今、世界は宇宙ブーム

夏野剛氏(以下、夏野):みなさん、こんにちは。

イノベーションと多様性なんですけど、今日はこの前のパネルディスカッションから続きでやっています。前からの続きの方ってどれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

あ、続きじゃない方もいらっしゃいますね。これはいい続きなんですよ。というのは、前のセッションでは「多様性ってどういうふうに社会に役に立つんだっけ?」という問いに対して、1つ仮説というか「そういうことなんじゃない?」というヒントが出てきたんですが、まさに体現していらっしゃるお2人のゲストに今日は来ていただきました。

ちなみに、なぜこの話の司会を僕がやってるのかはよくわからないんですけど、最近、僕、“宇宙づいて”まして。

小笠原治氏(以下、小笠原):そうですね(笑)。

夏野:最近……僕、宇宙政策委員なの。今。

岡島礼奈氏(以下、岡島):あ、はい。

夏野:しかも最近、衛星データのオープン&フリー化をやる経産省の委員会の座長をやっていまして、そこに小笠原さんがいて。

小笠原:いましたね(笑)。

夏野:そういうこともあってちょっと宇宙づいているんですが、今、世界は宇宙ブームです。ロケット飛ばすやつがいたり、衛星上げるやつがいたり、あらゆるデブリを追っかけているやつがいたり、そのなかでも一番ぶっ飛んでる宇宙ベンチャーをやっているのが岡島さんです。

岡島:ありがとうございます(笑)。

夏野:これは褒め言葉かどうかはよくわかりませんが、一番ぶっ飛んでます。なにしろ流れ星を作るためだけにロケットを打ち上げるという「なんじゃそりゃ!」みたいなことを真剣にやっている宇宙ベンチャーね。

それからもう1人。世界で唯一のアートのわかるエンジェル投資家、アートのわかるベンチャー投資家をやってる小笠原さんです。

小笠原:ありがとうございます(笑)。

夏野:ちなみに京都造形芸術大学の先生もやっていらっしゃいます。世界でもぶっ飛んだところにいる2人を今日はゲストに呼んで、2人はいったいなにを生み出すのか、そしてどう社会を変えていくのか、あるいは、我々はこの2人からなにを学べるのかということをいろいろと聞いていきたいと思うんですが、そんな感じでよろしいですか?

岡島:はい。よろしくお願いします。

流れ星を作る経営者、アートとテクノロジーを融合させる投資家

夏野:もうちょっと自己紹介します?

岡島:株式会社ALEという会社をやっています、岡島礼奈です。

先ほどご紹介いただいたように、流れ星を作ろうとしています。どうやって流れ星を作るかは、たぶん後ほど動画でご説明いたします。今日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

小笠原:よろしくお願いします。

夏野:はい、じゃあ、歌って踊れる投資家。

小笠原:歌うのは無理なんですけど。僕、カラオケ大嫌いなので(笑)。

夏野:歌うのは無理。踊るのはいけるのね(笑)。

小笠原:僕は、もとはさくらインターネットというデータセンターをやっていまして、日本のインターネットのトラフィックの10パーセントぐらいを担わせていただいています。

ネット系によくありがちなんですけど、一度IPOして上場してお金を持って仕事をしない5年間を過ごして。最近ではエンジェルというか、スタートアップの立ち上げ時期に少しお金を出させていただいたり、ものづくり、IoTみたいなところの投資ファンドをやらせていただいたりと、わりと自由気ままにやらせていただいています。

最近のトピックとしては、京都造形芸術大学の新しいコースを来年からやらせていただくということで、そこがクロステックというんですけれども、アートとテクノロジーをもう一度混ぜようということをやらせていただいています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

食っていくことを考えていない、ぶっ飛んでる人たち

夏野:じゃあ、みなさんが見てみたい流れ星のビデオをまず見ますか。

小笠原:いいですね。

夏野:はい、お願いします。

(人工流れ星プロジェクトの動画が流れる)

岡島:どういう原理で流れ星を流すかなんですけれども、人工衛星に粒々を詰めて、ロケットを使って打ち上げます。人工衛星が地球の周りをだいたい高度400キロのところをぐるぐる回ります。これは7.7キロメートル毎秒とか、そのぐらいの速さなんですけれども。

それで人工衛星から粒を後ろ側に放出します。こうすると粒が大気圏に落ちていきます。粒自体は地球の周りを4分の1周から6分の1周して大気圏に突入します。そして、加熱されて発光します。それが地上から見ると流れ星であったり流星群に見えたりします。天然のものより、ゆっくり長く流れるのが特徴です。

私たちの流れ星は宇宙にあるので、全世界に展開が可能です。

(動画終わり)

夏野:バカみたいでしょ?

岡島:(笑)。

夏野:バカみたいなんだけど、喜んで花火見ている人はこれをバカと言えないんですよ。スケール感がぜんぜん違うんです。

オーロラを生で見たことある人いますかね? オーロラのスケール感というのは、ものすごいんですよ。全面の天空を覆うから。

小笠原:そうですね。

夏野:映画とオーロラの違いが、10号玉の花火と流れ星の違いだね。

岡島:そうですね。我々の流れ星は上空60キロから80キロで発生するので、地上では直径200キロの範囲から楽しむことができます。花火はたぶん10キロぐらいなので、(流れ星は)かなり広い範囲から見える。とくに関東で200キロ圏内というと、その中に3,000万人の人がいるという計算になるので、3,000万人の人が一度に肉眼で楽しめるというものになっています。

