新規事業導入の障壁は「社内の忖度」
ヤマハ×キリン×学研、アクセラレーター導入の苦労を語る

アクセラレータープログラム実施企業の知見 -何を狙い、どう社内を通したか- #1/2

01Booster Conference
に開催

アクセラレータープログラムと社内新規事業創造プログラムの運営を手がけるゼロワンブースター主催のイベント「01Booster Conference」。新規事業創造に携わるキーパーソンが集まり、大企業からのイノベーション創出のノウハウや考え方を共有しました。セッション「アクセラレータープログラム実施企業の知見 -何を狙い、どう社内を通したか-」では、社内新規事業プログラムに関わる大企業の新規事業担当者が登壇し、大企業内の新規事業制度について語りました。

提供:株式会社ゼロワンブースター

学研、キリン、ヤマハの新規事業導入例

内田光紀氏(以下、内田):本日はみなさま、お集まりいただきまして、ありがとうございました。

弊社の代表の鈴木(規文・代表)の話はいかがでしたでしょうか? 「新規事業はぜひ起こしたい」と思っていらっしゃるみなさまがほとんどだと思うんですけれども、「では実際どうやってやるの?」という方法論のところ、あるいは、方法論としては理解しているものの、一歩前に踏み出すにあたって社内をどのように説得していったらいいのかという悩みを持っていらっしゃる方が多いのではないでしょうか? 我々は日々、お客様からそんなお話をうかがっております。

話がちょっとずれますけれども、我々は海外に行く機会に、現地のアクセラレーターや大手企業の方とお話をさせていただきます。そのときに共通項として、どこの国でも大手企業の方々は新規事業創出に非常に苦しんでいらっしゃいまして、日本固有の問題ではないということがわかってきました。この点は、ぜひみなさんとシェアしたいなと思います。

その中で、日本のコーポレートアクセラレーターの導入企業の様子についてお話したところ、海外の諸外国の方は非常に驚かれるんですね。

どのような点に驚かれるかというと、その新規事業にかけるコミットメントの強さです。「そんなことにそんなパッションを持って取り組んでいる会社が日本にあるのか」と、まずみなさんこの点について一番驚かれるんですね。

今日、壇上のみなさま方はそれぞれ、コーポレートアクセラレーターを自社において初めて運用するにいたった時のご担当のみなさまです。

ぜひこちらのみなさまのお話を聞いて、コーポレートアクセラレーターというものと、それが会社の中でどのように役に立って、周りの人に対してはどんな説明をしていったのか、どのように巻き込んでいったのかというポイントについて議論をできればと思います。

簡単に紹介させていただきますと、北居様が在籍されている学研様、2015年に初めてコーポレートアクセラレーターをご導入いただきました。なんとこの時は弊社にとっても初めてのコーポレートアクセラレーターでした。そのあと2016年と、2年連続で運用された経験をお持ちです。

次にキリン様です。キリン様は、2016年および2017年、2回にわたりコーポレートアクセラレーターを運用していただきまして、非常に社内が活発に動いていらっしゃると聞いています。

それから最後にヤマハ様です。今年初めてアクセラレーターをご導入いただきまして、今月初めてデモデイを迎えられます。非常にハイテクを駆使したスタートアップを育成されていらっしゃる様子です。

それでは、各社のご様子について、いきたいと思います。

それでは、まず、ご自身が初めてアクセラレーターを通した時の会社の状況や課題感、あるいはさらに会社の課題をご自身が所属する部門の課題にブレークダウンをした時の具体的な課題とはなんだったのか。なにを期待してアクセラレーターをご導入考えようと思われたのか。そこらへんの経緯をシェアしていただけますでしょうか。北居様、お願いします。

学研のテーマは「教育のICT化」

北居誠也氏(以下、北居):北居です。よろしくお願いいたします。先ほどご紹介ありました2015年に実施して出資まで完了いたしましたが、その動きを始めたのは2013年ぐらいからです。

