300万の甲冑が予約完売
楽天市場のヒット商品に見る、AIのマーケット予測の可能性

人工知能時代に向けた、金融ビジネスと人の進化 #2/2

CEATEC JAPAN 2016
に開催
2016年10月4日〜7日の3日間にわたって、「CEATEC JAPAN 2016」が開催されました。カンファレンス「FinTech 最前線〜CPS/IoTで変わる金融の世界〜」に登壇した、楽天株式会社・森正弥氏は、「人工知能時代に向けた、金融ビジネスと人の進化」をテーマにプレゼンテーションを行いました。

コンクラーベに見る人類の進化

森正弥氏:なぜ人工知能が必要なのでしょうか? こちらの写真がどこで撮られた写真かおわかりになる方はいらっしゃいますか? ありがとうございます。

この写真はまだまだいけるなということを確認できたわけですが(笑)、これはバチカン市国で撮られた写真で、いわゆるコンクラーベに集まった人たちです。

コンクラーベとは何かというと、ローマ法王がなんらかの事情で退位されたり亡くなられたときに、次のローマ法王を決めなきゃいけないと。

とくに、ローマ法王の空位はあってはならないということで、間断なく次のローマ法王を決めるために、枢機卿の方々が会議室に閉じ込められて、次のローマ法王を協議して決める。

その進捗が建物の上のほうから、煙で表現されるんですね。「新しいローマ法王が決まったよ」とか、あるいは「まだ議論が継続している」みたいなものです。

それを、次のローマ法王が決まった瞬間を目撃するために集まった方々の画像になります。これは2005年の写真なんですが、コンクラーベは2013年にもありまして、2005年がこうだった。2013年の写真はどうなったかというと、2013年の写真はこうなった。

でも、今年はポケモンGOという恐ろしいものがあったので、もうこんなものでは衝撃を受けないという空気感ですよね、みなさん。

ただ重要なことは、ここで冒頭の「AR-HITOKE」を思い出していただきたいのです。ここでみんなが持っているのはスマートフォン、あるいはスマートデバイスなんです。それは常にインターネットにつながっている。

先ほどの「AR-HITOKE」も、実際歩いてぱっとかざすだけで、誰が買っているのか、どの世代が買っているのか、実際に使ったときはどうなのかという情報を手に入れるわけですね。この2005年の人々と2013年の人々というのは、本質的に違うわけです。

2005年の人々というのは、その場に集まった人たち。そこにいる人たち。まあ集団なわけです。

2013年は、もはやこれは集団ではない。一人ひとりなわけです。なぜか? もしかしたらLINEで友達とリアルタイムに「ちょっと今、煙が上がってるぞ」とか会話しているかもしれない。YouTubeやUSTREAMやニコ動でライブ中継をしているかもしれない。近くの聖職者の方を指して「あのファッションかっこいいな」って探しているかもしれない。Wikipediaで「コンクラーベってそもそもなんだっけ?」って調べているかもしれない。

上の2005年の方々と下の2013年の方々というのは、本質的に違う。下の方々というのは、世界中の友達と、あるいは知識と、常にオンラインでつながっているということです。

我々がユーザーのお客さまの情報を分析していくなかで、これが如実に購買行動の大きな影響として出てきているということがわかってきているわけです。それはなにか? 人々というのは、一人ひとり個別化している。多様化している。そして、情報の非対称化をしている。ということがわかる。

楽天市場における予想外のヒット商品

実はもともとそうなんじゃないかということが感覚的にわかるものがあります。

(スライド)左にありますのは、和歌山県の北山村という飛び地の村に「じゃばら」という柑橘系の果物がありまして、北山村の人がこのじゃばらを売りたいということで、2000年ごろに楽天市場に持ち込まれました。

そのときに、じゃばらというものを我々も当時の営業担当者も食べたりしたわけです。味が非常に独特で、「これは売れないんじゃないですかね」みたいな、そういうフィードバックをお返しした。

そうしたら北山村の方々が非常に勉強熱心な方々で、「食べられないという話があったので、飲み物にしてきました」と言って、じゃばらドリンクを(持ってきました)。

これを飲んだところ、「ちょっと独特すぎるんじゃないですかね」とフィードバックを返した。それでもう、熱意に負けて、「じゃあ、売ってみましょう」と売ってみたら、これが楽天市場で爆発的に売れて、売れて、買おうと思っても買えない商品になっちゃった。

(スライド)右上にあるのが何かと申しますと、鎧です。四国で売っているリアルな甲冑でして、一体が300万円する甲冑なんですけども、これが6ヶ月先まで予約がいっぱいで買えない。

人形じゃないんです。リアルな甲冑を買って、一体何をしているのかわからないけど、とにかく買うんです。「お父さん、いっちょリアルな甲冑買うぞ!」とか、みなさんが思ったとしても買うことができない。それはどういうことなのか。

(スライド)左上にあるのが、「おいもや」という静岡県にある有名な店舗様ですけれども、そこが干し芋を売られていまして、1,500袋の干し芋を売りに出されています。それが1分で完売するんです。

