なぜ商談は決裂するのか?
交渉学の産みの親に学ぶ、三方よしの対話力

常識反転のクロシング 「三方よし」の対話力 問題解決のための戦略的交渉学入門

<a href="https://www.keiomcc.com/xing/"target="_blank">「クロシング」では、思考が交差し「そうか!」「わかった!」「これだ!」に出会う瞬間を目指しています。慶應義塾の社会人教育機関、慶應丸の内シティキャンパス(慶應MCC)が主催する著名で多彩な講師による講演会、夕学五十講を素材に、深い学び、新しい視点、思わぬ発想、意外な出会いを探索します。今回は、慶應義塾大学法学部教授・田村次朗氏が登壇した<a href="https://keiomccxing.com/sekigaku/detail/Xyrj0z315"target="_blank">「三方よし」の対話力 問題解決のための戦略的交渉学入門の講演内容をお届けします。

提供:慶應丸の内シティキャンパス

「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」三方よしの対話力

田村次朗氏(以下、田村):みなさん、こういうすごく単純なことを考えていただければと思うんですけれども。例えば、交渉のときに、通常は売り手と買い手がいます。

みなさん一生懸命、売る側の立場だったり、買う側の立場だったりして交渉に行かれるんですけれども、毎回交渉に行くときにいろいろご苦労なさると思います。そもそも考えてみたら、立場がまったく逆ですよね。

簡単に言うと、売る側は高く売りたいわけで、買う側は安く買いたいわけですよ。「会って交渉して、仲良く会話できますか?」といったら、できっこないですよ。

もう最初の一番肝心なところからして、すべてが違うわけですから、ここは対話をするしかないということを考えてください。つまり、交渉で合意を得るためには、対話をすることが大切になってきます。

どういうかたちでやっていくのかということに関しては、今回の演題にもありますように、日本的な交渉をやるべきじゃないかということをずっと考えてきました。

私はハーバードで学ぶ機会を得ましたけれども、「ハーバード大学で交渉学を学んだからといって、日本がそのとおりやってればいいのか? そこはどうだろう?」という思いがありました。

交渉学の生みの親、ロジャー・フィッシャー教授の教え

実はハーバードで学んだときに、すごく驚く経験があったんですね。もう30年ぐらい前の話なんですけれども、ロジャー・フィッシャー教授というまさに交渉学の産みの親、この先生の授業が始まってまだ数年目に彼の授業を取りました。

ハーバードのフィッシャー教授から学んだことはたくさんあるんですけれども、彼の言っていることは、すごく共感を覚える内容だったんです。

どういうことかと言うと、私たちはロールプレイで題材を与えられました。そして相手と交渉するということで、一生懸命調べて準備して交渉に臨みました。

ハーバードの良いところというよりは嫌なところなんですが、集まってる人がなにを勘違いしてるのか、みんな自分のほうが頭がいいと思っている嫌なやつらの集まりですから、かなり大変なんです。

ここで交渉するというと、こっちもまだ若かったですから「絶対負けるもんか」と思っているわけですよ。必死で調べて準備する。

それで、ワーッとやりますね。まあ、おわかりのとおり「譲らない」世界です。どちらかと言うと決裂。「お前が譲らないんだったら俺も譲らない。はい、終わり」みたいな。ちょっと単純化してますけど。

そのときにフィッシャー教授は、集まってる学生、自分が頭いいと思い込んでる連中に対して、全員の答えを聞いて、「お前ら全員落第だ」と言ったのです。

それはなにかというと、言葉は違いますけれども、彼は、「相手のことを考えたか?」「世間のことを考えたか?」ということを言ったわけです。「自分のことしか考えてないだろう」と。

そのとおりで、自分のことしか考えてないです。自分がよりよい交渉で結果を出すことしか考えていない。それを言われました。

ハーバードの交渉学と日本の近江商人の共通項

彼の教えは「賢明な合意」といって(資料のとおり)非常にかっこよく書いてありますが、ポイントだけ言いますと、双方の正当な要望ですから、相手の要望を可能なかぎり満足させる。それから、最後のところを見てください。「社会全体の利益を考慮に入れた解決」ということですね。

