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博多久松・松田健吾氏インタビュー(全2記事)

2015.12.03

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売上ゼロから3年で月商1億円へ 「博多久松」がおせちの名店となるまで

提供:楽天株式会社

お正月グルメといえば、おせち料理。新しい販売チャネルとして、インターネット通販がますます拡大を続けている。楽天市場の「グルメ大賞」を9年連続受賞、また楽天に出店する約43,000店舗のなかから特に優れた店に贈られる「ショップ・オブ・ザ・イヤー」も2年連続で獲得と、業界を牽引するおせちの名店「博多久松」の店長、松田健吾氏にネット通販で成功するまでの歩みを聞いた。

不況の波に押され、ネット販売に着手

──インターネット通販はいつから始められたのですか?

松田健吾氏(以下、松田)博多久松楽天市場に出店したのは、2004年の春からです。

そもそも私ども久松は、ずっと食品製造の卸売りをしておりました。ですが、その主となる事業が年々厳しくなってきていまして。結婚式でよくうちの食材を使っていただいていたんですけれど、福岡だと昔は300人規模だった結婚式が80人とか50人とかに減って、段々と売り上げも下がってきた。「このままじゃマズい」ということで、新規事業としてインターネット通販を始めようと。

楽天市場をメールマガジンで知っていたので、ちょっとここに出店してみようか、という流れになります。

──初めは、おせちをメインにやられていたわけではなかったんですね。

松田:そうですね。結婚式の料理を作っていたので、その流れのなかで年末にはおせちの依頼を料亭やホテルからいただいて、「冷凍おせち」を卸売り用として2,000から3,000セットくらい作っていたんです。

だから食材はあるので、「年末には(ネットで)おせちも売ろう」という思いはありましたが、当初はおせちを何万セットも販売していこうという考えでスタートしたわけではありませんでした。

初日に3個、即対応で初年度在庫が完売

──どうしてインターネットでのおせち通販がここまで伸びたのですか?

松田:実は、インターネット通販は思っていた以上に難しく……出店してから本当に売り上げが毎日0円だったんです。ずーっと、ずーっと0で。0が普通だと思ってました。初年度はそれくらい、売り上げに関しては無風でした。

それでも年末にはおせちを販売することが一つの目的だったので、90セットほどの在庫を作って販売しようと。

今年度でネット販売は止めるかもしれないけれど、「とりあえず出してみよう」と、卸売りで売っている余剰の在庫があったので、それをインターネットで少しだけ販売してみたんです。写真1枚と商品金額だけを設定した簡単なページを作って。

翌日、RMSという楽天のバックヤードの仕組みを開いてみると、当時18,900円だったおせちが3個売れていたんです。

もう、見間違えたかと思って(笑)。これは誰かがテスト注文したんだな、と(笑)。ただ、配送先の住所を見ても、みなさん知らない方だったので、これは本当にご注文いただいたんだ、とわかりまして。「これは反応があるぞ」と思い、すぐにできる限り作りこんだ商品ページを作って。

なにせ初めのページは商品名に「おせち」って書いていただけで(笑)。ちゃんと商品の説明を書いて、中身についても伊達巻きとか黒豆とか、一つひとつの解説を追加して。それで90セットが1週間くらいで完売となったんです。

──おぉ。完売ですか。

松田:今でも覚えていますが、出荷をどうするのか考えていなかったので、社長や専務にもヤマト運輸の伝票を渡して、みんなに手書きで書いてもらって。「90枚も書けない」って文句を言われたり(笑)。

そして翌年度の2005年は、もっと可能性があるということで2,500セットに増産したんです。

──すごい挑戦ですね。

松田:それができたのがインターネットだなと思います。楽天にアクセス解析の機能がありまして、どれだけアクセスがあったのか、「おせち」と何度検索されたのかを分析することができたんです。

ほかにもWebサービスの「キーワードアドバイスツール」とかを使って、世の中で「おせち」ってどれくらい検索されてるのかな、とか。わからないながらも調べて、可能性として3,000セットは絶対売れると思ったんです。

当時はまだ若かったので、冒険することに対してあまりネガティブな要素は無かったです。「売れるんだったらやりたい!」となんとか会社に頼み込んで、2,500セット分準備してもらって。それが思いのほか上手くいきまして、11月で月商3,000万、2,500セットのおせちがすぐ完売となったというのが2005年の大きな動きでした。

最先端のネットマーケティングも駆使

2005年は、外部広告もやりました。当時走りたてだったリスティング広告がワンクリック9円からできるということで、「おせち」をYahoo!で検索したら、百貨店の三越さんとか阪急さんが出てくるその間に夜中だけ久松という広告を出して……。並びが三越、阪急、博多久松と(笑)。当時はそこから売り上げがグーンと(上がって)。

日中はみんな仕事をしているので、(検索されるであろう)夜中の時間だけ広告を出して、ゲリラ的に販促をやったのも2005年に売れた要因の1つだったなと思います。(当時、博多久松は)まだ実績もないし、お客さんに直接メールを送って販促できるほどの顧客を持っていなかった。

でも、このときは11月で売り切ってしまったので、まだ12月の販売をほとんどやってなかったんです。「これはもっと売れるな」いうことで、また得意のアクセス解析を使って(笑)。次の2006年は、9,500セットまで増産したんです。

当時の楽天といえば、年末はカニがすごかったんです。カニ屋さんになればみんなが儲かると思っていたくらい、「冬グルメはカニだ」と。おせちには誰も注目していなかったんですよね。

