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ゲームチェンジャーか、バズワードか。AI、機械学習のビジネスインパクトを探る(全2記事)

2017.12.25

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大切なのは、AIで「今」なにができるか gumi國光氏が語る、Web3.0時代の生存戦略

提供:グーグル合同会社

Googleが“インターネットの次にくるもの”をテーマにしたイベント「INEVITABLE ja night」の第2回を開催。Google Cloud 等がもたらすテクノロジーの進化によって、この先の世界はどう変わっていくのか。AIやVR・ARなどの領域で活躍している人材をゲストに、「不可避な流れ」について熱いトークを繰り広げます。本セッションでは、パラレルマーケター・エバンジェリストの小島英揮氏と、株式会社gumiの代表取締役社長、國光宏尚氏が登場。AIスピーカーやウェアラブル時計など、AIやIoTを活用した製品が次々に登場した近年の傾向と、今後訪れる「Web3.0」のインパクトを語ります。

「不可避な流れ」は私たちの生活をどう変えるのか?

小島英揮氏(以下、小島):みなさん、こんばんは。今日はこちらの会場にお越しいただきまして、ありがとうございました。

これから「INEVITABLE対談」と題して「不可避な流れ」を対談しようと思います。私、小島はどちらかというと聞き手ということで、先ほどご紹介あった國光宏尚さんから、「AI」や「機械学習」がバズワードで終わるのか、それともゲームチャンジャー、みなさんが巻き込まれる大きな流れなのか、という部分を少し話をしてもらいます。

ポイントとしてはビジネスですよね。ビジネスとしてインパクトがあるのかどうかをぜひみなさんとお話をしていければなと思っています。

50分ほどお時間いただいていますが、後半にはみなさんからご質問いただく時間も用意していますので、ぜひ「ここは賛同しかねる」「これはどうなんだ?」みたいなところも、メモを取りながら質問のネタを作っていただければと思っています。

まずみなさんにご紹介したいのが、今日のメインスピーカーのgumiの國光さんです。みなさん拍手をよろしくお願いします。

(会場拍手)

では、簡単に國光さんが今どういうことやっていらっしゃるか、みなさんにお話をしていただいてよろしいでしょうか?

國光宏尚氏(以下、國光):はい。まず、「なんでお前がAIのところに来ているんだ?」みたいな感じだと思うんですけど(笑)。

小島:僕はかなりいい人選だと思っているんですが、世の中的には「ソーシャルゲームやってる人」というイメージがあるのかもしれないので、そのあたりもお話をいただくと。

國光:そうですね。実際この中でエンジニアの人ってどのぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

非エンジニアの人は?

(会場挙手)

なるほど。おそらく今日僕が呼ばれたのは、たぶん非エンジニア代表として「どうやってAIを活用していくか」を非エンジニアでもわかりやすく説明する、というところですね。

小島:はい。かつ、「お金を張っている人」ですよね。実際にリターンがあると思って張っている人の意見ということで、國光さんにお話をおうかがいしたいと思っています。

國光:あともう1個、スタートアップの方ってどのぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

國光:あら、少ない。大企業の方?

(会場挙手)

國光:おっ。

小島:自称大企業はたくさんありますからね(笑)。

國光:(笑)。

小島:今日は比較的エンタープライズの方が多いと思いますよ。

國光:なるほど。

小島:普通は「テクノロジー関係の話だとスタートアップ系の方が多い」というイメージですが、これだけエンタープライズの方が来ていらっしゃるということは、やはり「ビジネス的にすごくインパクトがあるんじゃないか」とみなさん思っているのではないでしょうか。

「AIスタートアップ」なんていない

國光:なるほど。僕らの会社はモバイルゲームで上場しました。ただ、今は共同代表で副社長がモバイルゲームを見ていまして、僕は新規事業を見ています。

新規事業が大きく分けて2つで、1つはモバイルの動画、もう1つはVR・ARをやっています。

VR・ARはとくに力を入れてまして、インキュベーションを東京とソウルとヘルシンキ(フィンランド)の3箇所でやっています。あとはアメリカで「Venture Reality Fund」という、これは50ミリオン(ドル)ぐらいのファンドで、シード・アーリーステージのVR・ARの会社に出資するという感じで、合計21社に出資していますね。

