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0→1を生み出す主体者(全2記事)

リクルートにいながら起業することのメリットは? 大企業との兼業の実態を語る

2015年12月13日、学生から社会人まで幅広い参加者が、志向に応じた4つのテーマのプロフェッショナルである先輩社会人たちとディスカッションをし、それぞれのキャリア観を形成するイベント『REAL』が開催されました。「0→1を生み出す主体者」と題したこのセッションでは、リクルートライフスタイル・前島恵氏、リクルートホールディングス・苅谷翔太郎氏、リクルートOB・藤田真裕氏が登壇。参加者の質問に答えて、大企業に在籍しながら自分の事業を運営する際の工夫や、メリット・デメリットなどをリアルに語りました。
(「REAL」第2弾開催決定、応募は3月3日(水)まで!→詳細はこちら

リクルートの仕事と、自分の会社の仕事の時間配分は?

司会:ありがとうございます。ここまでのところで、何か質問はありますか?

参加者:今はまだリクルートに勤めながら自分の事業もされていると思うんですけど、どういう時間配分で社内の仕事をされているんですか?

藤田真裕氏(以下、藤田):僕はリクルートにいながら、コンサルティングの会社作って、メディアの会社作って、飲食店の会社と3つやってました。

基本、日中はリクルートに全力です。僕の部署はめちゃめちゃ忙しかったので、新規サービスの立ち上げとか、グローバル展開を今後どうしていくんだっけというところで初めの根幹戦略を作る部署だったり、ほぼ出張だらけだったりで。

なので、日中はほぼリクルートの仕事してました。基本的に夜ですね。飲食店を例に出すと、僕はシステムを作るとか仕組みを作る方が非常に得意なので、そこに注力して。逆に他のところは、それが得意な人に任せていたので、僕はあまり時間をかけてません。

この時間帯に連絡するよと伝えておいて、毎日数値はちゃんと報告してもらって、改善点などは週に1回日曜日にミーティングするような形でやってました。

苅谷翔太郎氏(以下、苅谷):本業はリクルートに置いて、もちろんリクルートメインでやらせていただいてるんですけど、あんまり就業時間という概念はなく、1番自分の頭がピークの時に合った仕事をするっていうのを意識してはいます。

司会:リクルートグループはフレックスの勤務形態をとっている会社が多いので、時間配分は一般企業よりはだいぶフレキシブルだと思っていて。ただ、リクルートは勤務時間に上限があるので、だらだらやっていいというわけではないですが。

前島恵氏(以下、前島):意外と、外で何かやっている人は本業もちゃんとやってたりするんですよね。限られた時間でちゃんとやろうとする自分がいる、という言い訳(笑)。

藤田:素晴らしいですね。本当にそのとおり。

自己資本で仕事をすると、真剣になる

苅谷:分析したんですよ。分析対象に藤田さんも入ってます(笑)。リクルートで働きながら会社作ってるみたいな人を分析対象として、副業と本業があった時に、お互いがドライブしていく構造だなと気づきまして。

なんでかと言うと、先ほどの打席数の話で、試行錯誤の回数が普通の社会人と違うんですよね。倍以上で、かつ自己資本でやっている。そこが重要で、企業に勤めていると事業は借入の資金でやっていることになりますが、自己資本でやっているとコゲつくとか赤が出るとか平気であるので、そこに対して真剣になる。その経営者感覚が回りまわって本業に生きているんじゃないかなと。自己合理化も含めて(笑)。

司会:この話を受けてどう? どんな感じで今やってる?

