危機管理の専門家が教えるマイナンバー対策

脇貴志氏:皆さん、どうもこんにちは。脇でございます。よろしくお願いいたします。今日はマイナンバーの話なんですけれども、そもそも私は危機管理の専門家なので、危機面からと言うと、マイナンバーという新しいものが出てきたら、やはりそれはメリットもあればデメリットもあるというのが世の中の常識なんですね。メリットだけのものというのも世の中ないですし、デメリットだけのものも世の中にはあまり存在しない。

今日は先に申し上げておきたいんですが、皆さん非常に期待して来てると思うんですけれども、ゴールまでは到達しないと思います。ゴールというのは何なのかというと、皆さんが望んでいるゴールまでは到達しないんではないかなというふうに思うんですね。

なぜなのかと言いますと、危機管理の考え方には2段階あります。その1段階目は、これはよく言われるんですけれども「問題解決」。

問題解決。これもう雨後のたけのこのように出てきます。この言葉って非常に身近な言葉でもあるんですけれども、本屋さんに行ったら問題解決の棚ってあるんですね、必ず。要は問題解決をどのようにしていくのか、みたいな。「問題解決のやり方」とか「チャートで考える問題解決」とか、そういうのってたくさんあるんです。

実はいきなりドーンと問題解決というものにいくと非常にまずいというか、問題解決からしようとすると意外と解決できないというのが、この世の中の常識なんですね。というか、危機管理上の常識と言っていいのかもしれません。

何が問題かがわかったら8割は解決している

では、問題解決の前にある段階とは何なのかと言いますと、それが「問題の発見」なんです。保育園さんとか幼稚園さんで何か問題が生じた時に「その問題を解決する」というのが私の仕事なんですけれども。実は「何が問題なのか」というのを発見された時点で、その問題は約8割もう解決できていると考えていいんじゃないかなと思うんです。

何が難しいのかというと、例えば皆さんの普段の生活の中で「保護者と職員さんが揉める」「何か文句を言われる」って言われた場合に「どうやったら保護者の方は納得するのかな」っていうのが問題解決ですよね。

どういうふうにすればいいのかなというところからアプローチなさると思うんですが、実は逆側からアプローチすべきで、「なぜあの保護者は怒っているのかな?」「なぜあの保育士にだけ辛く当たるのかな?」という「なぜ」がわかれば、ほとんど問題は解決されるんですね。

ですから、世の中で最も怖いものって何なのかっていうと原因不明の病気なんですよ。つまり、原因不明の病気は、どこが問題点なのかわからないから、どこをどう治療していいのかわからない。

例えば、お腹が痛くなって、それで「昨日何か食べましたか?」「賞味期限切れの何かを食べました。そして今日はお腹も緩いんです」ってなったら、「それは食あたりじゃないですか?」みたいな感じで見当がつきますよね。

でも「お腹が痛いんです。そして胃カメラ飲みましたけれども、大腸検査しましたけれども、レントゲン取りましたけれども、まったく原因がわからないんです」ってなったら、これ結構大変な病気なんですよね。

要するにどこが問題なのかということを、まずきちっと見極めること、というのが大切な話なんじゃないかなと思うんです。

自分の職場で、どのような課題が出てくるか

そういう意味で今日の2時間の時間というのは、正確にいうと2時間20分なんですが、マイナンバー制度というもののどこが問題なのか。問題というのは、制度として欠陥があるとか制度がおかしいとか、そういう話じゃないんですよ。「マイナンバー制度に取り組んでくださいね」といった場合に、皆さんの施設でどこが問題になるのか。

「こういった問題が出てきますね。それに関してはどのようにアプローチしていけば答えが出るのか」というところまで、今日は話をしていきたいと思います。

ですから、「ゴールまではたどり着かない」というのはどういう意味なのかと言いますと、「答えはこれです!」までは多分行かないだろうと。そういった意味では、今日は問題「発見」の日なんだと思っていただくとよいと思います。

いろんなケースが出てきます。こういったケース、ああいったケースというのが出てくると思うんですが、その時に皆さんは頭の中で自分の職場のことを思い浮かべて、「うちの職場だったらどうなんだろう、こうなんだろう」ということを考えていただくと、よろしいんではないかと思います。

ですから、私の話を聞くと同時に、自分の施設の問題点も発見していただくとお役に立つんではないかなと思います。

では、さっそく始めていきたいと思います。もう1回申し上げますが、今日はマイナンバー制度に取り組むにあたって、皆さんの施設の問題を発見していきたいというふうに思います。

