「敵は日本ではなく世界」DMM.comラボ×東大理工系が生み出す新しいエンタメ体験

DMM.comラボ×東京大学情報理工学系研究科インタビュー

2016年8月2日、DMM.comラボと東京大学情報理工学系研究科が共同で「社会連携講座"時空間解析技術の応用研究"」の取り組みを発表しました。テクノロジー分野で常に新しいビジネスに挑戦するDMM.comラボと世界最先端の技術を持つ東京大学情報理工学系研究科によって生まれる新しいエンタテインメント体験とは? 今回の「社会連携講座」を担う4名にインタビューしました。

提供:株式会社DMM.comラボ

東京大学情報理工学系研究科×DMM.comラボが目指すもの

──今回発表される、東京大学情報理工学系研究科とDMM.comラボの社会連携講座についてお話をうかがいたいと思います。

石川正俊氏(以下、石川):では、今回の社会連携講座の概略をお話しします。東京大学のなかには、物理世界と情報の世界をつなげるいろんな技術があるんですね。

そのなかの人間を対象とするようなもの、情報の世界と現実の世界をどうやってつなぐかという技術を、DMM.comラボさんが目指している応用展開に対して寄与していきたいというところが東京大学情報理工学系研究科側の想いですね。

世界トップクラスの技術とビジネスの融合

──DMM.comラボさんから見て、東京大学情報理工学系研究科の技術で一番すごいところ、自社の事業に活かして発展させられる可能性を感じたのはどんなところですか?

城倉和孝氏(以下、城倉):もう本当に目から鱗というか、世界トップクラスの技術で、石川先生がYouTubeに動画をいろいろあげられていますけれども。

とくに有名なのが後出しジャンケンマシーン(笑)。あれも高速にこだわり独自開発したカメラで手の動きを撮って必ず勝つという、テクノロジーですべてを解決されるというところで、すばらしい技術だなというのを感じました。

我々はいろいろなビジネスをやっていて、もともとは動画配信やFX、オンラインゲームなど、ネット系のビジネスが中心でしたけど、昨今ではオンライン英会話やVRシアターなど多角展開をしています。特に今はグローバル市場に向けたビジネスを加速させています。

そのなかで、やはりテクノロジーというのはこれからのビジネス展開で優位性を決める不可欠なものだと思っています。

我々はどちらかというと、要素技術を研究するというよりかは、要素技術を使って応用開発して、それをビジネスとして展開していくのが得意なので。

今回、東京大学情報理工学系研究科さんの技術をうまく取り入れて、どこにシード性があるのかといったときに、例えばDMM.futureworksの開発しているDMM VRシアターがまさに現実社会と情報社会の融合というかたちのサービスをやっているので、ここでの展開がおもしろいなと思って話を進めさせていただきました。

世界初のホログラフィック劇場「DMM VR THEATER」の挑戦

──今お話に出たVRシアターでは、どのような体験ができるのでしょうか。

黒田貴泰氏(以下、黒田):VRシアターはいわゆる「ホログラフィック」技術の応用になりますが、舞台上に存在しない人物やキャラクターを投影し、そこで演技やライブなどのパフォーマンスをしているのと同等の臨場感を体験できるステージシステムを備えた劇場です。

昨年2015年の秋にグランドオープンして、第一弾公演ではX JAPAN hideさんのライブをVR技術で再現しています。

シアターは横浜にあるのですが、今後多角的に増やしていくつもりでして、国内にいくつかと、それからアジア、中東を中心とした海外ですね。とくに「VR」というキーワードに関連して、自分たちの国にどういうかたちで展開できるかというオファーをかなり具体的にいただいています。

──一般的にVRと聞くと、ヘッドマウントディスプレイでバーチャルな世界を体感するという認識があって、とくにゲームコンテンツが盛り上がっている印象があります。

VRシアターをやられているというところで、ゲーム以外の可能性はどんなところにあると思いますか?

