民間企業の中にも共産党の組織がある

平将明氏(以下、平):中国はどんなに大きな企業でも、ガバナンスの一部に中国共産党と入ってる。共産党から派遣された人がボードメンバーになるのかな。監査委員会になるのかわからないけど。

中川コージ氏(以下、中川):たいていGoogle共産党みたいな組織を(企業の)中に作って、その中に書記を作って。あとで説明しますけど、どんな大企業でもたいてい社長さんとまったく同じピラミッド構造で共産党の組織があって。書記と社長は、書記の方が若干上という構造を作るんです。

生田よしかつ氏(以下、生田)・大澤咲希氏(以下、大澤):えー!

:だから、すべては共産党の指導のもとでやっている。企業じゃない裁判長ですら、共産党の指導のもとでやってるわけだから。軍だって共産党の軍だからね、企業だって共産党の指導のもとでやってる。

中川:社長を辞めると次は書記か、みたいな感じのピラミッド構造。

:パラレルワールドですね。

中川:そうパラレルワールド(笑)。まあちょっと今回はつまみ食い的に情報を持ってきました。いろんな方面からね。

大澤:勉強になる。

中川:数十分くらいで説明するの……。

:大変だよね、しかも茶々が入るから(笑)。ぜんぜん進まない(笑)。

中川:14億のね、今日は全人代やってるのを数十分じゃムリなんで、もう本当につまみ食いです。

:ダイジェスト版ね。

中川:チャイナニュースフラッシュということで。ここは今、主席と書きましたが、国家主席のことですね。実際には中国共産党の総書記は別に任期がないので。

相反する内容が書かれている中国の憲法

生田:憲法ってあるの? 改憲ってあるけど。

中川:ありますよ。すごいですよ、中国の憲法ってちゃんとデモとかやっていいって書いてあるんですよ。中国憲法35条だったかな。デモとか集会とかやっていいと書いてあるんですよ。

生田:憲法に書いてあるの?

中川:憲法に書いてあるんです。保証されてるんです。憲法35条はそうなんだけど、第3条で民主集中制の原則というのをやってて、すべての人民は共産党の平等のもとにやらなきゃいけないというふうになっている。だから、結局そっちが入っている以上、それ(デモや集会)をやったら「共産党の指示に従ってないね」ということで、アウトになる。実際にはそういうことなんですね。

:だから、共産党の指示のもとでデモをやってる、というロジックになっている。

中川:だから官製デモということになるんですね。

生田:なるほど。やっぱり共産党って、すごいね。

中川:すごいですよ。だから、そのあと4条5条っていっぱい民主的なこと書いてあるけど、全部が3条でひっくりかえるという(笑)。なかなかすごい憲法上の構造になっているんです。だから憲法はちゃんとあるんです。今までは1期5年で、2期で10年というのがあるわけですが、これをなんでやったかというと、ご存知、毛沢東。この文革、文化大革命ってご存知ですか、咲希さん?

大澤:なんか、あれですね。

:なんかあれですね(笑)。なんか言いたそうだからちょっと……。

大澤:いやいやいや(笑)。

中川:なんか、どうですか?(笑)。

大澤:なんか覚えてたんですよ、セットで。テストで。

平・中川:テストでね(笑)。

生田:だから何だって聞いてんの。

中川:文革。文化大革命ってやつですよ。

大澤:なんか革命を起こして中国をこの人が救った、みたいなことですよね?

:それはちょっと前だね。一緒の種類だけどもう一段階。

大澤:あぶない、教えてください。

政敵がいなくなると過去の政権を批判し始める

中川:文化大革命というのは、そもそも毛沢東が権力を失いそうなときがあって。要は自分のカリスマ性を高めるために、反乱分子をつぶすという名目で、文化大革命はオレの手にあるというのでやった。そうしたら、今度は集まってきた人たちが、日本で言えばすごい右傾化するかたちで、もう抑えきれなくなっちゃった。毛沢東ですら抑えきれないような愛国主義が蔓延した、というのが文化大革命。

生田:学校なんかが止まっちゃったんですか?

中川:全部が大変なことになっちゃった。

生田:だから国中がひっくり返っちゃったんだ、文化大革命で。

中川:ひっくり返っちゃった。これはいけないということで、毛沢東が亡くなったあとも含めて、この鄧小平という方が出て、改革開放、中国語で言うガイグーカイファンですね。

鄧小平さんが改革開放で何をやったかというと、1人のカリスマじゃなくて集団指導体制でやりましょう、ということを言って。もうひとつは経済優位で、経済を解放していこうと。

完全な計画経済じゃなくて、今の中国みたいな感じでやっていこうと言った。今なんでこれをわざわざ書いたかというと、要は今まで毛沢東がやったことは、確かに中国共産党の総括として、「悪かったね」「良かったね」というのが両方あったわけですよ。

別にいいことばっかり言ってないんですよ。それはいいんだけど、鄧小平に関しては基本的に良いことばっかりだった。それが最近、習近平体制になって、鄧小平も問題あったんじゃないの? みたいなことがだんだん出てきたのが、ちょっと傾向として見えるんです。

生田:なぜ?

