「禁断のパネルディスカッション」のはじまり

八子知礼氏(以下、八子):みなさま、こんにちは。かなりの人数が入っていただいてるんですけど、ぜんぜん声が聞こえてこないですね。

(会場笑)

もう一度発声練習いただけますでしょうか? みなさん、こんにちは。

会場:こんにちは!

八子:これでよろしいですね。ありがとうございます(笑)。このセッションは、「禁断のパネルディスカッション」というタイトルがついていますが、みなさま「何が禁断なのか?」というふうに……。

友岡賢二氏(以下、友岡):ヤバいですね。

八子:期待をしていただいてるかと思いますけれども。「テクノロジーで変革する未来で勝ち抜くために」というキーワードで、非常に取り合わせが難しいメンバーで、ディスカッションしたいと思っております。

(会場笑)

私、個人的には、さっきも控え室で話をさせていただいた時に、「今日のセッション、猛獣使いの役割ですから」と発言したつもりでおりますので、そういうつもりで進めていきたいと思います。それでよろしいですよね?

友岡:(手元のペットボトルを指して)これ、本当の水ですね?

八子:焼酎ではないと思います。

(会場笑)

いつもは、友岡さんが登壇されるところでは焼酎だったりするんですけども、今日は水でご用意させていただきました。

今、司会の方からも登壇者のご紹介がありましたけど、詳しくは後ほど各人にご説明いただくとして、順番に進めてまいりたいと思います。まずはそれぞれのメンバーから、自己紹介をさせていただきたいと思います。

いきなり私ですね。はい、ありがとうございます。私、株式会社ウフルの専務執行役員、IoTイノベーションセンターの所長をしております八子と申します。

ウフルという会社ご存知の方、どれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

あの、ちなみに「ウルフ」じゃないですよ?

(会場笑)

ウルフの方は手を挙げないでくださいね。ありがとうございます。3パーセントぐらいですね。

(会場笑)

最近IoTを生業として始めるようになりましたけれども、もともとはSalesforce.comのインキュベーションをやっている会社でした。「でした」というのは、最近もやっているんですけども、ウイングアークさんに「MotionBoardをもっと売りなさい」とおっしゃっていただいたので、クラウド連携もやらせていただいているという会社でございます。

今日もブースを出させていただいておりますので、そちらのほうにもぜひ足を運んでいただければと思います。ブースのほうにですね、(スライドの)一番右側に出ましたね。みなさん、この本ご存知ですか? 一番右側の本。ご存知ない? まだ買っていない?

(会場笑)

ダメです。ブースにございますので、ぜひご購入いただければと思います。今ベストセラーで増版が決まりまして、売れに売れているIoTの本です。IoTの教科書と名乗っておりますので、ぜひ教科書として扱っていただければと思います。

先ほど申し上げたようにウフルはかれこれ12年経つIoTのインキュベーションの会社ですけども、さまざまなものをつなぐというビジネスをやっております。こちらはもう割愛させていただきます。

我々、IoTパートナーコミュニティというものを運営していまして、50社ほどでさまざまなワーキンググループの運営をしていて、ウイングアークさんはその中でも中核的な役割を担っていただいている、非常に大切なパートナーさまでございます。さまざまな事例をどんどん出していっていただいているというところですね。

(スライドを指して)我々はとくに真ん中のenebularというAPIの連携ツールを今推していていろいろ使わせていただいて、アピールさせていただいております。今日のブースにも展示しておりますので、ぜひとも見ていただければと思います。

今日は猛獣使いの役割ですので、私の紹介は以上で終わらせていただくとして、次は武闘派CIOの友岡さん、よろしくお願いします。

(会場笑)

IoTでエレベーターの環境情報を取得

友岡:(立ち上がって)ええと、立つのはデフォルトということで。

八子:デフォルトです。

友岡:立たないと見えないんですよ(笑)。すみません、老眼なんで。フジテックというエレベーター・エスカレーターの会社でございまして、専業メーカーとして、売上はだいたい1,700億円、グローバルに1万人ぐらいいて、そのうち3,000人が日本という会社でございます。

私は今4年目でございます。パナソニックで二十数年働いておりまして、八子さんもスタートは松下グループということで、兄弟なんですけども。その後はファーストリテイリングという、日本で一番元気な洋服屋さんで、グローバル全部を面倒見るという、すごく大変な会社で働いた後、今またぜんぜん違う畑で働いております。

今回はIoTなので、うちでやっている入門編としておすすめなものを2つ用意してきました。1つは、電圧を測定するというもの。

これまでは、現場のほうにメモリハイコーダーというデバイスをポンと置いて、SDカードにずっと電圧を記録して2ヶ月後に回収するということを現場でやっていたんですね。

それ聞いて、「え?」と思って。「2ヶ月後に回収する。そんなのリアルタイムで取ればいいじゃん」という話で、SDカードにFlashAirという通信のデバイスがついたやつですね。みなさん、よくスマホと一眼レフで連携したりとかする時に使うものなんですけど、「これを使ってうまいことできないかな?」と。

スマホも使って、データをデータベースのほうに配ってリアルタイムでデータを取る。これがだいたい30万円ぐらいかな。自分たちでつくることができないのでお願いしたんですけど、そんなものでできます。

