できればいいんですけど。どうしても短期的な収益を求めるようなところだとなかなか難しいなと思うときもありますね。

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