大手企業のリソースの引き出し方

合田ジョージ氏(以下、合田):では今度は、加藤さんと村上さんに聞きたいと思います。お二人はアクセラレーターを通じていい成長をされたと思うんですが、大手企業を普通に待っていたら多少支援はしてくれるかもしれないですけど、やはり自分でアクションしないと動かないじゃないですか。どうやって大手企業さんのリソースを引き出したんですかね?

コツではなくてたぶん生き様そのものかもしれませんけど、やはりけっこう差が出るじゃないですか。なにが違うんですかね?

加藤優子氏(以下、加藤):私はアクセラレーター3つ採択されていますけど、確かに比較してみるとすごい支援を受けられている会社とそうではない会社があると思います。比較するのもあれですけど、私たちの場合はもうけっこういろいろ求めましたね。要望を常にしてましたね。

一番最初に第一勧信さんに「理事長と飲みたいです」と言ってこっそりセッティングしていただいたのもきっと私たちしかいないと思いますし、常にいろいろ求めていたので、逆に「そろそろ、オマツリさん、なにかほしいんじゃないの?」みたいな話をしてくれるところもありましたし、けっこう私、頼りましたね。

合田:キリンさんにはどんなふうに頼ったんですか?

加藤:やはりいろいろ大企業さんとつながりたかったので、お祭りと大企業をつなげるといいビジネススタイルができるんじゃないかと思っていて、キリンの社内もそうですし、いろいろな社外の方を紹介していただいたりしましたね。

合田:それはけっこうやってくれたんですね。

加藤:はい。かなりやってくれました。

合田:でもそれ、働きかけないで向こうからしてくれた? それとも自分がある程度働きかけたんですか?

加藤:いや、両方でしたね。やはり大企業、私も最初どういうの身のこなし方をすればいいのかわからなかったんですけれども、キリンさんの場合はご担当の方がついていただいて「そろそろこういうのどう?」ということを言ってくださったので、そこは非常にありがたかったなと思います。「そういうふうに聞けばいいんだ」と。

最初、キリンさんに要望書みたいなものを書くんですけど、「ビール800本ください」ということを書いたりして「それはダメです」みたいな。「それはダメなんだ」「これはダメなんだ」というふうに1個1個変な要望とかもいろいろ10個ぐらいバーっと並べて、「これはダメなんだ。これはいいんだ」みたいなところで頼っていましたね(笑)。

合田:微調整してましたね。

加藤:そうそう。微調整して「これは聞いていいんだ」「これは聞いちゃダメなんだ」みたいな。800本ほしかったんですけどね(笑)。

自分ができないことをさらけ出して甘えてみる

合田:村上さんどうですか?

村上:私は本当に今のお話と同じで、私の場合、本当にもう甘えるということしかできないんですよね。

起業してみて、うすうす自分でも気づいていたんですけど、びっくりするぐらいなにもできないんですよね。自分が経験してきた領域については誰にも負けないほどの知見があるという自負があるんですけど、それ以外のことはまったくなにもできないんです。

当たり前のようにコピー用紙が届いているとか、当たり前のように数字が出てきた、表が完成されている、手元に出てきて「どうしよう?」みたいな分析をしたり、それが一切合切ないので。

定例の打ち合わせのときなどに「そういえば、これは今どうなってるの?」と言ったら「できてません」「わかりません」とか言っているうちにだんだん数字の部分は経理部の方が見てくださったりだとか。

あとは学童側の方から「こういう研修をやってほしいんですよね」と言われたときに「いいですね、やりましょう」と言った手前、「どうやってやるんだろうな?」と思って、品質保証の方に相談したら「じゃあ品質保証で培ってきたものを研修でやってみましょうか」とか。

学童に対して営業するときに、「なにかサンプリングみたいなことできないですかね?」と言って「じゃあこういう商品をたまたま出すのでやってみましょうか」というかたちで、自分ができないことをさらけ出すということで、いろいろ……。

合田:甘えてみる、みたいな。

村上:甘えてみるということで。

加藤:これですね。さらけ出しましたね。そうですよね。

合田:なるほど、そうですよね。すてきですね。

「できる・できない」を明確にする

合田:逆に大橋部長と北居さんに聞きたいんですけど、ベンチャーさんがいろいろなことを言ってくると思うんですよね。そのときに「こういうリクエストはけっこう聞きやすいんだけど、こういうリクエストは困るな」ということはありました?