SDカードとFlashAirはけっこういろいろできるんですよ。工場のほうからも、「それができるんだったら、あれも、これも」と言われて、今、絶賛売り込み中なんですね。

もう1個が、「今まで取れなかったデータを取ろう」ということで、エレベーターの運行情報は取れていたんですけど、環境情報が取れていなかったので、「温度、湿度、照度、このあたりのデータを取りたいね」という話で、BluetoothでIoTのセンサーから同じようにSORACOMでデータベース上に飛ばしています。

ビジュアライズのところは、「Tableauでも使ってみるか」ということで。

八子:この一番右のものは、ちょっとけしからんですね。

友岡:すいません。

(会場笑)

今日ちょっと話聞いて、「あ、Tableauをやめよう」と思いました。

(会場笑)

友岡:そんないいものあるなら、ちゃんと紹介してよ。営業は何やってるの?

八子:これ、本当に控え室で言ってましたからね。

友岡:そうです。ビジュアライゼーションは使わせてもらおうかなと思っています。営業の方、また後でよろしくお願いします。今日はこういう柔らかい感じでやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

八子:すでにろれつが回ってないような気がしますけど。

(会場笑)

気のせいですね。

友岡:すいません、ちょっと水が回ったようで。

(会場笑)

閉域網での集中型の管理を分散させていく

齊藤愼仁氏(以下、齊藤):僕、そんなにIoTの話を持ってきていないんですけど(笑)。

八子:クラウドネイティブですからね。

齊藤:そうなんですよ。でも、一応IoTの自慢しておくと、僕、日産のGT-Rに乗っているんですけど、GT-RにSORACOMを搭載して、常に連動してます。僕はそれぐらいの感じで、自分のためだけのIoTっていう。

僕、クラウドネイティブという会社をやっているんですけど、もともとデータセンターをつくったり、スパコンをやったり、スーパーコンピューターですね。GPUをやったり、Xeon Phiというコアプロセッサとかをやったりしていました。

スパコンっておもしろくてね。だいたい研究されている先生方に「おい、ちょっと愼仁くん。パソコンがほしいんだけど、見積もってくれない?」と言われて、「どんな感じのパソコンがほしいんですか?」と聞いたら、「んー、そうだな。メモリが512ギガぐらいほしいね」。「それ、パソコンじゃねーからな!」と。

(会場笑)

本当にそういう世界なんですよ。512ギガなんて底辺の底辺。もう本当、400テラとか、数ペタというのが当たり前の世界だったので、そういうものをやったりしていました。

それで、アイレットに転職して、AWS三昧ということで、ここで情報システム部門を自分で立ち上げて、主にセキュリティ・クラスタとしてセキュリティを、もう呼吸と同じで無意識にやっていました。

それから起業して、「これ、自分の会社の情報セキュリティや情報システム部だけやっていてもしょうがないんじゃないか」と思って、全部の会社の情報システムがもっと世界中でもできるんじゃないかと思って会社をつくったんですね。

(スライドを指して)こちらは僕のかわいいかわいい猫ちゃん。すだちくんというんですけど、御年10歳、人間の年で言うと65歳ですから、もうパイセンですよ。すだちパイセン。なんですけど、この「ロードバランスすだちくん」(齊藤氏のブログ)は、ちょっとふざけたタイトルですけど、けっこう真面目なITの話がいっぱい書いてあります。

八子:あれは真面目ですね。

齊藤:そうなんですよ。ちょうど1年ぐらい前ですかね、Wantedlyさんがちょっとあれだなと思って利用規約を叩いたら、えらいバズっちゃって、いまだにWantedlyさんの件でアクセスが多いですけど。アイレットさんのWebサイトよりも3倍ぐらいPVがあるWebサイト。

(会場笑)

ぜひ「ロードバランスすだちくん」、覚えて帰ってください。

僕が普段なにをやってるいかということなんですけど、情報システムってだいたい「左からの、右ですわ」ということで、だいだいこの閉域網で集中型の管理をやりたがるんですね。これを分散させていこうよということをやっています。

なぜかというと、全部説明するの大変なので、ざっくり言うと、右と左で同じところは、下のほうで勝手に使われ始めるというところを表していますね。

これをシャドウITというんですけど、勝手に使われ始めるシャドウITの部分を、エンドポイントセキュリティがきちんと効いて認証認可のガバナンスが聞いている状態だと、勝手に使われ始めるのもモチベーションがかなり変わるよという話をしています。つまり、権限を現場に委譲しつつも利用状況を把握する、という仕組みができるといいよね、という話です。

これをやるために、これだけのクラウドサービスを使ったりですね。なんなら、Cisco、Juniper、ヤマハ、そのへん全部やります。

それで、例えば認証認可、GoogleなのかActive Directoryなのかという話なんですけど、実はMac、Android、スマートフォン、Windows 10 Enterprise含めて、全部Azure ADで統合できます。こういったものも構築したりして、クラウドサービスをより活用できるような仕組みづくりをやっています。

八子:はい。このまま放っておくと30分以上しゃべっちゃいそうなので、もうこのへんで。

齊藤:止められなかったんで、いいかなと思って(笑)。

IoTとAI専門のWebサイト

八子:では、小泉さん、よろしくお願いします。

小泉耕二氏(以下、小泉):みなさん、こんにちは!

