僕たち、全力30代〜修羅場体験話します〜

堀越保徳氏(以下、堀越):リクルートテクノロジーズのビッグデータ部門にいる堀越です。よろしくお願いします。34歳です。 実は僕は、リクルートに新卒で入ったわけじゃなくて、証券会社でクオンツの仕事をやってました。3年ぐらい前に転職して、いまの組織で働いています。仕事の話はまた後でします。

  石川信行氏(以下、石川):堀越と部署は一緒なんですけど、新卒入社の7年目です。実は私はみなさんと違って、大学のときに機械学習や統計をやってなくて、単純に仕事で覚えてきたという感じです。

けっこういろんなことをやらされてきたので、その経験からお話できればと思います。よろしくお願いします。 司会者:ではさっそく、「今までで、最も自分を成長させたと思う仕事・プロジェクトはなんですか?」という質問がきています。堀越さんからお願いします。

入社半年で経験した壮絶なプロジェクト

堀越:自分は今ビッグデータ部というというところにいて、全サイトに共通のリクルートIDというものがあるんですけれども。それを使って、単一の事業のデータだけじゃなくて、全事業のデータを同時に横断的に分析することをメインのミッションとして仕事しています。

僕は2013年の9月に入っていて、半年後にこのプロジェクトにジョインしています。一番最初に取り組んだのが、横断のデータを使った、サービス間で別のサービスの商品をレコメンドするプロジェクトにアサインされました。

まさにこの仕事は「本当に修羅場だったなぁ」という思いがすごくあって、会社に入って半年の右も左もわからない状態で、上司の西郷という人から突然、「4月からこれやってみてよ」と言われました。「もうリクルートの全部のデータが1つのデータベースに集まってる。お前がやることは分析するだけだ。今すぐ走れるからやってみて」と言われて。

僕はその当時はまだ純粋だったので、まさかトラップがあるなんてことはまったく知らずに(笑)、素直に信じて「それは楽しそうだ」と思って引き受けました。

蓋をあけてみたら、「全部のデータが揃ってる」どころか「これからデータを集める作業を始めます」に近い段階でした。

4月にアサインされて、その施策のリリースが6月の末にリリースという3ヶ月のスケジュールで。僕は「便利なデータがあるから、それだけあれば十分な体制でテストできる」というつもりで引き受けたら、まったくデータがありませんと。かつ、すごく大変な人数が関わってるプロジェクトで……。

リクルートの30個以上のサイトそれぞれのデータベースから、全社横断データ分析用のデータウェアハウスにデータを連携するわけですけれども、30サイトのデータベースからの連携を、きちんと実装して運用するというだけでも、結構、大変な作業で。

実際、本当に数十人から下手したら100人ぐらいで頑張ってやっていたんですけれども。

西郷に「ぜんぜん話違うじゃん。データぜんぜんないじゃん」って言ったら、「そうだね」って言われて(笑)。「でもしょうがないよね。(リリース)6月末だからね」って。

司会者:直属の上司やさらにその上に対して、かなり率直にモノが言える雰囲気なんですね(笑)。

堀越:確かにそういう雰囲気はありますね。当時は「話が違うじゃん!」と思いましたが、あの巨大なプロジェクトを一手に誰かに任せるということはかなりの勇気が要ったことと思います。今思えば、信じて任せてあとは自由、というスタイルが自分の成長に大きくドライブをかけてくれたのだと思います。今思えばですけど(笑)。

そんな状況の中、「このデータはどこにあるんですか?」「まだないから、4月の末に」「じゃあ、4月まではできることをやってみよう」みたいな感じで。

それで、4月の半ばぐらいに「これはどのぐらい進んでいるんですか?」って聞くと、「5月の半ばぐらいにローンチ」とか。「いつ出るの?」というのを聞いてみても、聞く相手によって答えが違う。

本当に巨大なプロジェクトの、正しい情報になかなか辿りつけない現場に、入社半年で入った経験がありました。本当に修羅場でした。 6月の頭ぐらいにはロジックが完成していて、実際に動き始めなきゃいけないんですけれども。結局6月の頭に間に合わなくて……。

その当時、のぶ(石川氏)に頭を下げて「申し訳ないけど、もう1週間ください」みたいなお願いをして。その1週間はかなりがむしゃらになって取り組みましたね。でも、それは数字もいい結果が出たので。うれしかった。

