電力会社のネット活用

江田健二氏(以下、江田):では、ここで4つ目のディスカッションポイントに移らせていただきます。インターネットメディアの普及や活用についてです。

こちら、イギリスの電力会社を変更した方に取ったアンケートです。「電力会社を変更した際にどこで変更しましたか?」「なにを活用しましたか?」というアンケートになります。

33パーセントの方が、インターネットのサイトを利用していて、例えば比較サイトや、電力会社さんのサイトから申し込みをした。29パーセントの方が、サイト利用して情報収集をした、ということになっています。

4割近い方は、例えばスーパーなどの店舗での案内や、訪問して対面での案内というもので選んだという結果ですが、海外での電力自由化におけるインターネットの活用が進んでいることがわかります。

ここで、そういった比較サイトおよびネットでの今後の各社様の戦略について、まず、アイ・グリッド・ソリューションズの秋田様と、MCリテールエナジーの松永様にお話をお聞かせいただけますでしょうか。秋田様、よろしくお願いいたします。

秋田智一氏(以下、秋田):イギリスの例を聞いていますと、最初はやはり店頭の直のコミュニケーションで切り替えや、今も訪問系のプッシュのほうが切り替えが進んでいる。ただ、やはり時間が経っていくにつれて、価格比較サイトなどの利用率が上がってきているというのは海外の事例でも出ています。

それを思うと、日本のほうは比較サイト各社が海外での状況を見て、わかりやすく料金プラン表示していたり、メディアでもそういった比較サイトへの誘導がなされていたこともあって、比較サイトを経由しての申し込みが、海外よりも非常に認知が高くなっているのではないかと感じています。

我々としては、先ほどありましたように、地域のコミュニティ、店舗での販売というところの説明を中心にやってきてはいるんですけれど、やはりこれだけネット社会ですから、50代~60代の方がなにか知りたいときに、ネットでのリサーチをしないということはもうないんですね。

(店舗で説明を聞いた後に、)「『スマ電』って結局どんな電気なんだろう?」と検索すれば、当然ながら比較サイトのところに飛んでいってしまう。そこで「上位にあがってないじゃないか」ということを言われたりします。

そういうことでやはり、ネットとその地域のコミュニティの融合をしっかり果たしていかないと、なかなかお客さんから支持を得られないということで、地域コミュニティとネットをいかに融合的にやっていくかというところが、我々の今後の課題だと考えています。

料金比較サイトの落とし穴

比較サイトのほうも、先ほどの付加価値という部分で言いますと、やはり料金をわかりやすく表示するというところが一番だとは思うんですけれど、いかにお客さんに対して、提案の軸、比較できる軸みたいなものを多く提供できるかだと思います。

それと、付加価値というものは、やはり提供して、実際に体験して、それがどうシェアされるか、伝わっていくかという部分も非常に大事だと思うんですね。

「電気を使っている人たちが感じている体感みたいなものをシェアできる」そういうコミュニティサイト的な役割をもう少し果たしていただけると、我々のような“使って楽しい電気”というものが、もう少しお客さんにとって伝わりやすくなるのかなと感じています。

江田:ありがとうございます。比較サイトの場合、価格以外の部分もちゃんとPRしていってほしいということかなと思います。では、MCリテールエナジーの松永様、よろしくお願いいたします。

松永典生氏(以下、松永):私も、こういった時代ですから、お客様が電力を選ぶときに価格比較サイトを使うのはもう当たり前の世界だと思っております。

ただし、これは消費者の方も気をつけなければいけない、意識しなければいけない、賢くなければいけないことがあって。要するに、比較サイトも収入源は広告だったり、アフィリエイトだったりするということなんですよ。

本当にお客様の立場で運営されてるのかどうかということについては、やはりチェックの目を光らせなければいけないと思っています。例えば、広告宣伝費をいっぱいくれるところのランキングを高く上げたりとか、あるいはアフィリエイトを契約しているとか。