例えばこれが、PlayStationの最新端末やiPhoneの最新端末とかだったらわかるんですね。みんな、待ち構えてそれを買うわけです。

干し芋が、売りに出された1500袋が1分で完売してしまう……。それはいったいなんなのか? 何が一番びっくりしたかというと、買った中にうちの奥さんがいたという話で……この会場、あまりウケないですね(笑)。ぼくはこの講演のままいていいんだろうか(笑)。

インターネットによるロングテール現象

さらに探してみたら、こんなものもあります。(スライド)上が金仏壇です。7,700万円。ということよりも、下にあるポイントが3倍で、ポイントの数がわけわかんないことになっている(笑)。

(スライド)下がはしご車で、「購入には許可が必要です」とか書いてあるけど、どうやって許可をとればいいのかわからない。とにかく売っていて、買っている人がいるんです。

つまるところ、ロングテールという話なんです。今までは人々は地理的に、あるいは時間的に制約されることによって、行ける店、その店がやっている時間、扱っている在庫、その中でしかものが買えなかったわけです。

しかし、ネットさらにはスマホデバイス、先ほど見ていただいたコンクラーベの2005年と2013年の変化のように、常に世界がつながるということになったときに、人々は自分そのものをなにかの枠組みに押し込める必要がなくなったわけですね。

制約から解放されている。ロングテールのテールのほうに行っている。自分のありのままの状態でテールに存在できるようになっている。

ロングテールというのは、ちょっとしか買われていない商品が圧倒的にあって、売上全体の90パーセントが実はそのちょっとした商品の売上で構成されているという話です。

こういうグラフで表されますが、リアルにロングテールのグラフを見た人はこの世にいないわけです。

なぜかというと、テールの部分というのは、この縮尺で書こうとしたら何キロメートルも続くわけです。絶対に描くことがそもそもできない。でも、そこにほとんどの人がありのままで存在している。

我々の集団に対する直観とぜんぜんちがうわけです。人々というのはもはや一人ひとりになっている、個別化しているというのが問題で、例えばテールの中のある商品を売ろうと思って、データサイエンティストのチームを作って、3ヶ月PDCAを回して、データを回して、施策を考えて、施策を打って、売上が30万から60万になっても、誰の給料も払えないわけです。

つまりそこは、スケールさせるために、機械の力を使うしかない。機械と人工知能を使わないと、もはや人々の変化に対応できない時代に突入した。

そこで、我々はさまざまな顧客のニーズを人工知能を使って発見していこうということをやっています。

人工知能で“隠れたニーズ”を発見

例えば、何があるかと申しますと、これはどういうグラフかというと、人々が何に関心を持っているかということを、弊社のデータの中で分析したものです。

ランドセルに関しては、これまでの話で、今はまたトレンド、グラフの形状がちがうんですけど、ここの例の2011年時点では、深く見れば、1つは1月くらいに大きな山があるというのと、もう1つは夏が終わったあと、今頃の季節にまた大きな山がある。8月のまんなか辺りから11月にかかって大きな山がある。これは何か。

1月ぐらいの山は何かというと、お父さんお母さんが4月から入学する子供のためにランドセルを探しているということなんですが、もう1つ調べるところによると、お爺ちゃんお婆ちゃんということがわかっております。

お爺ちゃんお婆ちゃんが、お盆で子供たち、孫たちに会って「もう来年小学生なの?」と驚いて(ランドセルを)探す。

限られた数の商品だけを扱っていたら、人手でもこういうことがわかるんですけど、楽天は2億点の商品を扱っています。

今は多様な価値観のなかで、さまざまな商品やさまざまなサービスで扱われている詳細なニーズは拾えない。

実際に、1個1個にかける分析能力というのは、我々はもはや失っているので、自動的に見つけていかないとこういうのはわからない。

例えば、さまざまなトレンド、ここのケースでは、父の日に人々がどういうものを探しているのかというところを自動的に発見する仕組み。

これは別に父の日だけじゃなくて、なにかの関心のキーワードと人々の行動の一致するもの、一緒に動いているものを自動的に報告するAIのシステムを作っているわけですが、これは3年前のデータなんですけど、ステテコと父の日が一緒に動いているということがわかったわけです。

要するに、多くの人が、父の日のプレゼントにステテコを買っているという事実がわかったんですよ。これはみなさん、もしかして常識ですかね? なにも驚きがないんですけど(笑)。

これは何が大変かって、弊社は外国人社員が増えたんですけど、この発見の驚きが伝えられないんですね。「STETECO is a traditionally fashionable underwear!」と訴えても通じないんですね。とにもかくにも、こうやって見つけていく。