やっぱりそういう修羅場を経験して、「どこにどういう情報を取りに行くのか」とか、前の会社では1人で仕事をしてたんですけれども、チームのマネジメントの仕方やメンバーのモチベーションなど、そのプロジェクトから学んだことがベースにあると思います。   司会者:ありがとうございます。では、のぶさんからお願いします。

「どうしようもない」経験を繰り返しながらも仕事の中で成長した

石川:先ほど、新卒入社というお話をしたんですけど。私は1年目、自動車事業部で新人研修の一環として飛び込み営業をずっとやっていたんですけれど。

いざ終わってシステム部門に戻ってきたときに、いまドイツに行ってる中野(猛)さんという方が直属のリーダーで、その上が今のテクノロジーズのCTOの米谷(修)さんという方でした。その2人の下で僕がプロジェクトをやるという話になって。

そのときに受け持ったのが、Hadoopという基盤を全社に導入・推進しましょうというプロジェクトでした。

6年前の、機械学習やデータ解析がぜんぜん流行ってない頃なので、そこのフロンティアをどう攻めていくのかという。このHadoopを入れて何をするかぜんぜん決まってない状態でした。

ただ、リクルートがデータをいっぱい持ってるので、「何かに使えそうだ」というあやふやな条件の下、Hadoopを推進していくことが決まったんです。どう進めていいかもさっぱりわからなかった。   なので、自分で「どういう事業に、どういうふうに当てはめていくのか、どういうふうに使ってもらえるのか」というのを全部自分で計画して。実際に事業の人に持っていって、話をして。

その頃ってデータ解析がぜんぜん流行ってないので、Hadoopと言われても、「これ何に使うの?」「データをためるだけ?」みたいな感じで、話がぜんぜん通じなかった。

そこでデータをためてるだけではなくて、例えば、「レコメンドを作ります」「こういう商品を推薦ができるんです」とか。レコメンドって今でこそ普通の言葉になってますけど、その当時はわりと画期的で。

そういうものが今後流行りそうだというのを伝えて、デモも作って、事業に持って行って、入れてもらうというのを日々やっていくんですね。

最初に僕が営業していた自動車の関係者を頼りに話しに行って、試しに入れてもらって、ちゃんとレコメンドを打って効果が出たので、「じゃあ、使いましょう」。というところからHadoopの導入が決まっていったと。

というのがサクセスストーリーなんですけど。CTOの米谷さんは、進捗報告で1週間ごとに詰めてくるという事態があり(笑)。

先輩である中野さんは、関係者との会議で「明日の会議、重要だから絶対来てください」と僕が言っておくんですけど、その人はあんまり会議に出てこない。それで僕が仕方なく担当者として行って、力説するというのを何回も繰り返す。そうすると、だんだん人がいないことに慣れてくるんですよ。

実はここは2年目の僕に判断力をつけさせるためにわざと出なかったらしいのですが。真相は定かではないです。

そういうことを何回も繰り返して、仕事のなかで粛々と能力や知識を身につけるということをやってきました。この辺が修羅場というか、「どうしようもないな」という経験をして、伸ばしていったという感じです。

20代のころから変わらない考え方と、マネジメント経験を通して変わってきた考え方プロとして食べていく3つのスキル

司会者:ありがとうございます。次に、「20代の頃と今と、自身のキャリア観に変化はありましたか?」という質問です。

堀越:変わってないことでいくと、会社に入って、自分はどう生き残っていこうか、食っていこうかって考えたときに、2つの分野でプロフェッショナルになろうと思いました。

例えば、データ解析の能力だけがあるとすると、上に昇っていくためにはデータ解析のフィールドで一流の人間にならなきゃいけなくて、すごくしんどい。プログラミングも同じで、それ一本だけで一流になるのは、しんどい。どっちか片方を、それだけで食っていけるくらいのプロフェッショナルスキルを持っている人は、結構いる。だけど、そこの積集合になった瞬間に、すごく母集団が小さくなるだろうなと思って。

自分がキャリア形成するうえで、データ解析もプログラマーもそれ1本だけで食っていけるようなレベルになるというのを決意して、勉強しています。

変わったことでいくと、証券会社にいたときと、さっきのレコメンドを作ってるときは、自分で手を動かしてコードを書くのがすごく好きだったので、それによって会社に貢献していこうと思っていました。

