アクセラレータープログラムの成果について語る

合田ジョージ氏(以下、合田):どうもありがとうございました。01Boosterの合田でございます。今日はありがとうございます。

さっそくですが、「アクセラレータープログラムの成果」ということで、事業創造、社内変革、あとは人材の育成の観点で、今日いらっしゃった4人にお話をおうかがいしたいと思います。

まずパネラーの自己紹介をお願いしたいんですが、まず大橋部長のほうから簡単に自己紹介をお願いできますか。

大橋啓祐氏(以下、大橋):森永製菓の大橋と申します。よろしくお願いします。

私は会社に入ってずっと森永製菓で働いております。いわゆる営業と商品開発の仕事をずっとしてきましたが、2014年から急遽、新規事業の仕事をしなさいということで新規事業の仕事をしております。今日はよろしくお願いいたします。

合田:よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

(会場拍手)

では加藤さん、お願いします。

加藤優子氏(以下、加藤):オマツリジャパンという会社をやっています加藤優子と申します。

どベンチャーなんですけれども、まだ始まって3年目でして、主にお祭りの企画運営であったり、「オマツリジャパン」というポータルサイトを運営して、日本の祭りを盛り上げようという会社です。よろしくお願いします。

合田:よろしくお願いします。

(会場拍手)

北居さん、お願いします。

北居誠也氏(以下、北居):学研の北居と申します。

学研グループでは2015年と2016年にアクセラレータープログラム展開をいたしました。今日は少しでもお役に立てればと思いますので、よろしくお願いいたします。

合田:よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

(会場拍手)

最後、村上社長、よろしくお願いします。

村上竜一氏(以下、村上):株式会社ウィライツの村上と申します。

森永製菓さんのアクセラレータープログラムをきっかけに起業をさせていただいて、今3年目です。保育の小学生版と言われている学童保育におやつを企画・納品させていただいてる会社です。本日はよろしくお願いします。

合田:よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

(会場拍手)

ベンチャー企業がどうやって大手企業の中のリソースをつかむのか

合田:私のほうから簡単に他己紹介をさせていただきたいんですが、大橋部長のほうは、森永アクセラレーターを1期2期3期目を責任者として率いられまして、いろいろなベンチャー企業さんを見られてきました。

最初は、新規事業に関しては「どうなんだろう」と思っていらっしゃるところもあったんですけど、だんだんすごくアグレッシブにベンチャー企業さんを支援してくださっているということで。とくに3期目、ベンチャー企業さんと森永製菓さんがみんなでチームになっている状態は本当にすばらしいなと思っています。

次に加藤さんなんですが、オマツリジャパンということで。今日はどちらかというといい話ばかりしてもなんですから、できるだけ客観的な意見でいたいんですが、正直、我々「オマツリさんって通していいのかな?」とか思ったんですけど。

(一同笑)

ただ、キリンさんなどはお祭りでやはりビールを飲むんですよね。「ああ、そうなんだ」と思って。それで「KIRINアクセラレーター」に通りました。

そのあと、やはり非常に大手さんをグリップするのがうまいんですよね。あとは第一勧業信用組合さんの「TOKYO アクセラレーター」にも通りました。そこでもハートをぐっとつかみまして。本当にいろいろな人の協力を集めています。

たぶんアクセラレーターもそうなんですけど、ベンチャー企業がどうやって大手企業の中のリソースをつかむのかが重要だと思うんですね。そういうことうまくやられています。

北居さんは1期目と2期目のサポートですね。学研アクセラレーターをされまして、1期目はいろいろなチームを支援されました。とくに教育の世界は非常にベンチャーが立ち上がるのに時間がかかるんですよね。それが学研さんみたいなところと組むと、パッと売上があがるようなケースもあって、アクセラレーターとしてはおもしろかったのかなと思います。

最後、村上さんですが、森永アクセラレーターの1期目になりますね。民間の学童保育がありますよね。子どもを預けられるところの学童保育に対してお菓子を提供されるということですよね。

ただ問題は「それって森永製菓さんがやったらいいんじゃないか?」と思うかもしれないですけど、これは顧客の声、お子様の声から見ると、極論すると森永製菓さん(のお菓子)だけを食べたいわけじゃないんですね。他社さんのものも食べたい。

あと1つは、お菓子だけ食べたい人、おにぎりが食べたいというと、特定の大手さんがやるのはなかなか難しいんですよね。そこを村上さんがやられています。

あとこれは1つの効果だったと思うんですけど、行政受注を早期に取れたのはたぶんアクセラレーターの成果かなと思います。

では、軽くアクセラレータープログラムに関して少し説明させていただいたあとに、みなさんのほうから話を聞きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