これは実は、上の近江商人の「三方よし」とほとんど一緒なんですよ。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」。「自分よし」「相手よし」「世間よし」ですね。

彼はこれを教えてくれたんです。約3週間くらいにわたる冬の集中授業で、毎日朝9時から5時までという3週間なので、もう地獄の授業みたいな感じなんですけれども、それをずっとやって……。なかなかおもしろいなと思ったのは、最後はみんないい人になるんですね(笑)。

僕もとてもほっとしました。自分自身はもともといい人だと思っていたので、「こんなきついところで勉強するのは嫌だな」「友達もなかなかできないし」とすごい思ってたんですけど、みんないい人になる。

なぜかというと、ずっとやらされてると、結果を出そうと思ったら、相手を満足させなきゃ結果が出ないということがわかるんですよ。

実は日本人はけっこうそれをやれてるんですよね。三方よしの近江商人。500年近く前からですよ。ハーバードのこの教育の歴史は約40年ぐらいしかないですから。

念のためにひと言いっておきますが、ハーバードの交渉学というのは、例えば日本で教えたら、「アメリカ人みたいに交渉することですか?」と言われる方がいるんですが、アメリカ人のほとんどはこの交渉学は知りません。できません。強引です。

だから、間違えないでください。ハーバードのフィッシャー教授とその弟子の人たちが、「こういう交渉のほうが持続可能でいい交渉なんだよ」と教えてますけど、それができる人たちはごく一部だと思ってください。

なので、むしろ日本人のほうができると思ってください。

この三方よしのキーワードは何かと言うと、「信頼」なんです。作家の火坂雅志の『虎の城』という近江商人のことを書いている本があり、そこでも、「信頼」という言葉で書いてます。機会があったら読んでいただければと思います。

教材としても使われる『てんびんの詩』という映画でも近江商人と同じように「信頼を勝ち得る」ことを大切にしようと。

つまり、私がここで言いたいのは、交渉というのは、「建設的な問題」と書いてありますけれども、「駆け引きじゃなくて、信頼してもらうからこそ、自分の得たいものを相手がOKしてくれるところへ持ち込むことが大切だよ」ということを申し上げたいわけです。

弁護士ロジャー・フィッシャーの逸話

では実際に、対話力をどうやってやるのか? ハーバードロースクールのロジャー・フィッシャー先生は本当におもしろい先生でした。私にとってはすべてが目から鱗というか、学ぶことが多かったです。

彼の逸話を1つ話しますと、彼は弁護士で、ふつう弁護士というのは、みなさんある程度のイメージがありますよね。「弁護士というのはまあこんなもんだろう」と。

彼は政府側の弁護に立ったときに、あるとき原告に対してこんなおもしろいことを言ったんですね。それは、原告の主張を聞いて、なんとそれを褒めたんですよ。

どういうことかというと、その原告側の主張は「本当に内容的にもよくできてるし、非常に説得力がある。私はそれは非常に重く受け止めたい」というお話をして。

そのときのフランクフルターという有名な判事は、なんとおもしろいことに、慌てて「フィッシャーさん、あなたは国側の弁護をしてるんですけど、わかってるんですか?」と言ったぐらいの驚きの対応……みなさんおわかりですか? 何をしてるかといったら、価値を理解してるんですよ。

言われた途端に「あんたの主張は全部おかしい、間違ってる。今から全部反論してやる」というのが……もうちょっと言葉は丁寧かもしれないですけど、ふつうの弁護士の対応ですよ。(フィッシャーは)そうじゃない。評価する。

どうなったかというと、このケースは最終的に政府側が勝つんですけど、意外に双方あんまり不満をもたずに終わったと言われてるんですね。

なぜかというと、価値を理解してあげるから。フィッシャーは、全面否定して、「あんたたちなんてまったくダメだよ。馬鹿だよ」ということは言わない。

彼は「すごいいい議論だ。でも仮に付け加えるとしたら……」という感じで議論するんですよね。「そこが足りないよね?」というところで彼は勝つという見事な、まあ裁判ではありますけれども、交渉ですよね。実際に周りの人たちも納得させる交渉をしたわけです。