でも、私は卸売りをやっているなかで、おせちは絶対食べるものだから、必ず需要があるという確信があった。販促に力を入れた2005年の手法を2006年も引き継ぎながら、楽天のECコンサルタントの方から「お試しセットはどうですか?」というように、楽天的な新しいやり方を教えていただいて、試したりもしていました。

2006年には12月で月商1億円という数字を獲得できて、その年の結果が楽天の「グルメ大賞」につながったというのも大きかったです。

通常の商売だったら初年度に90個を売ったら、「昨対30パーセントを狙おう」とかって話じゃないですか? でも当時のインターネットは、みんな言っていることが一桁ずれているんですね。「1000パーセント」とか言っていて。

1000パーセントの意味がよくわからなかったんですけど、みんな「今月100万円売ったら、来月は200万円だ」とか言っているんです。そのくらい2004年ごろのネット通販はバンバンと上がっていた時期だったので、その時期に(楽天に)出店できたのは非常にラッキーだったなと思っています。もし久松本社の調子がよかったら楽天への出店はなかったので、景気が悪かったことが幸いして。運が良かったな、と。

顧客目線での取り組みをインターネットに逆輸入

──インターネット販売ならではの醍醐味はありましたか?

松田:そうですね。インターネットのすごさというのは、身をもって体感したんですけど、食品というものはそもそも、「安全」と「安心感」と「おいしさ」というのが必ずセットになっていないとダメなんです。

昔はまだ、安全、安心に対しての消費者の意識はゆるかったと思うんですが、2004年くらいから、「冷凍ほうれん草に水銀が」とか、「うなぎに何か入っていた」とか、「豚まんがダンボールだった」とかいうのが出てきて、日本の方々が、安さ、おいしさに、加えて「安全、安心である」ということを食品に求め出した。

私は、ずっと顧客対応もやっていたんですが、2005年ごろから「海外の食材が不安だ」という声が一定量あったので、久松では中国産の食材は使わないというルールを作って。

「チャイナ・フリー」ということを、今までの食品会社はほぼやっていなかったんです。「食材がないかも」とか、「原価が跳ね上がって値段を維持できない」とか、散々言われたんですけど、調べたら条件を満たす食材ってちゃんとあるんですよね。

お客様の声を聞いて、2006年業界で初めて、久松がチャイナ・フリーのおせちを販売しました。

ほかにも、久松は初めての取り組みが多いというのを自負しているんです。「お試しのおせち」とか、「キャンセル受付」とか。

注文いただいたおせちのキャンセルや変更を、久松は当然のように受けているんですけれど、販売を開始した2004年はどこもやってなかったんです。極端に言うと、間違って注文しても変更・キャンセルは受け付けない、お金は払ってね、というスタンスで。

それってネット初心者の私からすると「怖いな」と。なぜかと聞くと、「仕入れのときに数を確定してもらわないとメーカー側に発注できないから」と、みんな全部自分都合で言っていたんですよ。

これはお客様都合を一切考えていない、めちゃくちゃな理論だなと思ってキャンセルも変更も受けるようにしたんです。

当時言われたのが、「何個キャンセルされるかわからないですよ?」と。確かに正直、全部キャンセルされたら怖いなという思いもありましたが、お客様は普通の方ばかりだったので、そんなことは起きなかったです。

ほとんどの場合がやはりやむを得なくのキャンセルや変更で、理由を少し聞くと「それなら仕方ないね」ということばかりでした。

ですから、それを受けるのはサービス業であるお店の1つの役目だなと。通常の商売をしていたら当たり前のことが、Webの世界ではされてなかったということも新鮮でした。

ダイレクトに届いた声を商品に反映する

──ほかに印象的な声はありましたか?

松田:きんとんの上に大粒の栗の甘露煮を3個入れていたんですがあるとき、お客様から連絡がありまして、「うちの家族は4人なんです」と(笑)。

「おせちには満足しました。ただ、栗が3つでした。これに関しては私が諦めました」と。

「これは」と思って翌年から5粒に変えました(笑)。でも、これくらいリアルな声じゃないと反応できないんですよ。

インターネットはお客様としっかりつながっているので、事業者としても製造メーカーとしても、非常にやりやすいです。

当然お叱りを受けることもあります。そのお叱りに対して、なにも手を講じないとかなにも動かないとなったら、それこそ自分たちの首を締めることになるので。お客様の言いなりになる必要はないんですけれど、お客様から得られる“玉の情報”がある。

それに対してしっかりお応えしていくことが自分たちにプラスになっていくということをインターネット通販を始めて大きく感じました。

──久松さんが販売されている「冷凍おせち」はどういうものなんですか?

松田:業界では冷凍おせち食材は一般的なものだったんですが、お客様に認知されだしたのは本当にここ数年ですね。

冷凍おせち自体は非常に美味しいんです。理由は明確で、保存のために味を濃くし過ぎる必要がないので、美味しい味付けで作れるというのが1つ。

あとは年々、冷凍技術も進化していまして、「解凍したらべちゃべちゃになった」とか「パサパサになった」とか、そういう味の劣化が少なくなったというのも大きな要因です。

また、冷凍おせちは本当にインターネット配送に対応しているなと思うのが、盛り込んだものをしっかり冷凍するので、盛り付けもきれいに維持されたままお届けができること。

解凍の失敗を不安がられるお客様もいらっしゃるんですけれど、冷蔵庫でしっかり解凍していただければ簡単に美味しくお召し上がりができます。

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