会場:こんにちは!

小泉:IoTNEWSの小泉と申します。よろしくお願いします。

IoTNEWSというのは、IoTとAI専門のWebサイトです。主につくっている人たちを応援するためにやっていますので、「まだうちが載ってないぞ」という場合は、ぜひ問い合わせのほうからクレームを入れていただくと私が駆けつけますので、連絡してください。

ウイングアークさんとは、けっこういろいろなお付き合いがあって。たぶんこのイベントに来られてる方はみなさんご存知だと思いますけど、島澤さんが対談したりするのを記事にしてさらにリーフレットにしたりしています。

それから、うちのサービスは、「メディアでどうやって儲けてるの?」とよく言われるんですけど、個人向けサービスとしてはプレミアムサービスというものがあって、だいたい冒頭に話された緑色の会社の方の本を1冊買わなければ実際に利用できるぐらいの金額で、個人向けの情報を提供しています。なので、迷った時はこっちを買う、と(笑)。

(会場笑)

法人向けサービスも一部やっていますので、またご利用いただける方はWebサイト見ていただければなと思います。以上です。

八子:はい、ありがとうございます。各人の自己紹介でございました。

テクノロジーとは、人間の機能の拡張

八子:まず、このパネルディスカッションでは、冒頭にお話したように、「テクノロジーで未来をどうやって変えていくのか? 変わっていくのか?」ということをディスカッションしていきたいと思います。

まず端的に一言で言うと、それぞれみなさん、テクノロジーって何ですか? どういうふうに解釈しておられますか?

友岡:まず人間の機能の拡張であるということ。

八子:ほう、人間の機能というと?

友岡:走るとか、見るとか、聞くとか。基本的に人間の機能の拡張を、テクノロジーによって行っていると思います。「その効用は?」というと、すべてのものをフラット化していって、民主化のためのドライバーというんですけれども、高いところにいる人や低いところにいる人が全部フラット化される。

個人だろうと法人だろうと、富める者から貧しき者も、どんどんそういう人たちがフラット化して、最終的にそれは民主化をものすごく進めるドライバーになるんじゃないかな、と思っています。例えば、昔は大学の図書館に行かないと、いい本って読めなかったじゃないですか。

八子:そうですね。

友岡:もうインターネットで、Googleで検索すれば手に入る。まあ、それは端的な例なんですけども、そういった効用があると思っています。

八子:能力を補完するものがテクノロジーというのは非常におもしろい解釈ですよね。 齊藤さんはどういうふうにお考えですか?

齊藤:僕は、そんなに難しく考えてなくて、親切心だと思うんです(笑)。

八子:親切心?

齊藤:結局、「自分が楽になる」「自分が稼ぎたい」「自分が出世したい」とかではなくて、他人や家族、他の会社とか、世界をよりよくしていくためにつくるものが、テクノロジーなんですよね。自分自身ではなくて他の人たちをよくしていこう、もっと楽にさせてあげようというふうにしていくのがテクノロジーだと思っています。

八子:人間の能力を拡張して、なおかつ、周りの人たちに対して親切であるというのがテクノロジーと。小泉さんはいかがですか?

小泉:そうですね。わりと人のできることを拡張するという側面が大きいかなと思うんですけれども、プラスするとすれば、さらに発展して、人ではできないこと、やりきれないことも可能にするためのものだと思っています。

ITを使って本当に勝とうとしているかどうか

八子:テクノロジーについての解釈もまったく違いますが、テクノロジーがあればビジネスとしては勝てるんでしょうかね? 個人の生活は豊かになるかもしれませんけども。

友岡:これは……私、今日はエンタープライズITの代表ということで。そういう人たちの世界で言うと、テクノロジーと言うときに、ツールと置き換えをするんですよね。

それで、道具と言った瞬間に2通りあって、鉛筆や消しゴムと同じ、文房具的なツールというふうに解釈してしまう人と、そうではなくて戦闘機みたいな、武器・兵器というふうに解釈する人、実は両極端に分かれるんですよ。

八子:身近なものなのか、非常にリッチな大きいものなのか。

友岡:「しょせんコンピューターなんて、ダメだ。フェイス・トゥ・フェイスで人と会わなきゃ」「行ってなんぼだろ」みたいな義理人情の世界ですね。これが実は人間の世界ではあるんですよね。

僕はどちらかというと、どっちもというのはあるんですけども、結局テクノロジーは人間の機能を拡張するので、その拡張する機能をうまく使いこなせる人と使いこなせない人では、2倍3倍ではきかない差が出ると思っています。それで勝てるかどうかということはまた別問題なんだけれども、勝てる確率は相当上がるということですね。

八子:自分のビジネスの領域において、能力がどんどん増加された人たちが増えれば、当然勝ちやすくはなりますよね。

友岡:そうですね。

八子:なるほど。齊藤さんはそこについてはいかがですか?