原則立脚型交渉の4原則

これがハーバードが出して、フィッシャーが出している交渉学の基本の原則です。これについての時間は簡単にしかないので、ひと言ずついきます。

「人と問題を分離する」。これは何かと言うと、相手と交渉してるんじゃなくて、問題と交渉してるという意識を持てるか。これはみなさんぜひ大切にしてください。これは私がハーバードで教わった非常に重要なことです。

交渉してると、自分にとって理不尽なことを言うから、相手に対して腹が立ってくるんですよ。 だけど、相手はその立場にいるからそれを言っているので、その内容が問題だということで、内容に対しての攻撃にいくと、その人とは友好的な関係で内容を攻めることができる。

つまり、フィッシャーが裁判でやったことと一緒ですよね。フィッシャーは原告側に「あなたたちの論理はまったくなってない。よくそんなことが言えたもんだな」とはひと言も言ってないわけですよ。「なかなかすばらしい。だけど、内容をよく見るとこうだ」と言って、内容を攻めるわけです。

「立場から利害へ」という2つ目の言葉。これは売り手や買い手という立場にこだわるのではなくて、利害に焦点を合わせてくださいということであります。

売り手と買い手の場合、「高く売りたい」「安く買いたい」ということになりますけれども。みなさんが一番やらなければいけないのは、「あなたの利害はなんなんですか?」と。

「私の利害はこれなので、お互いの利害を調整しようじゃないですか?」ということを交渉しないと、「二分法」といって「もうこの値段で買うのか・買わないのか早く決めてよ」という交渉しかできない。

「お互いの利害がどこにあるんですか?」ということを言うことによって、交渉はやっとお互いに建設的な対話に進むというのが彼のポイントです。

それから3つ目の「選択肢」。その利害を出してきたら、選択肢をお互いに出そうと。いろんな選択肢を出して話し合っていれば、お互いに見えてくるものがある。それを出しましょうということを教えています。

そして最後に大切なのは、あくまでも「客観的基準」。自分にとって都合のいい誘導をしているんじゃないと。「客観的基準に基づいても、私の言ってることは納得感ありますよね」ということを強調すると。

この4つの原則がロジャー・フィッシャーの考えであります。

日本版の交渉学の重要ポイント

彼はここに非常に大事なポイントを入れてましたが、フィッシャーの内容を受けて、その後の先生たちはいろんなかたちで発展させていっているんですが、私から言わせると1つ足りないと思う部分があります。それは「準備の重要性」です。

ここはやっぱりアメリカ流のやり方なのかなと思うんですけれども。「こういうポイントに気をつけろよ」と言われた人たちは、「自分たちで適当に準備するんだろう」と考えてあまり言わないのかもしれませんが、私の考えは準備の重要性をやはり強調したいということです。

説明が矛盾しているように聞こえますけれども、重要性を強調はしているんですけれども、どういうふうにやればいいかという説明をしていないということですね。

それで交渉前に検討すべき要素、あるいはフレームワークとしてきちっと整理するということを研究するのが、今の私の日本版の交渉学の大事なポイントになっています。

こちらのほうに時間をかけたいのでお話ししますと、このへんは日本版交渉学でやっているものです。この数枚のスライドは、また実践でも使っていただければと思います。

まず、「事前準備の5ステップ」というのがあります。状況を把握してください。そして、ミッションを考えてください。そして、ターゲットを決めてください。そして、選択肢を決めてください。BATNAというのは、合意できない場合の代替案ということになります。

