会議などで見られる「多く議論されたバイアス」とは?

三井敬二氏:「多く議論されたバイアス」というものについてお話ししてみたいと思います。「多く議論されたバイアス」というのは、会議などで多くの時間を使って議論したことを大事なことだと考えてしまう効果のことを言います。

例えば、グロービス経営大学院が採用している学び方として「ケースメソッド」という手法がありますが、これは「多く議論されたバイアス」を避けるアプローチを取っていたりもします。

人はどうしても、長い時間をかけて議論したことを重要なポイントと思い込んでしまう傾向・クセがあります。だからこそ、重要でないことにはあまり時間を割かずに、重要なポイントの議論にはしっかりと時間をかけることを基本セオリーとしています。

これはグロービスの話ですが、じゃあ実際のお仕事で考えてみるとどうでしょうか。よく会議などで、本当に重要な議題に対して、その重要度にちゃんと応じた時間配分がなされているかといえば、そうでないシーンもあるんじゃないかなと思います。

どうでもいいことを議論し、ムダな時間が過ぎ去っていく

これを示す有名な現象に「パーキンソンの凡俗法則」(参考:「ちょっと差がつくビジネスサプリ416回 ビジネスWikipedia」)というものがあります。組織・人というのは、どうでもいいことに過剰にエネルギーを使ってしまいがちというクセのことです。

「パーキンソンの凡俗法則」の説明に、よく使われる事例をご紹介します。ある委員会で、「原子炉の建設」と「自転車置き場の建設」という2つの議題について審議をすることになったとします。

原子炉の建設計画は技術的に難しく、多くの人はその内容をなかなか理解できません。その結果、一部の専門家や利害関係者の主張が通って、議論もすぐに終わってしまいます。

一方で、自転車置き場については話も単純なので、誰もが自分の意見を発言できます。そして、正直どうでもいいことについてひたすらみんなが発言をして、あまり有意義でない時間が過ぎ去っていきます。

議論の長さと重要度は、必ずしも比例するわけではない

こうした不適切な時間配分は、私たちのふだんの仕事でもけっこうありがちな話です。

例えば、会議の主催者やファシリテーターが意図的に時間配分を操作して、「あまり突っ込まれたくないな」というものから目を逸らさせようとするために、不適切な時間配分をすることもあったりしますので、とても注意が必要です。

人はどうしても、多く議論されたものや時間をかけたものを重要だと感じてしまうクセがありますので、そのクセをしっかりと自覚した上で、そこにはまらないように意識していくことが大切です。

ということで、今回は「多く議論されたバイアス」についてお話ししてみました。繰り返しですが、「議論の長さが、必ずしも重要度と比例するわけではない」ということをしっかりと認識した上で、ふだんのお仕事で何かを考えたり、あるいは相談したり、会議をしていただければなと思います。