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パネルディスカッション(全7記事)

「若いうちに刺激を受けられる仕組みを」イノベーターらが放つ、社会への提言

これから日本がさらに飛躍するため、先進的に活躍する企業など、どのような指針や制度を持つべきなのか。2017年3月10日に行われた「未踏会議2017」のパネルディスカッションで、スマートニュース鈴木健氏とGunosy福島良典氏ほか4名が登壇しました。モデレーターを務めたのは夏野剛氏。最終パートでは、未踏出身のイノベーターらが社会への提言を発表。変化の激しい世の中で生き残るため、イノベーターらが考える「必要なこと」とはなにか。

ゲームで遊ぶだけでなく、作って広げるおもしろさを

福島良典氏(以下、福島):エンジニアがなんのために技術を覚えるかというと、作りたいもの、実現したいものがあるから技術を覚えると思うんですよね。それが人に伝わる喜びって、これ以上アドレナリンが出るものはないんじゃないかなというくらいおもしろいんです。

ゲームを遊ぶだけじゃなくて、それを作って広げる側のおもしろさを若いうちから体感してほしいなと思います。そうするとどんどん新しいテクノロジーに興味を持って、自分のスキルが上がってさらに楽しくなると思う。自分以外の誰かに使ってもらうというおもしろさを、できれば早く知ってほしいなって思います。

鵜飼佑氏(以下、鵜飼):プログラミングスクールも最近増えてきてますけども教科書があってその通りに作って「はい、すごいね」とかそういうのではなくて。自分の作りたいものを考えて、それを実現するツールとして使うのが正しいと僕は思っているので。そういう意味では、例えばCorderDojoとかは本当に素晴らしい。

自分の作りたいものをみんなで実現していく。そういう場を一般の学校教育でもしていく必要がありますし、なにか指定したモデルというのを作ったらいいなと思います。

夏野剛氏(以下、夏野):僕は、エンジニアっていい意味で小さいころのクリエイティビティをちゃんと維持できてる人なんじゃないかなと思うんですね。

というのは、どんな子でも、ままごと遊びとか、ブロックを積んでなにか作ったりとか小さい頃しているのに、だんだん勉強が入ってくると「そんなことをしている暇があったら勉強しなさい!」とか言われて違うことをやったりする。

それで、PCに向かってなにかやってると、なんか勉強したふりができるとかで、プログラミング、コーディングの世界にいったりする。そうすると、自分の世界がそこに作れるでしょう。そういう意味で「みんな逃げておいで」と言いたい。中学受験なんかしないでこっちの世界に逃げておいでといいたい。

本多達也氏(以下、本多):あと、エンジニアリングの勉強もすごく大事なんですけど、小さい頃からデザインの勉強も一緒にしてほしいなとういうのがあって。

いいものを作っても、やっぱり見た目がアレだと使いにくかったり、使われなかったりすることって、すごく多いじゃないですか。今はけっこうダウンロードされているものとか、みんなが評価していいねと思われているものを「どうしていいのか」を、いっぱい触ってみるということを小さい頃からしてほしいなと思います。

夏野:ずいぶん意識高いね(笑)。

米澤香子氏(以下、米澤):私、今日7人中1人だけ女なので、女の子たちに向かってメッセージを贈りたいと思います。

もし周りの大人たちとかが「女の子だから勉強そんなにがんばらなくていいよ」「三角関数学ばなくていいよ」みたいなことを言ったとしても、そんなこと全部無視して、やりたいと思った道を自信を持って進んでください!

夏野:そんな時代じゃないよ。

米澤:本当ですか? でも「女子に三角関数を教えてなにになるのか」と発言して炎上した県知事が最近いましたよ。

夏野:マジで?

米澤:Twitterで話題になったんですけど。今ならまだ人数少ないので目立てて、そうすると得なことも多いので。ぜひ女の子がこの分野に増えるといいなと思います。

情熱を持ち続けないとプロジェクトは終わってしまう

夏野:じゃあこの後、みんなに日本への、あるいは未踏へのなんでもいいから社会への提言をみなさんにひと言ボードに書いてほしいので。書いてる間に僕が勝手にしゃべります。

今の女の子の話というのはすごくおもしろくて。今うちは娘が2人いるんですけど、男なんかに頼って生きていく時代はとっくに終わってるということと、「ろくな男がいないから、女だからこそがんばれ」と言っているですよ。

それからもう1つぐらい質問! なにか聞きたいことある人いますか? 