黒田:VRというカテゴリーを細分化していくと、いわゆるヘッドマウントディスプレイに代表されるような狭義のVRと、透過グラスなどを用いて現実環境に情報を付加するAR、それからMR(ミックスドリアリティ)と呼ばれている仮想現実と現実正解を融合させるカテゴリの3つになります。

VRシアターについては、このミックスドリアリティにあたります。VRをビジネスとしてどう取り扱うかを考えたときに、「没入感」というのがすごく重要なキーワードになるんですけれども。

1人のプレーヤーが、没入した世界のなかでVRを体験する前提として、物理面での環境構築や心理コスト的なハードルが今はまだすごく高いと思っているんですね。

そのハードルを超えるために、お客さんをどのようにVRの世界に動員していくのかといことを考えると、既存のシアターやコンサートといった興行形式の延長線で、VRのテクノロジーを導入してあげることができれば、今ヘッドマウントディスプレイなどのデバイスが超えなければいけない心理コストの一歩手前を、ビジネスモデルとして埋めることができるのではないかと考えたのが、VRシアターに可能性を見出している1つの理由です。

視覚・聴覚・触覚を取り入れた究極のVR体験

──東京大学情報理工学系研究科の技術というのは、VRの分野にどのようなかたちで活かせるのでしょうか。

猿渡洋氏(以下、猿渡):映像というのは、五感の中でもかなり重要な部分を占めているんですが、ARやMRのように、そもそもないものをどうやって意識させるかとなってくると、聴覚や触覚そのものの制御であるとか、再現・解析というのが重要になってくるんですね。

東京大学情報理工学系研究科では、そういった技術を一通りそろえているということで、それらをうまく融合することによって、トータルとして本当に五感に訴えるような、五感を制御して、解析して制御できるような。ある意味、真のARやMRというものができないかと考えています。

私がやっている音の分野というのは、そもそも芸術性やエンターテインメント性の要素が非常に大きいんですけれども、例えば日本発の技術でいうと、初音ミクのような細やかなコンテンツをつくる職人がたくさんいます。

ただ、その人たちはある意味クリエイターさんなわけですから、技術というものとはちょっと縁遠いところにいるんですね。そこのところをうまくつなげると、ものすごく大きなことができるんじゃないかと。

例えばVRシアターでは、会場にはいないんだけれども、バーチャルな人が演奏しているということができるわけですね。現状は録音して再生しているということがあるんですけど、本当は音もそのように再現しなければいけないわけです。

音というのはすごく難しくて、今ここで私がしゃべっていることを後から差し替えようとしても、簡単にはできないんです。画像は上から貼りつけられたり、ある程度エディットの技術があるんですが、音はこれを全部分解しないとできないんですね。それを私は、聴覚の情景解析という技術を提唱してずっとやっています。

画像のホログラフという技術に対して、音のホログラフというのがけっこう長く研究されていて、ものすごく簡単なバージョンが、市場に出回ってるオーディオであるとか、みなさんがご家庭で聞いているサラウンドのようなものなのですが。

それをもっと凌駕するようなレベルで、人がいないのにリアルに耳元でささやかれているような音のホログラフというのができつつあります。

そのような音の技術は画像のVRの技術と親和性がいいので、そういったかたちで提供して、DMM.comラボさんがやっているような分野にうまく融合できると、映像の視覚と音の聴覚、触って感じる触覚の3つの技術がそろうということで、かなり大きなインパクトだと思います。

──3つ目の触覚というのは、映像を触った感触が得られるということですか?

猿渡:そうですね。非接触で手を出すと、圧力を感じるという技術です。例えば、空中で本当にタッチパネルに触っているように入力ができるというものがあります。

DMM.futureworksの海外展開

──DMM.comラボさんとしては、そういった技術を活用してどのようにビジネス展開できたらいいなという展望はありますか?