前島:10月ごろまでは正直仕事が余裕だったんです(笑)。普通にエンジニアやってて、夜7時くらいに帰ってから自分の会社の仕事をやって、加えて朝早起きしてやって。あとは週1回、土日にがっつりやってという感じでした。

11月からサービスの開発責任者になって、かなり忙しくなりそうもいかなくなってきました。今は朝早いし夜遅いという状況で、今は平日の夜中と土日両方を自分の事業のために使っています。

司会:副業以外にも、上司から「外に出よう」とは言われていて、「社内だけの仕事をしていると幅が狭い」と。外に出て副業でもいいし、研修だったり、外部の人と絡むのもいいなって。新人は、比較的「量もこなせ」とは言われるんですけど。

自分の時間をどう使って、自己成長するのかっていうのは大事にされているんで。そういう意味では一緒なのかなと思って。うちの会社はそういう人は多いとは思いますね。

藤田:僕の場合リクルートでは役員直下で仕事をしていたので、「ちゃんとアウトプットは出せよ」と言われて。アウトプットをちゃんと出してればいいんですけど、出してなかったら、「お前何してんだよ」と言われる。アウトプット出していれば、「今度お前の居酒屋に飲みに行ってやろうか」って言われて、某有名アーティストの人たちを連れてきてくれたり。

司会:誰か想像つきました。

藤田:僕の場合、コンサルティング事業をやり過ぎてたときに、1回注意を受けたんですけど、基本的には推奨してくれている感じですよね。人によるんでしょうけど。

司会:やりたい意志があれば、基本的に推奨してくれていて、その代わり責任を持てよと。本業がおろそかになるんだったら、「それはお前駄目だぞ」と言われるだけなのかなと。

1億くらいの事業は「小型免許」?

司会:こんな感じで、質問してくれれば、ぶっちゃけた回答が出てくるので。ないと皆綺麗なところで終わろうとする。テーマが「REAL」なので、そんな感じでいければと思います。

自分で事業をやる意味もあると思うんですけど、一旦就職っていうのを選ばれて、、リクルートでこんなことやっといたほうがいいよっていう観点でいくとどうですか?

藤田:僕はリクルートでめちゃめちゃ学ばせてもらったなと思ってます。3、4年目の時に、今役員でIndeedのChairmanをしている出木場久征さんという人がいて。出木場さんに、「僕はビジネスできるようになってきましたよ」と、飲みに行った時に話していて。

「簡単なサイトだとすぐ作れるし、すぐに収益あがるし、1千万2千万とか速攻で稼げるし。独立したら1億とか余裕です」と言ったら、「お前が言ってるのはまだ小型免許だ」と。「次は中型いけよ、中型」と言われて。

これが僕の中でデカくて、「確かに」と。ビジネスをそんなに大きく捉えてなくて、そこから「リクルートで、何でもいいから、お前とりあえず事業作れ」と言ってくれて。

予算を確保するところからスタートだったので、最初は予算もないんだけど、いろんな人に働きかけて予算とって、そこから新規の事業の部署を作るっていうのをやったんです。そこは攻め方が違うんです。リクルートで事業をやるのって、ベンチャーでやるのと全然攻め方が違って、金額規模や人の集め方も違う。

そこが学べたのは大きかったですね。中型ができるようになった後に、次に企業買収とかグローバルのことになったら、また全然違うビジネスになっていってて。最後の年には投資した金額だけで数億円単位になっていました。

でもそれは、まず投資委員会という少人数の会議で通して、その後に経営戦略会議という役員がいるところに持っていって、問題がなければすぐに承認されちゃう。全然規模とスピードが違う。

僕が最後に仕掛けたディールは、大きな金額の買収だったんですけどそういう、リクルートやでっかい会社でしかできないところは間違いなくあって、そこにはおもしろみがある。ビジネスのデカさが違うので、それはすごくおもしろいなと思っていました。

大企業の中で事業開発をする2つの意味

苅谷:僕はまさに考えている途中なんですけど、半年くらい前にリクルートのサイトにけんすうさんの「大企業でやる新規事業は全部こける」という記事が上がっていて。それがすごく衝撃というか、「じゃあ、なんで自分は大企業で事業開発やってるの?」と。

今考えついてるのが、リクルートという大企業で事業開発をする意味は2つあって。

1つはアライアンスです。例えば任天堂とDeNAが提携することで、あそこまで時価総額が引き上がるということは、僕にとってはすごく衝撃で。あれは企業でしかできないですね。個人では、アライアンスで事業を作るのは、やろうと思ってもできない。

もう1つは、大企業ってある程度非効率性が残っている。特に人ですね。優秀な人ほど実は暇そうにしていたりする(笑)。事業開発家でも、エンジニアでもそう。

その人たちに「この指止まれ」っておもしろい事業を持って行ったら、大体乗ってくれるんです。だから採用という面では、外部よりも内部で、優秀そうで暇そうな人を探してくることができる。

その2つを駆使すれば、おもしろい事業ができるなと思って、今やっています。それがリクルートで事業開発をやる意味です。

自分でベンチャーを立ち上げたのでは敵わない経験ができる

司会:ありがとうございます。前島は、まだ入って1年目だけど、どう?

