銀行がスタートアップにお金を貸し始めている

亀山敬司氏(以下、亀山):話を戻すと、さっき銀行の人と会って、スタートアップの人を紹介してあげたのよ。

投資だけで集めたら、だんだん株価が薄くなってきて、最後には10パーセント、20パーセントになってしまうこともあるじゃない? でも、安い金利でお金を貸してもらえるのなら、それが一番いい。だから、スタートアップの人たちに、銀行の人たちを紹介してあげたのね。そして今どんな状況かを聞いたら、大手銀行は、けっこうアチコチ貸してるのよ。

俺も紹介はしたけど、例えばメルカリみたいなところだと貸しても大丈夫だと思うけど、ほとんどが潰れちゃうという話をしたんだよね。VCなら、10個の投資のうち、1つが100倍になれば割に合うわけだけど、貸付だと、金利がせいぜい2〜3パーセントしかもらえないわけよ。

「そんな貸し方をしていたら、後々事故るのが多いよ」「そもそも、リターンが少ないんだから」と言っていたら、その銀行の人の話によると、「いや、今は上から“スタートアップにドンドン貸せ”と指令が出ているんです」と言うんだよね。

今、金融庁の方からお金を出しなさいと言っている。貯めこまないで、どんどん貸しなさいと言われている。でも、貸す場所があまりないのよ。

さらに、「スタートアップのような若い人を支援しなさい」という政策が出ているから、昔なら絶対に貸さないような会社に、お金を貸すようになってきている。だから今、銀行の人に「スタートアップです! がんばります! 燃えてます! このグラフを見てください〜」と言うと、けっこうお金を貸してくれるんじゃないかというのが、俺の印象なんだよね。

ただ、どうかな? お金を借りるときは、個人保証とか入れるから大変だよね。

片桐孝憲氏(以下、片桐):入れてます。

亀山:山川さんも、入れてる?

山川博功氏(以下、山川):一応、入れてます。

亀山:結局、VCを入れても、別に借金を背負って自己破産しなくていいじゃない。でも、借金するときは「保証人になれ」と言われるから、最後には家まで取られちゃうというのが、やばいところだもんね。

片桐:でもまぁ、もともとなにもなかったんで。

山川:まったく同じ意見です。

亀山:なるほどね(笑)。

片桐:なにもない。でも、事業があって、ちゃんと売上が出ている。出ているというか、出ると決まっていると思えたら、金は借りられるだけ借りたほうがいいんですよ。借りられるんだったら。

亀山:そうだね。借り続ければいい。

片桐:別に家まで取られてもいいんですけど、取られる家がないという(笑)。

IPOのメリットは「名刺に番号が付いている」

亀山:今はVCでもいいけど、けっこうお金を借りられる印象だよね。俺だったら絶対に貸さないという会社にも貸していたからさ。

それで言うと、全部はできないだろうけど、「何パーセントはVC、もう何パーセントは借り入れ」で補うのは、今の時代はけっこうありかなと思うよね。世の中けっこう、おカネ余ってるよね。

それだけ余っていても、俺には貸さないんだよね、なかなか(笑)。

(会場笑)

悪くない決算書も全部見せているのにさ、なかなかね。ここが大変なところで。

最近、地方銀行とか優しくなってきて、そういうところはけっこう貸してくれるようになって、ちょっとずつ雪が溶けてきた。なので、あまり銀行をディスるのはやめようと思います。銀行は、なかなか最近いいふうになってきました。いい人たちになってきた気がする(笑)。

じゃあ、次いきますか。「みんなでIPOを褒めよう」と。あまりやり過ぎると、IVSに来にくくなる。だから、いいところを、ちょっと褒めてみようか。俺たちは、また来年もIVSに来なきゃいけないから、どうぞ!

え、困ってる?(笑)。褒められそうなところからでいいよ(笑)。大丈夫?

山川:あれじゃないですか。人材じゃないですか?

片桐:いや、違う。たぶん。名刺に番号とか付いているじゃないですか。

山川:いや、それいらないっすね〜(笑)。

亀山:あれカッコイイよね。

片桐:あれカッコイイっす(笑)。

山川:そうっすか!?

亀山:同じじゃない。あれを見て、親が「ああ、うちの息子は上場会社に入ったんだ〜」と言うとさ、「よくぞやった」じゃない。「DMM!?」となるより、「上場会社の◯◯」のほうがいいよね。だから、人材いいんじゃない?

山川:人材はそうですね。名刺にはいらないですね。どこで配るんですか、その名刺?

亀山:キャバクラ!

山川:(笑)。

亀山:むちゃくちゃモテるよ。モテ度が1.5倍くらいになると思うよ(笑)。

片桐氏「もともと上場企業を作りたかった」

光本勇介氏(以下、光本):うちは上場企業に3年間所属していたので、メリットをすごく肌で感じているんですけど。

亀山:おー! おー!

光本:いろんな商談があるじゃないですか。「ここと提携したいな」といった交渉のときに、「これ大丈夫ですか」「あれ大丈夫ですか」といろいろ言われるんですけど。「大丈夫です。一部上場企業のグループ会社なので!」と言うと、だいたい話が通る。

亀山:あぁ、なるほどね。やはりその信用はでかいね。

光本:信用はでかいですね。取引してもらえるし、手数料なども圧倒的に低くしてもらえる。

亀山:独立したら、また元に戻っちゃった?