小島:数としてはけっこう張ってますよね。

國光:そう。そのうちの1社がGoogleさんに買収されたりということで、VR・ARはかなり進んできているのかなと。とくに今日、中心にお伝えしたいところは、AI。AIといっても、僕はAIスタートアップなんてないと思うんです。

小島:なるほど。AIを標榜しているスタートアップってあんまりイケてないんじゃないか、と。

國光:はい。ここはこのあとの話にも出てくるんですが、とくに似ているのは、AWSがやったクラウドですね。

クラウドのすごかったところは、それまで(物理的な)サーバーを立てなければいけないからスケーラブルなサービスを作るのってすごく難しかった。それがAWSを使うと誰でも簡単にスケーラブルなサービスを作れてくる。

だから、僕らみたいなゲーム会社もそうだし、メルカリさんとかLINEさんみたいなサービスも生まれてきました。でも、誰もメルカリやモバイルゲームの会社のことを「クラウドスタートアップ」とは言わないんですよ。

小島:そうですよね。

國光:ですので、クラウドというのは手段です。C to Cなサービスを作るとか、グローバルでやるようなゲームを作るという目的があって、それを解決するための手段でしかないのかなと。

小島:なるほど。だからそういう意味で言うと、(クラウドは)ゲームチャンジャーだったわけですよね。それを使わないと戦えないから、みんながしょうがなく使っているというそれぐらいの感じ。ただ、それぐらいの破壊力はあったということですよね。

國光:そうですね。だから逆に言うと、AmazonとかGoogleのクラウドがあったおかげで、短期間でこれだけスケーラブルなサービスが作れたということです。

なので、AI自体は目的じゃなくて、なにか「解決すべき課題」「やりたいこと」があって、「それを解決するためにAIを使おう」みたいになってくるのかなと思っています。

小島:なるほど。

國光:なので、サービス事例とか踏まえてそういうのをお話しできればと。

小島:そうですね。いろいろな企業に実際に自分のお金を張っていらっしゃるので、どうしてそういうところでAIみたいなフレーバーがすごく大事なのかということも、このあといろいろお話を聞いていきますので、よろしくお願いします。

國光:よろしくお願いします。

企業は近いうちにAIベースになる

小島:あと「もう1人話してるお前は誰だ?」という方もいらっしゃると思うので、簡単に自己紹介させていただきますと、小島と申します。直近はアドビとかAWSで、いわゆる外資系企業のマーケティングをずっとやってきました。

最近は、働き方改革というありがたい流れが出てきて、僕的にはこれは「稼ぎ方改革」じゃないかなと思っているんですけど。今は複数の会社でマーケティングの仕事をさせていただいています。

今日のAIの文脈では、参加している企業の1つで、ABEJAという会社がいわゆるAIスタートアップです。今、國光さんが「AIスタートアップなんかねえよ」とおっしゃいましたけど。

もうちょっと言うと、AIを使いたい人をもっと手助けできるものがないかと。それはもちろんモデルを作ったりプラットフォームを提供したりということなんですけれども。やっぱりAI軸で入っていく方がけっこういらっしゃるので、これをどうやったら効果的にできるかというのがこのABEJAという会社ですね。

あと國光さんに近いところではVRの会社とか。あと、日本では決済がこれから大きく変わると思っていて、Stripeという決済の会社にも参加しています。これらの企業はすべて先ほどおっしゃったクラウド上で動いているサービスで、クラウドがなかった10年前にはなかったものなんですよね。

國光:そうですね。

小島:クラウドがゲームチェンジャーになって、こうしていろんな企業が出てきているという流れだと思うので、5年後ぐらいには、いろんな会社でAIベースのビジネスができているんじゃないかと勝手に思ってますけど。