私、今、学研プラスという会社なんですが、学研グループはホールディングス制をとっております。当時、その中の1つのテーマとして「教育のICT化」がありまして、そのICT化になるであろう前提でどういう事業を起こしていくのかが私のテーマでした。

そういうテーマの中で見るとなかなか自社の中だけでは、基本的には紙の出版などをやっている会社ですので、今でいうEdTech(教育工学)など、自分たちだけでなにかやっていくのがそもそも難しい課題があって、やはりいろいろなところで協力しないと。

出版みたいに、自分たちで編集して、印刷会社さんに頼んでものができてくる、みたいなことはできないです。それが前提にあります。

どういうふうに組んでいったらいいのかを探し出し始めたのが2013年ぐらいで、代表の鈴木さんとかいろいろな方をご紹介をいただきながら、ベンチャー企業さん等々含めてあたっていたんですけど、効率が非常に悪いというのが1つ大きくありました。

そんななかでアクセラレーションプログラムのお話をうかがって、いろいろな方々とお知り合いになって、複数の事業を同時に立ち上げてみようかというのがきっかけですね。

内田:ありがとうございます。まずICT化という大きな課題があって、それに対応する方法として模索した結果、アクセラレーターにたどり着いたんですね。

北居:そうですね。はい。

内田:ありがとうございます。

キリンがアクセラレーターを導入した背景

内田:それでは西前様のところではいかがでしょうか?

西前純子氏(以下、西前):キリンの西前です。よろしくお願いします。

当時の状況でいうと、アクセラレーターを始めた2016年はちょうど新しい中期計画と長期計画がスタートした初年度でした。このプログラム自体は2015年から検討を開始して2016年から導入しました。

その計画の中に、20年・30年先の人口動態などの環境変化を考えると、既存の事業だけではなく、新たな領域や新しいビジネスなどの可能性を検討する、という課題がありました。

学研さんのように「これを」という、はっきり決まったテーマがなくて、まず探索のフェーズだったので、幅広くいろいろなベンチャー企業と接することができるアクセラレーターが有効なのではないかということで導入しました。

内田:ありがとうございます。人口動態という、ある意味我々の力ではコントロール不可能な市場のものすごく大きな変化に対して、打ち手を探す1つの打ち手としてアクセラレーターがあったと。こんな理解でよろしいですかね。

西前:はい。そうですね。

内田:ありがとうございます。

ヤマハはイントレプレナーのプラットフォームを

内田:それではヤマハ様はいかがだったでしょうか?

畑紀行氏(以下、畑):ヤマハの畑です。既存事業をずっとやっていると、既存事業の範囲のことしか考えられなくなっていくじゃないですか。そうなってきたときに、今の世の中の流れや新しい考え方がなかなか社内に入っていかないという課題を感じていました。

私は新規事業開発部にいる関係上、今メインとしてイントレプレナーのプラットフォームをやっているんですね。アイデアを募って、育てて、世に送り出して、あわよくば事業化までをやっているんですけど、みなさんがだいたい同じアイデアに帰結したり、どうしても多様性に欠ける部分があるんですよ。「これはちょっと社外の刺激を入れないといけないな」という思いがありました。

ちょうどその頃、2年ぐらい前なんですけど、「01Dojo」(注:起業家・企業内起業家や事業創造を支援する人材に、実際の事業創造を加速する環境を提供する、01Boosterのプログラム)にうちのイントレプレナーをぶち込みましてですね。

4組ぐらい鍛えてもらったんですけど、その時にコーポレートアクセラレーターの話もうかがって、「これけっこうおもしろそうだな」「こんなにスピーディにしかも複数の新しい事業が生み出せるのか」と思いました。ですので、イントレプレナーへの刺激や、新しい事業を生み出せるところも含めて始めたというかたちになります。

内田:ありがとうございます。イントレプレナーを視野に入れつつ、そして社内の動きに対してダイバーシティを持たせる。刺激を活性化させて、さらにその先のビジネスを目指す、と。

:そうですね。もう外も中も同時にやってしまおうみたいな感じですね。

内田:なるほど、ありがとうございます。それでは少し視点を変えまして、導入する際、なんらかの障害があるんじゃないかと思っていらっしゃる方は、このフロアの中でどれぐらいいらっしゃいますか? 差し支えない範囲で手を挙げていただけると。

(会場挙手)

あ、けっこう。そんな悩みをお持ちだということなんですが。

「味方を作る」ことが肝要である

内田:北居さんのところでは、実際稟議を通したりするにあたって、社内からどんなリアクションがありましたか?