この5つを考えるというのは、実はまだ本には書いてないんですけれども、今「Two-by-Two Approach」というのを、提唱しようと思ってやっております。

なぜ「Two-by-Two」かというと、この2〜5の4つをもうちょっとわかりやすく整理していて、「Two-by-Two」と言っています。

状況の把握というのは、いずれにしろみなさんやらなければいけないので、もうあまりうるさく言わなくて、4つを大切にしてくださいということにしています。

ミッションと交渉決裂時の代替案

ミッション(Mission)は「なぜ交渉するのか?」をまず決めてください。行くときに「いくらで交渉だ」というんじゃなくて「なぜ交渉するのか?」を考えていく。

そして、下に書いてあるBATNAというのは、決裂時の代替案。ハーバードで学んだ重要なことかなと思うのは、日本の交渉者というのは、信頼とか誠意を大切にするので、決裂したときにどうするかということをあまり考えていないんですよね。

実は、それについて準備できていると怖くないんですよ。怖いのはなにかというと、決裂のときに準備ができていないから。

もちろんみなさん、「いやいや、決裂するわけにはいかないんです」と思われてる方もいると思います。しかし、ポジショニングしておくことによって交渉はしやすくなります。それで、ミッション(Mission)とBATNAが最初の「Two」なんですね。

なにが言いたいかというと、大きな理想、「あなたと私は頑張ったらこんなすばらしいWin-Winの結果を出せるよ」という理想をまず準備して示すこと。

それから「あなたが私の話に共感を覚えてくれなくて、実は前向きにやってくれない。駆け引きしか望んでなかったら、申し訳ないけれども、あなたの競争相手のところに行くことになるかもしれませんね」というものを用意する。つまり、まったく対局にあるものをまず用意してください。

ターゲティングと創造的選択肢

次になにをするかというと、ターゲットとオプションを考える。

おそらくみなさん、今まで金額と条件を準備して行かれたと思います。これは当然やらなきゃいけないんですけれども、最初に大きく「大局がなんなのか?」を位置づけてから、自分の金額と条件を考えてください。

あとでも説明しますが、この金額は最高目標でいきましょう。「私は最高目標しか説明しません」というぐらいの準備をしてください。そうじゃないと、落としどころ探しをしている自分がいることになります。

「とりあえず1,000万円と言っておこうかな」「まあ、どうせ900万円になるんだろう」という思いが交渉者をダメにするんです。1,000万円の理由が説明できる交渉の準備をしてください。

それに対して、「それだけではなかなか話は進まないじゃないか」ということに関しては、創造的なオプションを用意することを考えていただく。これが「Two-by-Two」の残りの2つです。

通常みなさんが交渉のときに考えられるのは、こっちの2つがメイン。とくにそのうちの「T(ターゲティング)」のほうですよね。この4つを考えて行かれると、交渉者は非常に幅の広い交渉ができると。

「ミッション=究極のゴール」を語る

ミッションはなにをすることなのかというと、「私はなんのために交渉するのか?」。「交渉を通じてなにを実現したいのか?」あるいは「私は交渉によってなにを獲得すべきなのか?」ということを考える。

こんな抽象的なことを言われたって、これをなんのためにやるかを言わないと、みなさん誰も考える気がないと思います。大事なことを申し上げます。それはなにかというと、相手も話に乗ってこれるようなものを用意しなきゃいけないんですよ。

今ここである商品を、我々のところに「これを日本で売ってくれないか」と持ってきたとしましょう。

そのときに、みなさんが考えて、「売れるか売れないかわからないのに、このリスクをどうやって負うんだ」といろんなことを思うと、どうしても非常にネガティブな会話をしがちですよね。

しかし、準備してきた会社の気持ちを理解したら、これでがんばって売りたいと思ってるわけですよ。

そうだとすると、ここで一緒にお互いに信頼関係を構築してがんばったら、「これを日本だけじゃなくてアジア全体で売ることも考えてみませんか?」とか。要するに「最終的なゴールはアジア市場でしょう」とか。

そういう究極のもっと大きな、パイが膨らむようなゴールを見せることをやることは……。これは間違えないでくださいよ。いきなり合意しなくてもいいんですよ。そういう夢を追ってみようという話をすることは、いきなりさっきの「Target」の話をするよりはるかにいいですよね。