いろんなスタートアップやビジネスを見てきた経験を使って、國光さんからいろいろ話を引き出したいと思いますので、今日はよろしくお願いします。

國光:これだけの会社の顧問などいろいろやられていらっしゃるということですよね。

小島:そうです。顧問というか、どちらかというと中の人でやっています。中の人でやらないとなかなかリアルなフィードバックが来ないんですよね。インプットがないので顧問とかだとすぐ枯れちゃうなと思って。

國光:副業という次元じゃないですもんね。

小島:そうですね。いわゆる正副の「副」じゃなくて複数の「複」なので、世の中的には新しいのかなと思うんですけど。やはりこういうことをやりたいという方はすごく聞くので、ぜひgumiさんにご興味あれば僕、行きますので。

國光:ちなみに、Amazonの時と比べて収入はどうなんですか?

小島:絶対上がっています(笑)。

國光:なるほど(笑)。

小島:稼ぎ方改革なので、はい。そこはちょっといやらしくなるので、次に行きましょうか。

國光:確か働き方改革の本も出されるので、ぜひみなさん予約をお願いします。

小島:今のはツイートしなくていいので(笑)。流していただいていいと思います。

過去2回のAIブームとはなにが違うのか?

小島:では、國光さんにいろいろと聞いていく前に、みなさんとAIを取り巻く状況を整理しておきたいと思います。今日、「AI」「機械学習」「人工知能」というキーワードでここに来られたと思いますが、みなさん、AIへのご興味というのはおありですよね?

國光:なかったらおかしいでしょ(笑)。

(会場挙手)

小島:意外に手が挙がらない。おありですよね。確認です。ありがとうございます。

次に、実際にAIをビジネスやご提案に取り入れるよ、と。AIとリアルに関わっている方はどれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

國光:おお、意外に。

小島:少ない?いや、むしろいるって感じですかね。みんな気になっているけれど、リアルにやっている人が少ないんじゃないかというのが状況としてあると思います。

簡単にAIを取り巻く状況ということでいくと、僕の理解が正しければ、今は「第3次AIブーム」です。AIを昔からやってた人からすると「また来たか」「前にも波があって結局しぼんじゃったよ」という感じで、斜に構えて見ている方もけっこういるなと思っているんですけど。

今回の動きは別物だと思っていて、それが先ほどお話にあったクラウドなんですよね。これを使うことによって、今までの実験室のものから、リアルにビジネスに使えるという点があると思います。

そして、いわゆるいろんなルールベースの人工知能から、機械学習。人がいちいち計算するよりもはるかに大量のデータを処理して判断ができるようになった「マシンラーニング(機械学習)」。そして、人が教えなくてもある程度答えに近づいていく「ディープラーニング」。このセットが大きいのではないかと思っています。

なので、過去のAIブームとはまったく違っていて、(多くの企業、人が)使える環境になっている。それはテクノロジー的にも環境的にも。

Googleは創業期からAIを作っていた

小島:今回の「INEVITABLE」というこのイベント名は実はこの本から来ているんです。『〈インターネット〉の次に来るもの』という邦題でケヴィン・ケリーという人が書いた本なんですが、これを読んだことある方どれぐらいいらっしゃいますか? けっこう多いんじゃないかなと思います。

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

この原題がまさにINEVITABLEなんですよね。「不可避な」ってことなんです。これはテクノロジーが今後どんな流れになっていくかというのを非常によく解説した本なので、ぜひ読んでいただきたいんですけど、ここに興味深い一節があって。

「Google as AI First」と書いてありますが、ケヴィン・ケリーさんが、Googleの初期の頃、2002年というと検索エンジンがやっと使われ始めた時期じゃないかと思うんですが、その時にラリー・ペイジに話をした時に、「僕らが作っているのは検索エンジンじゃなくてAIなんだよ」と言ったと書いているんです。これを証明する方法はありませんが、著者がおっしゃっていると。

國光:すごいですよね。

小島:すごいですよね。AIを使っていると、AIを使って検索機能を強化するのかと思ったらそうじゃなくて、検索機能を使ってAIを改良しているんだということをおっしゃっていたと。これが2002年の時です。