なかには、比較サイトが媒介契約を締結しているところがあったりもします。この「媒介契約」ってなじみのない言葉かもしれないですけど、要するに斡旋契約ですよね。こういったところの記事をよりよく書くとか、こういったことが本当になされてないのかというところは、基本的になしとはしません。

もう1つのポイントが、先ほどの話と似たような話なんですけれど、比較をする以上、宿命として、なにか共通の物差しがなきゃ比較できないわけなんですね。じゃあ、「共通の物差しとしていちばんわかりやすいのはなにか?」というと、これは価格だというのは当然のことなんです。

逆にいうと、そこに依存されすぎちゃうと、価格に現れない部分。先ほどちょっと申し上げましたけれど、なぜこういう料金体系にしてるのか?

自分たちがある料金体系にしたときの社会インパクト。多消費層だけが新電力にシフトしていって、取り残された低消費層が値上げせざるをえないような状況になる。

「こういうことのインパクトまで考慮したうえでこの価格を設定をしているんだ」というところ、企業としてこの事業に向き合う姿勢みたいなところは、なかなか価格の横並びのサイトには出てこないところがあります。

ですので、私からの提案としては、せっかくインターネット上にはリッチなデジタルコンテンツをいろいろ載せられるわけですから、やっぱり企業として言いたいこととか、「こういう点をもっと見てください」というところも、載せていただけるコーナーみたいなものがあったら、非常にうれしいなと思っております。

比較サイトは中長期的な視点が必要

江田:ありがとうございます。そういった企業の思いもちゃんと消費者に伝わるかたちで比較してもらうことが重要ですね。

大石英司氏(以下、大石):「タイナビSwitch」さんの場合はまったく別で、比較的そういうのも拾ってくれるサイトだと思います。

けっこう比較サイトがたくさんできていて、勝手に名前を載せられちゃうんですよね。こっちはべつに許可してないのに。その場合は「削除してください」「掲載しないでください」と申し入れをしています。

江田:ありがとうございます。今、比較サイトに関するいろんなご意見をいただいたんですけど、「タイナビSwitch」を運営されてる長尾さんから、ご意見いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

長尾泰広氏(以下、長尾):今、お三方に話していただいた内容は、私もすごく課題に感じていることです。

例えば、アフィリエイト収入だったり、広告収入で成り立っているというお話なんですけれど、これはまさにその通りです。

基調講演でもお話しさせていただきましたが、ドイツの場合ですと、やはり広告収入が目的でランキングが操作されたということで、消費者の信頼を損なったと聞いています。

私ども広告収入で利益を得るわけですけれど、だからといって、そういったことを弊社の場合は運営ポリシーとしては考えておりません。やはり公平・中立性を担保しなければいけない。

短期的に見たら、偏った診断をしたほうが利益が入るかもしれないんですけれど、私どもの事業は短距離走ではなくて長距離走だと思っています。公平・中立性にこだわってやっていけば、中長期的には消費者にも電力会社さんにも支持されるサイトになるんじゃないかと思っております。

別のサービスの話になってしまうんですけれど、我々、太陽光発電の見積もりサイトを運営しているんですね。

これは最大5社までの一括見積もりになっていまして、例えば、弊社でこの一括を10社、20社に増やすこともできるんですけれど、そうすると各社の成約率がどうしても落ちてしまうので、最大5社にさせていただいています。

この考え方というのも、やっぱり目先の利益ではなくて、中長期的な視点で見ていって、長いお付き合いしていただけるのかということになります。「タイナビSwitch」においても、そのように考えております。

価格以外の項目を比較できるように

それと、比較項目をたくさん増やしてほしいという話なんですけれど、私もまさにそう思っております。

比較項目が価格だけですと、繰り返しになりますが、価格だけの勝負になっちゃうんですね。たぶん世の中のほかの業界に目を向けると、けっして価格だけで決めているわけではないと思っています。

例えばスマートフォンでいえば、価格だけでいくと格安スマホをみなさん選ばれるかと思いますけど、なぜiPhoneなのかというと、やはりコンテンツとしての価値があったり、そういったものを感じて高いものを買っていらっしゃると思います。