そもそも、マイナンバー制度とは何なのか

まず何からするのかというと、そもそもマイナンバー制度ってなんなのって話なんですね。今日の「Yahoo! ニュース」を見ますと「マイナンバーが届き始めましたよ」みたいなことがトップニュースに出てきてました。ですから、皆さんのところにも番号が届き始めるんでないのかな、いよいよですね、という話です。

このマイナンバーというのは各自に配布されるんですね。この配布されるマイナンバーというのは、後でももう1度触れますが「通知カード」と呼ばれるものが配布されます。ここはそんなにざわざわしなくていいところなんですよ。あとでもう1回触れますからね。

それからどうなるのかと言いますと、来年の1月からいよいよマイナンバー制度っていうのが始まります。法律に関しては10月4日に施行されていますので、いわゆるマイナンバー法というのは始まっているわけです。

でも、「マイナンバーを使って何かを始めましょう」というのは1月から始まる。要は「1月から行政が始めるから、11月と12月使ってその準備を各事業者さん、しといてね」というのが、この準備期間が2ヶ月。なんとも素晴らしい助走期間ですね。たった2ヶ月で理解して、やれと。

なかなかおもしろい話じゃないかなと。新制度に関しても2ヶ月でやれって言われて、今度はマイナンバーに関しても2ヶ月でやれっていう話にもなってくるんです。

何に関して始まるのかという話が1つ目のポイントになります。当初3年間は社会保障の分野と税の分野と災害対策の分野の3分野だけでやりますと。

マイナンバーの「目的外使用の禁止」とは

マイナンバーは「特定個人情報」と呼ばれます。これも後で出てきますからね。この特定個人情報の使用に関しては「目的外使用禁止」というのがあるんですね。つまり「目的以外に使っちゃダメよ」というのがあるわけです。

それでもう1回、これを見てください。その目的って何なんですかって言うと「当初の3年間は社会保障の管理と税の管理と災害対策、この3つにしか使ってはいけませんよ」という話なんですね。

だから、将来的に言うと個人を特定するIDになるわけですから、いろんな所で使えるわけですよね。たとえば、ある特定の分野で問題になっていることがあって。

「コンサートのチケットを転売目的で買うのってどうなんでしょうね?」みたいなものがあって。例えば嵐のコンサートとか、ももクロのコンサートのチケットとか、そういうのを大量に買って売りさばいて利ざやを稼ぐ人がいて、「本当に見たいファンのところに定価で行き渡らないから、どうにかしてくださいよ」みたいな話があるんです。

将来的に「こうなる」という話ではなくて、こうなる可能性も出てくるという話なんですが、チケットを買う時に「あなたのマイナンバーを教えてください」と。そのマイナンバーをチケット買う時に教えれば、もうコンサート会場にはチケットを持って行かなくていいわけですよ。

自分のマイナンバーのカードを持っていって、その中にはICチップが入ってるから、Suicaみたいに「ピッ」ってやったら、「あなたは1階のHの3ですよ」と席が出てくる、みたいな。そんなシステムの運用もできるわけですよ。

やろうと思えば、ですよ。「エンタメ業界でそれが決まっています」とかそんな話じゃなくて。将来的にはそういうことができますよという話です。でも、当初3年間は、それはしてはいけませんという話なんですね。

各個人が努力することによって、行政側が効率化される

もう1度申し上げますが、社会保障の話と税金の話と災害対策の話しかしてはいけない。ということは、災害対策なんていうのは常日頃から起こってる話ではなくて有事の時の話になります。

ですから、そういった意味では普段の社会保障の関係と税金の関係、これが皆さんに当面は必要になってきますという話なんですね。まずここを頭の中に入れておいてください。

要は皆さんの所で働いてらっしゃる職員さんの社会保障の関係とか税の関係とかを管理するためにマイナンバーを預からなければいけません。その預かり方・管理の仕方・使い方。これに関して問題がいくつかありますよという話ですね。

問題があるというのは、何かトラブルが発生しているという話ではなくて、クリアしておかなければいけない「課題」があると考えていただいたほうがいいのかもしれません。

これに関しまして、日本国政府はなんと言っているのかといいますと、「制度の狙いとしては行政の効率化になります」と。ですから、消えた年金問題とかありましたよね。そう言ったものが1つのナンバーで管理できるから、「この人はなんぼ払ってる」「将来なんぼもらえる可能性がある」というのが管理できるので、楽になりますよね、という話なんです。