この本は、去年出たんですが、「2026年までにGoogleの主力プロダクトは検索じゃなくてAIになるはずだ」と書いてあるんですが、たぶんみなさんすでに触っていたりすると思うんです。このスピーカー(Google Home)を持っている方はどれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

小島:おお、多いですよね。

TensorFlowというのは、Googleさんが出しているAIのモデルを構築するときのフレームワークです。ニューラルネットワーク、ディープラーニングのベースも作れるようになっています。

例えばAIが持っているパワーを普通に家で使うために、GoogleさんはGoogle Homeを出していますし。それから自分でAI、ディープラーニング、機械学習のパワーを使おうと思ったら、1から作らなくても、こういったものがGoogleさんから出ているので、そういう意味ではGoogleさんからAIのプロダクトがかなり出てきているんじゃないかなと思っています。

ちなみに國光さんもAIスピーカーはお持ちですか?

國光:あの、全部持っているんですけど……。

小島:あ、全部持っている。

國光:そうそう。でも、まだ音楽を聞くぐらいしかできないですよね。

小島:では、まだパワーを十分使っていない?

國光:まだ使いこなしていない。

小島:では、そのあたりのヒントも今日の話の中で出てくればいいかなと思います。

「Web3.0」とは一体なにか?

小島:今日、私が國光さんにお話をしていただきたと思ったのは、実はこの「Web3.0」という言葉があって。國光さんの造語でいいんですか?

國光:これ、僕が世界で最初に言ってますね。

(会場笑)

小島:意外に使われてそうで使われていない?

國光:そうです。

小島:Web2.0までは確かに僕ら覚えてますけど、3.0って確かに言った人いないなと。

國光:そうなんです。

小島:サーチすると國光さんが出てくる。

國光:出てくる。

小島:國光さんがおっしゃったWeb3.0とは、過去のWeb1.0、2.0の上に新しいパラダイムが起きていて、その中心にクラウドとAIの組み合わせがあるんじゃないかと。一方でVR・ARも来ると言っていて、まさにそこに投資されているわけですよね。

これと同じような図を実は描いてて。

クラウドというインフラがあって、これがはじめてモバイルとビッグデータをちゃんとしたビジネスにしたんじゃないかと思っています。この先にIoTとかVRとかARがあると思うんですが、キーになるのがやっぱりAIです。

やはり大量データがやりとりされるようになると、人がいちいち処理するのは大変です。なので、機械任せにしたいものがけっこうあります。そこにAIが必ず来るんじゃないかと思っているんですが、國光さんもそのような考え方ですか?

國光:そうですね。けっこう近いです。僕、言葉の整理するの好きなんです。みんな、ちゃんと定義せずにとりあえずふわふわ語っていくから、論点がぐじゃぐじゃになってしまうのかなと。

とくに僕はインターネットやスタートアップ業界が長いので、その視点でAIやIoTを捉えている。

なので、今、政府が言っている「インダストリー4.0」と、シリコンバレーで起こっていることはまったく関係がなくて。たぶん「インダストリー4.0」ってよくわからない人が言っていると思うんですよね。

小島:インダストリーなんとかがですか?

國光:そうそう。ズレてる。普通のスタートアップやシリコンバレーでのIoT・AIと、政府が言おうとしているところは比較的ズレているのかなと思います。

Web2.0のきっかけ

國光:これが僕の認識なんですが、やはりインターネット業界においては、決定的なコア技術が同時多発的に出てきて、そのことで業界構造が変わってくるということが起こってくるんだと思っています。

ちょうど今、僕はWeb3.0が2017年に始まったと思っているんですが、その前のWeb2.0とはなんだったのかということを考えると、これはだいたい2007年前後がすごいおもしろい年で、2007年にiPhoneが出た。スマホ。

小島:なるほど。

國光:同じく2007年にTwitterやFacebookのモバイル版が出た。そして同じくAWSが出た。

小島:そうですね。2006年から2007年にかけてということですよね。

國光:同じ2007年前後に、スマートフォンとソーシャルウェブとクラウドという決定的に重要なキーワードが出てきて。この10年間、Web2.0の時代は、すべての会社がスマホファースト、ソーシャルファースト、クラウドファーストという感じで、この3つの要素を持っていたところが新しく出てきてドッと大きくなった。