逆に言うと、「こういうふうに言ってもらえるとけっこうやりやすいんだよね」ということはあります?

大橋:あまりそんなに「これはダメ、あれはダメ」と言ったつもりではないんですけれども、そもそもアクセラレータープログラムで一緒にビジネスをやっているということは、とくに村上さんにはうちで出資もしているので、村上さんのビジネスが大きくなること=うちにも返ってくることなので、村上さんのビジネスが大きくなるための協力であれば、別にどういう協力でも(する)。

出資をしているということは、そもそも会社はどういう協力も惜しまないという姿勢になっているという裏付けでもあるんですね。

村上さんから「工場見学に学童のお子さんを連れていきたいんです」という工場見学の依頼があって。うちの工場見学はけっこう人気があっていっぱいだったんですけども、広報の人間に言って、「でも村上さんのためにこんなに空けるんですか」と言われたときに、「だって出資先ですよ」と言ったら「そうですよね」と社内で腑に落ちる。

合田:なるほど。

大橋:なので、なにかアクセラレータープログラムにおいて、別に出資の金額が大きい小さいではなくて、出資をしているということは、やはり会社対会社の関係で、しかも別に売り買いの関係ではないという、すごく意味のあることかなと思っています。

あとは頼まれて困るということはないんですけれども、お互いに「それはできない」ということを明確にしておかないと、あとあとお互いに齟齬や誤解が生まれることがあるのかなという気がするので、「こう言っちゃダメ、ああ言っちゃダメ」というよりも、お互いにできないことはできないとはっきり言うということが実は大事なのではないかと思っています。

合田:そうですね。わかりました。北居さんはどうですかね?

北居:困ったことはあまり思い浮かばないんですけど、要望があってそこのリソースやグループ会社のリソースを使いたいという場合に、やはり話が折り合わない場合も当然ありました。だから困りはしないんですけど、結果としてなかなか全部が全部お応えできるという結果にはならなかったなとは思います。

合田:そうですね。やはりできる・できないというところをある程度明確にする。ベンチャーさんに期待されていることを言われてやれないというのが一番つらいじゃないですか。ということは、これをできる・できないと言うことはある意味愛情ですよね。それを持つのはすごく重要なのかなと思います。本当おっしゃるとおりですね。

日本は自前主義をやめていくべき

合田:みなさんにおうかがいしたいんですけど、別にそう思わなかったらいいんですが、日本は大手企業とベンチャー企業だとか、地域もそうですけど、ある意味バラバラなわけですよね。でも本来は日本も非常に厳しい状況なのでもっと協力すべきだと思うんですよ。

みなさんどうですかね。別にコーポレートアクセラレーターが答えではなく、社内起業でもなんでもいいと思うんですけど、日本は自前主義はやめていくべきではないかと思うんですよね。このあたりはどうですか、大橋部長。自前主義をやめてもっと、アクセラレーターにかぎらず、外部と連携しあうことが必要なのではないかと。

大橋:「自前主義をなくして」という、そのなくすというところの感覚が実はなかなかわからないのかなという気がします。私もアクセラレータープログラムをやってみて、出資することの意味がものすごく大きいんだなと感じたんですね。というのは、「なんでこの人たちを応援するんだ?」というところで。

要は「アクセラレータープログラムをやってベンチャーの方を応援します」「え、そもそもなんで応援するの?」というところで、「だってそこはもしかして大きくなるかもしれないから出資をしておけばいいじゃないですか」という、その出資を入れるか入れないかではぜんぜん意味が違ってくると思うんですね。