でも、ここ1、2年ぐらいでチームが大きくなってきて、自分が手を動かす機会がけっこう減ったんですよね。そうすると、「自分の能力が活かされてないな」と最初の1年間ぐらいは思ってたんですけど。最近は考え方が変わってきていて。

実際に手を動かせる人がマネジメントするのと、手を動かせない人がマネジメントするのでは、チームとしてのアウトプットのクオリティがまったく変わるんですよ。   ということに気づいたときに、自分が手を動かせる・データ解析を知っている人間だからこそできるマネジメントがあるはずだと思って。さっき言った、データ解析とプログラミングの2つの分野に加えてもう1個、マネジメントができると。

手を動かせるし、データ解析も知っていて、うまくチームをマネージメントできる、ディレクションできるという能力も身につけていこうかなというふうに変わりました。

「無邪気に飛び込んでいく」価値観

司会者:ありがとうございます。では、同じ質問をのぶさんにしたいと思います。

石川:僕は農学部出身なんですけど。その状態で入ったので、「データ解析でトップになろう」とか、「エンジニアでトップになろう」というのは一切思ってなくて。ただ、やっぱり理系職なので、「手に職をつけよう」みたいな思いはちょっとありました。

あったんですけど、結局入ってみてわかったのは、もうちょっと多様性を身につけようというか。先ほど堀越も、プログラミングやって、マネジメントやって、データ解析やってというのがあったんですけど、僕はもっと広くて。

基本的に仕事を通じて学ぶことが多いと思ってるので、まあ、「なんでもやりましょう」という部分もある。最近で言うと、ディープラーニングを使って文章を作成するというプロジェクトがあったり。

それも、ディープラーニングをずっとやってたからということではなくて、せっかく機会があるのであれば、チャレンジしようと。ライブラリーもいっぱい出てるし、使えばできるんじゃないかと。

わりと「無邪気に飛び込んでいく」みたいな価値観が、20代よりも30代でもっと強くなってきてるイメージがあるんですよね。「ここで僕や僕のチームが動かなければ、リクルートの進化はないかもしれない」「おもしろそうだからやってみよう」とかいう。

ほかの領域の人とはみ出して取り組んでいくことが最近は楽しいなと思ってますし、今後もずっと続けていきたいなと思っています。

1人の技術者から、チームをマネジメントする立場へ

司会者:ありがとうございます。最後に「今後どんなことを頑張っていきたいか」「努力していきたい、伸ばしていきたいと思っていることを教えてください」という質問をみなさんからいただいています。ひと言ずつお願いします。

堀越:自分は最近マネジメントに力入れてこうと思ってきたんですけど。同時に、マネジメントの人がエンジニアとしてどれぐらいのクオリティであるかとかも重要だと思っています。やっぱりエンジニアリングはどんどん進化しているので。自分も進化していかないと、すぐに取り残されていく。

会社での自分のミッションは10人のチームをマネジメントすることなので、仕事では自分が手を動かす、モノを触るというのが難しいので、プライベートで技術を磨いていく必要があるとも思っています。

そのプライベートの時間のモチベーションをどう上げるかというのが、僕の今年の研究です。何をどうやったら、勉強をずっと続けていくことができるか考えています。 司会者:ありがとうございます。のぶさんはいかがですか?   石川:実は私は4月からけっこう大きい変化があって。今まではシニアアーキテクト職という、どちらかというと、R&D的なことをがむしゃらにやって、「いったんマネジメントは置いておきます」というのが許される立場だったんですけど。

4月からグループを持つことになっていて。業務としてR&D的なことをやるグループを持つことになりました。

なので、今までわりと個人でやってたものを、どちらかというともうちょっとグループ単位でちゃんと目標を持って進めていくという、ちょっと新たなステージになって。 自分だけでやっていたものをどうやってメンバーに伝えてやってもらうかとか。意識とか、気合いが入ってないとか新たな課題があります。

あまりできていないので、グループをどう伸ばしていくかというところが悩みでもあるし、チャレンジでもあるし、おもしろいなと思っています。

実は僕は起業もしていて兼業しています。なので、リクルートでできることと、自分の会社でできることをちゃんと分けて。リクルートで自分を伸ばすこと、起業した会社で伸ばすことというのをちゃんと明確にする。人として、もうちょっと奥行きを深めていきたいなということがあります。   司会者:ありがとうございました。