小島:なるほど。

國光:では、ここから3.0を見ていく上では、過去を見ていくのが重要です。その上で僕は領域を3つに分けて考えました。まずはハードウェア。デバイスのところと、データと、そのデータをどう処理するか。この3つにレイヤーを分けて考えられると思います。

まずデバイスでわかりやすいのは、1.0の時はPCだった……。

小島:これって、要するには人とのインタフェースということですか?

國光:そうです。なので、PCだったものがモバイルになっていった。次に、データという側面では、Web1.0の時代は、Yahoo!とかGoogleをはじめとして、ハイパーテキストのウェブサイトが中心だった。

そこでTwitterやFacebookが出てきた。Web1.0ではWebサイトのページランクが重要だったけれど、ソーシャルの登場によって「でもWebサイトってそんなに重要?」みたいな。「Webサイトよりも重要なのは人。俺が誰となにをやったか、なにを買ったかという、人にまつわるデータのほうがはるかに重要なデータだよね」に変わった。

小島:なるほど。客観データより主観的なもののほうが価値がある、という話ですか?

國光:そう。例えばウェブサイトの情報なんかどうでもいいというか、よっぽど人にまつわるデータのほうが価値あるデータだろう、という感じで。

ソーシャルWeb、ソーシャルメディアというのは承認欲求をインセンティブにして個人のデータを集めまくってきた。これがソーシャルウェブ。

なので、FacebookもTwitterも、彼らは最初から「僕らは検索をやっている」と言っているんですよね。僕らがやっているのはデータビジネスである、と。

小島:自分に近しいものや興味あるものを見つけるプラットフォームを提供していますよ、ということですよね?

國光:そうです。なので結局は、パーソナルデータがあればあるほど、ターゲティングの広告などはよくなってくるのかなと。

また、処理という意味では、クラウドが出てきたことによって圧倒的に大量な大規模処理ができるようになってきた。

なので、結局Web2.0で成功した会社というのは、例えばメルカリとかでも、もともとPCの時にはヤフオクがあったし。LINEも、メールなんてすでにあったし、それをスマホで置き換えてきた、みたいな。結局、2007年からWeb2.0時代が続いてきました。

スタートアップが盛り上がっていなかった理由

國光:そして、スタートアップはここ2〜3年盛り上がってなかったんです。

小島:日本で、ということですか?

國光:世界中で。理由は簡単で、結局、Web2.0のパラダイムが変わった瞬間に、初期に参入した会社がおいしいところを全部取っていったから、残っているところは地味なニッチなところしか残っていない、みたいな。そういう雰囲気があります。

小島:なるほど。もうここには残ってないぞ、みたいな、そんな雰囲気ということですか?

國光:そう。そんな雰囲気だったんですが、そこに起こってきたのがこのWeb3.0です。

デバイスという分野では、VR、AR、MRと言っているんですが、将来的には、これはそんなに遠くない未来、眼鏡型のグラスで、視界にスクリーンを出すような時代に。

小島:情報が(視界に)オーバーレイされるイメージですかね。みなさんを見ていると、関心がありそうな人とか弱そうな人がわかるとか、そんな感じ?

國光:そうですね。加えてIoTも、結局は人にまつわるデータです。

結局、今ソーシャルのデータには限界があって。要するに、たぶんみなさんもFacebookとかインスタとか使っていても、ここに来たということすら(ソーシャルに)あげているか怪しいだろうし、今日なにを食べたとか、誰に会ったというデータってあげてないと思うんですね。

小島:そういうことですよね。だから、みなさんのTwitterとかFacebookのアカウントを全部追えても、ここにいる全員がここに来たということは投稿からはわからないということですよね。

國光:しかも、ソーシャル時代の限界というのは、ユーザーの能動的なアクションで投稿させるという点です。なので、けっこうみんなめんどくさいからFacebookやInstagramでも1日に1回か2回ぐらいの投稿しかしないから、だから個人にまつわるすべてのデータと言えるほど大したデータがないんですよね。

