大前研一氏「ダメ上司はありがたい先生」 成功につながる“サラリーマンの心構え”を説く

『企業参謀(2014年新装版)』オーディオブック特典・大前研一氏インタビュー

音楽を聴くように、いつでもどこでも音声で本を楽しめると人気の「オーディオブック」。 今回は、オーディオブック配信サービス「FeBe(フィービー)」が発売する大前研一氏の著書『企業参謀(2014年新装版)』から、特別収録された巻末特典メッセージをお届けします。1970年代に出版され、40年経った今もなお読み継がれている『企業参謀』。出版当初の時代と比べ、今の日本企業を取り巻く状況はどう変わったのか? そして現代のビジネスパーソンがリーダーとなるためにはどうすればよいのか? 大前氏が熱いメッセージを寄せました。

ヒト・カネ・モノの重心が変化している

大前研一氏:企業経営というのは、「ヒト・カネ・モノ」というふうに一般に言うけれど、その「ヒト」の重要性というのが、昔と比べると遥かに大きくなっていると思います。

それから、カネは今、世界中に溢れているので、いい人がいていい戦略を立てられる会社があれば、お金は昔ほど希少資源ではなくなっています。例えば、非常にいい経営者がいるとか、一度成功した経営者がもう一度なにか新しいことをやるという時には、お金はいくらでも集まってくる。

そういう状況なので、ヒト・カネ・モノのなかで、2番目のカネというのが、私がこの本を書いた頃は非常にまだ重要で希少資源だったけれども、今は世界的に高齢化社会。高齢化社会というのはお金があふれる社会なんですね。なぜかというと、高齢者がお金を貯める。

スウェーデンでも日本でもアメリカでもイギリスでも、国はお金がないと言っても、実は、経済そのものはそういう高齢者が持ってる年金とか貯蓄とか、そういったものがあふれている。いい経営者がいれば、これが、そこにお金としては流れてくると。

だから、ジャック・ドーシーとかイーロン・マスクみたいな人間が、「次はこういうことをやるよ」と言ったら、お金がもうドッと流れてくる。こういう状況ですね。

だから、昔に比べるとヒト・カネ・モノのなかのカネの役割は、むしろヒトのほうにシフトしてると。つまり、ジャック・ドーシーという人がいれば、「2回目もしかしたらうまくいくぞ」「3回目もうまくいくかもしれない」と。

昔、私がこの本書いた頃というのは、1人の人間が一生かけて1つの仕事をする。松下幸之助さんであれば、とにかく家電事業というものを作って、それを一生かけて、さらに大きくし、かつ、グローバルにしていく。こういうことだったんですね。

だけども、そのあたりは大きく変わってきたというのが現代だと思います。

今、最も貴重な資源はヒト

それからもう1つ、「モノ」と言われてるものについて、これは技術ですね。

この技術というものが今……、昔は、技術というもののなかに、例えば特許的な技術とか、そういうものもあったけれども、今はそういうものをお金があれば買える時代になった。また、そういう技術を持った会社そのものを買ってしまうということができるわけです。

したがって、Googleなんかは携帯の会社を買って。モビリティとかいって、それでまたそれを吐き出してしまうんだけども。しかしながら、特許だけは全部とってしまう、と。

こういうこともできるようになったので、いわゆるモノと言ったときに、従来のような、特許で守られているような、そういうふうなものも、お金次第では使わせてくれるようになった。それから、yet2.comというサイトがあるんだけど、そこは使ってない特許が「自由にお使いください」ということで出ている。

昔ほど、特別な特許があるからものすごいお金につながった、というようなことはなくなってきてるんですね。

むしろ、そういうことに気がついて、人の技術でも自分の会社として取り込むようにするということをやる。これまた経営者のセンスということになる。ここのところも大きく変わってきてると思います。

だから、基本的にはヒト・カネ・モノと言ったときに、当時はこれが同じぐらい重要な時代だったけれど、今はヒトのほうにどんどんシフトしている。そういう人がいれば、技術も調達可能で、お金も集まってくる。したがって、こんにち一番貴重な資源というのはヒトということになってしまった。

差別化ポイントは3Cだけではなく、Speed&Scale

私がこの本を書いた頃の日本は、「大量生産、大量消費時代」と言われて、いわゆる成長期。そして、また日本での成功事例を海外に出していく、こういう時代で。どちらかというと国内生産、海外輸出、こういう時代だったんだけれども。

その商品が非常に優れてるということによって、例えばソニーでいえばトリニトロンテレビというのがあって、そういう技術が非常に有効で、競争相手よりも15パーセントから20パーセント高く売れた。こういう時代だったんだ。