北居:まず、私が最初やったときは事例がなかったので自分が理解をするのがすごい大変で、時間がかかりました。それを理解した上でどう説明するかというのが、とにかく説明しづらくてわかりづらくて理解させづらいというものだったので。

一番は、「味方を作る」というところが一番苦労したところで、役員等々の中、経営の中でも理解がわりとできる方に味方になっていただいて通したという感じですね。

内田:なるほど。ありがとうございます。ただ、まだアクセラレーターも今みたいに知名度があったわけではないですし、具体的なイメージが共有されていなかった時に、役員のみなさんを巻き込むためにどんなことをされました?

北居:一言で言ってしまえば、私のミッションでアクセラレーターは1つのフェーズであって、当然ほかにもいろいろ同時にやっていたんですけど、やはり人間関係。上の方との人間関係をきちっと良好に保つというのがもう一番。それがなければ無理だったんじゃないかと思います。

内田:ありがとうございます。ものすごく実践的なサジェスチョンだったかなと思います。

社内のリアクションはどうだったか

内田:では西前さんのところでは、導入にあたって社内の想定されたリアクションであるとか、あるいはまったく想定してなかったリアクションが逆にあったとか、なんらか社内を初めて通した時に思い出されるエピソードなどがあれば、シェアしていただいてもよろしいですか?

西前:そうですね、まず言えるのは、このプログラムだから通しにくいというよりも、何か新しいことを通すときのと同じぐらい大変だったというところがありました。

やはり「これってやってなにになるの?」みたいな話は当然出ますし、そういう点では、先に走ってくださっている学研さんとかの事例があるのは非常に心強いというか、社内通す時に大いに活用させていただきました(笑)。

一方で、振り返ってみて思うのは、社内で同様の業務を経験している人がいないので「これ絶対ダメだ」って反対する人もいないんですね。「効果は未知数だけど、絶対に反対する理由もない」という人もいて。

そういうこともあり、まずはやってみる、ということで突破しようと思って進めていました。

内田:ありがとうございます。いいですね。社内……あえて実績が少なかったところを活用して「じゃあやってみよう」という流れにみんなを持っていったところの参考になりますよね。

淡々とけっこうやっていた

内田:とはいえ、そんな西前さんにちょっとおうかがいしたいのが、やはり新規事業全般の話として、「なんでやらなきゃいけないの?」という、すごくよくある質問があると思います。そういった質問に対して西前さんは、どんなふうに接していかれているんでしょうか?

というのは、多くの新規事業の担当の方が、すごく大変で心が折れてしまうとか、いろいろな悩みをお持ちだと思うんですが、西前さんががんばれた理由はどんな点にあったんでしょう?

西前:ええと、がんばってないわけじゃないんですけど、淡々とやっていた感じもあったので。

内田:なるほど、なるほど(笑)。

西前:ごめんなさい(笑)。

内田:いえいえ。

西前:ただ、冒頭に話しましたが、会社の置かれた状況としてなにか新しいことを、というところと、さきほどヤマハさんのお話にあったように、会社の中を変えていかないといけない、というところはやはり誰もが思っていて、それが後ろ盾にもなりました。

奇策はそんなにないんですけれども、なにか打ち手がないか、私だけではなく全体として探している状況だったので、その点でも受け入れられやすかったと思います。

内田:なるほど。ありがとうございます。

始める前は勝手に忖度をしていた

内田:それでは畑さん、すいません、同じ質問になってしまうんですけれども、社内のリアクション、想定外のものの有無、そこでなかった場合・あった場合、それぞれ畑さんの対応を教えていただければと思います。