黒田:今回はDMM.futureworksのVRシアターをはじめとして、アトラクションやサイネージといった形で施設開発への応用ができるとおもしろいなと考えております。

我々もVRシアターを始めてから、幸いなことにテクノロジーを活用したアトラクションの開発依頼を世界中からいただくことが多くて、どこの国や地域に行っても商業施設開発事業というのがすごく熱くなっています。

そのなかでもやはり競争優位性を持たせるために、競合他社が持っていない注目されるテクノロジーやインスタレーションによる体験がほしいという点は共通していて、国や文化は違えど、おっしゃることはみなさん一緒なんですよね。

そのようなことを考えたときに、東京大学情報理工学系研究科が持たれている基礎研究、応用研究の先のアウトプットとして、商業施設の中になにかしらのアトラクションがつくれるんじゃないかなと思っているところです。

例えば、るみペン2という研究技術を用いた、1000分の1フレーム単位で画像解析をして超高速で移動する動的なオブジェクトにリアルタイムで追従するとてつもないプロジェクションマッピングのサンプルを拝見させていただきました。

今のプロジェクションマッピングの映像表現の展開でいうと、どれだけ大きなものにどれだけ繊細な映像を投写できるかという、ただそれだけの要素でしか競争が行われていないんですが、そこにまったく異なる価値軸を持ち込めるというのは、るみペン2が持っているおもしろさだと思います。

DMM.comラボと東大が手を組んだのはなぜ?

──東京大学情報理工学系研究科としては、DMM.comラボさんと組んだ決め手というのはなにかありますか?

石川:今回の取り組みに関しては、DMM.comラボさんの新しい分野に対する意欲をヒシヒシと感じました。東京大学情報理工学系研究科も、同じように新しい分野を開拓する力を大事にしていこうと思っていますので、それとうまく共鳴したというかたちです。

私のところも猿渡先生のところも、社会への展開というのは常々やっていて、産業界に実用化している技術も多く持っています。今回は、そのなかでも今まで実用化していない分野だったので、おもしろいなと。

猿渡:そうですね。産業界へのアウトプットっていうのは出しているんだけれども、総合的にエンターテインメントの要素というのはなかなか……。

石川:今回のお話では、我々の技術に興味を持っていただいて、欲していただいている。こちらとしてもエンターテインメントのコンテンツをつくる人たちとのコラボ、意見交換ができると。

技術の展開をパラレルにして、社会に提示して、社会がウケたものがよい技術ということになるので。こういった展開のなかで、エンターテインメントに対する1つの大きな道ができたということは大学にとって非常にありがたいことだと思います。それで、全部がうまくわけではないというのはお互いに理解しているので(笑)。

案外日本の産業界だと、「これはうまくいくんでしょうね?」「マーケットはありますかね?」と言うから、「そんなバカな質問しちゃいけない」といつも言っています。「マーケットがあるものなんか大学でやりませんよ」と。

あるかどうかはわからないんだけど、あるに違いない、あってほしいという技術をいっぱいやっているので、それはみなさんと一緒に見つけましょうと。こういうことに関しては、ものすごく合意ができています。DMM.comラボさんには、「マーケットはありますか?」と聞かれなかったので(笑)。

(一同笑)

DMM.comラボが注力する“新しいエンジニアリング”

──DMM.comラボとしては、今回の社会連携講座でどのような役割を担っていかれるのでしょうか。現在の事業展開も含めて教えてください。

城倉:やっぱり新しいユーザー体験ですよね。新しいエンターテインメント、新しいサービスによってインパクトを与えられることを期待しています。

DMM.comラボは、グループのシステム開発、マーケティング、インフラ管理と、開発と運営に携わるところを全部やっております。我々が運営するサイトは大規模なトラフィックを持っており、それをさばく技術をずっと進化させてきたという経緯があります。

昨今はテクノロジーがだいぶ多様化してきていて、昔はWebのエンジニアってWebアプリケーションだけ作ればよかったんですよ。

今はIoTが話題ですけど、もともとデバイスの制御系は決まったマイコンの上でC言語で書くというような、ある意味専門的な仕事でしたが、最近ではUNIXベースなマイコンが主流になりつつあり、Webエンジニアもそこでプログラムができるような時代になってきたりとか。

