アイコンタクトを使った実験

リチャード・コックス氏:さて、今度は皆さんの番です。この実験をやってみてください。皆さんが誕生したのは、何月ですか。私は7月7日が誕生日ですので、私の場合は数字の7になります。皆さんの誕生月の、数字を思い浮かべてみてください。

奇数月であれば、あなたは青チームです。私は青チームですね。偶数月であれば、その皆さんは緑チームになります。青チームと緑チームです。忘れてしまった場合は、どちらかを適当に選んでください。その点は、あまりこだわりません。要は、半々になればよいのです。

では、質問を始めます。移動する必要はないですよ。場所を変える必要はありません。もしさしつかえなければ、起立してください。その方が、私からよく見えますから。

皆さんのワークは、軽めに設定してあります。通常、私たちの講義は、もっとアクティブです。皆さんには、軽く学校時代に戻っていただくつもりです。はい、結構です。

はい、青チームの皆さん。これからお願いごとをします。指示をひと通り出しますので、やってみてください。では青チームの皆さん、周囲を見渡して、他の人と10秒間、アイコンタクトを取ってみてください。

緑チームの皆さん、同じことをやってみてください。しかし青チームの皆さんは、穏やかなアイコンタクトを10秒間保った後、私が「交代」と言いましたら、他の人を探して、その人と穏やかなアイコンタクトを10秒間保ってください。交代しても、1人の人を、病的にストーキングしてはいけませんよ。

(会場笑)

病的に目線を追いかけてはいけませんし、場所を移動してまでも追ってはいけません。そういったことはしないでください。少しの間、穏やかなアイコンアタクトを保つだけでよいのです。不快なほど長くはありませんが、少々長いなとは感じるはずです。

アイコンタクトから、目線を外すとどうなるか?

はい、青チームの皆さん。終了です。緑チームの皆さんも、アイコンタクトを取って下さい。しかし皆さんは、アイコンタクトを取ったらすぐに、目線を外し、再びアイコンタクトを取って、その後にまた目線を外してください。再度アイコンタクトを取る、と言ったことを、何度も繰り返してください。外す、目を合わせる、外す、合わせる、といったことを、繰り返して下さい。

目を動かすことは可能です。頭を動かしてもよいです。何でも可です。でも、病的に下をじっと見つめることは止めてくださいね。見る、そっぽを向く、見る、そっぽを向く、を繰り返してください。

(会場笑)

見る、そっぽを向く、見る、そっぽを向く、ですよ。単に遊んでいるわけではありません。見る、アイコンタクトを外す、といったことを繰り返すことにより、「相手は、まだ自分を見ているかな?」と確認しているわけですね。青チームもしくは緑チーム同士で合致したら、そのままの状態を保持してください。

見て、誰かを見つけます。そうですね。私たちです。私たちだとわかった瞬間……いや、結構です。はい、皆さん。準備はよいですか。振り返って、誰かを探してください。10秒ですよ。そのままでいてくださいね。

(会場笑)

じっと見ては、視線を外す。はい。素晴らしいですね。はい、交代してください。誰か他の人ですよ。会場の向こうに離れた人でも構いません。はい、お上手ですね。交代! はい。結構です。今度は、こちらを見てください。はい。お上手です。

皆さんを興味深く拝見させていただきました。何かが起こっていたでしょう。今度は、行動を交代させてみましょう。今やっていたことと、反対のことをしてみてください。見つめていた方は、そっぽを向いてみてください。穏やかに見つめてください。私たちを病的に見つめることは止めてくださいね。文字通り。敢えて言うならば。まあ、ここでは同義ですが。

(会場笑)

わけがわからないですね。目を合わせては目線を外していた皆さんは、今度は穏やかなアイコンタクトを保ってください。10秒ですよ。はい。別の人を探して下さい。どうぞ。はい。交代。はい。もう一度交代。オーケイです。大変よくできました。