前島:1つは、技術を学べるスピードがすごく速い。僕はリクルートライフスタイルに配属されて4ヶ月で業務内容が4回変わっていて。サーバーサイドエンジニアやって、フロントエンジニアやって、インフラやって、今開発責任者をやっています。いろんなものを、高い能力がある一流の技術者にメンターについてもらって、しっかり学べる。

しかも、リクルートは今、技術的には勢いがあって。ほかの企業に負けるまいと頑張っています。ビックデータ系のプロジェクトとか、半年で他の会社を抜いたりとかってことが起こっています。技術力を高めていくことにものすごく注力している会社にいた方が、成長はできると考えています。

それに加えて、思っていた通り、若手の裁量がものすごく大きい。開発責任者って自分で手を動かして開発を進めるだけではなくて、資金の使い方とか、どういう人を採用するとか、技術的な方針とか、いろんなことを決めるんです。1年目だろうと新規サービスで億単位の予算がかかる開発を、自分がそこに関わって決めていくことができる。

自分でベンチャーを立ち上げても、4ヶ月でそうはならないですよね。スピード感的には自分の事業ではなかなかできない経験だなと。

あとは、サービスの売り方とかは勉強になりますね。外からも「リクルートは営業の会社なので、技術×営業でサービスを普及させてるよね」って言われますけど、その内実、どんな戦略なのか見れて、すごく学べます。

リクルートで得た知識と人脈

司会:ありがとうございます。次のトークテーマにいきたいと思います。

皆さんが今の事業をされたりする中で、どんな経験が最も今の自分を作ったかと言われたら、どういうことを思い出しますか? リクルート時代の話でも学生時代でも、今の自分に何が生きているでしょうか?

藤田:今ビジネスをやっている上で生きているポイントは2つあって、1つがノウハウとか知識で、もう1つが人脈です。

リクルートは利益率が高いビジネスをやっているので、めちゃめちゃダイナミックな投資ができるんですね。たとえば、SEOとかリスティングの領域でもそうです。色々なノウハウが蓄積されている。事業をやりながら、様々なノウハウを全部自分の経験にできたのはめちゃめちゃ役に立ってる。

例えば、企業買収時のリーガル面でも、事業展開する時にも、グローバルなパートナー企業に参加してもらったり。そういう様々なジャンルのトップレベルのノウハウを間近で学ばせてもらったのは今のビジネスやるのを楽にしてくれてる。

あと、その時の人脈も大きい。リクルートの時に導入した決済サービスがあるんですが、今でもうちのECサイトの決済はその会社のものを使わせてもらっていて。今は役員になられている方なんですけど、「藤田くんがビジネスやるのなら、特別なレートでいいよ」と。それはスタートアップにとったらなかなか難しい。

他にも例えば、リクルートの時に知り合った人に電話して、「どこどこ紹介してもらえませんか?」って言ったら、「すごいいい人がいる」って全部紹介してくれて一瞬で繋がる。そういう人脈がけっこうでかい。

グローバルでやる上でも、シンガポールにもリクルート出身者がいっぱいいます。この間も、タイのバンコクでのリクルートASEAN会で、リクルート出身者かつASEANで仕事している人が30人か40人集まって繋がったり。ノウハウと人脈の2つは非常に生きてますね。

どんな事業でも、タイミングと構造が必要

苅谷:僕がイケてると思う事業開発者15人くらいをリストアップして、彼らの思考法とかやってる事業を1回リバースエンジニアリングしたんですね。

その中で見えてきたのが、皆さん参入のタイミングと事業の構造という2つが揃っていると思っていて。

タイミングが重要なんですね。どんないい事業でも、タイミングが間違っていたらスケールしない。それは早すぎても遅すぎてもいけない。これは抽象的で難しいし、ボヤッとして申し訳ないですけど、タイミングを見極める必要がある。

