チームラボ・猪子氏「これから勝てるのは、再現性が低いことだけ」 均質化された世界における日本文化の価値とは?

猪子氏×隈氏 「日本文化の継続性と僕たちの仕事」 #2/2

チームラボ代表の猪子氏と、世界的建築家・隈研吾氏による異色対談。猪子氏が、デジタルの世界ではグローバルな均質化が進んでいると語る一方、隈氏は建築業界における国ごとの差はまだまだ大きいと言います。これからの日本が世界で勝ち抜くためのキーワードとは?

言語で説明できないものは再現しづらい

猪子:さっきから「会場から質問受けて下さい」って指示が出てるので。なんか司会がいないの、緊張し過ぎるのですが。ちょっと、質問して貰っていいですか?

:質問して貰いましょう、では。

質問者:言語化できる分野の競争力がなくなっていくと、僕みたいなマーケティング分野のサラリーマンはどうやって生きていけばよいのでしょうか?

猪子:たとえば、僕のところは、ベースがテクノロジーの会社なので、テクノロジーは絶対的に必須なんです。けれど、自分のいる世界にいて本当に身に染みるのは、テクノロジーとか、論理化できたり言語で喋れる、説明がつく知的部分の領域っていうのは、本当に一瞬で共有され過ぎていて、どんな国に生まれようと自らバンバン学習する人は一気にレベルが均質化されるんですよ。

そういう領域は本当に世界の中で差が出にくくなってきていて。自分は日本から仕事をしに行っているので、日本をベースにしていると世界の中では高くなってしまいますよね。だから、言語で説明のつかないような領域こそが再現性が共有しにくいので、すごい差が出ると、すごく思っていて。文化依存度の高過ぎるような領域っていうかな。そこのみが競争力になるってよく言っています。もちろん自分たちもそれをすごく意識しているのですけれど。

質問なんだっけ? 自分みたいな職業はどうしたらいいか? それは……その、ま、チームラボ入ればいいんじゃないかな(笑)。

(会場笑)

猪子:手が動く人しかチームラボにはいない、ってよく言ってるんだけど、これは分かりやすいから言ってるだけ。本当は嘘で、いわゆるまとめる人っていうのはプロジェクトに必ずいて、僕らはそれをカタリスト、触媒って呼んでいて。言葉にするとプロジェクトをマネージメントしたり、クライアントと調整したり、クライアントを説得したり、エンジニアのテンション上げたり、デザイナーのテンション上げたり。

昔で言うとプロジェクト・マネージャーとか、ディレクターみたいなのとか、プロデューサーとか、そういう職業になるのかもしれないのだけれど。プロデューサー、ディレクターとはだいぶ違うのは、そんなにディレクションせずにチームの人達が考えやすい環境を作るとかテンションを上げるとか、環境とかテンションとかをマネージメントすることを重要視する。

考えやすいチームワークを、共にキュレーションを生みやすい状況をできるだけ作る、みたいな仕事の人ってすごくいっぱいいて。でも、どういう人がすごく良いカタリストなのか、結果として「この人はすごく良いカタリストだ」ってわかるのだけれど、それを言葉にすると何なのか、っていうのは、僕らも良くまだ分かってなくて。自分もすごい興味あるのだけれど。そんな回答でいいですか?

(会場笑)

猪子:すごく活躍すると思う、そういう人は。でもそれはなんか、うーん、ま、ちょっと分かんないな。それが履歴書で表現できるかどうかは非常に難しいのだけれど、ただ、すごく重要だとは思う。

:僕は、建築家はエンジニアじゃないと思っているから、技術系じゃないと思っているし、実際、日本だと工学部に入っていることが多いけれど、海外は建築学科って独立した学科なわけよ。ロー・スクールみたいな。アーキテクチャー・スクールっていうのはロー・スクールと同じように、そんなに数学できなくても入れて。

それで、今のカタリスト的な能力に似ているのだけれどさ、色んなバランスを取って、一番、ベストなソリューションは何かって考える能力のある人を育てる、っていうようなところなわけね。構造計算っていうのは、それはそれで別の、建築と違う人達が海外だと大体やるわけ。エンジニアの専門の。そういう感じだから、別に僕らはあなたみたいな観客の方でもソリューション能力があれば、どんどん取っていくって感じだよね。

CMYKが嫌い

質問者:猪子さんには、作品の色に日本の風土の色を使うとか、こだわりがありますか? もしあれば教えて下さい。

猪子:僕はね、RGB(赤、緑 、青の三つの原色を混ぜて幅広い色を再現する表現方法)っぽい色が好きなんですよね(笑)。

(会場笑)

猪子:CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4成分で幅広い色を再現する表現方法)とか死ね、とか思っていて。だって、混ぜると黒くなるんだよ。なんかダサいじゃん。……混ぜると黒くなるんだよ?(笑)。まあデジタルなので、デジタルって物質に媒介しなくていい、つまり紙に載せなくてもいいので、そうすると、言ったら殆どの場合は出力が光源になるんでね。ディスプレイだろうとLEDだろうと何であれ、殆ど光源になるので、そうすると必然とRGBになるし。

RGBでも特にRGBっぽいほうが好きですね。なんかCMYKっぽい色がすごい嫌で。混ぜると黒くなるんだよ。もっと具体的に言うと、透明度があるとか。だからホント、光ってすごく、透明……。

質問者パウル・クレー(スイスの画家)みたいな?