アクセラレーターには2種類ある

合田:まず、これは01Boosterに限らずなんですけど、(スライドを指して)今こんな感じですね。上のほうから、森永さん、キリンさん、ニコンさん、ヤマハさんなど、いろいろなところでコーポレートアクセラレーターというのをやらせていただいております。

どういう仕組みになっているかというと、(スライドを指して)こういうフローですよね。みなさんから見て左手、まずベンチャー企業のビジネスプランの募集ということで事前セミナーなどをやらせていただいています。

大手企業さんの目線でいうと、まずベンチャー企業のことがそんなにわからないわけですね。だからそこでまずはお互いに仲良くするようなところで事前セミナーを100人ぐらいの規模で2回やりました。

日本の場合、仲良くなるのはやはり懇親会なんですよね。若干アルコールなどを出させていただいて、みなさんでディスカッションさせていただいて。それでだいたい100~200ぐらい集めたプランを、書類選考、面談、そのあとプランコンテストということで、上の方、場合によっては社長さんが来たところで、ベンチャー企業さんにピッチというか短いプレゼンテーションをしていただきます。それを例えば8社ぐらいに絞らせていただいて、大手企業さんと一緒に3~4ヶ月間支援をします。

大手企業さんでそれを支援する人には2つの言い方があって、1つはカタリストと言っていますね。「ちょっとカタリストって言葉が弱いな」という感じがするかもしれません。触媒という意味です。どちらから見るかなんですけれども、ベンチャー側さんから見るか大手企業さんから見るか。

大手企業さんから見ると、やはり自分の会社のリソースだけではなかなか難しい。例えばヘルスケアで事業を立ち上げようと思ったら、「こういう部分はベンチャー企業」「こういう部分は社内のリソースを使おう」ということで、人の支援をするだけというよりは、どうやって事業を俯瞰的に作ろうかという、経営者になるという意味でのカタリストという立場がある。

あとはメンターですね。メンターというのは「大手企業さんは起業したことないんだったら、どうやってできるの?」という話があるかもしれないですけど、そんなことはなくて。例えば、品質保証などはやはり非常にナレッジを持っていらっしゃるわけですね。そういう部分を支援するかたちでやらせていただいているのがコーポレートアクセラレーターですね。

プログラム期間が終わると、最後にデモデイということで発表を介してのフォローアップというかたちになります。1つだけ考えなければいけないのは、海外の場合、実はこの最後の選抜が終わった時点でドンと出資をかけるんですけど、日本はなかなかそうもいかないので、1回みなさん仲良くなってからという感じでやらせていただいています。

アクセラレーターも2種類あって。みなさんから見て左手ですね。例えば大手企業さんが「こういうものがほしい」「こういうリソースがほしい」ということに対してベンチャー企業が提案してくるタイプのオープンソーシング型のアクセラレーターと、右側のように、例えば「IoTの市場を盛り上げよう」「ヘルスケアの市場を盛り上げよう」という感じでかなり抽象的な概念でやるタイプ、オープンイノベーション型の2つがある。

欧米はほとんど右側ですね。日本は左側。(欧米に)左側がないわけじゃないですね。たまに科学系や技術系の会社で左側もあるんですけど、多くは右側です。ただ、なかなか抽象的概念に弱い日本で右側を理解いただくのが難しいので、なかなか苦戦するんです。

やはり大きい事業を作ろうとすると「みんなで一緒にやろう」と。なにか「提案する・しない」「売る・買う」という関係じゃなくて、それをみんな、つまりコミュニティで盛り上げていこうという考え方はもっと日本に必要だなと思うんですよね。そういう抽象的な概念でやらせていただいております。

祭で日本を盛り上げたい

合田:じゃあさっそくパネルに入っていきたいんですが、加藤さんと村上さんにまず応募者の立場で聞きたいと思います。加藤さんの場合はキリンさんと第一勧業信用組合さん、TOKYOアクセラレーターになるんですが、なぜ応募したかを教えてもらってもいいですか?