齊藤:情報システムの世界で、今時ITを使えていない会社が勝てるか勝てないかといえば、「まあ勝てないよね」という話なんですけど、勝とうとしているか、勝ちにいくかどうかが問題なんですよ。

八子:そうですね。

齊藤:だから、積極的にITを使えば戦える。なんなら自分と同じ業種ないしは近しい業種が、ITで戦おうとしているという実情を見ているかどうかは、すごく重要です。それで、本当に使いこなせる人がいるかどうかよりも、その人を集めようとしているかとか、自分がそうなろうとしているかのほうが、よっぽど大事なんですね。

例えば、道具の話ですけど、ホームセンターに行く。ホームセンターって工具がいっぱいあるじゃないですか。あれを全部使えるのが、つまり僕なんですよ。でも、そんな奴ほとんどいないんですよ。でも、ITの場合、使おうと思って行くかという人のほうが、よっぽど少ないんです。

要するに、鉛筆だったら「安いんだから買えよ」みたいな。「いやいや、月額1人3,000円もかかるのか。ふざけんな」みたいな、値段だけ見て決めてしまう。それは中身が見えていない。

だから、本当にどうやって戦おうとしているか、自社自体がどういうふうに変わろうとしているかということをイメージできていないと、そもそも道具の使い方がわからないんですよね。

八子:人の能力を強くするという友岡さんの主張もそうですし、齊藤さんの話からすると、それ以前にマインドセットが重要だというところですよね。

齊藤:そのとおり。

八子:しかも、ちょっとした小さな鉛筆を買う人たちもいるかもしれませんけど、齊藤さんみたいにいきなりチェーンソーを買いに行くような人もいるじゃないですか。

(会場笑)

齊藤:いやいや、買わない(笑)。僕は戦車買う。

(会場笑)

早いし、弾当たるし(笑)。

八子:やはり自信のある方はだいぶ発言が違いますね。

齊藤:(笑)。

八子:そういう意思がある人は「もっと強くなりたい」「もっと使えるようになりたい」「もっと能力を強化したい」と言って、やはりテクノロジーをどうやって勝つようなかたちで使うのかという方向に邁進しますよね。

齊藤:そうです。

テクノロジーをビジネスに活用するための3つのポイント

八子:そういうことだと思うんですね。小泉さんはいかがですか?

小泉:そうですね。おもしろくされると、何言うか忘れちゃうんですけど(笑)。

(会場笑)

八子:普通のことで(笑)。

小泉:あ、普通のことでいいですか。すいません(笑)。

テクノロジーそのものでビジネスをしようとしている人と、ビジネスの中でテクノロジーを使おうとしている人によって、まず差があると思うんですよね。それで、テクノロジーで勝負している人はもちろんテクノロジーがないと勝てないですよね。

私がすごく顕著だなと思うのが、昔聞いた話なんですけど、日の出の時間が違うことを利用して、各国世界で市場があるじゃないですか。ロンドンとかニューヨークとかね。いろいろなところで市場が開くタイミングのラグを利用して、株などの金融商品を売買する人たちがいるらしいんですけど、そういうことは本当にテクノロジーありきじゃないと、そもそも思いつかないですよね。

でも、ビジネスの中でテクノロジーを使おうと思うと、そこそこのところまではわりと人真似でもうまくいったりするんだと思うんですけども、そこから先の部分は、ただ真似しているだけではうまくいかない。なにかそのさじ加減がきっとあるんだろうなと思っていて。

うまいところで見極めていくと、テクノロジーでやはり勝負がつくところとつかないところが見えてくるのかなと思いますね。

八子:能力が増強されて、意思もあるんだけれども、プロレスラーで言うと負ける人たちもいるわけで。それからすると、勝てる領域を見極めながら、「ここだったら、テクノロジーを適用すれば勝てるんじゃないか」というところを、戦車で言えば重装備になった状態、自分の能力が拡張された状態で攻めていく。そしたら勝てる。そういう話でしょうかね。

小泉:はい、そうですね。

八子:単純に使えばよいというものでもないことは、みなさんも自ずとはわかっておられるかもしれませんけれども、今の3つの観点というのは、極めて重要なメッセージなんじゃないかな、と思います。

能力を上げましょう。でも、意思がいりますよ。ちゃんと見極めたところで、テクノロジーでレバレッジが効くところで、きちんとビジネスをやっていかなければなりませんよということを、今おっしゃっていただいたんですね。

勝てる企業と負ける企業

八子:それをベースにしていただきたいと思うんですけども、じゃあ、勝てる企業と負ける企業を具体的な社名をもっておっしゃっていただければ……あ、ここは写真不可でお願いしますね。

(会場笑)

小泉:本当に社名で言うんですか?(笑)。

八子:それで、大変申し訳ないんですけど、会場にその会社の方がいらっしゃったとしても、ここだけはご容赦いただいて、後で出口のほうで殴っていただければと思います。

(会場笑)

いかがでしょう? 友岡さん。勝てる企業、まあ、フジテックは入りますよね? 勝てる企業にね。

友岡:がんばります。若干元気がなくなっているんですけど。

八子:いやいや(笑)。

友岡:日本の企業全体で、とくに大手の企業を情シスというところで見た時に、今、「イケてる情シス」と「イケてない情シス」の両極端に分かれているんですよ。

2010年ぐらいまでは、ERPを入れた後のサプライチェーン。ここまでは情シスはがんばれたんですね。なぜサプライチェーンでがんばれたかというと、生産管理と販売管理は、もともとあるシステムをインテグレーションすればSCMできたんですね。その両端を持っていたわけです。

