ギャル男向けビジネスからグローバルへ

西野亮廣氏(以下、西野):今後なんかあるんですか? これしたいあれしたいは。

石川涼氏(以下、石川):よく聞かれるんですけど、なんですかねえ。僕自身がなにかになりたいとか、本当にないんですよ。

西野:そうなんですか?

石川:自分が最後どうなりたいみたいなのは、本当に考えたことなくて。自分たちが作ってるものは、もともとニッチなマーケットで、ギャル男くんたちに向けて仕事をやってたんだけど、やっぱそれじゃいけないってことで。

ジャンルレスに売れるものにブランドを変えたり、いろいろ時代時代でステップがあるんですけど。

今の対象は(日本の)1億2000万人よりも、(世界の)60億人の人たちにどう響くかをやってるから。だから自分たちの作ったものが、1人でも多くの世界の人たちにどう愛されるかみたいな。それしかないかも。

俺がなんとかっていうよりは、自分たちが作るものをどうやって世界に売っていくかっていうか、「日本からおもしろいの出てきたな」って言わせるかみたいな。

西野:そこはやっぱり、すごい考えられるんですか?

石川:それしか考えてない。それか、女の子しか考えてない(笑)。

西野:いいなあ、むっちゃいいなあ。単純でいいですね。2つしかチャンネルがないってことですね。

石川:本当にそう、それ以外にないですよ。たぶんそんな器用じゃないんで。あと、時間は平等なんで。努力した者勝ちっていうか。それしか隣の人と差がつけらんないでしょ。

西野:むっちゃいいですね。じゃあ海外ですか。

石川:海外というか、日本も含む、世界に対してビジネスやるかみたいな。

西野:売るのを考えるの、けっこう好きなんですよね。楽しいですよね。

石川:それが評価だから。僕のことを評価してくれる人いないから(笑)。

西野:作品なんですね。

石川:自分たちの売上というか、評価なんで。

売れない作品は「クリエイティブ」とは言えない

西野:そうなんですよね。僕、前は嫌だったんですよ。売るのを考えるのが。ちょっと汚いくらいに思ってたんですよ。でも、そういうことじゃないなと思って。

作るだけ作って、あとの売ることを人に任すっていうのが、育児放棄みたいな感じがして。それは嫌だなと。

お客さんに届くまでの動線をちゃんとデザインしないと、無責任だなと思うようになって。(今は)届けるのとか、作業を考えるのすっげえ好きです。

石川:絶対そこまでセットで「クリエイティブ」って言ったほうがいいです。

西野:本当はそうなんですよね。

石川:僕が洋服屋さんって嫌いなのは、「俺が作ったものカッコいいだろう?」みたいな。「どう?」で終わりなんですよ。だから、ふんぞり返ってるんだけどぜんぜん売れてない人がいっぱいいるし。

そうじゃなくて、ちゃんと作って、それをお客さんに届けるまで、売るところまでセットで初めてクリエイティブって言わないと、やっぱり偽物がすごい出ちゃいますよね。「だってこれ、ちゃんと売れないでしょ?」「お前がカッコいいって言っても、売れなきゃ意味ないよね」と(笑)。

西野:(笑)。

石川:売れるところまでセットでクリエイティブにしないと、やっぱり戦えないよね。

カッコいいだけの服は、UNIQLOやAmazonに勝てない

西野:服ってどうやって売るんですか?

石川:今はすごい難しいよ。

西野:難しいんですか?

石川:すごい難しいですよ。服売るのだって、さっきも言ったけど、(今の若い子は)写真中心のコミュニケーションだから。「カッコいい」って言ったって、そんなのいくらでもあるし、安いものもいくらでもある。Amazonが一番便利だから、わざわざ洋服屋さんに行く必要ないわけじゃないですか。

(インターネットで)ピッてやったら、次の日届くんで。だったら洋服を買う時間は違うことに、みんなで初日の出を見に行くとか、そういうことに変えたほうがいい時代になっちゃってる。

(なので)洋服を買ってもらえるっていうことは、「それでも欲しい」っていう。お客さんが欲しいものを、いかに作れるかだから。今はすごい難しいです。

西野:難しいですよね。

石川:めっちゃ難しいですよ。だって、ほとんどのところUNIQLOでいいんだもん。

西野:それ言っちゃうのすげえな(笑)。

石川:でも、僕の服が欲しいって言わせるストーリーだよね。

西野:それ大事ですね、ストーリーって。

石川:ストーリーがないと、お客さんはわざわざ買ってくれないんで。

マーライオンの置物や映画のパンフレットが売れるのはなぜ?