加藤:そうですね、ベンチャーって全体的に信用がないんですね。ブランディングとも言いますけれども。そこでちょっと自信をつけたいというところでまず申込みたいと思いました。

ちなみに私、KIRINアクセラレーターと第一勧業信用組合さんのTOKYOアクセラレーター、あと東北アクセラレーターにも採択していただきまして。それぞれ理由は少しずつ違うんですけれども、主な目標は信用力アップです。

例えばKIRINアクセラレーターだったら「やっぱり祭と言えばビールでしょ」というところで、一緒に日本を盛り上げられないかなと思ったところ。

第一勧業信用組合様は、(会場に)いらっしゃっていますけれども、お祭りで一番地域に近い団体やそういう組織はなんだろうと思ったときに、信用組合や信用金庫になってきますよね。そういうところがアクセラレーターをやっているということで、一緒に組んで東京や日本を盛り上げられないかなと思ったのが理由です。

東北アクセラレーターはそのままで、私、東北のお祭りが大好きなのでぜひ一緒に盛り上げられたらなと思って申込みました。

合田:どうもありがとうございます。(会場を指して)ではその前に第一勧業信用組合様のお二人。こんなところで指すなって感じですけど。

加藤:指されちゃうとはとても思っていない(笑)。

合田:もしよかったらお立ちいただいて。あと仙台市の方、いらっしゃいますね。こんな感じでやらせていただければ。なにかあれば懇親会かなにかで聞いてみてください。仙台市の方は今いらっしゃらないですね。あ、いた。

加藤:いらっしゃった(笑)。

合田:はい。なにかあればぜひ直接聞いてみてください。

加藤:あの、キリンのみなさんは?

合田:キリンさんはいらっしゃいます?

加藤:あ、いたいた。

合田:いたいた! ごめんなさい。先ほどご登壇されましたね。ありがとうございます。

加藤:みなさんいらっしゃってなかなか話しにくいところがあるかもしれないんですけれども。

合田:いえいえ、もう自由に話していただいて。

加藤:はい。

起業をして“幸せ”か?

合田:では次は村上さんのほうに、応募動機について少し聞いてもいいですかね。

村上:ありがとうございます。私はおそらくほかのアクセラレーターにエントリーされている方たちに比べるとダメなタイプの人なのかなと思っていて。

漠然と普通にサラリーマンをやっていて、「今の環境をなんとか打破したいな」「起業もいいかな」ぐらいのときにアクセラレータープログラムを知ることができて、その時に「ちょっとエントリーしてみようかな」と。

私ももともと学童保育というところで仕事をしていたので、私の経験と、「森永さんといったらお菓子、食だから、そこでなにをやれるかな。おやつを提供することかな」みたいな、そういう軽いノリと言ったらさらに怒られちゃうんですけれども、そういったところではじめはエントリーさせていただきました。

なので、もしかすると私のような、「起業してみたいけどやり方がわからない」という人は日本にけっこうたくさんいるんじゃないかなと思っていて。たまたまそのなかの代表のようなかたちで、気がつけばあれよあれよと書類選考を通していただいて、面接が通って、最終ピッチに臨ませていただいて、デモデイを迎えました。

はじめはゆるい感じだったんですけど、だんだん時間が経つにつれてお尻にも気持ちにも火がついてきて今があるというかたちなので、そういった意味で本当に最初は良くも悪くもゆるい感じでエントリーしてしまったのが私のきっかけですね。

合田:村上さんと加藤さんに聞きたいですけど、今、生きていて楽しいですか?

(一同笑)

村上:それは……(笑)。

加藤:最高ですけど。

村上:そうですね、ここでたぶんなんか「つらいです」って言うと……。

合田:今、事業をされていて楽しいですかね。

加藤:深いですね。

村上:でも、大変なことは当たり前のことながらたくさんあって、たまに「やべ、しんど」とかあるんですけど、それは心地よいしんどさだなと思っています。

やはり自分で好きでこの道を選んで、当時の環境から責任を持ってなにか物事を進めたいという思いもあったので、そういった意味では、好きなことをやらせてもらって、いろいろな方にお世話にもなって、実際営業に行ってお仕事を取れるという喜びもあるので、幸せなんじゃないかなと思います。

合田:すばらしいですね。ありがとうございます。

アクセラレーターにとっての成果とはなにか?

