落語で数学をぶった斬り
笑福亭銀瓶氏が「ロマンティック数学ナイト」を寄席に変える

落語的発想が数学をぶった切る

数学好きが集まり、数学への想いを語り合う、熱気あふれるイベント「ロマンティック数学ナイト」が8月19日に開催されました。落語家の笑福亭銀瓶氏は、桂文枝師匠が作った数学を題材にした落語「宿題」を紹介。算数の問題に悩む息子に対して、まったく違う角度から珍回答を連発する父親。どんな回答が飛び出すのか?

桂文枝師匠が作った落語「宿題」

笑福亭銀瓶氏(以下、笑福亭):どうも、こんばんは! 今日は大阪からやってきました。笑福亭銀瓶でございます。

私の前の4人の方(ほかのプレゼンター)のお話を聞いておりまして、とんでもないところに来たなと。ちょっと後悔しかけておりますけども。大阪では、このようなイベントは無理です!

(会場笑)

同じ数字を扱うのでも、大阪だと金儲けができるというイベントだとこれくらい、もっと集まるかもしれませんが、数学のイベントでこんなに来ません。

すごくレベルの高いお話をみなさんされてますけども、大阪の人間は、今の話を聞いて、「お前らアホちゃうか」って言うと思います。それが大阪でございます。

私も噺家で、私の師匠は笑福亭鶴瓶なんですけども。学校は理系の工業高等専門学校というエンジニアになる学校に行ってたんですけども、エンジニアになれずに噺家になりまして、モノを作らず、笑いを作ろうとしてるわけです。なかなか笑いもそう簡単には作れないんですけどね。難しいですね。

(会場笑)

今回、私、やって来ました。「落語的発想が数学をぶった切る」ということですけども。数学というより、僕の場合は、算数です。

実はですね。桂文枝師匠、前の名前が桂三枝、「いらっしゃ~い」のね。あの師匠が、創作落語。みなさん、落語、ご存知ですか? 落語知ってますよという方?

(会場挙手)

はいはい。けっこう多いですね。落語は古典落語と創作落語があるんですけども。桂文枝師匠が文枝になる前、三枝のときに作られた「宿題」という落語がございます。「宿題」。

お父さんが自分の息子、6年生のはじめくんというんですけども、塾で算数の宿題をもらってくるんです。お父さんが「解き方を教えて」って言われて、お父さんも算数が苦手なもんですから、お父さんなりの解釈で子どもに問題を教えていくというかね、ぶった切っていくという、そういう落語でして。算数の問題からこんなにおもしろい落語ができるのかと。

私はそれを師匠からいただいて、2006年からやらせてもらってるんですけど、今回は和から株式会社の堀口さんがたまたまYouTubeで私の「宿題」をご覧になられて、おもしろいなということでメールをくださって、それで私、今ここに来て、ちょっと後悔してるという状況です。

(会場笑)

最初、ここで落語しようかという話もあったんですが、時間の関係で落語をせずに、落語のなかに出てくる問題をまず見ていただきましょう。それをお父さんがどういうふうにぶった切っていくのかです。

まず、第1問。クラス35人のうち、ハンカチを持っている人が28人、チリ紙を持っている人が24人、どちらも持っている人が19人います。では、どちらも持っていないのは、何人でしょう?

はい、答えわかった人。何人ですか? 答えわかりました? パッと。

参加者:16人?

笑福亭:なんで? どちらも持ってないんですよ。

回答者:どちらも持ってる人が19人……。

笑福亭:19人でしょ? ということは。えぇ!? 答えは、2人ですね。持っていないのは。持ってないのは2人ですよ。そうでしょ?

回答者:あそっか! すいません! 違うこと考えてました(笑)。

笑福亭:ね? これに対して、「お父さん、これ教えて」って言われて、これを聞いたお父さんが、まず最初なんて言うか。どちらも持ってないのは何人でしょう? 

「かまへんやないか」って言います。

(会場笑)

「ハンカチなかったら男はズボンで拭け」「かまへんやないか!」って言うんですよ。すごいでしょ、これ。

で、まあお父さんは困って、答えは、「まあ、5人以内や」と。

(会場笑)

「この数の流れでいくと、ざっと見積もって、5人以内や。5人以内と書いとけ」と言うて、風呂入りにいくんですけども。

それで、次の日、会社に行って、会社の部下に松本くんというのがいまして、これが京都大学出身という設定なんですけども、松本くんにこの問題を言うんですね。うちの息子がおかしな問題もらっていたんやけどなと言うたら、松本くんが、「2人です」と即答する。それで説明を聞くわけですね。

(チリ紙を持っている)24から(どちらも持っている)19を引くと5人。この5人というのは、チリ紙しか持っていない5人ということですね。ハンカチを持っている28人にも、両方持っている19人が含まれていますから、28に5を足すと33。全体の35から33を引くと、2人。これが、どちらも持っていない。

という説明を聞いて、お父さんは、「僕も、5人までとは思てたんや」って言うんです。

(会場笑)

つるかめ算を落語にすると

第2問。池の周りに鶴と亀が集まりました。頭の数を数えると16。足の数を数えると44本ありました。鶴は何羽で、亀は何匹でしょう?