今IoTになって、情シスはぜんぜんダメですよね。なぜかというと、IoTになると何が起こるかというと、製品をつくる開発・設計という領域と、サービスの領域がつながってくる世界なんですね。その開発や設計に情シスはほとんど入れていないから、邪魔者扱いなんですね。

八子:そうですね。

友岡:CADでさえも触らせてもらえてないし、PDMも入らせてもらえていない。それで、だいたいUNIX使いがたくさんいるので、メールサーバも自分たちで持っているとか、「情シスいらねーよ」みたいな。そういう人たちに、情シスは入れていないんですよ。

サービスはというと、今度は放ったらかしにしすぎているんです。サービスの人たちはなにかを売るところまでで、売った後のところは、実はすごく放ったらかしにされているんですよ。

八子:そうですね。

友岡:ERPも間尺に合わないし。利益率は高いんだけど売上が小さいので、どんなITシステムを入れても合わないんですよ。だから、どうしても放ったらかしにしているんですね。それでなにが起こるかというと、「俺たちは見捨てられたんだ。自分たちでやる」という。

この見捨てられた人たちと放ったらかしにしている人たちをつなぐのがIoT。スマイルカーブで言うと、一番上のサイド。そこに実は情シスは両手がぜんぜん伸びていないので。

今、IoTと騒がれたときに情シスになにができるかというと、「ネットワークぐらいかな?」「セキュリティぐらいかな?」、そこしかできていないというところがすごく差が出ています。

イケてる企業は情シスがいいのかというとそうではなくて、そのイケてない情シスを完全に放ったらかしにして、事業をどんどん好きなようにやっている。ここがやっぱり勝てているんですよ。

八子:なるほど。

友岡:この差はありますね。情シスに引っ張られている企業が負けていますね。

八子:フジテックはどちらなんですか?

友岡:フジテックはどちらかというと、僕が入って、情シスをどちらかというとドライブかけているので、情シス側がいろいろなことを仕掛けているんですね。まあ、尻叩きをしてるという感じです。

八子:ということは、現場が動きつつあったところを、情シスがちゃんとブリッジをかけていっている、という勝てる企業ですよね?

友岡:がんばります(笑)。

八子:はい(笑)。勝てる企業であるという解釈をしたほうがよさそうです。

未来を描いてジワジワとステップを踏む

八子:齊藤さんはいかがでしょうか? 勝てる企業と負ける企業。でも、社名はほどほどにしておいていただけたらと思います。

齊藤:勝てる企業になるのは簡単ですよ。僕がコンサルで入っている企業は全部勝てます。

(会場笑)

八子:後ほど入口で名刺交換していただいて。

(会場笑)

入った会社はどこなんですか?

齊藤:……あれ、言っていいのかな? これ(笑)。

友岡:言っちゃえば(笑)。

齊藤:○○○○さんとか。

友岡:あー、○○○○さん。

齊藤:○○○○さんとか。

友岡:いい会社だね。みんなメモ取ってるよ(笑)。

齊藤:○○○○さんとか。

八子:え、それ勝てる企業ですか?

友岡:勝ってますね。

齊藤:○○○○さんとか。

八子:齊藤さんが入るだけで勝てるんですか?

齊藤:当たり前じゃないですか。呼吸と同じですよ。

八子:最強の武器を導入していくんですか? もしくは、マインドセットを上げていく?

齊藤:両方です。僕がやるのは、基本的にはまずは物理の世界から入ります。基本的にオンプレがあるので、オンプレをいかにして活用していくかということをやります。捨てにはいかないです。

なぜなら、それでみなさん業務が回っているからそこにあるわけで、それをいきなり捨てるという提案はドラスティックすぎるんですよ。まあ、別に捨ててもいいといえばいいんですけど、なるべくきれいに上げられるような、その会社ごとの情報システム部だったり現場の人がついてこられる体力に合わせて、少しずつ変えていくようなシステムにしますね。

それで、もちろんAzureの話だったり、AWSの話だったりというところで使えるところも展開していきますし、なんだったらそれぐらい大手の企業になると、勝手にやっている若い連中がいるんですよ。これを拾い上げて、もっと前に出してやるんですよ。そういうのも、現場はぜんぜん拾えないので。

八子:先ほどのシャドウITをやっていたり。

齊藤:そうなんですよ、わからないので。それをどんどん拾い上げて、統制をかけていくということをしています。その統制というのは制限という意味ではなくて、「より積極的に使いなさい」という、そちらのほうの統制ですね。可視化して制御できると、使えるようになる。「誰に審議を通さなきゃいけない」「誰に申請しなきゃいけいない」みたいなことも、全部ITで解決してあげるという感じですね。

八子:だから、あまり一足飛びに高いところを狙っていないんですよね?

齊藤:ただ、未来は必ず描きます。必ず「こうしましょう」という未来は描きますけど、そこまでにいくためのステップは、必ず少しずつやって、ジワジワ作戦です。これは友岡さんから教わったんですけど、「ジワジワいけ」という。

八子:それと、先ほどの勝ちつつある企業さんというのは、実際に齊藤さんのアプローチでやっておられるわけですね?