本当にいきなり動くトレンドということで分析していくと、我々の常識を超えたところでさまざまな動きがある。

我々、どういうキーワードで商品とかに関心があるかというところから分析をするだけじゃなくて、最初に画像の分析という話を申し上げましたが、画像の分析をする。

ユーザーがどういう画像を上げているかということを分析して、どういうトレンドが上がっているかというのを分析する。

さらには、そこからもっと発展させていって、AIにユーザーの、お客さまの頭の中にある求めているものを描き出すことをやってもらう。

(スライド)左側にあるのは、Cool & Sexy, Sweet Feminineと書いていますが、これ実は、ファッションのジャンルの担当者が、「今、こういうお客さまがいて、こういうファッションが売れているから、こういうCool & SexyとかSweet Feminineみたいなものが売れている」と分析してやったわけではなくて、AIに自動的にやらせたんですね。

つまり、我々は個別化してしまった、多様化してしまったお客さまのことは、もうわかっていないのではないかという仮設に基づいて。

そこで、人工知能にお客さまのデータを分析させて、どうやら、今の商品ジャンルじゃないんだけど、お客さまの頭の中には心の中にはCool & SexyとSweet Feminineを求めている層ができつつあるというのを抽出して、出てきたものに対してビジネスに合った名前を付けてキャンペーンを打つ。

こういうまったく逆転した……。つまり、仮説・分析を人工知能にやらせて、それを踏まえて実際にマーケティングをする。このまったく逆転した行為を行うことによって、売上が上がる。

供給者・需要者の「情報の非対称性」

これはいったいどういうことか? ロングテールによって情報の非対称性が起きたということです。

「情報の非対称性」というのは、経済学における重要なキーワードですね。アダム・スミスさんが「需要と供給が一致するところで価格が決まる。

それによりマーケットが均衡する」という話をしたわけですが、近代経済学になって、「アダム・スミスさんは違う仮説を持ち込んでいるんじゃないか。そもそも暗黙の前提があって、それが成立しないんじゃないか」と。

それは何かというと、「供給者はいっぱい商品について知っているけど、需要者は知らないんだから、需要と供給が一致するところで価格が決まるというそもそもの仮説は、おかしいのではないか」という話ですね。

つまり、供給者と需要者の間には、供給者がより多くの情報を持っているという非対称性がある。それによって、「市場の失敗」とか「レモンの原理」とか、そういう話が近代経済学からされてきているわけですが、2000年からインターネットが普及してきて、個別化が進行していくと、逆の非対称が起きている。

それは何かと申しますと、需要者のほうがサービスを提供している側より情報を持っている、詳しいという現象なんです。

例えば、みなさんが家電量販店に行って、カメラが趣味でカメラを買おうと思ったときに、量販店の店員のほうがカメラについて説明したときに、「俺のほうが詳しいよね」と思うようなことが今あるわけです。

ほかの例であるのは、みなさまが重大な疾病、希少例の病気に罹ったときに、お医者さんにかかる。すごく自分でインターネットで自分の希少例の病気を調べて、お医者さんに会って、お医者さんといろいろ話しているときに自分のほうがこの重大な病気に詳しいのではないか。

それは何かというと、お医者さんや家電量販店のスタッフの方はさまざまな多様化しているお客さんに対応しなければならないのですけど、我々にとっては、みなさまにとってはまさに自分自身の問題だから、インターネットの力を使って、ソーシャルの力を使って、ひたすら調べてひたすら掘り下げてそういうところまでいく。つまり、常に需要者が供給者より詳しいという状況が起きてしまっているんですね。

このように、供給者はもはや、お客さまのことがわからないという問題がある。だから、AIを使っていかなければならない。

楽天が取り組む、マーケットの行動予測

我々は、AIを使ってお客さまのニーズを分析したり、あるいはサービスを最適化していくというようなことをやっていく。

そういう技術を踏まえて、楽天では、商品の需要を予測し、在庫を最適化するというシステムを構築しているわけです。

さまざまなユーザーの行動からいろいろな予測を立てて、例えば、もっと反映させて各ユーザーに最適なクーポンを発行していき、個別のユーザーに合った価格というのを提供していくみたいなこともやっています。

今現在、楽天が何をやっているか。つまり、最終的にFintechという話になっていくわけですが、我々がこういう技術を踏まえて、マーケットの行動予測をしていくということにトライしているわけです。

そこで、楽天もさまざまなデータを活用して、予測を自動的にやっていくというところへいく。それらのすべては、個々の予測をAIにやらせて、発展させたシステムとして作っていく。個々の解析能力を統合して景気動向とかマイクロトレンドの予測というのをやっているわけですが、非常に高い精度で実現しているという。

この後、セキュリティの話をしようかと思ったのですが、時間もオーバーしてしまったので、ここで停止しなければいけないんですが。

私が今申し上げたかったのは、人工知能が単に便利になっているから使っているという話ではなくて、実は人々が個別化してしまった、多様化してしまったというところに影響を受けて、もはや人工知能を使わないとビジスネをやっていけないところにきている。

それが、私が申し上げたかったことで、かつそれらを活かしてFintechのビジネスに向かっていくことでありました。ちょっと稚拙なプレゼンになってしまいましたけども、ご清聴いただきましてありがとうございました。

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