合田:では今度は大橋部長と北居さんのほうにおうかがいしたいんですが、やはり「アクセラレーターの成果ってどんなことですか?」と聞かれたりするわけですよね。売上規模でいうと大手企業さんは1,000億、500億とすごく大きいなかで、ベンチャー企業って最初は数千万だったりする。

出資したりしていると自社事業と考えることもできるんですけど、純粋にアクセラレーターをビジネス、自社事業と考えたときに、正直、成果はどういうものを考えられますか? これは自由で構いません。ネガティブでもポジティブでも。

大橋:事業として考えると「それはいくらの売上といくらの利益を出してるんだ?」ということになってしまうかもしれないんですけれども。

新しい事業というのは、0から立ち上げていって、それが何十億とか何百億になることを100だとすると、その難しさって、0から1を作るところ、1から10にしていくところと、また10から100にしていくところは違うなと。私も新規事業素人だったんですけれども、3年ぐらいやっていてすごく感じています。

わりと事業を長く継続している大手と言われる企業だと、普通、仕事をしている人はだいたい100の仕事というか、10から100の仕事しかやっていない。

合田:そうですよね。

大橋:なので、0からやれと言われるとすごく難しくて。10から100しかやっていない人からすると「そんなことやってなにになるの?」「その売上って俺が稼ぐ1日分だろ」ということになってしまうんですけれども、「そもそもやっていることがぜんぜん違いますよね」という話で。なので、0から1をやるので、そこを単純にスケールだけで比較されてもそれは意味がないですし。

ふだん既存事業をやっている人がメジャーリーグでプレーしているプロ野球選手だとすると、我々は「社会人リーグにもまだ入れないところでお客さんがちょっと来てうれしいみたいな野球をやっている人」という感じだと思うので。野球というか、もしかしたらもう種目も違うかもしれないですけど。

そういうところなので、新規事業の0から1のステージは売上数字や利益で語るものではないけれども、なにか将来に向かって、「それが今と違う利益構造などを生み出せる可能性がありますよね」というところはあったほうがいいのかなとは思います。

合田:そうですよね。指標がぜんぜん違いますよね。北居さんはどうですかね?

北居:当社が実施したアクセラレータープログラムの選考した会社さんに期待すること。基本的にはイノベーションがテーマでしたので、これから起こりうるであろう需要だとか、「これから社会がこうなるからこういうことが必要になるんじゃないか」という観点が選ば れています。だからわからないんですよね。

合田:そうですよね。

北居:正直わからないんですが、それを実施していることによって、お客様や外部の方からその会社さんが評価を受けているということを聞いて、正しいという言葉が合っているかわかりませんけど、「この選択は正しいんだな」というのが1つ。

それと短期的な成果としては、ブランディングといいますか、当社が支援している会社さんで「あ、これ学研が支援しているんですか」と言われるのは非常に当社にとってもプラスになっています。

合田:ありがとうございます。そうですよね。まず縮尺が違うという話ですよね。

ベンチャー側から見たアクセラレーターのメリット

合田:では、今度は加藤さんと村上さんにおうかがいしたいと思います。アクセラレーター、大手企業さん側のインパクトとしてもう1つ社内インパクトがあるんですが、ベンチャーさん側からの成果というか、もし仮にアクセラレーターがあった場合となかった場合でなにが違いましたかね?

加藤:たくさん違うものはあって、ジョージさんは近くでずっと見ていただいていたので違いは大きくわかるかなと思うんですけれども、先ほどから申し上げているとおり、やはり信用がアップしたこと。実は2年間私1人でやっていたんですけれども、それでメンバーも増えましたし、あとは資金ですね。出資もいただきました。

あとはつながりもいただきました。例えば今、東北アクセラレーターで、例えば「仙台の七夕まつりの担当者を紹介してください」と言ったら、ポンと紹介していただけるわけですし、そういったつながりも手に入れたというところで大きく前進したかなと思っております。

合田:なるほど。ありがとうございます。村上さんはどうですかね?

村上:もう本当に今おっしゃっていただいたとおりだと思います。うちの会社の場合、大きかったのは、本当にヒト・モノ・カネすべてを投じていただいたことに感謝しています。

とくにベンチャー留学が非常に大きくて。本当に一番脂が乗っているであろう社員さんを、はじめ1年というかたちでうちの会社に放り込んでいただいて、延々と出張しているような感じですよね(笑)。

1年経ったぐらいのところで、本当は自分のところで人を採用しなければいけなかったんですけど、その時たまたままた別の大きな案件を取れそうな時に、「なんとかならないですか」といって延長をしていただいて。結果的に1年半ベンチャー留学というかたちで、本当に優秀な人材に、一緒に事業を作ってもらえたというのがすごく私としては大きかったです。

先ほどジョージさんにおっしゃっていただいたように、いろいろな方々のサポートもあって、本当にまだ事業として1年経っていない段階で自治体さんのお仕事をいただけて、翌年度もまた自治体さんの仕事を新たにいただけるきっかけもできたので。