齊藤:そうですね。結局、縦割りがひどくてコミュニケーションが取れないんですよね。「サーバ部門です」「ネットワーク部門です」「セキュリティ部門です」「自分たちの関係ないところはやりたくないです」って。「おー、わかるわかる」っていう(笑)、「それはわかるけど、そこ全部ワンセットにしないと、ITって活きないじゃん」という話なんですよ。そのあたりをきれいにまとめるという感じですね。

IoTで成功するカギは「ビジネスプロセスを再定義できるか」

八子:ありがとうございます。小泉さんは、いろいろな事例を知る立場からは、どんな企業が勝てる企業で、どんな企業が負ける企業か。とくに負ける企業を聞きたいな。

小泉:ええと、事業会社とソリューション提供会社でやることが少し変わってくると思うので。

八子:まあ、そうですね。

小泉:IoTを見ているので、事業会社とソリューション提供会社で、やっていることがそれぞれ違うわけですよ。

ソリューション提供会社は、わりと従来のIT企業が多くて。そういう人たちって、これまでわりと、自分たちが知っている知識量が多くて、知識量が少ないお客さんに対して、自分たちの知識や技術を入れていくタイプの企業が多かったと思うんですね。私はこれを情報弱者のビジネスだと思っているんですけど、そういうことが多かった。友岡さんのところみたいに情シスが強いところは別でしょうけど、普通はそうじゃないわけですよね。

そういうビジネスをやってこられたかもしれないんですけど、IoTの世界って、先ほど話が出ましたけど、事業部門に対して提案することになるので、そういうことが通じないんですよね。

なぜかというと、やはりわからないことが多いのは変わらないんですけれども、自分たちの商売にプラスになるかマイナスになるかはきっちりわかる人たちなんですよ。そうすると、ただ単に「ツールを入れれば儲かりますよ」という話が、まず通じないわけですね。

だから、自分たちの持っているものが、本当にそのビジネスに通じるものでないと、まず受け入れられないところが来ているということが重要で、それができない会社はまず負けるでしょう。

もう1個だけ話させてください。事業会社のほうは、ビジネスプロセスを再定義してほしいんですね。自分たちの持っている市場環境だったり、あるいは自分の会社が取り巻いているビジネス全体ですね。

例えば洋服を売っている会社であれば、みんな洋服を売るところだけ見るんですけども、洋服をつくる過程だったり、布を仕入れるところだったり、あるいは、売った後にお客さんがどういう生活しているか、といったことですね。

そういう自分の事業を取り巻く環境全体を見まわした時に、自分たちの業界が再定義できる可能性があるわけですよ。そういう全体を見回して再定義できるところを見つけた人たちが、今までなかったところのサービスをつくれることになるので、そこはもう圧倒的に勝ちますよね。

IoTの成功事例初期に出ているものは、ほとんどこれです。今まで手つかずだったようなところで、自分の足元しか見てなかったような人たちが、自分の足元から目を上げて、周りを見た時に成功しているというケース。だいたいそうなっています。

八子:ありがとうございます。そういう意味で言うと、全体を見直していくというのは1つの部門ではなかなか取り組めないですよね

小泉:そうですね。

IoTの時代はサイロ型から脱却しなければうまくいかない

八子:今、友岡さんがおっしゃっていたバリューチェーンの上流の部分と下流の部分を、友岡さんが入ったことによって情シスが結びつけていくというお話でしたし。齊藤さんがお話しされたのも、サイロ型になっている情報システムの担当を超えて、いろいろなものを結びつけていくというお話でした。小泉さんのお話も、いろいろな業務の1つのポイントだけではなくて、業務全体を見回して、きちんとそれを結びつけていくというアプローチのお話をされていましたね。

だからみなさん、すべてがつながるIoTの時代、デジタルの時代は、少なくともこの分離されている、分割されている、サイロ型になっている、みなさんが目先のことだけに注目をしているところから脱却をして、それをまたがるようなアプローチで改善・取り組みを進めなければ、少なくともうまくいかないということを、お三方はおっしゃったわけですよ。

これ、解釈が違っていたら、後で僕が殴られるんですけどね。そういうことですよね?

友岡:実際につながろうと思うと、自分たちがまず出かけて、人間的につながらないと、つながらないんですよね。

八子:そうですよね。だから、友岡さん、日々飲んでおられるわけですよね?

友岡:あー、そうですね。

(会場笑)

八子:大きな会社で常務にもなられる方が、本当に現場まで下りていかれて、人と人ともつないでいくというか。

齊藤:結局、なにが原因かわからないですけど、それに気づいて、それをまとめる部署をつくった会社があるんですよ。ここ、完全にオフレコですけどね。

縦割りすぎて、自分ところのクラウドサービスがうまく機能しなくなっているということがあったり、トラブルの対処もすごく遅くなったり。それをまとめる上級のエンジニアの人たちを集める部署をつくってやったら、なにが起きたかというと。

ネットワークチームの上流の人たちが敵に行くんですよ。「ネットワークは、サーバとつながってやってください」「いや、それ関係ないんで、僕やりません」とか言って、それで終わっちゃったんです。結局、だからまとめられなかったんですよね。ただ部署をつくったという経営では、ダメなんですね。

