切り札は「東証1部に行こう」マザーズ上場企業の強みと組織の変化

オークファン・武永修一氏 #2/2

オークファン・武永修一氏
に開催

アマテラス代表・藤岡清高氏が、社会的課題を解決する志高い起業家へインタビューをする「起業家対談」。今回は、オークファン・武永修一氏のインタビュー後編を紹介します。※このログはアマテラスの起業家対談を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

上場後の変化

藤岡清高氏(以下、藤岡):上場して1年くらい経過しますが、上場して変わったことは何ですか?

武永修一氏(以下、武永):やはり一番大きいことは信用面と資金面です。基本的にその2点が大きいと思っています。

明らかに変わったのはまず信用です。やはりベンチャーというのは、取引先からしても、ユーザーからしても、「この会社大丈夫?」「すぐ飛んじゃうんじゃないの?」「個人情報とか杜撰なんじゃないか?」みたいな、何かと不安なイメージがあると思うのですが、上場したということはそれなりの審査を通過している安心感はあります。

車の免許と一緒ですよね。免許を持ってない人が運転したらそもそも恐い、一緒に誰も乗りたくないですよね。そういう意味では非常に良かったなと。

藤岡:具体的に信用力が付いたと感じるのはどういう状況ですか?

武永:そうですね。ナショナルクライアントさんなど、誰もが知っている大手さんからの依頼が増えました。そのような大手企業さんとの取引で成功事例を作ったあとに、今度はこちらからプッシュ型でほかのメーカーさんや小売店さんに当たっていくことができるようになった。上場前にはこのようなことはできなかったことですね。

オークファンユーザーにとっては、信用力がじわじわとプラスになっているかと思います。今当社に来ている月間1,000万人の方に「上場したのですがどうですか?」と聞くことはできないのでわからないですけども。

ただ、SNSなどを見ていると「上場したから大丈夫だろう」といったコメントがけっこう書き込まれていて、ユーザーへの良い効果に繋がっていると思います。

株式会社リアルワールドとの業務資本提携

藤岡:上場して資金的な部分での変化はどうですか? 株式会社リアルワールドとの資本提携もされましたね。

武永:資金面というのは、M&Aも含みますが、メインは内部での投資ですね。設備を増強したり、人材採用を強化したり、あとは社員への教育投資を増強していきます。

上場の時点で手持ちの資金が3倍くらいになりましたので、これは非常に有利だと思います。今、借入もないですし、自己資本率が95パーセント以上あります。「もっとレバレッジをかけろ」という声もありますが。

上場して便利だと思ったことは、資金調達手段が多様化することです。お金を集めやすくなると同時に、お金を適切に使いやすくもなるわけです。

それもあってか投資やM&Aの提案もたくさん来ています。ぜんぜん違う業界からだったり、オークファンの事業と関係ない案件もたくさん来ます。

例えば、利益が十分出ているけどオーナーさんが引退したくて会社を買ってほしい、というような話まで。中にはオークファンが買えば利益を倍にできるかもしれないと思う案件もあったりします。

ただ、やはり我々からすると、創業以来のビジョン、そして本業が最重要と考えています。M&Aをすることによって本業を加速させるような会社様であれば、資本業務提携によってより深いお付き合いをするというのは重視していますね。

そのような考えをもっているのでたくさんのお話をいただいていますが、資本提携やM&Aが実現するのは極めて少数です。

成功事例が出たのは、業務資本提携をした株式会社リアルワールドさんです。我々のデータマイニングのサポートを彼らにお願いしているのですが、資本提携して半年後にリアルワールドさんがマザーズに上場しました。

そこで利益が出たからどうということではなく、事業シナジーで互いを高めることができた成功事例をほかにもどんどん繋げていきたいなと思っています。

上場して逆にベンチャーっぽくなった

藤岡:上場して採用面や社員のマインドにどのような変化がありましたか?

