「次世代のイーロン・マスクやスティーブ・ジョブズに投資する」孫正義氏が語るソフトバンクの新陳代謝

孫正義×ニケシュ・アローラ #3/6

2015年10月22日に開催されたソフトバンクアカデミア特別講義において、孫正義氏とニケシュ・アローラ氏が対談を行いました。冒頭で孫氏は「ロボットの知能が人間を超える日」をテーマに、コンピューターの能力と人間の能力のクロスポイントとなるシンギュラリティ(技術的特異点)についてAI、知的ロボット、IoTの3つのテクノロジーをもとに解説しました。本パートでは、将来のソフトバンクグループの成長戦略として、クリエイティビティやパッションを持った若いアントレプレナーとの関係について語りました。

ソフトバンクはどうやって生き残っていくのか

ニケシュ・アローラ氏(以下、ニケシュ):多くの方がソフトバンクアカデミアの方ですから、ちょっとソフトバンクについてお話ししましょう。

孫正義氏(以下、孫):次の議題ですけど、シンギュラリティのような時代が来たときに、ソフトバンクはどうするのか。どうやって生き残るのか。

我々は35年、これまで生き残ってきたわけですが、どうやってこれから30年を生き残っていき、30年だけではなく、シンギュラリティが来たあとは、ソフトバンクは200年かもしれないし、300年かもしれないけれども、どうやって生き残っていくのか。

どうやって我々の組織をつくっていくべきなのか、実際にベストのストラクチャーというのはどういう形なのか。ソフトバンクはどうなるべきなのか、どう思いますか? 重要で意義のある会社であっていかないといけないと思いますけれども。

ニケシュ:我々、何度もこれについて話していますよね。おそらく、歴史としても非常にユニークなポイントがあると思います。

これまでは、これほど簡単に事業が始めることができなかった。200年前、100年前、50年前でも、事業を始めたい、例えば花を売るとか、そういったときはすべての街を回って、店を始めて、花を買ってきて、人を雇って、次の街へ行ってということで、同じことを何度も何度もやる。スターバックスと同じですね。

孫氏:30年、40年働いて、国全体にはじめてナショナルネットワークができると。

ニケシュ:実際、司法にもアクセス、調達ができるかどうかもわからない。今はプログラムスキルがあって、能力があって、技術、ブロードバンドがあるおかげで、全員がインターネットにアクセスがあるという時代になりました。

みなさんがポケットに端末を持っていて、実際にアクセスするメカニズムができた。それから写真を撮ったり、ビデオをつくったりという生産性も持つようになった。

技術がこれだけのことを簡単にするようになって、新しいビジョンをつくりやすくなった。その革新のペース、創造性のスピードというのは、さらに加速していくと思います。

企業と創業者に必要な新陳代謝

ニケシュ:先週インドに行ったと言いましたけれども、2014年だけでもインドで500社が設立された。今までこれほどの数がいっぺんに設立されたことはなかった。

シリコンバレーと同じようにインド、また日本でも同じことが起きると思います。これがひとつの点。

過去を遡ると、世界ですばらしい会社、企業というのは、Google、Facebook、Apple、テスラとか、または過去、IBM、H&T、AOL、Yahoo……こういった企業群たちは、情熱のある創業者たちが始めた。

非常に賢い、聡明な方がこういった会社を始めようというかたちで始めた。こういった会社がどんどん良くなって、良くなって……。ソフトバンクと同じですよね。

実際に創業者が年を取ってきて、お金も儲かって、少しずつリスクも出てきて、実際に他の人に代権をするようになって、会社がある程度のところで止まったり減少したりする。

孫氏:ここ100年を見れば、アメリカのほとんどの自動車会社は、ヘンリーフォードであったり、ジェネラルモータースであったり、クライスラー、こういったところはちょっと右肩下がりになっていますよね。

ニケシュ:何が起きているかというと、創業者は非常に満足してしまって、計算式ができた、これ以上の革新は必要ないとなってしまう。そこで、ここにチャンスがあるなと思ったときに、「私に革新させてくれ」ということで、そうすると自分たちは事業が立ち行かなくなってしまう。

ソフトバンクはどうなのかというと、我々がリスクもわかっていて、そういった環境の中で、実際に社長を若返らせるか。技術があるから、実際それも可能かもしれません。当然、髪の毛がいっぱいになるかもしれない(笑)。