質問者3:今日は貴重なお話ありがとうございます。

僕はユニクロに勤めています。ユニクロって服の小売の会社でして、グローバルにどんどん伸びてまして、小売もいろんなテクノロジーがメインストリームになってるんですね。それで、どんどん商売のやり方が変わってくる一方で、けっこうエキサイティングな今事業の環境にあります。

みなさんにお聞きしたいのは、各方面、なににワクワクしていて、変わっていく世の中で生き残っていくためにはどうやってアクションしていくのか。みなさんそれぞれ会社でもこのプロジェクトでも、リードしていく立場であると思うんですけども、リーダーシップがすごい重要だと思ってまして。

そういう立場の観点で、経営者としてどういったことを意識されて、あるいはどういうところに課題を持っているのか。ワクワクと経営者としての見方。その2点のことについてコメントいただければと思います。

夏野:そうですね。この2つの質問×6をやると今日は帰れないので、どちらかでいいです。今ワクワクしていること、あるいは経営者あるいはプロジェクトリーダーとしてなにか気を付けていること。どちらか1つ誰でもいい。3人ぐらいいこうか。それで最後のコーナーにいきたいと思います。

本多:やっぱり情熱や思いで突き動かすしかないなと最近は思っていて。今までないこととか、やれてなかったことをプロジェクトでやっているので、「お願いします。どうにか力を貸してください」と言って、情熱だけでいろんな人を巻き込むという状況です。

僕の情熱が枯れちゃったらプロジェクトは止まっちゃうので、そこだけは持ち続けて突き進んでいこうと思います。

夏野:未踏の人材は情熱も本当にすごいので、情熱にほだされてPMは動いているということですね。あともう2人。

米辻泰山氏(以下、米辻):すごくワクワクしているのは、技術的に、ディープラーニングとかによって、今まで作るのにすごく時間が掛かってすごい大量の人間が必要だったものが、数人がかりで作れるようになったことです。これにすごくワクワクしているところではあります。

鈴木健氏(以下、鈴木):ワクワクしているのは……アメリカでも事業やってるんですけど、世界中からのニュースアプリが乗り込んできていることです。ヨーロッパとか中国から。

あとは経営者として気を付けていることは、最近は笑顔です。かなり厳しいことをいろいろディシジョンしていく日々で、そういう時、なるべく笑顔で、笑っていることです(笑)。

それぞれの違いを知り、理解して尊敬して学ぶことの大切さ

夏野:オチがついたところでよしとしましょう。じゃあみなさんにパネルを用意していただいたので、社会、日本。あるいは、なにに対してでもいい、提言をしてください。

じゃあ逆からいくか。はい。米辻君。

米辻:「遊びと義務と勉強というのを全部イコールで繋げましょう」というのは、勉強は義務ですよと子供の頃は言われるんですけど、大人になってから「勉強しなさい」とちゃんと社会で言ってないなと思っていて。

ちゃんと勉強するのは人間としての義務かなと。まあ、遊ぶのも同じように義務かなと思っていて。というのを言いわけにでも使ってください。会社の中で遊んだりするための。

会社の中で勉強してたりするのも、私は会社に対する義務を果たしてますよ、という言い分に使ってほしいし、逆に遊べてない人とか勉強できてない人には、もっとがんばってほしいと思います。

すごく言いたいのは、遊んでいるときの勉強効率が一番高いということ。たくさんの人がすごく夢中になって遊びながら勉強していると、なにか伸びてくるんじゃないかなと思います。

米澤:「外に出よう!」です。先ほどもみなさんとお話ししましたが、大企業の人が自分の会社にこもっている、逆にベンチャー側が、大企業は大したことないとか古いとかバカにするのは非常に良くないと思っています。大企業にもいいところはたくさんあるし、学ぶべきこともたくさんある。

大企業もベンチャーも、文系も理系も、グローバルもローカルも、みんなでちゃんと外を向いて、違いを知って理解して尊敬して、いいところを見つけて学んで。ということをやっていると、日本はもっと良くなるんじゃないかなと思います。

夏野:はい。ありがとうございます。

ユーザーにとって最も価値のあることをする=仕事

本多:「できる理由を考える」。できないとか、ルールがないとか、前例がないとか。できない理由を考える人がすごく多いというのを感じます。でもそのなかで、みんなで、できる理由はなにか、どうやったらできるのかというのを考えていくのが大事なんじゃないかなと思います。

鵜飼:「一億総クリエイター社会」を作りたい、作る必要があると思っていて。それをするにはやっぱり「エンジニアになりたい」とみんなに思ってもらいたいなと本当に思います。

僕は映画を作る必要があると思ってるんですけど。なにかイメージを大きく変えないと、みんなエンジニアって仕事が多くて給料が低くてというイメージを持ってる人がけっこう多いので、それを変えていく必要があるなと思っています。

福島:「ユーザーを上司に」。提言というかマインドセットの話しなんですけど、顧客志向とかお客様のためにという会社って多いと思うんですけど、みんな上司しか見てないと思うんですよね。

僕が一番意識しているのはユーザーです。当然ルール上は株主が一番の上司なんですけど、ユーザーが僕の一番の上司なので。ユーザーにとって最も価値のあることをするのが、僕の仕事なんだと思ってやっている。