武永:上場するまでの2年ぐらいは、人材採用にそこまで力をいれていませんでした。まずは社内を向いて、今いるメンバーの生産性をもっと上げていこうと考えていました。社員数はじわじわと増えていますが、人材採用を積極的に取組むのはこれからですので、上場による採用効果は未知数ですね。

もともといた社員からは、上場後のほうがむしろ仕事がやりやすいという声が多いです。というのは、上場前は上場審査にすべてを集中していますから、新規事業もやりづらいとか、人も採用しにくいとか。コンプライアンスも大変なので、どうしても気持ち的に保守的になっていました。

あとは、上場できるかどうかというプレッシャーもすごいわけですよ。「ここまでやって上場できなかったらどうするんだろう」と。僕が一番プレッシャーありましたけど(笑)、社員もヤキモキしていたんです。

上場したら、それを通過点として、事業をどんどん伸ばそうというステージになるので、むしろ思考を逆転させました。ギアチェンジというか、リソースはたっぷりあるのでどう伸ばしていくかというふうに変わりました。だから逆に、上場してベンチャーっぽくなったと思いますね。

藤岡:個人的には上場後に保守的になっていく会社が多いと感じていますが、オークファンさんはそれとは逆なのですね。

武永:上場前はいわゆる一点突破で、本業以外の新規事業などは全部先送りにしてた苦い思いもあります。上場してようやくアイデアとして眠っていたものにチャレンジできるようになったので、上場できて良かったと思います。

東証マザーズ上場企業の強み

藤岡:武永さんご自身は上場して変化された点はありますか?

武永:そうですね。お付き合いで言うと、新しい方々に会う機会が増えました。例えば、アナリストや機関投資家の方、ナショナルクライアントの方、以前はまったく接点がなかった異業種の方、そういう方々とのお付き合いも増えていろいろ広がっていますね。

あとは上場企業の経営者の先輩方が多いですね。やはり同じプロセスを踏んだ人たちは、みなさん非常に親近感があるというか。

とはいえ、以前お付き合いしていた人たちとも変わらずお付き合いしています。良い意味で本当に何も変わらないようにしています。誰からも学ぶこともあると思っていますし、上場したからといって先輩風を吹かせる必要もないですし。

藤岡:東証マザーズというポジションは武永さんの経営にどのような影響を与えていますか?

武永:僕自身はマザーズにいるということは、微妙に良いポジションだと思っているんです。一定の信頼感もあるし、財務的な安定性もあるのですが、まだまだ東証1部の会社と比較すると発展途上。規模も小さいです。語弊があるかもしれませんが、車でいうと仮免状態に近いかなと。

マザーズから東証2部、1部に上がっていこうというこのインセンティブは、良い意味で動機付けになります。

もう1点、M&Aや人材採用に効果的と思っているのが、「一緒に東証1部に行こう」という切り札がまだ残っていることです。

M&Aはキャッシュで買う場合と株式交換をして相手の経営者と一緒に仲間になってやっていく場合があるのですが、とくに後者の場合は相手もその株が上がることを期待するわけです。

そのときに、東証1部に上場していて株価の安定した会社とM&Aを取り組むよりも、ボラティリティは高いけど、株価も含めて大きく成長する期待感のある会社と経営統合して一緒にやっていこうよというのは、マザーズ企業だからこそできる手段かなと思っています。

まだまだ自分の中での達成感というのはないというか、逆にやっとコースに立てたなという感じがあります。今までは外周をウォーミングアップで走って自己ベストを目指すみたいな感覚があったのですが、やっと公式のレースの「位置について」というところに自分が来れたかなというところがある。なので、ぜんぜん浮わついたり、休む、いい意味でフェードアウトしようというのはまったくないですね。事業を通じて実現したいこともぜんぜんできていないですし。

アメリカ、アジアへの展開

藤岡:海外展開にも力を入れていくようですが、このあたりについても教えていただけますか?