これおもしろいでしょ? 行政側の効率化ができるんです。皆さんが努力することによって行政が楽になるという話なんですね。

そして2番目に、公平・公正な社会の実現。言葉としては非常に良いんですけれども、これは、所得があるのにも関わらず、税金を収めていない方っていらっしゃるわけですよ。

そういう人たちにも全員マイナンバーが配られますので。そういう意味ではアングラマネー(税務署等に感知されないお金)というかですね、「所得があるにも関わらず課税されていない方々に対して課税ができるようになります。それって公平じゃん?」という話になるわけですよね。それが2つ目であります。

そして3番目に国民の利便性が向上します。これは「将来的には向上していきますよ」ということですが、これは建前上の話ですよね。

マイナンバー制度ができたのは人口減少が理由

ここで皆さん、頭の中にきちっと入れていただきたいのが、なぜ今マイナンバー制度なのか。なぜ社会保障と税から入っていくのかを理解するには、社会の背景を頭に入れて置かなければならないんです。

なぜ今、社会保障と税をやっていかなければいけないかと言いますと、これはもう簡単で、1つの要素しかないんです。そこには、これから皆さんの身の回りに起きるいろんな変化、国が出してくる施策に関する1つのテーマしかないんですよ。それが何なのかというと「人口減少」です。

いま日本は人口減少をしています。例えば、昨年は1年間で日本人は26万8千人がいなくなっています。なぜいなくなるのか、なぜそれだけ純減しちゃうのか、減っちゃうのかというと、それは簡単で、亡くなっていくお年寄りの方がいるからです。

事故でなくなるとか、災害でなくなるとかもありますので、お年寄りに限るわけではないんですが、多くはお年寄りの方なんですね。つまり、お亡くなりになる方々よりも生まれてくる子供の方が少ないんです。

例えば昨年1年間のデータで申し上げますと、亡くなった方は126万8千人、生まれた方は100万人、差し引き26万8千人純減しました。日本社会は減少し始めてもう4・5年経つんですが、この間にいなくなった、減った日本人は、もう100万人を超えているんですね。

となってくると、まず何が一番問題になるのかと言うと、今この人口減少に関して、更になぜ人口減少になっていくのかというと、先ほど言ったとおり簡単で、少子高齢化だからですよね。生まれてくる子供が少なくて、そして高齢化社会になってるからです。お亡くなりになる可能性のある方々が亡くなっていくと、そういう話になりますよね。

この国の保険制度や年金制度は破綻する

ということは、高齢者の方々はじゃんじゃん増えてるわけですよ。例えば2020年には、もう待機児童の問題とかじゃなくて、社会的に問題になるのは待機老人ですよ。老人施設に老人の方が入れないということで、待機老人の方が問題になります。

となってくると、団塊世代の方々が皆さん後期高齢者になってくるから、ドーンと増えてくるわけです。ドーンと増えたらどうなるのかっていうと、社会保障費がバーンと増えるんです。イメージね。ものすごく増えてくる。

となった時に、今の年金制度を考えると、例えば、いま私の父親が73歳なんですが、年金をもらっています。年金は、彼自身が払ったものを政府が積み立てていて、「脇さんの年金ですよ」っていう箱に別に入れて保管をしておいて、これをあなたの箱から出して個別にあげますよというのであれば、これ何も問題無いんですよ。問題無いですよね? だって各個人のものは各個人で個別で保管されてるっていう話だから。

でも、何が年金の問題なのかというと、今もらっている方々の年金は、今働いている方々が収めたもので補填して払ってるわけですよね。となってくると、受け取る先の方々の数が増える半面、今生まれてくる子供たちの数が少ないから労働者が減る。労働者が減るということは、社会保障費を払ってくださる方々も税金を払ってくださる方々も減るわけですよ。

別に国が悪いわけじゃないです。だからどうしなきゃいけないのかというと、「取りはぐれている税金は全部取りいきましょうよ」というのが、マイナンバー制度の本当の狙いですよ。要はこの国自体がそろそろ健康保険制度も年金制度も破綻します。というか、一部の専門家に言わせると、もう破綻しています。

