小室哲哉は時代の先を走っていた

――あのデビューでいうと、先程言ったデビューさえすればもう大爆発するんだって言われて。でもすごく失礼な言い方なんですけど、実はデビューしてから最初のほうってそんなに小室哲哉さんのプロデュースの中で、売れてないですよね。100万枚は、売れていなかった。

結構、そういう意味では「あれ? ちょっと違うな」みたいなことはありました?

マーク・パンサー氏(以下、マーク):それは言われるんですよ。小室さんが1番のショックを受けていると思うんだけど、100万枚いってないから。でも僕は96万枚じゃん、これが7万枚だったら「どうなってんの?」ってなるけど、96万枚じゃん。

――(笑)。はい。

マーク:2枚目も100万枚いかない。でも98万枚じゃん。3枚目も確か96万枚かなんかなんですよね。でも僕はさっきも言ったと思うんだけど、数字とかチャートとかっていうよりも、その場のおもしろさを追求するタイプだから、全然100万枚と96万枚と僕は一緒だったんですよね。

すごいじゃん、みんな何でそんなに変な顔しているの? 喜ぼうよみたいな。喜ばない時期は、それもおもしろかったな、勉強の一種になるんだなみたいな。僕は一緒に見えているんだけれど、他の人にはこの4万枚の差が一緒に見えてないんだね、みたいな。

――そういう意味でも、楽曲もちょっと他の小室哲哉さんのプロデュースとはちょっと違う、いわゆるこだわりがあるというか、独自性がある。

マーク:だから先をいっちゃっているんですよ。

――先をいっていましたよね。

小室ファミリーでは普通過ぎる新人だった

――だからそれで、大ヒットに行くまでに時間がかかったっていうのは、そこは大変だったろうなと思っていたんです。というのが、ちょっと1個思っていたんですけども。でもマークさんのお話ですと……。

マーク:大ヒットなんですよ。だって96万枚なんだもん。

――ま、そうなんですよね。考えると。

マーク:96万枚なんだもん。だって他は浜田さんなんだもん、『HEY!HEY!HEY!』なんだもん。200万枚に行くに決まってんじゃないですか。篠原涼子なんだもん、可愛いんだもん、最高なんだもん、みんな知っているんだもん、いくに決まってんじゃん。それも「いとしさと」あれ、なんの曲だったっけな? 有名なやつ。

――ストリートファイターですよ。

マーク:ストリートファイター。すごかったんだもん。『Feel Like dance』何の主題歌だったんだっけな。

――ドラマかなんかですよね。

マーク:かな。『Joy to the love』はglobeが歌う、あれはフォード。

――車のCMですよね。

マーク:トヨタで『SWEET PAIN』、TDKの。

――はい。TDKでしたね。

マーク:それほど……。すごい企業だけれど。

――すごい企業ですね。

マーク:すごい企業だけど、小室哲哉としては小室ファミリーとしては、普通すぎるじゃんて感じの中の、2人は新人?

――そうなんですよね。

マーク:誰も知らないぐらい。「TRFにそっくりじゃんこのグループ」と言われちゃうぐらいの中で、でもTRFと全く違うじゃん。この自由さと音の新しさで96万枚、売れてなくはないですよ。

――そうなんですよね。

マーク:化けもんですよ。

――実際の話でいうと。僕は、なんか『Joy to the love』なんて、あの曲をこのチャートに載せるんだっていうのが。

マーク:『Joy to the love』もJungleじゃないけれど、ドラム&ベースでやって。なんだこれみたいな。

――ドラムベース以前に歌詞の世界感にしてもそうだし、メロディーの作り方にしても当時のあのスパッーといっている時に考えられない。

マーク:考えられないですよ。それがそこに行くんですもん。

globeは「小室哲哉学校」、全てのことを教わった

マーク:あとはもう毎日が忙しすぎちゃって、毎日がすごすぎて、僕には100万枚がどうのこうのって考える時間も余裕もなく、毎日が本当にジェットコースターのように過ぎていっちゃう日々で。

今から考えると、もうちょっと楽しんどけば良かったなと考えてるぐらい。あっという間に過ぎて寝るのが、もうやっと寝れるっていうような毎日で。それが「JR SKI SKI」のCMで爆発するんですよね。

――なるほど。

マーク:『DEPARTURES』。

――ですね。『DEPARTURES』ですよね、そこで。その『DEPARTURES』あれが200万超えたんですか?