そういった意味では、本当にブランド力も信用もなにもなかったなかでそういったお仕事を新たにいただける。また、そのなかでベンチャー留学という人材を、1年半も一緒に過ごさせてもらって事業を作らせてもらったということが、けっこう違ったかなと思っています。

合田:そうですね。2人をうまく引き出せたという感じですかね。

強い人は作れても、いい人は作れない

合田:では今度は大橋部長に聞きたいんですけど、実際にベンチャー留学で人をアフリカと、このウィライツさんに送ったということ。またそれ以外にカタリストで今もけっこう強力にサポートされていると思うのですが、社内がこれによって新規事業を生めるようになった。あるいはアクセラレーターを通じて社内にどんなインパクトがあったんですかね? 

大橋:3年前ぐらいにアクセラレータープログラムをやりますと最初に言った頃は、今ほどアクセラレーターやオープンイノベーションということはそれほど言われていなかったので、「そんなことをうちが最初にやっちゃうんですか?」「食品メーカーなのに」というところがそもそもありました。そういう意味では「かなり新しいことを本当にやっていくんだね」という社内の感想はあったと思います。

ただ「やるんだね」ということだけではなくて、社内の人間やいろいろな人をアイデアソンなどに巻き込んだことで、かなり社内のマインドセットが変わったと感じています。

また、そういったものに刺激を受けて、「今度ベンチャー留学をやるのでベンチャー留学選抜のアイデアソンをやります」というとまた何人も集まってきたりということで、「アクセラレータープログラムをやります」と言ったことによって会社が本当に新しいことをやろうとしているということを社内に共有できたということが1つ、大きく起きたかなという気はしています。

合田:もう1つおうかがいしたいのは、ベンチャーにけっこう長い間2人(社員を)出して、僕らとしてはこのまま辞めちゃうんじゃないかとすごく心配していたんですけど。なぜか2人とも辞めず、逆に森永が大好きになって帰ったという。すごく不思議なんですけど、これはなぜなんですかね?(笑)。

大橋:正直、そういうところに行って刺激を受けて辞める可能性もあるなとは思っていました。ただ、そこは人事とも話して「そうなったらそうなったでしょうがないね」と。

でも、一応「あんた指定校推薦だから」という感じで「スポーツ推薦で大学入ったようなものなんだから4年間辞めんなよ」みたいなことは強制はできませんが、一応軽く言っておいたんですけれども。辞めたら辞めたでそれはそれでしょうがいないだろうと腹を括って送り出しました。

結果的にその時に、ベンチャー留学に行く前にいろいろ外の人から「森永の人はいい人がいっぱいいるけど、強い人がいない」「たくましい人がいない」と言われていたんです。

行って戻ってきた人間が言っていたことなんですけれども、実は「強い人は作れるけれども、いい人って作れないんです」「強い人はトレーニングすると強くなるかもしれないんですけど、いい人はけっこう素質だ」「いい人が揃っていることって実は会社としてはものすごく大事だと僕は思います」と帰ってきた人間が言っていたんです。

だからいい人って、すごくやさしくてなんでも「はいはい」と聞いちゃってダメなやつ、みたいな印象があるかもしれないんですけど、「なるほどそういう側面もあるんだな」と思って。別にガツガツした人だけがすばらしいということではないのではないかということを、ベンチャー留学に行った人間がそう言っていたので、なるほどなと感じました。

合田:ありがとうございます。では今度、北居さんに変わります。学研さんの社内に対するインパクトはだいたいどんなことがありましたかね?

北居:学研の場合はイントレプレナーというか、社員のいわゆる企画の大会みたいなものは、学研なのでGで「G1グランプリ」といって、アクセラレーターをやる2年ぐらい前からやり始めていました。

今回の2015年にやったアクセラレータープログラムは社外の位置付けとしてやりました。効果としては、やはり社内のほうのプレゼンというか、企画・立案を含めた質が上がっていったなということが大きいです。

ただ、たぶん一番大きかったのは、当社はあまり少額出資をやっていなかったんですね。基本的にはM&Aしかやらない。「なんで売上・利益にもならないのに金を出すんだよ?」という文化だったんです。「そもそも少額出資ってやる意味あるの?」という感じだったんですけど、今回、2015年に実施してから増え出しました。

それはやはり社内のいわゆるバックヤード・管理部門の関係がどういうふうにやればいいのかということが理解できたのが1つ大きいですね。それと、少額出資に関する意味合いというのも、事業部門の人間にも理解できる人間が増えてきたのがわりと大きいかなと思います。

合田:ありがとうございます。