それで出資をしていると、結局それは自前主義をやめることと裏腹かもしれないですけど、「結局自分に返ってきますよね」という感じです。すぐ手元になにかお金が入ってくるということではないけれども、結果としてそれはお金が入ってくることになりますよね、という感覚を私はそこではじめて持てたと思っています。

なので、会社のあらゆるリソースを使ってサポートをしていくことにものすごく意味があるということが、そこではじめてわかった気がするんですね。なので、それがわからなかったら「そもそもなんでこんなことやってるんだっけ?」というまま終わってしまったかなと思います。

自前主義、なんでも自分でやるということと、常に自分のところにお金が集まってくることを期待しすぎてしまうというか。その構造を幅広く理解できていないと、「そんなに人を応援してどうするの?」「人に金を出してどうするの?」という感じになってしまうのかなと。そこが腹落ちできないから自前主義になってしまうのかなという気がします。

合田:なるほど。わかりました。ありがとうございます。

大企業がベンチャーと組むことで社内はどう変わる?

合田:今度は北居さんの前に加藤さんと村上さんに先に聞きたいと思います。大手企業さんと組んでやられているなかで、自分たちが支援をされてある程度伸びた、今後も伸びられると思うんですけど、社内の方を見ていて組むことによって変わった部分はありますか?

例えば組むことによって、最初はやり方がわからない大手企業さんがどんどん前向きになっていったとか。2人が支援を受けながら大手企業さんのインパクトを感じたことってあります? ずっと最初から最後まで一緒だったのか、それとも自分たちと関わることで社内がなにか変わったか。

村上:変わったということの前に、先ほどあったいい人と強い人の話じゃないですけど、大手の方ってやはり優秀な方がすごくたくさんいらっしゃって、10-100ってやはりすごく大変なことなんですよね。

なので、0-1に携わっていただいたことで「10-100もやっぱり大変だよね。すごいことやってるんだよね」というところは再認識されたんじゃないかなと思っています。

0-1でやっていくなかで変わったというよりは、たぶん非日常的のなかでけっこういろいろと事業を作っていく。怒られることもあれば失敗することもある。そういったなかでけっこうおもしろいと少しは思ってもらえたんじゃないかなと思います。そこは変わったというか、一緒に作っていくなかでもしかしたら芽生えていただいた気持ちの1つなのではないかと思っていますね。

合田:なるほどね。加藤さん、なにかありますか?

加藤:大企業と組むことによってある程度緊張感が生まれましたね。最初に私1人でやっていた時から、KIRINアクセラレーターやTOKYO アクセラレーターが1人でやっていたときあるんですけれども。1人でやるのではなくて大企業さんと組んでいるというところで「ちゃんとしなきゃ」みたいな。

今までずっとサークルのような感じでやっていたんですよ。オマツリジャパンって私とサポーターと呼ばれるボランティアスタッフが250人ぐらいいるんですけど、ある意味ではそういったゆるいつながりなのでサークルっぽかった。でも、大企業と関わることによって会社の体制になっていったということがありますね。今ではしっかり取締役もいて、仕組みも作れて、やはりあれは大企業が関わったおかげかなと思っています。

合田:そうですよね。大手企業さんはいろいろな意味で社内がすごくしっかりしていますよね。

加藤:そうですね。

合田:どうですか、北居さん。これは別にベンチャーに限らず他社さんも含めて、もっと日本は積極的にいろいろなところと組んでいくべきじゃないかと私は思うんですけれど、どう思われますかね。

北居:そう思いますね。やはりもうすでに日本の落日がわりと見えてきているなかで、ひょっとしたらもう数年も経てば中国で作るより日本のほうが安いという時代になって、そのなかで我々がアイデンティティを保っていくなり付加価値を向上させていくためには、ある程度独立が必要だと思います。

ということになると、現状ある既存の我々のような組織の人間に限らないなにかを作っていかなければいけないのであれば、自前は無理かなと思うので、非常に企業業績がいいらしいので内部留保を吐き出させるような税制とか(笑)、いろいろ考えたほうがいいのではないかとは思います。