「本番に強い人」と「本番に弱い人」

熊谷翔大氏:おはようございます。グロービス経営大学院の熊谷です。水曜日は「仕事に役立つABC」と題して、仕事の成果を高めるために当たり前だけどバカにせず、ちゃんと取り組みたいことをテーマにお話しします。

今回は「本番に強い人の共通点」がテーマです。日々の仕事の中には節目となるような、いわゆる「本番」と捉えることができる仕事があります。

例えば大きな商談をまとめる機会や、大人数の前でのプレゼンテーション、初めてお客さまとの面談など、人それぞれにいろんな「本番」があると思います。

その時に不思議だなと思うのが、本番の場面でしっかり力を発揮して成果を出せる、いわゆる「本番に強い人」と、反対に緊張や不安に負けてうまく力を発揮できない「本番に弱い人」と、大きく2つにわかれるということですね。

もちろん多くの方が、しっかり力を発揮して成果につなげることができる「本番に強い人」になりたいと思っているのではないでしょうか。

今日、このテーマでお話しをしようと思ったのは、新しい仕事にチャレンジする職場のメンバーと「どうすれば本番に強くなれるか」という雑談したことがきっかけです。

雑談の中で、これまで一緒に仕事をしてきた方で「この人は本番に強いな」と感銘を受けた人が何人かいたことを思い出しました。

本番の自分を助けてくれるもの

今日は、そんな人たちを思い返しながら、本番に強い人の共通点について、人前でプレゼンテーションをする場面に沿って、3つのポイントをお伝えしたいと思います。

1つ目は、「しっかり準備をして本番に臨む」です。当たり前のことですが、一番緊張や不安な気持ちを打ち消してくれるのは、やっぱり準備だと思います。

例えば、プレゼンテーションの資料を納得いくまで作り込んだり、自分が納得するまでプレゼンの練習を何回も重ねて本番に臨む。それができれば、本番の日が来ても「あとはやるだけ」という状態になれると思います。本番の自分を助けてくれるのは準備の量だと思っています。

続いて2つ目ですが、「本番に起こりうることを徹底的にシミュレーションしておく」です。これも準備といえば準備ですが、どちらかというと準備の質を高めるイメージです。

例えばプレゼンテーションの例でいうと、プレゼン当日はいろんなことが起こります。プロジェクターがうまくつかなかったり、急遽時間の変更があったりとか。あとは参加者から思わぬ質問が飛んでくるなど、簡単には想像できないことが起こることがあります。

本番に強い人は、この予期せぬことを可能な限り事前に想像して、それに備えています。大事なのは備え方ですが、私もいろんな方と一緒に仕事をさせてもらって、「あ、これはいい方法だな」と思うものがあります。

それは、シンプルですが、時間軸に沿って徹底的に起こることをイメージすることです。

何時に会場に着いて、誰と会話をして、何分前にはパソコンを接続して資料を開き、プレゼンテーションの直前にはこんなアクションをして……と、起こることをそのまま時間に沿ってなぞってみます。

余裕があれば書き出しておくのがいいと思いますが、難しければ頭の中でイメージしておくだけでも大丈夫かと思います。当たり前のようですが、この作業が仕事の質をグッと高めてくれます。

良いパフォーマンスをするための「意識」の置き場所

最後に3つ目は、気持ちの持ち方ですが、「自分ができることに自信を持つ」です。これも当たり前といえば当たり前ですが、仕事にも人生にも100点満点の完璧はなかなかありません。

「完璧に準備をして本番を迎えます」みたいなことは、できないことのほうが多いかと思います。そんな状況の中で、不安な気持ちに押し流されてしまうと、自分ができていないことに意識がいったり、「もっと時間をかけたかった」というように過去に目がいったりします。

もし本番がすぐそこまで来ているのであれば、過去ではなくて、今の自分ができることに意識を置きましょう。自分がこれまで準備したり練習してきたことを思い出し、自分を信じることが大切です。

自信を持ちつつ、心のどこかで「失敗しても大丈夫」と言い聞かせ、いい意味で開き直ることも本番の自分を助けてくれるのではないかと思います。それができれば、少し肩の力が抜けて、結果的に良いパフォーマンスにつながるはずです。

今日は、本番に強い人の3つの共通点をお伝えしました。1つ目はしっかり準備をして、本番に臨む。2つ目は本番に起こりうることを徹底的にシミュレーションする。3つ目は自分ができることに自信を持つ。

個人的には、「本番に強くなりたい」と願う人こそ、気持ちの面で自分を追い詰めてしまっているように思います。ぜひ、自分がやってきた準備を自分で認めてあげて、自分を信じてください。