小島:なるほど。それならば、もうそのままどこにいるか自動的にあげてしまおうというのがIoTの文脈ということですね。

IoTの4つの領域

國光:とくに今IoTのところは大きく4つの領域があると思います。つまり、Google HomeやAmazon Echoというのは、結局は「FacebookとかTwitterとかも取れてなかった貴重なデータってなに?」という話なんですよ。確かに家の中のデータって取れてないよね、と。これがGoogle HomeやAmazon Echoがあったら取れるかもね、みたいな。

自動走行車もそうです。自動車のデータって取れてなかったよね、と。

小島:そうですね。今まで能動的にやってもらわなければいけなかったことに、どれだけ聞き耳を立てる側に回るか。IoTは、今の文脈だとそこに位置するだろうということですよね。

國光:そう。3つ目に重要なのが、例えばApple Watchみたいなかたちのヘルスケアウォッチでとれる健康にまつわるデータです。これも、今まではあげる人はいなかったのが、Apple Watchのような端末でできるようになってくると、そのデータも取れる。

さらに決定的に重要なのが、ARグラスです。眼鏡がARグラスになると、見たものも、ここに来たという情報もすべて取れますし、顔認識をしたら誰がここにいたのかも全部取れますし、なにを食べるかも全部取れます。なので、そうしたデータが取れてくるということが決定的に大きいところだと思います。

小島:では、AIというのは、どんどんデータを取ってくるんだけど、それに意味付けをしなければいけない、ただ集めてもしょうがないと。そこにAIが来るというお話なんでしょうか?

國光:そうですね。なので先ほどの話と同じで、LINEにしてもメルカリにしてもどこの会社も、クラウドは問題解決の手段でしかなくて、結局メルカリはCtoCコマースをやっている、LINEはコミュニケーションサービスをやっているということです。

大切なのは、100年後ではなく「今」なにができるか

國光:今回のAIの登場において、ここでみなさんが考えておいたほうがいいのは、時間軸というのが極めて重要だということです。今のAIがなにができるかなにができないのかを知るのがすごく重要なんだろうと思っています。「AIが人類を支配する」とか、それはいったいいつの話なのか……。まぁ、100年後はそうかもしれないけど。

小島:けっこう将来ですね。100年。

國光:もうちょっと早いかも。50年後くらいはそうかもしれないけど、少なくとも向こう10年間でそんなことはありえない。

今の時点でAIができること、とくに今言われているAIってわりとシンプルだと思っていて。ビッグデータ、データの量が増えたことにディープラーニングが組み合わさって、ある特定の領域のAIが急速に進化したんです。それがなにかというと、画像認識。動画を認識する。音声を認識する。テキストを解析する。これだけなんですよ。

小島:だけど、それって今まで実はあんまりできていなかったところですよね。

國光:なので、今回の新しく考えていくところでいくと、機械学習はいままでずっとやってきているので、今までもやってましたよねと。そこでなにかリコメンドをするということも、GoogleもAmazonもずっとやってきているわけです。

ここに来て、より重要なAIの部分というのは、とくに画像、動画、音声、テキスト。こうした領域が、ディープラーニングによって精度が飛躍的に上がった。そして、AIをクラウドベースでAmazonもGoogleもMicrosoftも提供できるようになってきたことによって、高度なことでも僕らも普通に使えるようになった、というのが大きいところだと思います。

小島:みんなが使える環境になるというのが一番大きいところということですよね。

國光:そうですね。

AIがこれほど注目される理由

小島:わかりました。今、AIは今まで取れなかったデータを活用する場面ですごく使える、ということをお話をいただきました。

國光さんには、2つの顔があると思います。1つは、投資をしてリターンを得よう、つまり正しいところに投資をしようという、投資家としての顔。もう1つは、自分が回すビジネスとしていろんなことをやる、実業家としての顔。こうした両方の顔があると思います。

この視点から、先ほどから「AIが大事なんじゃなくてやることが大事なんだ」とおっしゃっていましたが、いま一度そのAIが、國光さんの投資家・実業家としての視点で、なぜ大事なポイントなのか、ということを教えていただいていただけますか?