中川:これはつまり、解放しすぎたことによって格差が広がったんじゃないのみたいな不満を言うということ。要はここ(習近平氏の写真を指して)の正当化、権力独裁への正当化。

独裁(毛沢東時代)→解放(鄧小平時代)→独裁(現習近平体制)という流れからすると、今までここが総括されていなかったのはそういうことで、そういう気配が見られる。ただこれは私見です。いろんなものを見てるとどうもその動きが見えてきて。

習近平さんが政権をとったときにはまだ言わなかったんだけど、政敵を倒して他の敵がいなくなった時点で、どうも、やっぱり集団指導体制どうなの? というのをちょこちょこ入れてきてるんです。

それを彼(習近平氏)が言ったというふうにするんじゃなくて、いろんなところから出てますよ、みたいな感じにメディアをコントロールしてきているのが今の感じなんです。

中国共産党の「チャイナパワーセブン」

生田:なんか今、聞こうとしてたよね、咲希ちゃん。

大澤:いや、この2人の方向性は似てるんですね。

中川:(笑)。似てるというか、方向性としてはそういう感じです。だから中国内でも賛否があって、人民解放軍とかは完全に礼賛をするわけです。改憲いいですね、と。だけどSNSなんかはけっこう炎上していて、これをどコントロールするのかということでやっているわけですね。

大澤:なんか、女の子の喧嘩みたいですね。噂して……。

中川:あー、でもそういうことですよ。基本的に政治なので。とくに法治で決まっている国ではなく人治なので、数人の中で好き嫌いというのがやっぱり大きいんです。だからチャイナパワーセブンという7人がだいたい一番上のトップをやっているんですが、その中の好き嫌いもあるし、あとはもっと言うと長老。

これ(現・総書記)の上に、中国共産党の長老がいるんです。それが派閥があって、まさに女の子の好き嫌いじゃないけれど、はっきり言うと好き嫌いで動いている。

:さよモラも主導権争いとかあるの?

大澤:いやーありますよ。

平・大澤:(笑)。

生田:お前ここで言わないほうがいいぞ、そんなことは。

:長老が大澤咲希だ。

(一同笑)

大澤:私もう長老なんで。下はみんな若い子たちで。

:好き嫌いで決まっていくんだ(笑)。

中国のエリート層のピラミッド構造

中川:さっき言ったのは一応つまみ食いなんで、ちょろちょろ言っていきますけど。十九大というのは、中国共産党の19回党大会というのがあって、これは5年に1回開催されるんですね。だからこれが2期で10年って意味なんですけど。

要は共産党大会自体が5年に1回あるということ。2期目がスタートしたのが2017年10月24日ということ、10月の共産党大会ですね。さっき言ったピラミッドがありましたよね。ここに書いたように、国務院とか直轄市、大企業、大学とかも中国共産党の組織というのは全部こうやって入ってるんですよ。

これがいわゆる中国共産党の一番大きいピラミッドだと考えるならば、一番上はさっき言ったパワーセブンで、7人で決めています。その下に、25から7人を引いて18人の非常務委員。こっち(7人)が常務委員なので、上の25人・上の7人みたいな感じ。204人(中央委員)、172人(中央委員候補)、こんな感じがだいたいエリート層というかトップ層で。

生田:もうだから7人が決めてるってことだよなあ。

中川:まあ長老ですね。実際にはその7人は習近平体制だったら習近平さんの指導下なわけです。そうすると、習近平さんの裏にいる長老というのがポイントなわけです。見えてないんです。

生田:誰? 長老。

中川:元々いた江沢民派だったり胡錦濤派だったりとかいろいろ言われるんですが、要は昔、指導のトップだった人たちは影響力が強いですよね。そういう人たちがいるんですけど、それをこの5年間でバンバン倒しちゃったの。だから実際に長老がいろいろあったんだけども、最近はここ(7人)に権力が集中してきたぞということで新時代みたいなことを言っているんですね。

大澤:習近平さんはどっちに入っているんですか?

中川:だからこの政治局常務委員の一番上。中国共産党の総書記という立場ですね。こんな感じで9千万人も中国共産党がいるんです。友人に聞くと、世界最大の暴力団だって、中国人自身が言ってるんですけど。それくらい大きな組織なわけ。

なんでそういう批判めいたことを言うかというと、例えば大学で一番偉い方って総長だったり学校長ですよね。さっき言ったように、学校長は二番目なんです。一番偉いのは○○大学書記なんですよ。全部がそうなの。

大澤:中国ではってことですよね?

中川:そう中国では。例えば日本だって航空会社はいろいろありますけど、大きい中国国際航空というのがあったら、中国国際空港の書記が一番上で、その次がCEO。

大澤:書記ってなんか、クラスではメモする人って感じですけどね。

中川:それはまあそういう肩書きなんですね。

生田:メモ取る人(笑)。

中川:そんなこと言ったら、習近平さんだって総書記だからメモ取る人(笑)。

生田:メモ取る人が親玉(笑)。

中川:親玉ですよ、赤い親玉。

大澤:書記最強説。