なぜなら金額のことを言われた途端に、「そんな金額で? そんなのできませんよ」という話になってしまうわけですよ。

なので、ミッション、「なんのために我々は集まったんですか?」と。「なにを実現する?」「御社はどういうことを考えてるんですか?」と。

そういう会話をするために、自分のほうから準備していかないと、ただ相手に質問を投げかけて、自分が準備しないわけにはいかないんですよね。ということで、ミッションというのは究極のゴール。これを用意する。

海外との交渉に必要な「BATNA」

BATNAは何かと言うと、まったく対局にあって、英語はここに書いてある「Best Alternative to a Negotiated Agreement」。交渉で合意が成立しない場合の最善の代替案。

最善の代替案というのは何かと言うと、多くの場合、残念ながら、競争相手のところにいくということになると思います。

みなさんは「いや、そんなことできないよ」と思われるかもしれませんが、BATNAを準備していないと……。ごめんなさい、BATNAというのはフィッシャー先生が考えた言葉です。

これはみなさん、ぜひ覚えておいてください。どうしてかというと、外国の人と交渉するときに、日本人が意外にわかってないと思ったら、目の前で当事者同士で、「こいつらのBATNAはなんだろう?」みたいなことを半分馬鹿にしてしゃべってることがあります。

それで「なに言ってるんだろう?」と。「今まで英語勉強してきたのに、BATNAなんて言葉聞いたことないぜ」というと、そのとおりです。造語ですからね。ふつうの英単語として載ってませんから。

では、BATNAとは何かというと、彼らは「こいつらをギリギリまで追い詰めたら、こいつらはほかの選択肢を持ってるのかな?」ということを考えてるわけです。そのときにみなさんは「持ってます」と言えなきゃいけない。

国内の交渉ではまだそこまでギリギリの交渉がないかもしれないですけれども、国際交渉などではぜひ考えていただきたい。BATNAを用意していない連中は、もう最初から駆け引きの餌食になると考えてください。

実はWin-Win交渉というのは、言葉はバラ色ですけど、準備の仕方が下手だったら、誰もWin-Win交渉なんてできません。相手に足元を見られるだけです。

なので、このBATNAを軽視しないでください。「こんなものはいいや。あとで考えるわ」じゃなくて、前もって言えるポジションニングをしておくということです。

これは、アメリカなどの一部と言いましたけど、それなりのエリート層は勉強してますから、彼らは準備してます。

ということで、私たち日本人の交渉と違う強みを持ってますけれども、日本人もこういう交渉をしていったほうがいいと。

教養としての対話力

どうして「教養」という言葉を出したかというと、実は今日せっかくの機会をいただいたので、みなさんにぜひお話しさせていただきたいことが、この三方よしの対話力、交渉学というもののなかにあります。

それは何かと言うと、「私たちは教養という言葉の意味を本当に理解しているのか?」ということです。

みなさん、教養って英語でなんて言うかご存知ですか? これはむちゃくちゃ難しいですよ。なぜかというと、英語がないんですよ。

念のためにもう1回辞書調べてみたんですけれども。「教養」を英訳すると、例えば、「cultured」とかいう「culture」という言葉を使うとか、「educated」という言葉を使うとか、あるいは「refined=洗練された」みたいなものに「education」みたいな言葉をつけるとか。

じゃあ「教養課程」は何と訳されてるかというと、「General Education Course」と書いてある。

みなさん今のを聞いて違和感を感じられたと思うんですけど、たぶんみなさん知っていると思いますが、教養というのは実は「Liberal Arts」というすてきな言葉がありますよね。みなさんは「田村先生きっと最初にそれを言うんだろう」と期待してたと思いますけれども。

でも、実はLiberal Artsと教養はまったく一致してないんですよ。ですけど我々は「Liberal Arts Education、それは教養教育だ」と言ってるんですね。私たちは歴史のどこかで「教養」を間違えちゃってるんですよね。

後半でもちょっと話しますけれども、原点に帰ると、実はLiberal Artsという言葉が確かにあった。ソクラテス、プラトン、アリストテレス、このような世界ですよ。