お座りになって、今起きたことで、気がついたことを少しディスカッションしてください。私を見たい人は、誰もいませんね。はい。よくできました。

アイコンタクトから生まれる意味とは何か

何かが起こっていましたね。アイコンタクトは、大変大きな意味を持つのです。ですから、じっと見つめるということは、非常に極端な事態なのです。大変に極端です。ある時点に達すると、不快な気持になったでしょう。

(会場笑)

瞬きをした? そうですね。名優と言われる人たちは、瞬きをしないよう訓練するのです。クリント・イーストウッドは、まったく瞬きをしません。彼は、非常に強い役柄を演じることが多いですよね。これも、この実験と関係して来ます。

目を見て、そのまま見つめる関係は、上位の地位を表します。社会科学から、演劇論に話を移しますと、これは優位性を表します。つまり、より強い権威と力を意味します。

見つめた後に目線を外すと、より近寄りやすく感じます。つまり、権威と近寄りがたさとの対立なのです。お互いのやり取りの目安なのです。

これには他の行動も関係して来ます。皆さんは、アイコンタクトを取っていた時に、皆さんの身体がどうしていたか、お気づきになりましたか? わかった方は、いらっしゃいますか。洞察はありますか。

(観客が発言)

目を見て、目線を逸らした時には、女性の目の前で、あたかも放屁してしまったかのような気分に陥ったとのことです。これは偶然ではありません。屁については、また別の分野で後ほど軽く触れます。屁は、デートにおいて意味があります。目を見ては目線を外す行為は、緊張している時にもそうなりますが、他の場合もそうなりますね。

(会場笑)

そうでしょう? 会場の皆さんが笑っているということは、皆さんはこの行為を解読できているということです。ほら、皆さんはエキスパートだと言ったでしょう。こういったことを理解するための学習なのです。目を見て視線を逸らす行為は、放屁や緊張しているような気分に似ています。

ハリウッドは何が優れているのか

では、お互いに交流を持つ時には、どうしているでしょうか。

アイコンタクトをきっかけに、簡単な自己紹介や、他の人がどんな人か、何をしている人かなどについて、ちょっとした紹介を始めた方はいらっしゃいますか? どなたかいらっしゃいますでしょうか?

はい、そうですよね。

そうなるはずです。他の人が一定の行動をすると、ややあってから、その人がそういう行為をするような人物なのだと説明を始めざるを得なくなります。皆さんのような賢明な方々には、わざわざ説明する間でもないかもしれませんね。そして、何を言うかが問題ではなく、どう言うかが問題になってきます。

どうにも不条理な話のようですが、これは真実なのです。そしてこれは、政界の状況をも説明できます。人々を惹きつけるような話し方をする人は、実際にいるのです。両脇には人がいて、考えられうる、ありとあらゆる通路に人がいますが、それが真実なのです。

ハリウッドの俳優が成功するのは、これが理由なのです。彼らは、こういった人間関係の均衡を保つのが、非常に得意なのです。何を言うかではなく、どう言うかが要なのです。その話をすることを、あらかじめ知っていたみたいですね。

皆さんは、着席したままで結構ですので、上記の2つの引用文から、お好きな物を選んでください。そして、周りに向かって、もしくは私に向かって、読み聞かせてください。選ぶのは、どちらでも結構ですよ。はい。始めてください。

はい。すばらしいです。選んだ文は変えないでくださいね。ちょっとしたお遊びを始めますよ。

再び文を音読しますが、今度は少々変化を加えます。意味を添付するイメージで読んでみてください。

例えば私が「適切な言葉は効果的だが、適切な間は、適切な言葉よりもはるかに効果的である──マーク・トウェイン」と言いますが、これは単なる音読です。

「(感情を込めて)適切な言葉は効果的だが、適切な間は、適切な言葉よりもはるかに効果的である──マーク・トウェイン」これは、意味を添付した言い方です。違うでしょう?