だから、私は自分の会社の20代の従業員とかにも言ってるんですが、あなた方の年金はもう自分たちで積み立てなきゃいけませんよと。将来厚生年金をもらえるとか、公的な年金をもらえるなんて考えていると、そんなのおめでたい話になりますよと。

マイナンバーの通知を受け取らなくても意味はない

なぜなのかというと、もう人口のピラミッドがガチャガチャになってるわけだから、それはもう大変な話になってくるわけですよ。

つまり人口減少によって、社会保障費を負担すべき労働者というのが減っていって、もらう権利がある高齢者の方が増えていってるわけだから、もう国としては流通しているお金にすべて紐をつけましょうというのが、この制度の一番の狙いですよね。

この前も私のところに1本電話がかかってきて、「マイナンバーって受け取りが拒否できるって聞いたんですけれど、拒否できるんですか?」と言われたので、私、知らなかったから調べたんです。

そしたら「当初3年間は受け取らなくても犯罪にはなりません」ということで。ただ、受け取らなかったからといって、あなたにマイナンバーがつかないわけじゃないですからね。あなたにマイナンバーがついてるのに、自分はナンバーは知らないって、そっちの方が不便じゃないですかっていう話なんですよね。

つまり、「あなたは何番です。いくら持ってますよね。幾らもらいましたよね。幾ら払いましたよね」というのを、すべて管理していきましょうという話なんですね。

それがもしかしたら、将来的に銀行口座の残高までいくかもしれないと言われてるわけです。そしてこれは、もしかしたらいくかもじゃなくて、余計な心配はしなくていい。いきます。

なぜなら、大きなお金がドーンと動く時って相続じゃないですか。相続税というのも税金です。「あなたの口座に400万いきなり入金されてますけど、これ何ですか?」みたいな話になるわけですよ。そこまでしなければいけないくらい国の財政が危機的な状態になってますので、取りはぐれた税金を取っていくしかないという話なんですね。

細かい税金も取りはぐれないように

どうしてそれを考えたのかというと、それは簡単で、この日本という国は借金が大量にあります。でも、それ以上のものを持っているんですよね。それが何なのかというと個人の金融資産です。つまり、国は借金だらけだけど、個人個人は金持ちなんですよ。

だから「だったら個人からとればいいじゃん」って話になってくるわけですね。「これまではずさんだった税の管理をしましょう。それが公平でしょ」という話です。だから、それに関しては私は別に異論を挟む必要もないと思うし、その通りだと思います。

だから戦々恐々としてくるのは、例えば暴力団関係者。この人たちも全員マイナンバーが与えられますから、「そのベンツなんで買ったの?」みたいな話になるわけです。そういった意味では、アングラマネーで麻薬を売買したというようなときに、「じゃあ麻薬5グラムをいくらで売ったんですか? 帳簿出してください」みたいなことはできません。

でも、麻薬を売ることによってお金が貯まって上納する上納金に関しては、これは売上ですよねというので、今年初めて刑事罰で捕まりました。上納金は売上ですと。これもマイナンバー制度に向けた動きになっているわけです。

もう1つ戦々恐々としているのは風俗関係ですね。これまではキャバクラの経営者が、キャバクラ嬢が5人しかいないのを10人いるように水増しして、そこで売上を除外してたのが、一発でバレますからね。

「誰に払ったんですか?」という話じゃなくて、「何番の人に払ったの?」という話になる。だからそういったところでは紐がつくわけです。

ですから、みなさんの業界でも時々私のところに相談の電話がかかってくるんですが、「お宅の保育士さんがキャバクラで働いてるのを見ましたけれども、それってどうなんですか?」みたいな話になってくる。でも、もうそんなことで悩まなくていいんです。そこで源泉徴収されていればわかりますから。

だから、やっていないという証明も簡単にできるようになると思いますし、やっているという証明も簡単にできるようになるんではないかなと思います。だから、もう今後は日本テレビのあのアナウンサーの問題とか起きないんですね。

そういう意味ではこの公平・公正な社会の実現というのはあるんです。つまり、日本の収入が落ちてきたから税収を上げていきましょうというのがマイナンバーなんですね。

要は自分たちのお金でも、それは将来的には国庫に帰属しなきゃいけないんです、という管理が、いよいよ来年の1月に始まると考えていただくとよろしいと思います。

だから、税金の額をちょろまかすとか、あるいは社会保障費を支払わないとかいうのは、これまで以上に重くペナルティが課せられて、かなり厳しくやっていくんじゃないかなと思います。