そのときに、本当に実はLiberal Artsという言葉があるんですよ。みなさん調べてください。「自由7科」というリベラルな……要するに学問ですよ。

そこで1点だけ強調したいのは、そのうちの基本3学と言われたものがなんだったかを確認していただいくと、「教養ってぜんぜん違ったんだな」ということがわかるかもしれません。1つ目は文法、2つ目は修辞学、そして3つ目は弁証法。

文法というのは、その当時どういう意味で使ったかというと、「語学」という意味で使ってたと思ってください。語学力がまず必要ですと。あるいは読み書きがちゃんとできてくださいよという意味もあると思います。

それから、修辞学というのはレトリックといって、このあたりは「あれ?」って感じがしますよね。「レトリックってあんまり良い意味で使われないんじゃないの?」と。

実はこれは、人とうまく対話できるということがすごい大事なポイントになってますよね。修辞学。でも、レトリックはどちらかというとプレゼンテーション能力に近いようなところですね。

それに対して弁証法というのは、「dialect」という英語が使われていますけれども、その後発展して。これはいわゆる三段論法とか、論理的に考えるというところ。これが3学という基本だったということをお話しして、この内容に入りたいと思います。

「あれ? 教養って知識じゃないの?」という感じがするんですが、今のでみなさんに気づいていただきたいのは、「日本で『スキル』と言ってることのほうが教養じゃないの?」と感じられた方がいるかと思うんですが、実は日本は勝手に分けちゃってるんですよ。

つまり、知識はすばらしいと。スキルは単なる研修とかでやるものだと。いや、教養は両方のセットなんですよ、ということを理解していただきたいために、今そのお話をしました。

教養の本質

次のスライドでわかっていただけるかもしれませんが、さっきの2つの極端な二分法です。確かに「知識こそがすべて」とか、あるいは「知識はぜんぜん意味なかった」と考えるでもない。

教養とは「自分を世界のなかで位置づけ、そして自分の進むべき方向を見つけ出す力」。この抽象的な言葉が何を言ってるかというと、実は教養は自分で「見つけ出す力」を求めてるんですね。

それが実は、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、もう私にとっても難しい話がたくさん出てくるんですけれども、彼らがやっていたことなんですよ。

我々は「対話」と「議論」という言葉をすぐ使います。対話と議論というのが、実は教養の基本なんですよ。それがなぜか大学においては、教養は耳で聞いて、「ああ、すごいですね」と納得して「はい終わり」となっちゃってますよね。

最後に戻ってきたいと思うんですけれども。自分と異なる考え・発想を理解する力。対話力。つまり、ソクラテス、プラトンの時代、みなさん「ソクラティックメソッド」という言葉をご存知ですよね。

私がロースクール行ったときに一番恐れてたことは何かというと、教授がすぐ当てて、それでどう思うか説明しろと言われる。こういうソクラティックメソッド。あの言葉、誰から始まったか言葉でわかりますよね。ソクラテスから始まってるんですよ。

じゃあ、ソクラテスとか我々の考えというのは、ただ知識として聞けばいいんじゃなくて。彼は実は著書を書いてないという人で、ずっと人と対話して問答していて、それでソクラテスという世界をつくった人ですよ。これが教養の原点だということを考えてください。

対話の重要性そして新しい教養としての交渉学

ちょっと進んで「対話の重要性そして新しい教養としての交渉学」ということですけれども。

実は私たちは、交渉術程度では済まない大きな問題を常に抱えています。企業同士の合併・買収・契約トラブル、紛争、あるいは国家間の領土問題、地域間紛争と。それで、対話力が問われるというようなことが問題になります。

※こちらの掲載は講演内容を要約したものです。 続きはクロシングでご覧になれます。

講演では続いて次のことが話されています。 ・キューバ危機に学ぶ対話力 ・リーダーシップ教育としての交渉学

【常識反転のクロシング】 東大大学院卒の若き禅僧松山大耕師、人気の日本酒「獺祭」を世に送り出した桜井博社長、交渉学の第一人者慶應大の田村次朗教授。まったく異なる世界で活躍しながらも、常識とは異なる思考・発想・行動を大切にしているところに共通点があります。「常識反転のクロシング」では3人の講演を素材にビジネスの本質や生き方のヒントを探索します。

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