あとは、例えば「じゃらん」みたいな宿泊予約サイトでも、一番安い宿を予約するわけではないと思うんですよね。いろんな比較軸のなかで、お風呂が部屋についているとか、食事のグレードをアップするとか、いろいろな比較軸のなかで選んでいると思います。

電気料金比較サイトにおいても、そういったサイト運用を心がけていかないといけないと思っています。

そして、もう1つ、正確性というところでもすごくこだわっていきたいと思っています。我々が今すごく苦労しているのは、各社さんがやっぱり情報をどんどん更新していくので、それをいかにリアルタイムに反映させるかということなんですよね。これを怠ってしまうと、どうしても消費者の不利益になると思っています。

弊社では、ある程度自動化して情報収集しているんですけれど、これはうちだけじゃなくて、比較サイト全体の問題だと考えています。

江田:ありがとうございます。そうですね。比較サイトと電力会社が共存共栄するために、今日もいろいろお話があったように価格以外の想いや考え方も紹介していただく。もしくは、勝手に載せるわけではなくて、ちゃんと電力会社さんと、今おっしゃられたように、長期的な関係性をもって進めていくと。

先ほど、イギリスでは3割ぐらいの方は「比較サイトを使っている」というグラフもありましたので、ぜひそうなっていけばと思っています。

電力会社のSNS利用について

もう1つ、ネットメディアの普及に関する議論のポイントとしまして、SNSへの対応について議論させていただければと思います。

私のプレゼンのなかでも、消費者の方がTwitterやFacebookで、いろいろと情報発信をするということをご案内させてもらいました。

それと同時に、またイギリスの例になってしまうんですけれど、例えばBritish Gasという会社は自社のインターネットメディアを作って、そこで電気に関するいろいろな情報を発信しています。あとはFacebook、Twitter、YouTubeを活用して、“企業の想い”を発信したりもしています。

こういったなかで、やはりSNSの活用も、今後、電力会社にとって非常に大切だと思っております。

ここで、2社ほど、その点についてお話いただければと思います。東急パワーサプライの村井様、よろしくお願いいたします。

村井健二氏(以下、村井):電気のサービスをほかのサービスと比較すると、例えばスポーツクラブに入っていれば、毎週末、夜にどこのスポーツクラブに行っているというのは、当たり前のことのように自己認知しますよね。

それから自分がどの車に乗っているか。トヨタか日産かというのは自己認知できるんですけど、たぶん電気は、しばらく経つと「あれ、自分はどこのサービスに申し込んだんだっけ?」となりやすいサービスだと思うんですね。無機質なサービスです。

自由化を長い目で見たとき、お客様は常に選択行動を取って、常にその時その時で、好みに応じて選ぶような市場なり消費者行動が健全だとするならば、お客様と電気小売会社がコミュニケーションを取るのが、きっと一般的な手段として重要になってくる。

そういう視点に立ったときに、SNSというのがあります。例えば、今、私どもは「東急でんき」のキャラクターの名前をお客様から募集をしています。今、1ヵ月弱で1万件の名前の応募があったんですね。

それで、いろいろな広告会社等のプロの意見を聞いていますと、「たくさんの反応が来てますね」「1万件はすごいですよね」という話があって。私自身はあまりSNSとかやらない人間なんですけど、正直「へー」と思いました。

ただ、周りに聞きますと、SNSというのは、私どもの届かないところで、お客さん同士で会話が始まったりしますよね。名前がこれで決まると、「そのなんとかちゃんが今度の日曜日にここに来るらしいぞ」みたいなことがきっとお客さんのなかで始まって、どんどんコミュニケーションが広がるんだそうですね。

そういう仕掛けを、私ども電気会社の1つが用意すれば、もしかしたら電気サービス自体ももっともっと身近な存在としてい続けられるんじゃないかなと思いまして、ささやかながらSNSの利用を開始しているところであります。

大物ミュージシャンとのコラボを実施

江田:ありがとうございます。確かにキャラクターがいろんな場所に行って、それがTwitterやFacebookでシェアされているのが、1つの新しい使い方だと思います。