猪子:いや、違う。光って透明じゃん。だから、物っぽくない色っていうかな? 炭とかも描く時も実は全部、透明なんだよね。というかCMYK、物っぽいのが嫌いなんだよね。

質問者:今後、猪子さんの作品がまとめて見られる、大きい展覧会の予定はありますか?

猪子:いや、呼んでもらえれば直ぐやるのだけれど。ただ、懐古主義の国なので、どっからも呼んでくれないっていう。悲しいやら……。

あ、さっき日本の色って言ったけれど、日本の色はあんまり意識したことはないんです。でも日本独特の色の組み合わせっていうのは結構好きで、それは古典的な組み合わせも好きだし。マンガとかアニメの組み合わせとかもすごく好きで。なんかこう、学校の先生に怒られるような組み合わせがすごく好き。たとえば、ピッコロとかさ、黄緑も紫とかさ。そういうね。でも実は、古典とかでも普通にある組み合わせ。

まあ、いいね、そういう話は。次にしよ、次に。

(会場笑)

均一化されるものとされないもの

質問者:デジタル化によって文化が均一化されていくと、日本の良さというものが失われていってしまうのではないでしょうか。

猪子:より、均一化されて"いかない"。均一化される部分と、均一化されない部分がきっぱり分かれていく。たとえばテクノロジーみたいなものとか、知的な部分というのは、もちろんすごい勢いで共有されていくのだけれど……。例で言うと、今ってカラオケのランキングとか見ると、歌われている歌手って、1位はAKBで、2位には初音ミクとかだったりして。つまり、初音ミクが、2番目に国民的なスターなわけですよね。

でも、ちょっと世代が違うと、初音ミクとか誰も知らないじゃないですか。一昔前で言うと、美空ひばりは国民全員が知っていたわけですよね。メディア環境も昔はマスメディアだったのが、今、フェイスブックみたいなSNSが最大のメディアとなった瞬間に、自分とある種、すごい価値観の近しいところの人たちが選んだもの、それのみが情報として入ってくるみたいな。

より若ければ若いほど、新聞とか、テレビとか、雑誌とかも見ないので。ある種、より多様化するというか。実際、僕の上の世代よりも今の若い子は、ハリウッドの影響とか多分めちゃくちゃ少なくなっていると思う。

歌舞伎からメイドカフェへ受け継がれたもの

猪子:文化ってなんだろうってよく考えるんだけど、たとえば、歌舞伎って色んな発見をしたと思うのね。それはたとえば、ブサイクでもカッコよく見えるポージングの発見だとか。それって多分、ありえないことで。西洋だと、かっこいい人がよりかっこよく見える演出の発見を繰り返し、そしてやってきたんだと思う。だからスターってやっぱりカッコいいよね。

でも歌舞伎って、ブサイクでもかっこよく見えるポージングを多分、発見して。それって、すげえ発見で。当時、多分めちゃくちゃすごいイノベーションがいっぱい起こっていたんだと思うんですよ。でもいつのまにか、歌舞伎の場ではそのイノベーションは起こらなくなって。それがいずれ、気づいたら、仮面ライダーのポージングとか、3点着地っていう地面に降りるときのポージングを、日本のアニメが発明した。それはハリウッドとかでも超、真似されているんだけど。

今だったら秋葉原のメイドさんとかが、不細工でも超かわいく見えるポージングを毎日のようにクリエーションしていて。二年前よりもすごい勢いで更新されていて、行けばほとんど必ず恋に落ちるぐらい(笑)。

コーヒー持ってきてくれたときは、「なんか最近メイドさん、ブサイクだなー」とか思っていても、ライブが始まった瞬間「超かわいい!」って言ってしまうぐらい。じゃあ、今の歌舞伎がその文化をちゃんと守っているかというと、守っていなくて。もしかしたら秋葉原のメイドさんたちのほうが、その文化をちゃんと継続して、守っているのかもしれないよね。

わからないよ? 嘘とか、そんなことを言うと仕事が減りそうだから言わないけれど。ちょっと言い過ぎたかもしれない(笑)。

日本人は"物質フェチ"

:僕は日本の文化は競争力があると思うよ。これからのほうが。特に、物質を扱う部分が独特。物質に対するフェチっぽいのがある。その部分は、なかなか他の人では勝てないところがあるよ。

中国や韓国だと、そういう人っているかと思ったら、すごく少ない。日本人はほとんどが物質フェチと言ってもいいぐらいだよね。

猪子:それも多分、すごく長い間、文化が続いてきたからで。メイドがオモロいのも、当時、単なる河原で歌舞伎を発明した人たちがいて、それが無意識にでも受け継がれてきたからこそ、仮面ライダー作った人とかが、変な、よく分からないポージングを発見したとか。そういうのがずーとあって。

もちろん歌舞伎があったから、メイドというコンテンツは世界でもまれに見るぐらい、世界中の人が見ても驚愕するぐらいオモロいんだと思うんだけれども。日本の文化は連続して深みがあるから、すごく強いと思う。

:そうそう。それは、多分、DNAの問題じゃなくて、その環境の中で民族的にトレーニングを積んできたような気がするな。

猪子:そうですよね。ちゃんと連続させてきたから。

:そういうことだと思います。

(了)

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猪子氏×隈氏 「日本文化の継続性と僕たちの仕事」

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