皆さんの番ですよ。同じ文を、今度は意味を込めて読んでみてください。はい、どうぞ。

響きが変わるでしょう? この壇上からは、個々ではなく一斉に聞こえますが、より興味深く、意味を持ってきます。はい、とてもお上手です。皆さん、素晴らしいですね。

4つの人格になりきって音読をしてみよう

ここからは、この講義における、最も面白い、もしくはもっともひどい内容になります。

これは最後のお願いになります。皆さん、ご起立ください。そうです。またですよ。私たちの受講生は、少々ぶつぶつとこぼしはしますが、のちに、「とても楽しかった」と言ってくれます。これは楽しいですよ。楽しい実験にご参加願います。

同じ文を再読していただきますが、まず最初に、私が元となる例をお聞かせします。皆さんが再読する際に、まずデモストレーションしてお見せます。私がしないようなことを皆さんにお願いすることは、まずありませんよ。私と同じような大声を出す必要もありません。皆さんがやりやすいように、まずは道を広げて差し上げます。

例文を、4人の人格として4回音読してください。(コックス氏、ロックスターになりきって読みあげる)最初は、ロックスターです! 皆さんの動作は、大胆かつアグレッシブにして、エネルギッシュです。話し方は、大声で、強烈で、「ノリノリ」ですよ。皆さんの存在は伝説的で、人気があり、ナルシストで、衝撃的です! 引用文を、ロックスターとして読んでください。ゴー!

(会場、身ぶり手ぶり付きで音読。会場と話者、爆笑)

私の仕事は、世界で最高です! いや、今のは素晴らしかったです。ワオ! 私のMBAの学生たちに、皆さんと同じくらいの情熱を持ちなさい、卒業生と同じくらいうまくやりなさい、と発破をかけるつもりです。

はい。今度は、幼稚園の先生になりきって引用文を読んでください。動作は物やわらかで、流れるように。大げさな身振り手振りでお願いします。話し方は、母音を長ぁぁめに発音してくださいぃぃ。表現豊かに、はっきりと発音して、優しく、歌うように話してください。皆さんの存在は、親しみやすく、親切です。物腰は低めでお願いします。幼稚園の先生ですよ。どうぞ!

(会場音読、笑い)

幼稚園の先生方が抗議のためにステージに上がって来られる前にお話ししておきますと、私の母は幼稚園の先生でした。物真似がうまいと、母に褒められたのですよ。

これは単なるステレオタイプであって、実際に幼稚園の先生方がこうであるというわけではありません。幼稚園の先生方が怒ってステージに上って来てはいけないので、弁解させていだだきました。

王家の人物、あるいは情熱的な演説者の場合

では今度は、王家の人物になりきって音読してください。皆さんの動作は、優雅でフォーマルに、堂々と、流れるようです。話し方は慈愛に満ち、威厳を持って、歯切れよく、抒情詩調にお願いします。皆さんの存在は、法に則り、地に足がついた、高尚で荘厳なものです。では皆さま、王家の人物でございます。

(会場音読、笑い)

素晴らしい。では、これが最後です。皆さんは、情熱に満ちた演説者です! 皆さんの動作はドラマティックで、的確です。エネルギーに溢れ、屈託がありません。話し方は、ポジティブに、ダイナミックに、大げさに、熱狂的にお願いします。ユーキャンドゥイット! 皆さんの存在は、共感に満ちていて、神聖で、救世主に似て、高揚感に溢れています。どうぞ!

(会場音読)

イエア! はい、皆さん。ご自分に盛大な拍手をお願いします。

(会場拍手)

ご着席ください。ね、私は実際に4人をやったでしょう。

(会場からリクエスト)

はい、会場から、実際に4人の人物になりきって音読してください、というリクエストが来ました。では、最後の人物になりきって、引用文を読みましょう。「適切な言葉は効果的だが、適切な間は、適切な言葉よりもはるかに効果的である」。ユーキャンドゥイット!