また、サーバーやネットワークのインフラも、仮想化技術で全部ソフトウェアで制御する流れがあり、世の中が全部ソフトウェア化してきていると思っています。

我々のビジネスも本当に多様化していて、極端な話、何をやるかわからないんですよ(笑)。社員一人ひとりが誰でもアイデアを出せる企業風土があり、アイデアを出しやすいいろいろなツールも備えています。

そのような社風なので、世の中に新しいものが出るといち早くキャッチアップして議論できるところが強みかなと思っています。あとは、こだわりがなにもないのがこだわりだという(笑)。

色々な会社のチャレンジにエンジニアとして応えていけるために、フルスタックな能力を身につけるというところを目指して、今いろいろなエンジニアリングをやっているという状況です。

グローバルから見た、日本のテクノロジーの信頼性

──今回の社会連携講座をどのようなかたちで発展させていきたいとお考えでしょうか。今後の展望を聞かせてください。

黒田:僕らがやっている、ホログラフィックと呼ばれるVRの分野に関して言うと、現状は世界的に見てもヘッドマウントディスプレイと違ってまだまだプレーヤーが少ない状態です。そこに身を切りながら飛び込んでいくというのがDMMらしさだったりするんですけれども。

VRシアターというフォーマットを1個つくってみて思ったのが、日本が持っているテクノロジーの繊細さだったり、完成度に対しての信頼というのは、いまだどこの国や地域に行ってもすごく根強いです。世界が日本に求めている技術はそういうものなんですね。

DMMグループとしても、アフリカ事業を含めたかたちで展開しているところがあるんですけれども。まさに国際企業として、日本が持っているさまざまな価値をいかに世界に提供していけるかというトライをしていければいいのかなと思っています。

東京大学情報理工学系研究科との社会連携講座に関しても、これで日本の中にマーケットを作ろうという話ではなくて、ワールドクラスの最先端技術を、世界にどうやって周知・パッケージし、展開していけるかというのを考えていきたいです。

「日本で世界に向けてモノづくりを」社会連携講座から生まれる価値

石川:東京大学情報理工学系 研究科も同じで、「敵は日本じゃなくて世界だ」というのがあります。世界を視野に入れたときに、どういった研究・応用展開をしたらいいかということを考えるべき時代になってきたし、我々も日々考えています。

城倉:インターネットのインフラ化によりグローバル市場への参入障壁が以前より下がっていますが、弊社も日本市場にこだわらずに、世界に向けていろいろなビジネスを展開をはじめています。

東京大学の学生さんもそうなんですけど、優秀な学生さんたちにはぜひ日本で世界に向けてモノづくりをしてほしいなと思いますし、DMM.comラボは、エンジニアに対してもそのような環境を提供できる会社です。なのでその……あまり外資の他社さんには行かないように(笑)。

(一同笑)

城倉:最近はアフリカ事業も含めてグローバル採用を強化していますので、学生さんでもグローバルな人材がかなり増えています。我々としては、そういう優秀なエンジニアが集まって、日本のビジネスを活性化させてほしいなと。

石川:アメリカの学生なんかは、世界中で一番技術の高いところに行きたいと言っていますから、東大にもアメリカやヨーロッパから学生がいっぱい来ていますし、一部ではインドや中国から奨学金つきで留学生を入れています。

なのに、日本の学生はアメリカやヨーロッパに行くという……。それはそれでいいんですけど、自分のやりたいことがやれる一番最適なところで学べばいいという話です。

東京大学情報理工学系研究科の技術というのは、基礎的な学問レベルとして言わせていただきますと、本当に世界の先端でやっている技術を持っていると自負しておりますので、今回このようなかたちでやらせていただいて、なにか1つでも大きなものができればいいなと思います。

もちろん使われない技術もいっぱいあるかもしれないけれども、その体験を生かしてまた別の展開を考えればいいわけですから。そういう意味で、お互いにWin-Winになるようにやっていく、社会連携講座というかたちでやることに価値があると。

猿渡:そうですね。もちろんベースには共同研究というのがありますけれども、あくまでこれは大学の中の1つの社会連携講座という、簡単な言葉でいうと研究室になるんですよね。そういうかたちで存在するというのは、やっぱり意味があるんじゃないかなと思います。

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