西野:最近それ思ったんですよ。それこそ自分がタモリさんと一緒に「絵本作ろうぜ」みたいな話になって。

1冊目、2冊目は作るだけでいいやって思ったんですけど、3冊目くらいからちゃんと売ることを考えたいなって思って。「どうやったら売れるんかな?」ってすげえ考えた。

まず、「今お客さんがなんだったらお金を出してんのかな?」「なに買ってんのかな?」「なにやったら買うかな?」って考えたら……トイレットペーパーって買うじゃないですか。お米も買うじゃないですか。毛布も買うじゃないですか。“必要な物”は買うなと思って。(そうすると)作品ってあんまり必要じゃないなって。

まあなくてもそんなに困らない。「そりゃ買わないな、作品って必要じゃないから買わないんだ」と思って。

「じゃあ、この作品になんかちょっと魔法をかけてあげて、売れるもんにしてあげたらいいんじゃないか」と思って。「売れてる作品ってなんなんだろう? みんなが作品なのに買っちゃってるものってなんなんだろう?」って考えたときに。

それはシンガポールのマーライオンの置物だとか、自分の記憶なんですけど、小学校のときに広島の宮島に行ったときに、三角形のペナントっていうんですかね? 「宮島」って書いてあるような。あんなんはけっこうためらわずに買ったんですよ。

本でも、みんな本屋さんでこんな分厚い本を買うのは渋るくせに、演劇とか映画とか観に行ったときのペラッペラのやつ、2000円くらいするんですけど、あれは買うなあと。

でも、あれも作品じゃないですか? パンフレットも作品だし、マーライオンも作品だし、宮島の(ペナント)も作品じゃないですか。「なんだろう?」って思ったときに、「みんな作品にはお金を出さないけど、思い出にはけっこうお金を出すな」と思って。

つまるところ、「お土産はやっぱり買うぞ」と思ったわけですよ。じゃあこの作品を、お土産化しちゃえばいいと。絵本が3冊くらい、原画で150点くらいあったんで。まず原画のリースを無料にして、全国誰でも原画展を開催できるようにして。

本当に誰でもいいんです。大分のサラリーマンだとか名古屋の中学生だとか。誰でもやっていいですよっていう状態を作って、その出口に絵本を置いたんです。

これは超売れたんです。たぶんこれは絵本として買ってるというよりは、どちらかと言ったら、原画展に行ったお土産ですよね。だから、そこまでのストーリー作りですよね。これが大事だなって、最近そっちになってきましたね。

ドメスティックに寄せ切ることで、逆にグローバルになる

石川:大事。僕はまさにそれで、ネタバレになっちゃうんで、言おうかちょっと迷ってたんですけど(笑)。さっき言ってた「UNIQLOさんにどうやって勝つか」をずっと考えてたんです。今やってるのって、僕らは渋谷で生まれて渋谷でおっきくなったから、全部「SHIBUYA」が入ってるんです。

西野:なるほど、なるほど!

石川:今までは、そういうの一切やらなかったんです。でも例えば、スカジャンも背中に「SHIBUYA」って入ってて、ハチ公が刺繍されてて、ギャルが刺繍されてて、109が刺繍されてるとか。絶対にUNIQLOが真似できないもの。UNIQLOに並んでるようなものを作ってもしょうがないから。

ドメスティックに寄せ切ることによって、逆にグローバルになる。「渋谷に来たら、VANQUISH買ってこよう」みたいな。全部ハチ公のワッペンがついてたりとか。そうすると、外国人がめっちゃ買っていくんですよ。

西野:はー、おもしろい!

石川:伊勢の赤福はみんな買うわけじゃないですか。だから、「俺らは伊勢の赤福になるぞ」って言って、もうとにかく(すべてに)「SHIBUYA」のロゴが入ってるんですよ。だってみんなが「NEWYORK」って入ってるの着てるのと一緒だから。全部「SHIBUYA」って入ってて。

西野:途中から全部そっちに全部シフトしたんですか?

石川:そうです。

西野:はー、おもしろ! なるほど!

石川:ドメスティックに寄せ切ることで、逆にグローバルになる。「渋谷といったらVANQUISHだよね」っていう刷り込みだよね。それを作るのを今やってるんですよ。

勝ち負けじゃないんだけど、それができないと存在意義がないんで。洋服なんてどこでも買えるじゃん。でも「渋谷のVANQUISH」はうちでしか買えない。