八子:そうですね。もう1つ、サイロ型されたところをつくっただけですね。

齊藤:そうそう(笑)。それではぜんぜんダメで。それはもう本当に失敗事例だと思っています。だから、経営側があまり現場のことを見ていないなという感じはしましたね。

オペレーションを完全に掌握しているユニクロ柳井氏

友岡:すごく変わっていたのは、ファーストリテイリングにいたんですけど、トップの柳井さんが、隅々までのオペレーションをものすごい細かいところも完全に掌握していますよね。だから、そういう企業が勝てるんじゃないですかね。オペレーションを完全に掌握しているところが。

八子:掌握している。

友岡:そこは……「ITわかんない」「オペレーションわかんない」と社長が言っちゃダメなんですよ。言っちゃう会社は、もう絶対に勝てないです。

八子:勝てないですよね。

友岡:はい。

八子:結局、先ほどの話と関連づけると、能力を増強する気がない、能力を増強しようと思っていない社長だったら、それはもう完全にアウトですよね。しかも全体を把握してないという話になると、まさにそうだと思いますね。

そういう意味で言うと、日本企業はそもそも大丈夫なんでしょうかね? それを友岡さんにおうかがいするのもちょっとおかしな感じがしますけども。

友岡:僕は2周遅れになってしまっていると思うんですよね。

八子:2周遅れ。

友岡:ええ。それで、さっきの鉛筆(笑)。「まだITは鉛筆だ」というスタンスの方が、半分ぐらいいらっしゃるんですね。「竹やりだけで戦えるんですか?」というのは、すごく心配ですよね。

あとは、情シスで一番よくないのが、「ROI、ROI、ROI」。だから、僕は執行役員だからある程度お金を使えるんですよね。ROIの外側で、僕の使えるお金で「これ、もう遊んじゃえ」ということで。

それは、例えば一流バッターでさえも3割ぐらい当たればいいんですからね。柳井さんは『一勝九敗』といって、「だいたい10のうち1勝てばいい」と言っているんだから、回数をとにかく増やさないと。打席に立つ数を増やすのがすごく重要なんですよね。

八子:本当にそうですよね。

友岡:だから、小さいお金でもいいから、いくつかの小さな取り組みを、とにかくROIを問わずにやってみて、そこからいくつか芽が出るという回数をとにかく増やす。これをやっている会社とやっていない会社でものすごい差が出ると思います。

僕もそこはすごく意識していて。やはり早い会社は絶対に勝てるので、そこのスピード感を僕はものすごく意識している。そのスピード感というところでは、お金を考えるのがすごく難しいんですよ。

八子:難しいですよね、はい。

友岡:ROIをやっている限りにおいては。だから、ROIは置いといて、一番有限な資源である時間というものに対して、もっと鋭敏な感覚で取り組まないと、本当に取り返しがつかないなと思います。そのことに気づいている会社と気づいてない会社は、真っ二つに分かれると思っています。

八子:複数年、複数回のトライに対して、ある程度の回数あたりのROIというんでしょうかね、そういうリターンは意識してもいいかもしれませんが、一つひとつに対して、非常に微分のところであーだこーだ言ってもしょうがない話ですよね。

日本企業の契約形態がビジネスを遅くしている?

八子:齊藤さん、いかがですか? 日本企業は大丈夫ですかね?

齊藤:僕が十数年前にハードウェアをやっていた時から言われていた話なんですけど、アメリカから基本的にモノが来ます。シリコンバレーとかね。例えば、「新しいIntelのプロセッサが出ました」「なんかテクノロジー来ました」という。当時はクラウドとかがない世界なんですけど。

それが、「日本に普及するのに3年かかる」と言われるんですよ。アメリカでどんなにいいものが出たり、インドでいいテクノロジーが出ても、日本に来ると3年かかる。本当にそのとおりだったんですよ。

それで、今どうなっているかというと、クラウドの世界でよりインターネットが普及して、誰しもがインターネットを使える世界になったんですけど、これはもっと広がっているんですよ。4年も5年もかかるようになっている。「なにが原因かな?」と思って。

1つは契約形態なんですよね。例えば「1つの製品を契約します」「アンチウイルス1個買います」「WindowsのCAL買います」とか、なんでもいいんですよ。なにか買う時に、3年とか5年で契約するんですよ。

この契約するまでのROIの資料づくりもそうなんですけど、稟議を通すためのプレゼン資料をがんばってつくったり、価格交渉したり、さんざんやるじゃないですか。「3年でこれでキャッシュ精算できる。5年だったらこれでキャッシュ精算。3年プラス3年で……」みたいなことをやるんですけど。事業速度を遅くしているのは自分たちなんですよ。

それで、買ったら買ったで落ち着いちゃうんですよ。買い終わっちゃうと、評価しないんですよね。だから、それがどんな効果が出ているか、何十億、何百億とかけて、ものすごく大きなものを買って、5年分ロックインしました。それで5年間「もう買っちゃったから、他のもの買えません」なんですよ。

それは、本当に自分で自分の首を絞めているようなもので、少し高くてもいいから、契約形態をどんどん縮めていかなきゃいけないんですよ。

八子:小さなタイムでね。

齊藤:そう。だって今、従量課金ってクラウドの世界で当たり前ですよね。「分」ですよ。1分で課金なんですよ。契約が1分サイクルなんですよね。そんなの、ありえないですよ、5年と1分の差なんて(笑)。もう雲泥の差なので。なるべくそこを縮小して、身動き取れるようにしていかないと、世界の変化はあまりにも激しくて、そこにはまったく追いつけないですね。

八子:だから、やはりものすごく、自分たち自身で自分たちを閉じ込めてしまうような契約形態になっている。小泉さん、そこについていかがでしょうか?