武永:インドネシアのPK Bukalapak.com というECモールに出資しましたが、海外マーケットプレイスやデータ企業との連携を強化していきます。アジアにはもちろん注目しています。

一方、アメリカでは小売企業に対するデータ分析の企業もたくさん生まれてきています。ネットのデータとリアルのデータ、顧客IDとPOSを掛け合わせて分析し、価格調整や商品の在庫回転率をオートメーションで上げたりということに取り組んでいる会社もあるので、そういう会社というのは組み甲斐があるかなと思っています。

アメリカはやはり進んでいて、このようなデータ分析手法を活用して小売り大手のWalmartやMacy’sの売上向上で実績がある会社もあれば、ebayやamazonというネットでのデータ分析を活用したサービスを行っている会社もあります。

“eコマース”から“コマース”という、その「e」を除いたコマース市場に支援を広げている会社というのは、我々としては幅広くターゲットになってきています。今後いろいろ連携をしていけるだろうと思っています。

経営課題は「人材」

藤岡:現在のオークファンさんの経営課題については?

武永:「人」については課題に感じています。事業にレバレッジがかっていないという指摘もあるのですが、レバレッジをかけようと思っても、お金を借りて倉庫や在庫に使う必要はない。

レバレッジをかけるリソースって、結局は「人」なんですよね。そういう意味だと、地頭が良くて柔軟性がある人間はオークファンではいくらでもやることがあるので、やはり人材採用、人材育成に加えて社風作りに力を入れていてきたいです。それが足元の経営課題かと思います。

我々はこれまでは新卒採用をメインにやってきました。現在約50人の会社で、今年新卒社員が8人入社しましたが、全員が有望で活躍しはじめています。昔から新卒採用には力を入れていたので、今、全メンバーの何割かは新卒出身者です。非常に若い会社だと思います。

新しく取り組んでいる事業で事業者(B)向けが増えてきていますし、一般消費者向けのメディアも運営しています。若さと同じくらい、過去のノウハウや経験がすごく重要だと思っています。そこは中途の方々にも参画していただきたい。新卒の若さとスピード感と中途の方々の安定感とスキル、この辺をかけ合わせていきたいなと思ってます。活躍できるポジション、領域はたくさんあります。

とくに今は中途採用でスペシャリストを増やしていきたいなと。データベースやマーケティング系の方々ですね。

オークファンに参画する魅力

藤岡:最後の質問ですが、マザーズ上場後の現在のオークファンに参画する楽しさや魅力を教えて下さい。

武永:上場しているかしていないかに関わらず、社員数というのは実は大事だと思います。例えば、未上場企業でも500人の会社に自分が入社して経営陣に近いところで仕事できるかというと、おそらく遠いと思うんですよ。会社の組織に安定感はあると思いますが。

うちだけではないですが、上場していても100人以下の会社だと経営陣にかなり近いところで仕事ができるので、良い規模感ですね。とくに自分が会社の大きなプロジェクトに関われたり、権限を任せてもらいやすいです。

ですので、上場しているかしていないかというよりも、社員数や会社の規模感がすごく重要だと思っています。新規事業を全部任せてもらえたりとか、その事業がうまく進めば事業を会社から切り出して社長になれるかもしれない。

オークファンはまさにそうで、上場という武器・手段を得た会社でありながら会社規模が小さい、これは逆にレバレッジがきくということなので、狙い目だと思います。

あと、我々は前期・今期と堅調に成長してきていますが、やはりこれからもこだわっていきたいのはほかの会社がやっていないこと。オンリーワンの独自性。オークファンならではの価値を作って世の中に貢献していくというスタイルなので、非常におもしろい仕事がたくさんできるんじゃないかと思います。

新規事業のアイデアはたくさんあるので、「とりあえず何か作って」というよりは「どれを選んでアレンジする?」状況でもあります。

また上場企業とは言いましても、まだまだ良い意味で火が付いていますよ、ということをアピールしたいですね。もっと新しい価値を生み出したいと思っています。

藤岡:武永さん、今回で2回目のインタビュー、ありがとうございました。3回目も楽しみにしています!

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1 ヤフオクの価格相場がわかる「オークファン」のビジネスモデルと今後の展開
2 切り札は「東証1部に行こう」マザーズ上場企業の強みと組織の変化

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