タイミングを見極めた上で、業界の構造というか狙えるスポットがあるので。SEOとかはホワイトスペースを探しに行く作業なので、わかりやすいんですけど。

ホワイトスペースがどこあるかってところと、それまでその事業がなんでできてなかったかを解明して、事業自体を作り出して、世の中にいいインパクト与えているっていうところは全て共通していました。リクルートの15人近くの事業開発者から大きく学べた点はそこですね。

学生のままだとそこら辺の観点が弱いので、会社に入ってよかったなと。

前島:今リクルートで働いていて感じるのは、精神的なタフさを要求されるということです。自分が持っている能力や経験から考えるとめちゃくちゃストレッチした事業を任せてもらえるけど、当然責任もついてくる話なので、ちゃんと結果を出していかないといけない。

その文脈で言うと、学生時代に自分がやっていた会社で、これ以上ないくらいの地獄を見たので、結構今はプレッシャーがあっても平気だったりします。

どういうことかと言うと、地域活性化の事業をやっていた時に、1、2年のスパンの時間が必要な事業だから即時的には儲からなくて。日々食いつなぐために受託開発をやっていたんです。

エンジニアをやっていて辛いこととして、個人情報を沢山扱うとか、Webサービスではない売り切りのシステムを作るとか、開発しているところをずっと監視されるといったことがあると思っていて。そうしたつらさを全てごちゃまぜにしたような開発を3つ同時に走らせた期間があって。それをなんとか乗り越えて今生きているので(笑)。

リクルートという名前でかかるバイアスもある

司会:他に聞いてみたい質問があれば受け付けたいと思います。何かありますか?

質問者:お3方ともご自身で会社をやっているということで、リクルートで仕事をする時は、「リクルートの誰々です」と言って仕事をしていて、リクルートの人なんだなという反応があると思うんですけど、実際にご自身の会社になった時、どこかと働いたりした時、おそらく相手の反応が違うと思うんです。そこでギャップが生まれると思うんですけど、そういったものって、どう対応をしているでしょうか。

藤田:大前提として、個の力が強ければ、あんまり関係なくて、僕自身もリクルートとは関係なく「君おもしろいから一緒に事業しよう」と言ってもらった経験もあるし。

人脈を持っているのは大事だけど、そのあとは個々の力がちゃんと必要で、「こいつはおもしろいな」と思ってもらうことが大事。

スタートアップでいうと、どういう事業をやっているとか、ビジョンに共感してもらえるかもすごく大きい。トークの力を磨くとかはあるのかなと思います。

ただ、もちろんリクルートのほうが人に会いやすいっていうのは間違いないです。

例えば、僕が3年目とか4年目で新規事業を作ろうという時に、すぐアポが取れたり、投資部門の時も、僕がベトナムでやってる時、首相の息子さんとかとご飯に行けたりする。それは普通だったら会えないです。

苅谷:藤田さんと全く同じなんですけど、僕は個人でやるほうがやりやすくて。リクルートでやるとリクルートの人材系の企業とかとは、自分がやろうとするテレビの事業とは全く接点がないので、違うバイアスがかかったりすることもある。そこを解きほぐしに行くのがけっこう大変だったりして。

前島:一長一短かなと思っていて。リクルートという名前はバリューもある一方で、ものすごくいろんなイメージの集合体ですよね。美容もやっているし、旅行もやってるし、キャリア系もやってる。リクルートのものですと言うと、そういういろんな印象を最初にもたれて、なかなか自分がどんな思いでプロダクトを作っているのか、働いているのかといった話には入っていきにくい気がしています。

一方で自分の事業の方で感じるのは、たとえば「前島という名前で、PortLoungeをやってます」と言うと、最初からプロダクトについて、バイアスなしでストレートに話ができるのが利点かなと思ったりします。

司会:まだまだ話は聞きたいところですが、次のコンテンツがあるので、ここで一旦休憩を入れたいなと思います。ありがとうございました。

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