國光:結局、AIが出てきたおかげで今までできなかったことが飛躍的にできるようになってきたんです。例えば、僕が個人的含めてかなり張っているところでいくと、VRとARのところでは、とくにARがダントツで重要なんだろうなと思っています。

ARの目指しているところはシンプルで、結局、「スマートフォンの時代は果たしてこの先も続くのかな?」と。

小島:インターフェースとしてですか?

國光:そうです。「ここから5年も10年も、こんな小さな画面でこんなやりにくいことをするのかな?」と。

でも、未来のインターフェースは僕らは全員知っていて。『マイノリティ・リポート』や『ドラゴン・ボール』みたいに、空間全部をスクリーンとして使い、おそらく音声での入力が中心で、さらにそこにハンドジェスチャーを加えたの。これが次に目指しているところです。

小島:なるほど。では、これはもうみんな昔から知っていて、合意はできているんだけど、でも実はやるのが大変だったみたいな?

國光:そう。『アイアンマン』でもなんでもそうだし、「Uber」って言ったらUberのアプリが立ち上がったり、「レストラン! 中華料理!」と言えばお店の候補が出てきたり。これって想像つくと思うんです。そういったスマートフォンの次というのを、みんな目指しています。

ARを取り巻く現状

國光:本当にARのところはかなり早く、たぶん想像よりはるかに早く来ると思っていて。というのも、ちょうど今年けっこう大きなできごとが続いています。

まずAppleが「ARKit」というフレームワークを発表しました。今までARのことを実現しようと思うと、Googleが出したGoogle Tangoのように、空間の深度をとれるような特殊なカメラが必要なんですが、それがなくても空間の深度とを感じを取れるようになってきたというのがARKitです。

昔の「セカイカメラ」みたいにアイコンがパッと浮いたり、そういうアプリを誰でも作れるようになったということです。

小島:セカイカメラはやっぱり早かったんですね。

國光:早かった。10年早かった(笑)。

小島:(笑)。今なら僕あれわかりますよ。「そういうこと言ってんだな」みたいな。

國光:おもしろいのが、これはリーク情報だからあれなんですが、ちょうどAppleが2019年にARグラスの開発キットを、2020年にARグラスを出す、みたいなことがちょうどブルームバーグからリークされました。でも、本当に2020年にはそういうものがAppleから出てくる。

結局、AppleはARKit、GoogleはARCoreというフレームワークを出してきたんですが、これを実現しているのも、基本的にはAIなんです。なので、AIを使って空間になにがあるのかを画像認識や動画で認識して、距離の推定値を出していく。

小島:それはたくさんの物を見せて再学習をさせて「こう撮ったらこの距離のはずだ」という知見がだんだんたまっているからできるんですよね。でも、みなさんはそれを意識する必要はなくて、キットを使えば簡単に10年前にやりたかった世界にたどり着けるということですよね。

國光:そうなんですよ。そういった意味で、やっぱりスマートフォン時代は終わってARグラス時代というのがやってくるだろうと思います。

ARグラス時代になると、自分が見たもののデータすべてがあがってくる。今までのスマホ時代とはデータの量が爆発的に異なってくるので、爆発的に増えたデータを処理していくために、AIが必要になってきます。

小島:なるほど。つまり、空間認識というのがこれからすごく大きなテーマで、それをやるときにいちいち人がデータ作ってたらもう大変だと。それなら、みんなが撮っている空間の情報から代入させたほうが早いよねという、そういうことですよね?

國光:そうです。だから、AIはほとんどの領域で重要になっていきます。ただ、やはりここ本当に重要なのが、手段なんですよね。

小島:だから「AIを作ります」じゃダメだってことですよね。

國光:どういう解決したい問題があって、その問題を解決するためにどうやってAIを使うか。やはりフォーカスしていくとのが重要になってくるのかなと思います。

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