小泉:この場にふさわしくない話かもしれないんですけども、IoTは基本的には、既存の産業が絶対に活躍すると思っているんですね。例えば、もともとある製造業とか、農業でもなんでもいいんですけども、そういう産業が活躍すると思っていて、そういう意味ではすごくチャンスが多いんだろうなと思っています。

なぜかというと、それなりにマーケットシェアがある会社が、それなりのことをやれば当然それなりの結果が出ますので。なにもないところから新たになにか事業を興すってすごくエネルギーがいりますよね。

例えば、Tesla。みんな「すごい」と言っているけど、Teslaの販売台数ってトヨタの比ではないじゃないですか。確かにすごいんですけども、すごいからといって既存のマーケットを極度におびやかしているわけではないんですよ。

大事なことは、「じゃあ自分たちがそれで安泰か」と思ってしまうとやはりダメで、お二人がおっしゃるように、デジタルの世界はみなさんが思っている以上に進んでいます。さっき、分だ、秒だという話が出ていましたけど、すごく高速なんですよね。

八子さんはご存知だと思いますけど、私が20年前にAIの研究をしていた頃にスーパーコンピューターでも1週間かかっていたことが、今、クラウドにポンと投げると1時間ぐらいで返ってきたリするわけですよ。

それぐらい処理速度が上がっているコンピューターがある状態で、それを活用しないでなにかの処理をしている人たちと、活用して処理をしている人たちの間だと、優に1週間ぐらいの差が出るわけですよ。わかりやすい話ですよね。

なので、今ある環境に対して、自分たちのビジネスドメインをどういうふうに変えていけば、新しい世界に行けるのかということを、自分たちの中できちんと作戦を立てなければいけない。

なのに多くの大手企業は、「改善をするのが大事だ。今、自分たちの足元に見えていることをやらなくてどうするんだ」ということを必ず言うんですね。それは確かに大事なんですよ。「やらなくていい」なんてぜんぜん思っていないです。

でも、自分たちのキャッシュのうちの何割かは新しいことに向けるとか、何割かの人材は新しいことに向けるということをやらない限り、それはどんどん改善していけば、今やっていることは研ぎ澄まされるかもしれないけれども、まったく新しい波がやってきたら、ザバンと飲み込まれて終わりですよ。

これがたぶんこの10年間、クラウドの世界に飲み込まれた日本の実態だと思っているわけですね。

だから、みなさんたぶんチャンスはあると思うので、どういうふうにマインドセットを変えていくかということが、日本企業が勝ち抜くためのポイントだと私は思います。

とにかく「やってみなはれ」

八子:ありがとうございます。ちょうどお時間にもなりましたので、最後に簡単に一言だけいただければと思います。

友岡:私の大尊敬する松下幸之助さんがいつも言っていた言葉で、「やってみなはれ」ってあるじゃないですか。これですよね。

八子:そうですよね。

友岡:「やってみなはれ」を上の人が、部下の方々に言ってほしいなと思いますね。

八子:ありがとうございます。齊藤さん、いかがでしょうか?

齊藤:本当にまったく同じですね。とにかくやることですよね。自分で体感して、自分で体験をして評価できないと、まったく説得力がないので。とにかく小さい規模でもいいので、とにかくやってみる。それで、結果がどうだったかを評価しましょう。

八子:小泉さん、いかがでしょうか?

小泉:そうですね。モノの見方を変えましょう、ということですかね。今までどおりのモノの見方をしているだけだと、やはりなにも変わらないので、ぜひいろいろな方とぜひ話し合っていただいて、モノの見方を変える習慣をつけたらいいと思います。

八子:ありがとうございます。短い時間ではありましたけれども、非常にエッセンスの濃いお話がお三方から聞けたんじゃないかなと思います。

テクノロジー自体がみなさんの能力を増強させるものであるというところは、共通認識だと思いますけれども、意思を持って、ちゃんと勝てるところで使わないと難しい。なおかつ、どんどん早いスピードで、いろいろなことに対してトライ&エラーをしていく。そして、それに対して、小さなことに対して目くじらを立てて、失敗したであるとか、効果を問わない。

そして、見方を変えて、経営の観点で、どういうかたちでどこをどんなふうにつないでいけばいいのかという、サイロ型になったところをどんどんつないでいくことによって、大きな効果をもたらす、ビジネスの変革をもたらす。

それがテクノロジーで将来勝ち抜くための、1つのポイントなんじゃないかなというところが、今日この場で話し合われたお話なんじゃないかな、と解釈をさせていただきまして、このパネルディスカッションを終わらせていただきたいと思います。

もう一度お三方に、盛大な拍手をお願いいたします。

(会場拍手)