エンジニアの実績が認められる体制になってきた

――伊藤さんはリクルートライフスタイルでエンジニアのスペシャリストとして働いていらっしゃいますが、世間のイメージとしてはエンジニアよりも営業色が強い印象がありますよね。実際はどうなのでしょうか。

伊藤:そうですね、エンジニア力が強いイメージは自分も最初は持っていなかったです。昔はやっぱり営業力がすごく強くて、エンジニアに対しての評価軸もまったくない。そしてエンジニアはどんどん辞めていく、なんて話を周りから聞いたことがあるレベルだったんです。

評価軸がないというのは辛いことで、エンジニアの仕事に対して、「何がすごいの?」「数字に出てないじゃん」という感じです。数字的な部分も短期間で求められると、余計に成果が出にくくなったりするので、そういう環境だと、「何やってるんだろうな……」と思う人も多かったんじゃないかなと思います。

ただ、僕が入った頃からは、自分のスキルセットや実績をちゃんと周りにアピールできるような体制になっていきました。いまはかなり変わってきてると思いますね。いままでの「エンジニア?数字に結果が出ないとわかりません」という空気から、「どういう仕事をしてるの?」「すごいんだね」っていう、興味を持つ人がすごく多くなってきているのを感じますね。

評価においても、最低限のコミュニケーション能力は必要ですが、面談する上長に技術のバックボーンがあるので、「その仕事は後々こういう伸びしろがありそうだね」とか、ちゃんと話が伝わりやすいです。

「前例がないから」で否定されることはない

――スペシャリストならではのやり甲斐や魅力は何かありますか。

自分は小遣い制なので年収とかは特に気にしてないんですけど、やっぱりいろいろなことにチャレンジさせてもらえる環境が一番の魅力だと思います。たとえば、「前例がないから」とか、くだらない理由で、要望やアイデアを蹴られることもないですし、むしろ「もっとアイデア出せよ」っていう雰囲気が会社全体にあります。

なので、エンジニアでも普段から企画やアイデアを出せるように準備しています。自分はめんどくさがり屋なので、日頃から「これめんどくさいな」って思ったものはできるだけ気にかけるようにしていますね。そういった部分はユーザビリティが悪い可能性がある。「じゃあ、そこは何があれば解決するんだろう」と、できるだけ考えるようにしています。

例えば開発に関して権限管理みたいなものがあるときに、「このページにはこの権限の人がアクセスできます、できません」っていうのが細かく定義されていて、それを各プログラムのページごとに、いろいろ細かく定義していかないといけないんです。

コピーコードが増えてきたりすると、どうしてもバグの元になってしまうので、もっと上のレイヤーでアクセス権限を勝手に管理できるような仕組みを作ったら、バグも少なくなりますし、あまりそこを意識しないでも大丈夫なようになりますし、開発効率も上がるんじゃないかと。そういったこと提案して、改善しているところはあります。

社内の業務改善で言うと、本場の環境ではなくて、開発用のサーバでアプリケーションを動かしてるときに、自分で監視のスクリプトを作って導入して、エラーベースでキックさせて通知する仕組みを作ったりもしましたね。

スペシャリストでいることのモチベーションは?

――マネジメント職になると役職がどんどん上っていきます。スペシャリストの場合って、そういった部分のモチベーションをどこで感じるものなんですか。

伊藤:あまり気にしないですね。逆にそれがないからマネジメントのレイヤーではなくて、いまのスペシャリストというレイヤーにいるんだと思います。もともと偉くなったからどうだっていうのも、個人的には興味がなかったので。できれば生涯、現場にいたいです。手が動かなくなったら、ちょっと考えますけど。

スペシャリストとしてマネジャー陣のMTGに参加させてもらってるので、少し違った観点からの意見を発信することで、エンジニアと組織の乖離を未然に防ぐ、なんていうのは僕なりに考えてやっていますね。

現場にい続けるためには、できるだけ自分が楽になるようにするのが大事だと思っています。自分が書いたコードって、1ヶ月どころか、2週間前に書いたものも忘れたりするので、そのためにできるだけシンプルに、簡単なことは簡単に書いて、すぐ思い出せるようにしたり、あとはいろいろな業務を自動化しています。体力もつけないといけないので、たまに運動しますね(笑)。

――勉強会や開発合宿をやったりとか、あとは技術書を買えるとか、技術について勉強するための制度みたいなものはありますか。

伊藤:定期的にエンジニアの勉強会はあります。あとはオライリーの本を全冊揃えました とか。現場発信で、「こういう勉強会をやりたい」とか、「こういうものが欲しい」って言うと、マネージャー陣も素早く対応してくれるので、実現はしています。

――いま気になっている技術とか、挑戦したい技術はありますか。

伊藤:リクルートライフスタイルは新しいサービスをすごく早いサイクルで出すんですけども、社内には守るべきセキュリティ要件があります。そのたびに、いちから考え直したりすると無駄が多いので、そういう部分をできるだけ省くような工夫を考えています。現場的に嬉しいと思いますし、会社的にもリースサイクルが早くなると思いますので。

悪知恵が働くエンジニアはおもしろい

――リクルートという会社はテクノロジー企業に変わろうとしてる最中だと思うんですけど、ここまでで変わってきて良かったなというところはありますか。

伊藤:エンジニアにスポットがあたってきていますね。いままではすごく低スペックのPCを使っていましたが、もう改善されましたし、そもそもいままで話が通じなかった人たちも興味を持って聞いてくれるようになったりとか、全体的な姿勢が変わってきてるというのはすごく嬉しいです。

あとリクルートライフスタイルは時間が自由に使えるのがありがたいです。どうしても前の職場との比較になってしまうんですけど、前職は時間が細かく管理されていて、朝の出勤もちょっと遅れたら、遅延証明書を提出しないといけなかったりとか、週に1回は朝会があって1時間早く出勤出社しなきゃいけないとか。

いまはもう時間の縛りがなく働けています。ミーティングとかがあれば、さすがにそれに間に合うようには来ますけど。例えば、うちはネコを飼っていて、「ちょっと体調が悪いから病院に連れてから行きます」とか、役所とかにも寄りやすいので、プライベートとのバランスはすごく取りやすいと思いますね。

――どんなエンジニアといっしょに働きたいですか。

伊藤:悪知恵が働くような人がいるとおもしろいなと思っています。仕事をしていると、社内外いろいろなところから問題提起があるんですけど、クライアントさんとか、一緒に働いてるエンジニアとか、あるいはセキュリティの問題とかに対して、普通に対応したら難しいところを「だったら、こうやっちゃえ」みたいな悪知恵が働く人がいると、いろいろなものがおもしろくなって、自分も刺激が受けられるかなと思うんです。

そういう人がリクルートライフスタイルという組織に合ってるかもしれないですね。僕もどちらかというと、そっちの人間かなと思います(笑)。

制作協力:VoXT