光本:そうなんです。グループを出るのが決まったあと、数ヶ月の間にあらゆる会社と商談して、手数料を可能な限り下げてから出ました(笑)。

亀山:なんか、おいしいところばっかり取ってから独立したんだ(笑)。

山川:えぐいな(笑)。

光本:あれですね、イメージが悪いですね(笑)。

亀山:なるほど(笑)。じゃあ、今はまだBASEのほうがモテるんだね。どっちかと言うとね。BASEは、VCが山ほど入ってなかったっけ? そこからIPOを目指すかどうかは、俺は知らないけどさ。

光本:協力者がいっぱいいますもんね。

亀山:そう、協力者。協力者っていいもんかね? ほら、投資してくれると、協力してくれるもんなのかな?

光本:いや、僕は出資を受けたことないんでわからないのですが(笑)。

亀山:どちらかというと、今は事業会社の投資が多いよね。お金を出したがる人が集まってきたとき、結局のところ、お金がほしいのか、取引が欲しいのか、みたいなところがあるじゃない。

スタートアップからすると、「どこからお金をもらっていたら自分たちが有利か」を考えるとき、例えば、ヤフーや楽天みたいなところだったら、トラフィックがもらえたりする。そういった、お金をもらうだけじゃないメリットがある。プラス信用みたいなものもあるよね。「ヤフーさんが入っているなら、ちょっといいよね」と思われると、入れやすいっちゃ入れやすいよね。

一方で、ゲーム会社などの投資ファンドが、ゲーム以外の事業に投資しようとすると、あまりシナジーを感じてもらえない。「俺たち、ゲーム関係ないかな」となって、どちらがバリューを大きく見てくれるかという話になる。そうすると、割りが悪いというか、お金を出す側も不利な気がするんだよね。

……と、わからない者同士が言っていてもしょうがないよね(笑)。「どうなのかな」と、逆に聞きたいくらいなんだけどね、そのへんはね(笑)。

「本当はIPOに憧れている」とかないの? もうちょっとくらい褒めてよ。

片桐:僕は、すべての会社は上場を目指したほうがいいと思っていて。本当に。

亀山:おぉ!

片桐:僕は、もともとは上場企業を作りたかったんです。作りたかったんですけど、pixivという事業自体が、あまりにも上場に向いていないというか、フィットしていなかったので、「上場は無理だよね」となったのが、今現在です。

もし僕が求人サイトや不動産など、上場に向いていそうな事業をやっていたら、すぐ上場して、鐘を鳴らしまくってましたよ。

亀山:(笑)。たしかにね。実際に中古屋さんだったら、IPOなんて頭から考えないよね? 

山川:中古車屋さんはないですね。だけど僕は、今のビジネスになってからは、お話をいただくことがものすごく多いですね。

亀山:それはITが絡んできたから?

山川:そうですね。

ITのみなさんは恵まれすぎている

亀山:結局さ、今、お金を出してもらえるのは、はっきり言ってITくらいなのよ。だって、俺の知り合いのラーメン屋や建築屋には、VCなんて誰も行かないもん。エンジェルなんてのはいないよね。

だから、恵まれてるっちゃ恵まれているよね。どうなるかわかんないようなITの世界でさ、初めからお金を出してもらって、個人保証を入れなくてよくて、スったらスったで誰にもリスクを負わないというか、怒られないわけよ。 怒られるかな? 怒られるかもしれないけど、「弁償しろ」とは言われないしさ。

その中で言うと、ITのみなさんは恵まれすぎている気はするよね。「よくこういう若造に出すな」と思うくらい、みんな思い切って出してくれるじゃない。これはすげぇ感謝しなきゃいけないことなんだよ。ふつうの業界にはないからね。

俺は飲食店やビデオレンタル店をやっていたとき、信用金庫へ行って、個人保証して、保証人を親戚に頼んで、やっとお金を借りて始めたりしているもんね。片桐もサラ金へ行っていたわけだからさ。もう、やり方としては、それしか手がないんだもんね。

それで言うとさ、VCはやっぱり素晴らしいよね〜!

(会場笑)

いやいや、本当に(笑)。感謝すべきだよ、みんな! 俺は思う。

今、俺はアフリカにちょこちょこ投資しているんだけど。アフリカでは、あまりIPOを聞かない。上場の市場があるのか、ないのか、知らないくらい。

山川:ケニアは一応あります。

亀山:ケニアや南アフリカはちょっとあるのかな。でもね、まだまだないんだよね。俺も次はアフリカで「東証」ならぬ「亀証」みたいなやつを作りたいな。

一同:(笑)。

亀山:株の交換所ね。俺が市場を作るからさ。日本は高いし、スタートアップはいい気になりすぎているし、VCのみなさんも引き上げて、一緒にアフリカへ行こうか(笑)。

俺はこの間、ルワンダで電子マネーのサイトとIT系のやつを今、買収の話で進めているんだけど。そこには、海外に逃げていた人間が帰ってきたりしているわけよ。昔の中国みたいなもので、優秀なエンジニアもけっこう集まってきている。

だから、もう日本にいてもあれだから、アフリカに行ってさ、もう1回、投資とIPOの世界を作り直すというのは、今の日本以上に社会的意義がある気がするね。

向こうの若者に「なんでスタートアップしてるんだ?」と言ったら、「就職先がないから、自分でやるしかないんだ」と言うわけよ。こっちのスタートアップみたいに、チャラチャラしていないのよ。

(会場笑)

もう崖っぷちで、仕事がないから「しょうがないから自分でミカン売ります」みたいな感じで、パソコンを叩いてるわけよ。そのへんで言うとさ、アフリカの市場とか、ちょっとおもしろいなと思うんだよね。