つるかめ算というやつですね。これを聞いたお父さんは、まず第一声。

「池の周りに鶴と亀、集まるか?」って言った。

(会場笑)

「集まるか? 見たことない」と。教えてくれと言われてお父さんは、「頭の数を数えると16!? これは問題がおかしい、先生に言え! 頭見たら、鶴か亀かわかるやろ」。

(会場笑)

これ、すごいね。みなさん。ここにお集まりの方は、数学、算数お好きだから、解ける方というのは、頭見たら鶴か亀かわかるやろという発想は生まれないんですよ。僕もまぁ好きですから、解いてしまいますから、こんなんね。びっくりしました。頭見たら鶴か亀かわかるやろ。この発想がすごいんですよ。

これね、次の日、会社に行って、また松本くんに聞くんですよ。お父さんが。「今度の問題これやねん」言うて。松本くんが、「解き方教えます」って言うてね。

全部で16いるんですけども、全部を鶴としたらどうなりますか、と。これ、連立方程式やったらね、xとyで解けるんですけど、小学生ですからつるかめ算だから、連立方程式できませんので。じゃあ、まず、16すべてを鶴だと、亀はいない、鶴ばっかりだと考えましょうと言うんですよ。松本くんが。正しいですね。

お父さんに、「全部を鶴だとしたら、どうなりますか?」って聞いたら、お父さんは、「そのほうが綺麗と思う」。

(会場笑)

「亀はいないほうがいい」。これもすごいですね。この発想。こんなの出てこないです。そのほうが綺麗と思う。

家から学校までは何メートル?

そういうふうにして松本くんから教えてもらうんですけど、第3問いきますね。どんどん難しくなるんですよ。

兄と弟、兄弟2人が同時に家を出て、学校まで歩いて行きました。42分後、弟は兄に210メートル離されたので、そこから弟は、それまでよりも1分間につき20メートル早いスピードで歩きました。兄が学校に着いた時、弟は学校の手前、60メートルの地点まで来ていました。兄が時速5.1キロメールで歩いていたとすると、家から学校までは何メートルでしょう?

この問題を読んだときに、お父さんは、「家から学校までは何メートルでしょう?」「知らんがな!」。

(会場笑)

「知らんがな! お前言えるんか、家から学校までの距離言えるんか! 言われへん? 言われへんやろ。人の学校のことどうでもええやないか」って言うんですね。

(会場笑)

すごいですね。

この問題にも、お父さんは難癖をつけます。「だいたい、おかしいんや」と。「42分……」。「42分歩いてもまだ学校へ着かんて、どこや! 何県や!」

(会場笑)

「問題や。問題や。大問題や。一番の問題点はここや。42分後に、弟は兄に、210メートル離されたんや。兄貴、待ったらんかい! 弟置いて先行く兄貴が問題や。弟も弟や。離されたら走っていけ。この2人が一緒に学校着いとったら、こんなややこしいことにはなってない!」

「お父さん、答えは?」

「答えは、やっぱり集団登校にしよう」

(会場笑)

すごいですね。ありがとうございます。これは、4,420mが答えなんですけどもね。私、ちゃんとこの落語するためには、自分で解いたんですよ。自分でちゃんと解いて、そうせんとできませんので。

数学の落語は客を選ぶ?

最後の問題です。どんどん難しくなります。

4人姉妹が、さくらんぼを同じ数ずつ分けました。1つ余ったのでペットの鳥にあげました。食べようとしたら友だちが来たので1人分をあげました。残りを4人で分けると、今度は2つ余ったので、また、ペットの鳥にあげました。食べようとしたらお父さんが来たので1人分をあげました。残りを4人で分けると、今度はきれいに割り切れました。でも、最初に分けた時より1人分が10個ずつ少なくなっていました。さくらんぼは、最初、いくつあったでしょう?

これを読んだお父さん、とうとうキレて、「わかるかこんなもん!」。

(会場笑)

そして、すごく大事なことを言います。その息子に。

「勉強がんばるのはええ。せやけどな、勉強より大事なことや。さくらんぼは、分けて食うもんとちゃう。1つの皿にバサッと入れて、それをみんなで好きなように食べて、あとから、種見て、『お前1人で食べ過ぎや!』言うんが、さくらんぼの食い方や!」

(会場笑)

「1つ余ったから取りにやったって、山形のさくらんぼ、なんぼすると思とんねん! 友だちが来る前に食え!」

すごいですよね。この落語は、私ももう10年やらせてもらってるんですけど、普通の寄席でもやりますし、また、中学校とか高校の落語鑑賞会でもやることあるんですが。

ぶっちゃけた話、ここだけの話ですけど、偏差値の高い学校でやるとウケるんです。やっぱりね。すごくウケるんです。まぁ言うたらこういう感じですわな。申し訳ないけど、偏差値の低い学校でやると、全然ウケないんですよ。問題読んでる時点で、みんな引いてるんですよ。

(会場笑)

非常にお客さんを選ぶ落語でございましてね。今日は、ちょっと落語じゃなく、私もこんな格好で立ちでやったんですが、この落語、始めから最後まで聞いてみたいですか?

(会場拍手)

ありがとうございます。なんと、今日、みなさんお配りの中にチラシ入ってます。9月19日、上野広小路亭で私の落語会がございます! そちらで、やりますので、ぜひ、お越しくださいませ! ありがとうございました!

(会場拍手)

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