もう一方、みんな電力の大石様からも、SNSの今後の活用などの部分についてお話しいただけますでしょうか? よろしくお願いいたします。

大石:最初のほうで話したように、当社の場合、かなりIT企業に近いところがあります。

しかも、先ほど申し上げました申し込みはほとんどネットだけです。リアルでの申し込みを一切受け付けていません。もしお客様がご希望されたら、契約書送付でやり取りするんですけれど、ほとんどネットです。

そのことに関していうと、SNSとの連携はもう必須ですね。例えば当社の場合、Facebook上に再生可能エネルギーのコミュニティを持っているんですけれど、それは3,300人でFacebook内では国内最大の再生可能エネルギーのコミュニティになっているんですね。そういったところに情報提供していたりします。

それから先ほど申し上げました、カルチャーとのコラボ。大物ミュージシャンやレゲエカルチャーなどです。カルチャーとのコラボという意味では、やはりSNS上にもコミュニティができあがっていますので、そのコミュニティとうまく連携しながら、エネルギーとカルチャーをうまくかけあわせていく架け橋がSNSになっていくのかなと思いますね。

江田:そうすると、今後、先ほど言ったようなミュージシャンのFacebookページなどでもどんどん情報を配信していったりといったかたちを考えているということですか?

大石:はい。連携していきます。

それと、八王子のミュージシャンのお話でいいますと、八王子の発電所が1つ増えると、その周りのファンの方が契約いただけるという感じになっているんですよ。

やっぱり地域とか、周りにいらっしゃる方はネットを中心にいらっしゃいますので、うまくそういったところを取り込んでいきたいなと思っています。

電力市場の魅力は周辺に新しい産業が生まれること

SNSとはちょっとかけ離れますけど、もう1つ、ITという切り口でいうと、当社の場合、エネクションというコンテンツの流通のシステムを作って、いろいろやっているわけですけれど、すごく無駄が多いんですね、電力の流通システム。みなさんけっこう大きい基幹システムを作られるんです。

例えばスイッチングのところはすごく無駄が多いし、すごく人的労力の負荷が大きい。そこをどんどん自動化して、クラウド化していくことで、ずいぶんとITのコストが落ちていきます。

それが最終的には電気代の低減化につながってくと思うので、ITを通じていかに無駄を省いていくかというのは、SNSとは離れますが、大きなポイントじゃないかなと思ってます。

江田:ありがとうございます。小川様にお話しいただきたいんですけど、今までのインターネットの比較サイトやSNSの活用、大石様から出たITの活用という部分で、行政のお立場からどうお考えなのかというのをお聞かせいただけますでしょうか?

小川要氏(以下:小川):ITの活用あるいは比較サイト、両方に共通するんですけれど、今、私どものところには、18兆円の電力市場があります。

もちろん国内のいろいろな事業者が入ってこられるとともに、海外からたくさんの事業者が来ています。

日本で、18兆円の市場といっても、どうしても人口も減って、電力消費も足元で減ってきているのに、なぜそんなに魅力を感じているのかと聞きますと、電力消費そのものが増えるところに期待しているのではなくて、その周辺でいろいろな市場が生まれているところに期待しているのだそうです。

それが、先ほど言いましたITであったり、比較サイトもそうです。そこが先行しているということもあって、欧州の企業が入ってくるとか。そういった新しい産業が生まれているというのは、私どもとしても、自由化の1つの目的でもあります。

もちろん電力のコストが下がるということ、選択肢が増えるということも大事なんですけれど、私ども経産省としての産業政策としては、その周辺にいろいろ新しいものが生まれてきているのが大事だと思っております。

他方、その過程においては、例えば比較サイトでいいますと「たくさん新しいところが入って来てるんだけども、どれが事実なのかよくわからない」といった声。諸外国でも一定の規制をしているという例もあります。

いろんな意味で、この今の時期においては、競争のルールができてくるまでは、消費者もいろいろ試されるでしょうし、事業者も工夫をしていくというところだとは思っています。