(会場拍手、歓声)

(ショップチャンネル風に)ただいまDVDがロビーにて販売中です! 「情熱的な演説者ドットコム」で、今すぐ検索!

私は、実際にDVDを売るべきかもしれませんね。

演じた人格を他人に見せることでわかること

さて、実際に受講生にやってもらうことは、あともういくつかがあります。これらの画像をカードにして配り、受講生たちの半分に、「大げさな自分」になりきって音読してもらいます。

動作は、普段の自分よりも少し拡張したバージョンです。話し方も少し大げさで、普段の自分の存在を、最大限に表現してもらいます。受講生たちには、素性を隠して教室の前に立ってもらい、他の者がどんな人物なのか当てるのです。

なりきっているのが普段の自分よりも「大げさな自分」である場合、例えば、回答者が「ロックスターだ」「王家の人物だ」と答えますと、答えを受けた人は、冷めたリアクションです。実際にロックスターであれば、「大げさな自分」だという答えが来ると、やはり冷めたリアクションです。

いずれのケースでも、受講生はどのように周囲に自分の姿を見せているのかを自覚でき、自分にとっての自然態が何かを悟ります。

誰しもが皆、先ほど演じたような人格のように、演じていて落ち着くタイプの自分があり、一方で、演じていて、どうも落ち着かない人格の自分を1つ2つは持っています。

今回は割愛しましたが、実は演じる人格がもう1つあります。小さな魔法の杖を持った妖精で、それをくるくる回します。これもまた面白いのですが、これは来年のためにとって置きましょう。

(会場笑)

幅広い人格を選ぶことができるようにしよう

さて、これらの内なる典型的な人格のうち、皆さんの伝えたいメッセージを一番うまく伝えられる者は誰かを、きちんと認識することはできますか? これが一番のキーポイントです。私たち全員が、これらの人格を間違いなく持っています。

しかし、人格の1つに閉じ込められていれば、他の人格とうまく繋がらず、経験や生育歴、生き方などによって、選択肢は制限されてしまいます。

「今日こそは、毅然とした態度をとろう」と決断しても、達成できません。選択肢が狭いからです。

私たちは人格の幅を広げ、好きな選択肢を選ぶことができるようにしようとしているのです。弱々しげに「レイオフしますよ」などと言っても聞く人はいないでしょう? 人格が、伝えたいメッセージに合致していないのです。例えば、王家の人物などは、重みがあって、このようなケースにおいては良いかもしれません。

(会場笑)

もっと相応な人格もありますが、姪に恫喝するように「ハッピーバースディ!」と怒鳴って、怖がらせたくはありません。

(会場笑)

メッセージに見合った人格が重要なのです。私たちは皆、広い幅を持っているはずなのです。

しかし、皆が情熱的な演説者であるべきかと言えば、そうではありませんし、皆がロックスターでもありません。各々が、自分のバージョンを持っているのです。

「今を演じる」ことが重要なのです。

演じることと「ふりをする」ことは違う

社会科学の話でもありますが、ここでは演技することについてお話ししていきます。「力を伴った演技」の講義だからです。

「演じる」こととは、「ふりをする」ことではありません。よく誤解されますが、演じることとは、真実を見出すことなのです。

テレビや映画で下手な役者を見た時には、下手なことがわかります。なぜなら、彼らは「ふりをしている」だけだからです。演技派の名俳優とは、真実を見出した人たちなのです。

「スタンフォード監獄実験」やその他からも学べるように、悪いことも含め、自分自身の中にさまざまな人格が潜在しています。素晴らしいヒロイックな行為をする人々から日々学べるように、光に満ちた人格もまた、内在しているのです。

人間としてのコンディションのひとつに過ぎないのです。その状況に陥れば、私たちは何でもやりうるのです。これを前提とすれば、私たちには、何にでもアクセスできるはずです。