すべての社員がユーザーと向き合って、本当にユーザーのためになること、顧客のために本当に価値のあることをしようと考えることが、実は日本に足りてない意識じゃないかなと思っています。

夏野:昔は、日本はこれ得意だったんじゃないですかね。いつの間にかね。

福島:そうですね。

「こんな人たちがいるなんてすごい」の刺激を若い時に受けてほしい

夏野:はい。鈴木さん。

鈴木:2つあるんですけども、1つは「留学義務化」ですね。これも未踏の話とちょっと関係がありまして。

中学時代は先ほど少し話したように、ドイツやイタリアにいたんですけど、留学ではないものの、すごく大きな影響を受けたのんです。もう1つ大きな影響を受けたのは、未踏で村岡(洋一)PMに連れていっていただいたアメリカ渡航だったんですね。

あとから聞いたんですけども、村岡PMはなんと採択会議の時に「PICSYとか通貨とか、言ってることがよくわからない。提案書を読んだところで、わからないんだけど採択しよう」と仰られたそうです。

夏野:村岡さん、すごいですね(笑)。

鈴木:しかも僕は申請した金額を増額にし、1,000万に増やしたんです。これはまず、すごい。さらにそのすぐ後に村岡さんが早稲田大学の副学長になられたんですね。従って、大変お忙しい。なんの指導もない(笑)。

その代わりに、村岡さんがすごいのはその時の未踏プロジェクト全員をシリコンバレーに連れていってくださったこと。それもある種、義務的に。その時、飛行機の席の隣にいたのが国立情報学研究所の大向一輝さん。

仲良くなって、シリコンバレーのAdobeの創業者の息子のプレゼンを目の当たりにして、「すごいなここは」「こんな人たちがいるなんてすごい」と衝撃を受けたんですね。

その時25歳だったんですけど、とにかくなるべく若いときにそういう刺激を受けてほしい。未踏に採択されるような、ここで主張しているような方々は比較的意識が高いですから、自主的に行かれるでしょうから、僕はなにも心配してないんですけど。

問題は社会全体として、今は1学年に100万人ぐらい日本の子供たちがいるわけですよ。その子たちにとにかく100万円ずつ留学費用を渡して、どこかに1年間、世界中のどこかの国に留学してもらおうとというのをぜひ、これは文部科学省ですか? お願いしたいなと思ってます。

どういう国でどういう場所なのかわからなくとも、異文化の中に放り込まれるということは大変重要だと僕は思っていて。とにかくその多様性というか、その状況の中で生きていかなければいけないですよ。

よくわからないままでも、その置かれた世界に適応していかなければいけない。そうすると、その多様性を受容できるような力が生まれてくると思うんですよ。そういう仕組みのためならば、もう、1兆円など大したことないじゃないですか。そういう仕組みをぜひ入れてほしいなと思います。

教えるということは自分の再発見にもなる

2つ目が「義務教育者化」。これはなにかといいますと、国民全員が教育者にならなければならないということです。

例えば最近、漁師町出身の方が入社してきたんですが。漁師町だと子供たちがふだん出会う職業は漁師さんしかないんです。そういうところにいろんな人たちが来るってことは、すごく大事だと思っています。やっぱり実際に会った人たちが、想像力の限界を引いていくと思うんですよね。

いわゆる義務教育とはなんなのかというと、教育を受けるのは権利、義務は「親などの保護者が教育を受けさせるのが義務」と憲法26条に書いてあるんですけども。そうではなくて、憲法改正にぜひ入れてほしいのは、国民全員が教育者にならなければならないということ。

夏野さんとか僕とか、例えば漁師さんとか、あるタイミングが来ると学校で教えなくてはいけないんです。陪審制のように、「どこかの学校」みたいな紙が送られてくるんです。紙じゃないかもしれないですけど。それでなにか教えることになる。僕はこういう仕事してるんだということを教える、そういうのを人生の中で少しだけ担ってみる。

そうすると、「あっ、こういう職業が僕の社会にもあるんだ」と想像力の限界というのがみんなに広がっていくし。普段、東京に住んでいても漁師町や田舎へ一度行って、「あっ、こういう子供たちがいるんだ」という認知を増やすことによって、社会の価値観が触れ合って、多様性が非常にミックスされる。そういうことができるんじゃないかなと思っています。

夏野:教えるということは自分の再発見にもなるので、それはおもしろいことではないですかね。

ということで、みなさんのお話をすっかりお聞きしてきましたが、あっという間に時間が過ぎてしまって、もう終わりの時間になりました。この後に未踏ナイトがありますので、このパネルはここで終わりにしたいと思います。

会場にも言い足りない人がたくさんいると思いますが、こちらでこのパネルは終わりにしたいと思います。パネルのみなさんに、ぜひ拍手を送ってあげてください。今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

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