今、起こっていること、起こりつつあるというところに関しては、非常に期待を持って見ているところであります。

「異業種参入で電力の自由化が多様になった」と言われるために

江田:ありがとうございます。

それでは、最後になりますけれど、今後の会社の戦略もしくは展望に関しまして、だいたい1分ほどで、村井様から松永様の順番にお話しいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

村井:私からは2点です。まず1点目は、10年後または20年後に、今日の日本の電力の自由化を振り返ったときに、「異業種参入者が参入したことで、日本の電力の自由化が多様化したね」と思われたいと思っております。

2点目に、今、顧客争奪戦が始まっておりますけれど、私どもは鉄道会社出身でございますので、電気料金を将来にわたって値上げしない体力を持つこと。ここに重大なる関心を持っております。

原価の大半が仕入れという状態になっておりまして、その仕入れは当然世界のエネルギー相場に連動する。または、世界のエネルギー相場に連動するかたちで、いろいろなレギュレーションのルールが決まっている状態がございます。

環境の変化に対して、企業体としてしっかり耐えうる。そして、長い期間にわたりお客様に説明した料金を維持できるようにする。このような挑戦をしていくことにより、日本の自由化の、本当にささやかな一端ではございますけど、責任を果たしていきたいと考えております。よろしくお願いします。

江田:ありがとうございます。松永さん、よろしくお願いいたします。

松永:電力小売のビジネスというのは、みなさんの想像を絶する薄利のビジネスなんですね。

つまるところ、お金をどこにかけるかというと、顧客獲得のところ。広告宣伝費、あるいは、お客様への還元にお金をかけるか。この2つしかないんですね。バランスはそれぞれ会社によってありますけれど。

私どもは、広告宣伝費にはほとんど使っていなくて、地味な存在ながら全勢力をお客様への還元に使っていく方針です。これは揺るぎない方針でやろうと思っています。

したがって、ローソンに行っても「ちゃんとやってるのかな?」と言われるぐらいに、そのあたりは逆に、あまりそこにお金をかけるんじゃなくて、入っていただいたお客様に最大限の還元をしていこうと、そっちに集中している次第です。

そういったお客様への還元を考える場合に、関東圏のローソン4,000店舗のネットワークは非常に役立つんじゃないかなと思います。遠くまで足を運んでくれとなると、なかなか億劫だとなるかもしれないですけれど、1つひとつは小さくても、すぐにそのメリットが実感できる、身近に体験できる。この体験価値の最大化ということを優先的に、今後も事業に取り組む所存でございます。

講座やワークショップの開催

江田:ありがとうございます。では、秋田様、よろしくお願いいたします。

秋田:我々は社名が「ソリューション」なんですね。「エナジー」でも「パワーズ」でもない。地域のコミュニティを活性化していくソリューションをどんどん提供していくと。究極をいうと、電気もその1つだと考えています。

この8月に我々がどういうことをやるかというと、JEPXの、電気の卸売市場が高騰するときに、お客様に今は電気の使用を控えて止めていただいて、お近くの地域の我々と販売提携しているスーパーさんにお買い物に来てくださいと。スーパーで昼涼みしながら、行動の変化によってそういったピークのシフトを少し起こすということをやります。

これによって、我々としては、市場価格が高騰しているときに電気を買う量を減らせる。お客さんにとっては、来店することでポイントがもらえます。

スーパーにとっては、夕方にお客様が集中する時期を少し日中のほうにシフトしてサービスを提供できて、来店の理由にもつながります。

こういった3者WINな状況を、いわゆるIT、情報をうまく活用することによって作っていくことができます。

こういったことをやりながら、地域のコミュニティをつないでいくサービスを提供して、「入っていてよかったな」と思っていただけるようなサービスをどんどん提供していきたいと思っています。

江田:ありがとうございます。では、大石様、よろしくお願いいたします。

大石:電力の自由化、今のところ自由と言ってもあまり自由じゃなさそうな感じがするので、私たちはベンチャーなので発想を自由に、みなさんの想像してる外にあることを次々とやっていきたいと思っています。