真の名優と言われる人たちは、邪悪で恐ろしい人間が、おぞましいことを行なう演技もできますし、次の出演作では素晴らしい父親、母親を演じ、どちらも真に迫っています。

これは人をだますのではなく、力を掌握し、力に満ちた状態になるための講義でしたね。

「これが力だ!」今のは、マンガ的でしたね。これは、真に力に満ちているとは言えません。真に力に満ちた状態とは、堂々と立ち、穏やかな気持ちで、効果ある静止の状態にあることを指します。その方が、虚勢を張るよりも遥かに力に満ちています。

つまり、真実を見出すのです。今、この瞬間を目いっぱい生きることなのです。マインドフルネスやヨガが、ビジネスの領域で人気を得ているのは、当然の帰結なのです。

リーダーとして、真実のバージョンのなりたい自分になって、適切なレベルの威厳と、近づきやすさをもってして、メッセージを届けるのです。

高すぎる威厳は、人々を怖がらせ、誰も話しかけて来なくなり、必要な情報が入らなくなります。ですから、近づきやすい方向へ移行する必要があります。

もしへらへらとした態度でいて、柔和でいることにより、人に動いてもらっている場合は、人は動いてくれるかもしれませんが、いざという時になったら、へらへらした態度を止める必要があります。

このような、幅広い能力が必要になってくるのです。今、その時の自分を、他者と共に、せいいっぱい生きるのです。自分自身をしばし離れて、他者に集中します。大切なのは、自分自身ではないのです。

他者と繋がり、他者にとって、対話し人間関係を構築するのに必要な姿を、見せるのです。

人の話を聞き、繋がることも大切です。だんだんと良い話になってきましたね。

もし、皆さんが交流する相手が皆、真のバージョンの自分であり、その瞬間をせいいっぱい生きていたとしたら、どうでしょうか。皆がせいいっぱい今を生きて、人の話を聞き、繋がっていたら。私だったら、そんな世界に住みたいです。よい環境ですね。

それが、演技によって得られるメリットなのです。

演技を勉強することで学べること

要は私は、演技の講義を受けなさいと言いたいのでしょうか。

そのとおりです。演技の勉強をしてください。すばらしい場所であり、向上できる講義です。私は演技を勉強することにより、向上できました。

こういったお遊びを通して、経験を積み、楽しんでください。そして、自分自身について学ぶのです。

外の物を内へ取り込み、内なるものを外に出すことができます。皆さんの身体を変えれば、皆さんが内面で感じとることを変革することができます。

TEDトークで、エイミー・カディによる「パワー・ポーズ」というお勧めのスピーチがあります。とても人気がありますよ。ご覧になったことがある方は、いらっしゃいますか。身体を外側に開けば、より力強く感じるのです。この壇上に上がる前、バックステージで、私もこのポーズをとりました。

(会場笑)

そして、好きな音楽を聴きます。Spotify(デジタル音楽配信サービス)で、究極に画期的な映画のサウンドトラックを聴くのです。何だかSpotifyの宣伝をしているようですね。

要するに、そういったものを聴くと、気分が良くなります。会場まで来る車内で、ずっと音楽を聴き、その後、身体を開いていました。充分にエネルギーに満ちた自分を、皆さんにお見せしたかったからです。情熱に満ちた演説者と、ロックスターを、皆さんの前で演じるためです。

(会場笑)

同様のことが、他にも作用します。皆さんが内面で感じていることは、身体にも表出します。皆さんがアイコンタクトの実験をしている時に、私は、大勢の人の変化を目撃しました。

最初に見つめてから目を逸らす時、皆さんの身体は猫背になって、このように丸まっていました。他の動作をする時には、背筋が伸びました。

つまり、身体に気持ちが表れることがわかれば、それを目安として使えるのです。もし猫背になってしまったら、起きていることが何かを自覚できますね。身体を外側に開くことによって、気分を一新することができるのです。