:私も始める前は勝手に忖度をしているところがどうしてもありました。「きっと既存側の人からは怒られるだろうな」みたいなところがあるじゃないですか。

意外にやってみるとめちゃくちゃスムーズでした。今のご時世って、本来は会社の経営層は新しい何かを生み出すにはどうすべきかを考えてないとダメですよね。

内田:そうですよね。

:もちろんみなさん、ちゃんと問題意識は持っていらっしゃって、「ああ、いいじゃないか。やれば」というような流れがありました。

内田:なるほど。

:ただ、けっこうスムーズに行き過ぎてびっくりした部分もあります。社内交渉を担当していただいたキーマンが1人いるんですけど、その方はもう役職は定年されて比較的お歳が上なので、経営層と非常に仲が良いんですね。その辺りの人脈を使いながら、進められたのも良かったのかなと思いました。

内田:なるほどなるほど。いいですね。ちなみに最初に自分の心の中での忖度の話があったと思うんですけれども、そこを忖度しながらもアクセラレーターをやりたいと思って実際に働きかけを始められたんだと思います。要は忖度して勝手に自分が頭の中で仮想の反対を作り出していたとか、そんなイメージになりますか?

:そうですね。なんとなく受け入れられないんじゃないかというような。新規事業開発部みたいな名前のところは、勝手にそう思っているんですけど、だいたい組織の端っこにあって、なんとなく意見が通らないイメージがあるじゃないですか。やってみると意外にもそんなことはないなと思いました。

内田:なるほどなるほど。ちなみに自分の忖度は脳内の産物であったとわりともう早く気が付かれたという、そんなイメージですかね。

:そうですね。最初にこれは思ったよりも前向きに捉えてもらえてると感じたのはビジネスプランコンテストの時でした。経営層に本当にすごく前向きに来てもらえたので、拍子抜けするレベルでした。

内田:なるほど。ありがとうございます。

上層部の巻き込みは「最後は人間関係」

内田:先ほど北居さんは、上層部の巻き込みに関して、「最後は人間関係です」と。畑さんも人間関係。西前さんもおそらく淡々といろいろ、粛々と進められていったのかなと思うんですが。

とくに北居さんにおうかがいしたいのが、人間関係の中で物事を進めていくときに、まず日頃からよくしておくことという点があると思う一方で、どうしても新規事業は会社の中の片隅にある現状だと思うんですけれども、そんななかで、今、新規事業部の方ができることは、どんなことがあるでしょうかね。

北居:できること、ですか?

内田:上層部の巻き込みのためにできることや、人間関係の構築のためにできること、気をつけること、もしあればシェアいただいてもよろしいでしょうか?

北居:私はどちらかというと、今に限らずずっとわりと新しい仕事をやってきて失敗もあります。基本的に新規事業開発とかというと会社の方向性としてそれが必要だということでその部署なりができていると思うので、「それをやれ」という理解を……。

部内の人間としてはそれが求められているミッションであると理解をすればいいのかなと思います。そうした上で、そのミッションに応えていくところだけなのかなと思いますので、仕事と役割をやることだと思いますね。

内田:なるほど。そういうことですね。ありがとうございます。西前さんのおっしゃられていたこととも通じる気がしますね。

西前:そうですね。あとは巻き込みのほうですかね。補足になるんですけど、けっこうここは時間をかけてます。

今、役員にメンターになってもらっているんですけれども、一人ひとり時間をもらって個別に全員に説明にいって、しっかり理解をしてもらうのを、時間をかけて、事務局で回ってしましたね。

そのあとも進捗を共有したりとか、社内で関心を持ってもらえるよう、意識して動いてきています。

内田:ありがとうございます。畑さんのところでは巻き込みに関してはどのような工夫をされましたか?

:まず、先ほどのお話と同じで、説明はきちんと行っておりまして。逆に言えば、そのぐらいですかね。あとはもう新しいことをやりたがっている役員も多かったところが運がよかったと思います。

内田:要は役員さんの真の経営ニーズに対してストレートに刺しにいったと。そんな理解でよろしいでしょうかね。ありがとうございます。

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