夏野:いかにビジネスモデルを考えていないか、すぐわかっちゃいますよね。こんな話を聞くとね(笑)。

岡島:(笑)。

夏野:だから僕も最初にこの話を聞いた時に、「この人たちはなんにも食っていくことを考えていない、ぶっ飛んでる人たちだな」とすごく感じました。つまり、これを売る相手は国しかないっていうことですね。

岡島:ただし、私たち今いろいろな会社さんに応援していただいておりまして、最初の流れ星は2019年に広島・瀬戸内地方で流すことに決めているんですけれども、そこに企業のスポンサー様がいろいろ入ってくださっています。

なぜかというと、200キロ圏内でみんなで見える・楽しめるということで、そこで何百万もの人が楽しめるので、いろいろな経済活動や人の出入りがあるだろうと。そういうところに共感を感じてスポンサーをしてくださる企業さんが今いらっしゃいます。

夏野:よかったですねぇ。あらゆる芸術とかアートはやっぱりスポンサーがいないと成り立たないから。

小笠原:そうですね。

サイエンス×エンタテインメント=人工流れ星プロジェクト

夏野:経済合理性度外視から新しいものを生めるんですが、この岡島さんからもらったキーワードがあります。まずはそのキーワードについていろいろと話を進めていきたいと思うんですが、キーワードをお願いします。

「サイエンス×エンタテインメント」。ALEという岡島さんの会社がやっている人工流れ星プロジェクトは、まさにサイエンス×エンタテインメントですね。

岡島:そうですね。エンタテインメントとしてみんなが楽しめる一方で、たくさんの研究者・科学者の方々が一緒にやってくださっています。なぜかというと、流れ星、流れてくるものを観測して得られるデータを研究に生かしたいと思われていて。

例えば、高層大気と呼ばれている50~100キロのところはなかなかデータが取れない場所なんですけれども、ちょうどその場所に我々の流れ星が発生するので、そのデータを見て大気の様子を研究したり。そういう研究者の方々が、世界各国からコンタクトをくださっていて「2019年に一緒に観測しましょう」「それ以降も継続的にやっていきましょう」という話ができています。

夏野:このサイエンス×エンタテインメントは小笠原さんのテーマでもあるでしょ。

小笠原:そうですね。

夏野:これはまったく新しい組み合わせだと思うんですよ。20世紀までの科学技術というのは、サイエンスとテクノロジーをまず分けているし。サイエンスというのは明らかに、日本でいう理科系で、ちょっとエンタテインメントとはほど遠いところにいて。

小笠原:そうですね。かなり。

夏野:エンタテインメントを一緒に語ると怒るサイエンス系の大学の先生とか、いっぱいいるんですよ。

岡島:確かに。

小笠原:不思議なもので。

夏野:しかも、「じゃあなにがサイエンス系の人なんですか」というと、30年前に卒業した大学の学部なんです。

岡島:ほう。

夏野:また工学部と理学部のくだらない対決があって……すいません、内輪の事情で大変申し訳ないんですけど。そういう話があるので、サイエンスとエンタテインメントというのは本当にほど遠い位置づけだと思うんです。

小笠原:なぜなんでしょうね? それこそ江戸時代まで戻ると、日本のサイエンティストってほとんどみんなエンタテインメントに関わっていたり。

夏野:お、なにがあります?

小笠原:例えば、平賀源内って、いろいろなエンタテインメントの脚本を書いていたり、いろいろな技術を見世物にしていたり。

夏野:からくり人形とサイエンスみたいな話ですね。

小笠原:ですよね。人に見せるものを作っていたんですけど、とくに戦後以降や明治期以降って、途端に見せないものを作り始めていますよね。歴史としてこの100年ぐらい、日本のサイエンスは外に見せない方向に来ているなと、すごく感じますね。

エンタテインメント化で、サイエンスにビジネスからのお金を

夏野:なぜ流れ星に人生を賭けようとしたんですか? サイエンスなのに。

岡島:私、流れ星というよりも、やはりサイエンスとエンタテインメントを両立させるということに今、人生を賭けていて。

夏野:なぜそう思ったか。だってバリバリのサイエンス系でしょ。

岡島:そうですね、天文学の研究をしている時に「そんな宇宙の謎とかわかってどうなるの?」ということをすごく聞かれてたんですね。

夏野:そういうやつにかぎって星座占いとかはすごく気にしたりするんですけどね(笑)。

(一同笑)

岡島:私は基礎科学やサイエンスとテクノロジーが融合した途端にイノベーションが起きると信じていて。例えば、GPSも相対論がないとできないですし、半導体は素粒子ですよね、みたいな。そういうテクノロジーとサイエンスが融合した途端のイノベーションがすごく好きで。

夏野:そこまではわかる。サイエンスとテクノロジーが近いのはわかる。しかし、そこからエンタテインメントに来るか、という。

岡島:サイエンスって今まで公的資金だけの流れが多かったじゃないですか。

夏野:とくに日本はそうです。科研費。

岡島:日本はとくに。もし人工流れ星の事業がビジネス化に成功すれば、継続的にサイエンスにもビジネスからのお金の流れができて、ビジネスとサイエンスが両輪で走っていく。そう信じている。

夏野:それも、まあわかった。しかし、エンタテインメントにまだなっていない。

岡島:エンタテインメントってみんなが一番楽しめるもので、そこで楽しんでもらうことによって経済活動が生まれて、それで収益になる。

夏野:つまり、エンタテインメントは金を稼ぐ手段だと?

岡島:そういうわけでもなくて、みんなが楽しんでもらうということが大きくてですね。今まで天文学や宇宙開発も、限られた人のものだったんです。

夏野:そうなんだよなぁ。

小笠原:すごくわかりますね。