「ストレージって、非常に地味なイメージなんです」

――今日は御社のストレージ製品「CLOUDIAN HYPERSTORE」(以下、HYPERSTORE)が今年11月から「風林火山ストレージ」というキャンペーンを開始していると聞きました。その「風林火山」「ストレージ」という組み合わせが特殊すぎると言いますか、あまり見たことがない印象があったので、この名前になった経緯などうかがいたいと思っております。

本橋信也氏(以下、本橋):はい、よろしくお願いします。

――さっそく「風林火山ストレージ」についてなのですが……。

本橋:その前に、私から質問させてもらってもいいですか。ずばり「ストレージ」についてどういったイメージを持っていますか?

――え、ええっとですね……ストレージというと、パソコンやスマホのデータを保管しておく場所というイメージですが……? あとは正直、あまり意識したことがないです。

本橋:そうなんですよ、パッとした印象がないんです。だからストレージって地味なんですよね。というか、みんながあまり気づかない領域の製品ですよね(笑)。

――いや、地味とまでは言ってませんよ!(笑)。しかし、確かにパッとしない印象は失礼ながらあります。

本橋:この流れからお話ししますと、我々としてもストレージ自体の認知度が低いので、魅力などを伝えるのに苦労しちゃうわけですよね。それはたぶんうちだけじゃなくて、ストレージを提供してる外資の大きなベンダーさんもそうだし、ほかのところもそうだと思うのですけれども。

――ストレージって、まだ身近じゃないですしね……。

本橋:そうなんです。みんなが気づかない領域だからこそ難しい。一般紙にもストレージの会社の記事は載らないんです。新しい製品が出ても、別に大きなニュースにはならない。そういう意味では非常に地味ですよね。

一般の人とは少しかけ離れたところにある。けれど、実はすごく身近なものです。その伝え方を、なにか考えないといけない。

「いい製品だから広めたい」「でもわかる人は限られている」

本橋:会社として、ストレージの認知度についてずっと課題を抱え続けてきました。

我々の製品ではやはり最先端技術を使っているのですが、それを説明しようとすると日本では馴染みのない表現も多くなってしまうんですね。そうすると、理解されないんです。そのジレンマをずっと抱えています。

技術系の方々や、ふだんからそういった言葉に慣れている人には伝わるんです。しかし、そうでない方に初めてカタカナの多い用語を聞かせても「難しい」となりますよね。

そうするとやはり「なにかわかりやすい言葉で話さなければいけない」となります。

――共通言語を探すことに近いですね。

本橋:そうなんですよね。

本当は、できれば機能部分についてもすべて日本語で、それもひらがなで書くくらいにやりたいんです。でもそれをやると今度は逆に伝わらなくなったりするじゃないですか。そこがすごく難しいところですよね。

我々としては、やはり多くの人に伝えたいわけですよ。しかし、製品を買う人はやはりIT業界で働いている人やクラウドの中の人といった専門的な業界にいる人だったりします。

それで言うと、IT部門でストレージをやっている人たちも同じジレンマを抱えていたりするんです。

例えばストレージの新製品があり、それを購入したい時。1つ上の上司であれば理解してもらえるけれど、それが企画や管理部門などになると伝わらなくなったりするんです。そういった話をお客さまからときどき聞くのですが、もうなんというか、こちらもすごく申しわけない気持ちになるんですよね。

いい製品だからこそ、多くの人に理解してもらいたいと思っている。けれど、わかる人はすごく限られている。だから、購入を考えている企業でも、社内の意思決定に時間がかかったり、説明に苦労したりする。それを避けたいんですよね。

私たちからすると「製品を購入したいと思っているんだ!」と言っているお客さまが、社内で稟議を通すために時間をかけて苦労している。もしかすると、嫌な思いをしているかもしれないんです。だって上司から「なんだそれは?」と言われているかもしれないじゃないですか。それを、とにかく助けたい気持ちはありますね。

日本でも今、ストレージに注目が集まりつつある……?

――ストレージを話題にする人たちが集まるコミュニティも限られている印象があります。その人たちが「これはいい!」と言ってはじめて広がっていくというか、採用されていくというか。

本橋:後ほど製品の詳細について触れますが、先にお話ししておくと、そもそも僕らの製品がアメリカで売れた理由にはストレージの専門家たちが組織の中心にいたからなんです。日本だと、ストレージの専門家みたいな人はそれほどいませんよね。でもアメリカだと、ストレージの営業をやっていたり、技術開発をやっていたりする人たちがグループとしてつながっていました。

我々にはストレージ業界のベテランで「30年間、ストレージ業界にいます!」という人が世界の営業をリードしています。それは、業界の核になるような人です。その人が持つお客さまも、いろいろストレージを使う人だったりします。そういった人脈をよく知っているんですよね。

そして、そのマッチングがソーシャルメディアみたいに広がっていくわけです。要するに1つのハブ、大きなドットがある中心点を押さえたら広がっていく流れで、我々の製品がうまくいったんですね。そのコミュニティに比べると、日本ではストレージに関係する人が少ないかなという印象です。

――これから日本でもストレージに関係する人が増えていく傾向はあるのでしょうか?