子供のころにも、似たことがありましたよね。いらいらしてしまった時に外に出て遊べば、身体を動かすことにより、気分転換ができます。

威厳を持つための5つのS

これまでお話ししたことを、手短にまとめた物がこちらです。もし、より「威厳」を持ちたかったら、5つのSを実行してください。

ゆったりとした所作(Slowness)、寡黙さ(Silence)、空間(Space)、堂々たる態度(Stillness)、左右対称性(Symmetry)です。

ゆったりとした所作とは、皆さんの動作と歩き方です。

寡黙さとは、間を取ることにより、「威厳」をもたらすことができることです。

空間とは、皆さんと他者との距離感で、自分の空間を保ったり、他者の空間へ侵入したりすることです。

堂々たる態度とは、無駄な動作を制限することです。

左右対称とは、こうです(背筋を伸ばして立つ)。これではだめです(だらりと身体を傾けて立つ)。これでは、左右非対称です。あまり力強くはありませんが、近づきやすくはありますよね。(背筋を伸ばして立つ)こちらは少し権威と重みがありますが、少々近寄りがたいです。(猫背で立つ)こちらは、前かがみになればなるほど、力強さが減ってしまいます。

この姿勢で早く動けば、Fになってしまいます(fast)。なんとか話に入ろうとしますが、うまくいきません。誰かに話に割りこまれないように、早口で話します。誰かに割りこまれないように早口で話すのは、下位の地位です。割り込みに抗わなくてはいけないのです。

もし皆さんの方に力があって、上位の地位にいるのであれば、周りは話すのを止めるはずで、皆さんの方が話し続けます。周りは、話を止めるべきなのです。これが、図のこちら側のお話です。

(fill)会話の間を埋めなくてはいけないのであれば、皆さんは、空白の場にいてはいけないのです。より「近寄りやすく」はありますが、低い地位です。空白があるとしたら、Fで始まる、空白を表す言葉を教えてください。空白から抜け出す手段を教えてください。ぜひ聞きたいですが、Fはこの場合は空白を生むことです。

もじもじすること(fidgeting)。特に顔を触ったりするような、ちょっとしたジェスチャーは、低めの地位を意味します。

折り曲げること(folding)。腕を組んだりすることは、守りに入っていることを意味します。身体を折り曲げることは何であれ、低い地位を意味します。

これらの動作をすれば、より「近寄り易く」なります。皆さんがこれらFの動作をすれば、周りの人は近づいてくることができます。「威厳」の側の動作を少し多めにすれば、人は離れます。これらの動作は、実に効果的です。

就職の面接ではどのように応用できる?

これらのジェスチャーを、夜遅く公共の乗り物に乗っている時に使ったり、BARTで遊んだりはしないでください。周りは確実に反応します。タフなふりをしたり、少々常軌を逸した行動の者に、皆さんが「威厳」の動作で対応すれば、けんかになります。ですから、慎重になってください。

卒業が近づくにつれ、就職の面接で、これらをいかに活用すればよいか、という相談をよく受けます。「威厳」のあるジェスチャーを身につけて、「情熱的な演説者」になって面接を受けないでください。

(会場笑)

それは間違っています。リラックスして、これらのジェスチャーをいろいろと試して見て、完全にものにすれば、自然に出てくるようになります。そうなれば、どう自分を相手に見せるかを戦略的に選択できるようになります。

就職面接について学生たちに話す基本的ルールに関して言えば、「対等の関係から、やや低い地位にいろ」と指導します。あなたは話をするに値する相手ではありますが、脅威ではないのです。

これは、とてもよいことなのです。誰かと繋がりを持ちたいと思ったら、相手の動作や話し方を真似すれば、対等の関係になれます。

(観客が発言)

空間を没収する(forfeit)? すばらしいです! ありがとうございます。

(会場拍手)