マーク:250万枚ですよね。

――『DEPARTURES』は、一気にドーンといくわけじゃないですか、数字的にいうと。変わりました? そういう意味では。

マーク:いや、何も変わらないですよ。僕の中ではすべて一緒で。『DEPARTURES』も江角(江角マキコ)と竹野内(竹野内豊)だったかなCMが。

――そうですね。

マーク:JR SKI SKIで、江角マキコというのも、もうメンノン時代からの友達だから。

――おー! なるほど。

マーク:竹野内くんなんて、もうチェックメイトとかの時代からの。反町くんと竹野内くんというのは、メンノンとかの時代の後輩って言ったら変だけれど、モデル友達じゃないですか。その時は、ドラマで有名で「来たー!」みたいな。やっぱりそういう勉強になるんですよ。

これとこれが組むと、こんだけの我慢があって、こうでこうだからみたいなのが、自然に頭の中に体に刻み込まれていくんですよね。そのglobe学校じゃないけど、小室哲哉学校じゃないけれど、先生に教わっている全てが。

デビュー後も小室哲哉とホテルのランクが違った

マーク:おもしろい具合に見えてくるんですよね。『DEPARTURES』なんて、だってあんなにうちら売れているのに、ロスに呼ばれてオカマしかいないような、3流のホテルに泊められるんですよ。

――ほう(笑)。

マーク:ラマダホテルだったかな。当時ロスの。

――PVとかで?

マーク:いやいやレコーディングの時で。小室さんは、ベネンシアのスイートなんですよ。

――はい(笑)。あ、でも2人は。

マーク:俺とKEIKOは、汚いなんだこれみたいな場所。

――そうだったんですね。

マーク:オカマしかいないような、俺のドアの下に夜中になると名刺がいっぱい隙間に入れられるんですよ。

――(笑)。それは、あれですか、オカマさんが……。

マーク:そうそう、入れてくる。

――コールミーという感じで。

マーク:恐ろしい所で。そんな中でKEIKOもリラックスできるわけないし、それで頼むんですよ俺が。小室さんに「KEIKOだけでもベネンシアに呼んであげて、部屋取ってあげて」と。そこからちょっとずつリラックスしていって。

――それもう『DEPARTURES』出ている時ですか?

マーク:出ていない。『DEPARTURES』のレコーディングの時。

――ああ、『DEPARTURES』のレコーディングの時。なるほど。

『DEPARTURES』大ヒットの理由

マーク:『DEPARTURES』のレコーディングの初日もKEIKOが風邪を引いちゃって。体調管理なんてできるわけないじゃないですか。リラックスできないんだから。風邪引いちゃって泣いて、もう最悪で。KEIKOを呼んで、スタジオの1番奥の部屋借りて、そこにろうそくズラーと並べて、お香かなんか焚いて、リラックスさせて。

ずっと手を握りながら、「もう何も緊張する必要なんてないんだから、風邪引いていたっておまえの声は誰よりも素晴らしい声だし、はっきり言ってYUKIさんだろうが、誰であろうが全員より君の中にはブルースというものがあって、だから選ばれて、だから今すごいわけだから、鳥が普通に朝起きて歌うように歌えばいいんだよ」というようなこと言って歌いに行かせて。

スタジオで曲とCMを小室さんが一緒に流した時に全員涙流してるのがすごかったですよね。

――それは、すごく鮮明に覚えていますか?

マーク:ピッタリ全ての波長が合うっていうのは、こういうことなんだなという。小室さんだから売れるとかそういうんじゃなくて、波長がもうCMから曲からKEIKOの歌声から、あらゆるものがピーンと波長が合う瞬間というのは、すごいんですよ。

――それは、もうやっぱり先程言った、小室学校じゃないですけど。

マーク:それが数字に反映されるんですよ。250万枚いって。そこからアルバムを作るんですよ、その『DEPARTURE』4曲入っているアルバムが出ると、そのアルバムが450万枚とか500万枚近くいって歴史に残る。初めてそれだけ売れたCDになるんですけれど、でもそれは、波長がピーンとあった後だから当たり前かなって。