ポイントとしては2つです。1つが今週末の日曜日に、もう定期的にずっとやっているものですが「楽しい電力自由化講座」、プラス「理想の電力会社をつくろうワークショップ」ということを、世田谷ものづくり学校でやります。

もうすぐ定員になっちゃうんですけど、これはだいたい1ヵ月に2回ぐらい、女子大、大学、世田谷、足立区などあちこちでやっているんですね。

だいたい25人ぐらいで電力自由化の講座をやって、理想の電力会社をみんなで作ろうというワークショップをやります。

私はこれを「ライブ活動」と呼んでいます。先ほど一番最初に申し上げました、「私たちならこういう電力会社を作りたい」というところの1つの参加する機会にしているんです。なので、地味なんですけれど、これはやはり引き続きずっと継続してやりたい。

もう1つは、やはりセグメント。先ほど電力自由化の市場が18兆円とありましたけれど、実はよくみると、市場は細分化していると思っているんです。具体的にいうと、先ほどのアイドルの電気、ミュージシャンの電気というところもそうなんですけど、いろんなセグメントの取り方がありえるんですね。

1つ、具体的にやろうと思っているのが、シングルマザーのみなさんに代理店になっていただいて、電気はストック収入になりますので、ある部分を営業していただく。

やはりそこに長期的なストック収入ができてくるので、今までの流通チャネルとは違うチャネルの作り方で、電気の流通をはかっていきたいなというところもあります。

いろんなセグメント、客幅があるので、どういうセグメントで、どういう価値を提供して、どう具体化するかということは、もっと無限の可能性があると思っています。

今、戦後最大の改革の真っただ中にいる

江田:ありがとうございます。では最後に、長尾様、よろしくお願いいたします。

長尾:来年都市ガスも自由化されるわけなんですけれど、その間まず、第1フェーズとして目指すべきところは、ガスも含めた、エネルギーのマーケットプレイス、プラットフォームになることだと思っています。

ただ、それだけで終わるつもりはなくて、そのプラットフォームを媒介として、例えばマーケットリサーチだったり、ASP、シミュレーション、加えて、バーチャルパワープラントやオフグリッドシステムというのも今後広がっていくと思います。そのあたりにも絡んで、エネルギーの総合カンパニーとなっていければと思っております。

江田:ありがとうございます。それでは、最後に小川さんから、国としての今後の展望や今回のサミット、このパネルディスカッションを含めてのご意見をお聞かせいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

小川:ありがとうございます。4月に全面自由化がスタートして4ヵ月、まさに期待と不安のなかでのスタートでした。前半で松永様より、「野球で言えばまだ1回の表」という話もありましたが、9回の裏がいつ来るのかというのもあります。

間違いなく言えることは、やはり戦後最大の改革でありまして、今、我々はその真っただ中にいるというところだと思っています。

本日お聞きした話、ある意味手探りではあるけれど、いろいろなことにチャレンジしていて、新しいことが生まれつつある。そして、この会場にいらっしゃるみなさんも含めて、そこにまさにお1人おひとりが参加しているというのが、非常に大きな意味を持っていると思っています。

切り替えたから安くなったとか、なにかとそちらに光が当たりがちなんですけれど、エネルギーに限らず、まさにライフスタイルにも関係してくるようなところに光が当たるきっかけになっているというのは、非常に大きな意味があると思っています。そういう意味でも、本日おうかがいした話は非常に心強いものであります。

まだ本当に始まったばかりですが、こういった動きがしっかりつながっているということが大事なんだということを、あらためて認識した次第です。

江田:ありがとうございます。今のお話でも、まだ1回表で、これから長いイニングがあるというお話、戦後最大の改革というお話もいただきました。本日は、国の立場からのお話や各社の最新の状況に関して、非常にリアルで貴重な意見が聞けたと思っています。

本当にこれからが本番だと思いますので、ぜひみなさまにとって今回のパネルディスカッションが、今後進めていかれるビジネスのチャンスになっていればと思います。

本日はお忙しいなか、パネルディスカッションにご参加いただきまして、ありがとうございました。また、長い時間お付き合いいただきまして、ご清聴のほど、ありがとうございました。

(会場拍手)