だけど、今はデジタル化によって差別化が非常に難しいわけですね。だから、デジタル化の世界での差別化というのは、基盤とかそういうやつの1歩手前、それこそOSとか、そういうところで差別をしていかなければいけない。けれど、これまたAndroidとかそういうものを使えば、タダで誰でも使わせてくれる。こういうふうになってきている。

実際問題として、当時から比べると、新たな要件としては「スピード」というものが非常に重要になってきている。したがって、ヒト・カネ・モノのなかではヒト。それから差別化という点においてはスピードで差別化していくと。

みんなもゆっくり考えればわかるんだけれども、相手のほうが早くやっちゃったよ、と。それで全体としては洪水のようにそれを流しちゃった。こうなると、スピードとスケールという、2つのSというのが非常に重要になってきているというのが、こんにちなんですね。

それから、スケールという点においては、昔は競争相手を1とすると、自分の会社というのが0.7とか、そういうようなのが競争だったんだけれど。

今は、例えば台湾の鴻海なんていうのがiPhoneとかiPodとか、ああいうのを作ってるけれど、あそこ従業員が120万人いるんだよね。日本企業というのは10万人超すところはほとんどなくて。日立なんかは10万人を超えているけど、いろんな事業やってるから。

ああいうデジタルエレクトロニクスだけをやっていて100万人で、しかもそれを中国の奥地で、今は成都あたりを中心にやってるんだけれども、そういうスケール感。台湾のTSMCというファウンドリも、2番手に比べると10倍以上でかいと。こういうふうになっちゃっているわけ。

だから、こういう会社がスピードとスケールで、とにかくスケールでもって大きく差別化していくと。

サラリーマン型経営の弱点

実はそういう会社はやっぱり技術的優位性を持ってるんだよね。それはなにかというと、例えばTSMCあたりだと非常に細い線密度の半導体を人さまのために作ってあげることができる。まあ、ファウンドリだから人のために作るわけです。

こういうところはなかなかその投資規模がでかいので、そう簡単に気の弱い経営者にはできない。投資の規模たって1,000億とか、極端にいうと5,000億ぐらいの投資をドーンとする。

そうすると、ここで日本のサラリーマン経営者というのは、当時は日本はサラリーマン経営者よりもファミリー経営で。松下幸之助さんとかね。そういうような感じで、個人の力というのが非常に強かったんだけども。

今はサラリーマン経営者がみんなでもって、事業部も10あって、10の事業部で常務会で意思決定していくとなると、スケールがどうしても小さくなっちゃう。

それから、そんなに大きな投資だったら、来年半分、再来年半分「こういうふうにしようよ」と、サラリーマン的な妥協が出てくる。

やはり韓国のSamsungは、李健煕(イ・ゴンヒ)1人で決められると。それからTSMCだったら、モリス・チャンという男が1人で決められる。それから鴻海あたりだと、テリー・ゴウという男なんだけど、ゴウさん1人で決めちゃうと。5,000億規模のやつだったら、夕飯食べてるあいだに決めちゃうと。

こういうところが今はデジタル化によって、スピードとスケールということになってくると、サラリーマン型経営者というのは非常に苦手。

それに対してAppleなんかはだんだんサラリーマン化してるんだけども、その時にサラリーマン化していない、テリー・ゴウを見つけてきて、「あいつにやらせよう!」と。

つまり、サラリーマンの会社というのはそこまでできないので、Appleは製造業をやらずに、Appleというのは本当はメーカーなんだけど、それをやらずに、やってくれるような中国とかあるいは韓国とか台湾のそういう極端にリスクテイキングな経営者の人に全部委ねてしまうと。こういう時代になっちゃったんだね。

だから、やっぱり時代は大きく変わって。要素そのものは変わらないんだけれども、要素間の相対的な重要性が大きく変わっちゃったというところが、このやはり30年間の変化だと思いますね。

サラリーマンのうちに事業家となるための備えを

将来自活しようと思ったら、人が給料払ってくれている間になるべく頭の軸を広げたほうがいい。だから、サラリーマンというのは素晴らしいものなのよ。人が給料払ってくれるんだから。

その時に、とにかくできるリスクを全部取り、できる勉強を全部やると。自立したときは人に給料払わなきゃいけなくなるんだから。そこのところをちゃんと認識して、会社人間として一刻もむだにしちゃダメだね。