本橋:そもそも、インフラの製品には、3つの大きな要素があります。1つはサーバ、要するに計算するということですね。2つ目はネットワーク、伝え合うということですね。そして最後はストレージ、データを貯めるということ。

基本的にみなさんはパソコンなどで行う計算処理は身近になっています。ところが、データを貯めることに関しては、まだ注目されていません。

しかし、スマートフォンの登場で写真だけでなく動画もどんどん撮影し保存される流れが出来上がっています。そして今、「画像データでいっぱいになっちゃった」などが起こり始めています。そこで社内からでも無料のクラウドに放り込んでいる人もいますよね。

そういう意味では、ストレージはインフラの中の最後の領域です。「データがいっぱいになった」「なにかいい解決策はないか」となってはじめて注目され始める。

――ということは、今は注目される一歩手前くらい……?

本橋:そうであってほしいですね(笑)。とはいえ、冷静に見てもこれからは違うでしょうね。地味な領域だったものが、みなさんが興味を示す領域になりつつあります。

「ストレージを知らない」企業に広まらない

――今回「風林火山ストレージ」としてキャンペーンを行うHYPERSTOREは、2010年には誕生していたものだったんですか?

本橋:正確にいうと、2011年はじめにリリースしましたので、もう少しで7年です。

HYPERSTOREは映像や画像、音楽といった膨大なデータを経済的に保存できるストレージ製品です。

GoogleやAmazon、Facebookなどのサービスは世界中の何億人もの人が写真などのデータをアップロードしていますよね。そういったサービスは、膨大なデータを経済的に保存するために自社開発のストレージを使っていたりします。

HYPERSTOREは、そういったストレージと同等の機能を持っています。そのため、お客さん自身で開発しなくても大量のデータを保管することができます。これがAWSのAmazon S3と同じ方式だったことから、オープンソースエンジニアたちに「なんちゃってAmazon S3」と言われることもありました(笑)。

初期のころに弊社の製品を採用してくださった企業が採用を決めた時の理由は至ってシンプルです、「Amazon S3と同じことができるソフトウェアだから」。しかし……。

――ストレージにくわしくない企業になると、理解度が一気に下がる?

本橋:はい。「なぜ企業の中にAmazon S3みたいなものを作らなくちゃいけないんだ?」「データはクラウドに預ければいいじゃないか」という話が出てきたりするわけですよね。

その中で我々ができるのは、とにかく広くいろんな人に理解できる言葉に落とし込む。腑に落ちるような表現を探す。もっと言うと、自分たちの会社がもっと有名になれば「クラウディアンのものだったら間違いないよね」みたいになるわけじゃないですか。そういうところに持っていきたいですよね。

当社では数少ないですが、私はエンジニアではないので開発には貢献できない、だからそれが自分の役目だと思っています。

「ストレージの理解度を上げたい」から誕生した風林火山

――そんな中で「風林火山」というワードが誕生したのでしょうか?

本橋:もともとの経緯は、ヒーローものにして商品の認知度を上げたらどうだろうかというアイデアがありました。例えばガンダムとか、今の30〜40代の人たちが子どもの頃にすり込まれているようなアイコンです。それが時代をさかのぼり過ぎて「風林火山」になったわけです(笑)。

なぜそうなったかというと、弊社には「SAMURAI」というアプライアンス製品があります。アメリカのデザイナーが、我々の会社が日本生まれであることから日本の兜をモチーフにしてデザインしました。それもあり、製品の要素をいろいろ整理していき、戦国時代を代表する「風林火山」を思いついたんです。

もちろん、カタカナや英語だった部分を漢字にしてギャップを出すことで「あれ?」と思う人がいるんじゃないかという狙いはあります(笑)。昭和のオヤジギャグテイストかもしれないとも思っていますが(笑)。

――そんなことは(笑)。でも、このワードを見て確かに驚きました。ストレージの世界観に「風林火山」というワードが入るとは個人的に思っていなかったので。てっきり、武将好きな人がいたのかと思ったのですが?

本橋:弊社にはスターウォーズ崇拝者は多いですが、武将好きはいないですね(笑)。

――いないんですね(笑)。