それから、ダメ上司がいたら「この上司をどうやって自分だったら変えていくか?」というふうに考えると、ダメ上司みたいなありがたい先生はいないわけよ。

それからダメ会社だったら、その会社の悪口を言うんじゃなくて、自分だったらどうするか考えると。なんだったら上司あるいは社長に言ってみると。それで、「ダメだ、このやろう。お前出てけ」って言われたら「ありがとうございます」と言って出て行けばいいわけだ。だから、すべてが勉強の機会なんだよ。

僕は、いずれみんなに事業やってもらいたいと思っていて、そういう学校もやってるわけだけれど。しかしながら、サラリーマン時代の心構えが悪すぎると思うよ。

要するに給料もらって、上司が見てなければ遊んじまえとか。くたびれたからみんなで飲みに行って、それで騒いじまえと。なんの自慢にもならないじゃん。

サラリーマンって土日が休みでしょう? これいいよね。自分で事業始めたら土日なんかないよ。それから9時から17時まで人間といった時に、17時から残業やったら残業代が付いちゃうなんて、こんなものも自分でやったらないよ。

だから、人が給料払ってくれてる時間の間に最大の学びをすると。そして、年休というものが普通の人は年間に17日とか18日あると思うんだけれども。それでまとめてどこか海外行って勉強するとか。

それから土曜日の午後というのは、まとまった時間取れるんだったら、例えば自分のやりたいと思ってる業界のトップ3ぐらいの会社を克明に調べると。

インターネットを使って出張する

これ、ネットで出張するわけよ。僕の授業でもよくそういうのあるんだけどね。土曜日の午後にネットで出張しましょうと。

「アルツハイマーの薬の研究をやるのに、一番いい相手は誰ですか?」「午後半日かけて、みなさん、答えを書いてください」と、こういうふうなことをやるわけよ。ビールの作り方。自分の町の地ビール作るのに、ビールの作り方を研究しろとか。そういうのが僕のコースにはある。

今、ネットで出てこないものってないもんね。だから「ビールの作り方なんて、俺、知らねえ」と言ったら、それで終わりなんだけど。そうじゃなくて、夕方までにはビールってどうやって作ったらいいのか。そのへんのノウハウは誰が持ってるのか。ノウハウを導入するにはどうしたらいいのか。

全部、事業計画を半日あればできるのよ。半日あってできない事業計画なんてほとんどない。ネット時代というのはものすごいありがたいんだよね。

それから、クラウドソーシングとかね。クラウドファンディングとか。クラウドと呼ばれてるもの。クラウドコンピューティングもあるけれども。クラウドと言われるものが、そこに強い味方としてあるわけだ。

だから、そういうものの使い方を土曜日の午後に勉強してみるということだよね。

毎週土曜日、年52回、事業計画を書いてみる

だから僕は、時間さえあれば、あたかも自分が会社を起こしたかのごとく、とことんやってみると。それで事業計画まで立ち上げてみる。事業計画は、1回、2回、3回ってやったんじゃダメで。50回とか100回とか、そういうことをやらなきゃダメだよね。

僕も、「ビジネスジャパンオープン」という起業家登竜門を昔やってたんだけど、年間800ぐらい応募があるわけだ。事業計画。

そういうのを見て、審査して。「これはいいな」とか「これあかんわ」というふうにやる。年間800見てると、聞いただけで、もう瞬時にわかるよ。「おお、これはあかんわ」というやつがね。

だから、若い人は事業計画をとにかく作る練習をすると。毎週土曜日にやったら年間52回できるんだよ。そのぐらいのことをやんねえとやっぱり会社のなかでも活躍できる人間になれないし。それから、ましてや独立したときにうまくやっていくってことはできないと思うのよ。

だから、重要なことは、1年365日あるんだけど、会社人間だって土曜日の午後ぐらい自由になるでしょう? それが52回あるんだよ。

僕はケーススタディを年52個出して、自分の受講生に52の新しいケーススタディを出して、リアルタイム・オンライン・ケーススタディということでやってるんだけどね。僕のような年寄りでも52回新しい事業計画を作って、そういうふうにして考えると、ムダな時間というものはほとんどないわけよ。

愚痴だけ言う人間にはなるな

サラリーマンというのは、そういう点で選択肢が2つあるんだよ。会社のなかで大活躍をして上にいくか、会社にいろいろと養ってもらってるあいだに大勉強をして、他所に行ってやるか。

できれば、会社そのものを革命的に変えるというところに貢献してもらいたいと思うけど、それがダメだったら、ダメなやつ説得するというのは最もムダな時間だから。ダメな人間を説得して、ダメな社長を説得してやるんだったら、これはムダな時間なのよ。それだったら自分でやれると。

愚痴だけ言う人間にはなるなというのがね。年間52回練習したら、そんな人間にはならないと思うけどね。

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