孫氏:背が高くなるかもしれない(笑)。

ニケシュ:それはちょっと難しいかもしれませんけど(笑)。できるかもしれません。

ひとつのオプションとしては、1人の創業者により革新してもらう。スティーブ・ジョブズはやりましたよね。彼は出て行って、また戻って来た。

ジャック・ドーシーもTwitterを出て行って、また戻って来た。ときにそういうこともあると思います。でもそれは、長期での計算式には合わない。成功するための方程式にはならないと思います。

我々の戦略は、我々が若くなる代わりに、毎年ベストな創業者を探していこうと。やる気のある人を見つけて、彼らに投資していく。

彼らのパッション、クリエイティビティに投資をする。毎年、5〜10人くらいのすばらしい方たちに出会えるかもしれない。何人かが、次のイーロン・マスクであったり、スティーブ・ジョブズだったりということになっていくと思います。

ソフトバンクがポートフォリオファウンダーのポートフォリオを持つ創業社になっていき、今の人たちが年を取れば次世代の人が入ってくるということで、我々はお金を提供する側、またはグループ会社を増やしていく。

そして多くの創業者に対して知恵を授けていくということを、例えば社長はジャック・マーにされましたよね。孫社長も、伝説的な創業者に対して知恵を授けてきた。そういったおもしろい戦略で、知恵がずっと役に立っていくと思います。

孫氏:非常にハッピーですね。今言われたことに対して、私も100%同じ考えです。長い年月にわたって、同じことを考えていますし、まさにここではじめて、同じ考え、同じパッションを持った人を見つけることができた。

私もそういったかたちの組織であるべきだと思っていますし、これこそが私の信念でもあると。

私たちが若くい続けることというのは、パッションを持っている創業者を連れてきて、新しい血を入れる。会社はそういう血の集合体であるということ。

若い人たち、情熱たち、創業者たちの集合体として、どんどんリフレッシュをし続け、彼らが大きくなったら、徐々に卒業していく。

実際、彼らが独立するというのもあるかもしれない。我々は、それをお祝いしてあげればいいと思います。独立をお祝いし、また、そのお金も入ってくるかもしれない。それに対しては、再投資に回す。また若い人たち、情熱のある人たち、スタートアップでお金が必要な人たちに再投資をしていくことができると思います。

ときには、なんらかのアドバイスをあげることもできるかもしれないし、アドバイスは必要ないというかもしれない。

ニケシュ:我々にはIQ10000のロボットがいるから(笑)。彼らのほうから私たちにアドバイスをしてくるかもしれませんけどね。我々、アドバイスは必要ない。平均のIQが100くらいのときは我々がなんとかアドバイスをあげることができるかもしれませんけど。

そうすると、社長は実際に年を取ってきていますよね。ここ1年半、実際に社長を見ていると、まだ若い、情熱があるということだと思います。だから、年を取ったということは、まだ早いと思います。

端末携帯やスプリントを直すために多くのアドバイスを出したりとか、彼らに怒鳴ったり、話をしたり、アドバイスをしたり、こういったパッションというのはどこから来るのでしょうか?

孫正義氏のパッションの源

孫氏:これはお金だけじゃない、むしろこれがお金だけの話だったら、やる気というのはもっと失われていくと思います。みなさん、お腹いっぱいだったら食べたくないですよね。それと同じことだと思います。ですから、少なくともお金ではないということは間違いないと思います。

私の情熱はお金から来るのではなくて、どうやって我々が、貢献できるのかということだと思います。人類の幸せにどのように貢献ができるのか。どうやって組織をつくるべきなのか、どうやって会社をつくって、何らかのかたちで、社会や人間の幸せに貢献できるのか、ということだと思います。ですから、意義のあることをしたいという情熱です。社会のために、人類のために。

例えばシンギュラリティが実現したら、IQの点で一番頭のいいロボットというのが開発されていると思いますが、私としては単に頭のいいロボットではなく、私たち独自の心の優しい(ロボットをつくりたい。)

ニケシュ:心ということは感情を持ったロボットですか?

孫氏:そうなんです。一番心持ちのいいロボットです。

ニケシュ:悪い感情を持っていないロボット?

孫氏:できればそうしたいです。

ニケシュ:でもバランスが必要ですよね。いい感情、悪い感情、両方の感情を持っているのが人間じゃないですか。

孫氏:そのへんは他の人に任せましょう。

ニケシュ:良いペッパーはソフトバンクで、悪いペッパーは他の会社で、ということですか?(笑)

孫氏:そうですね。とても頭の良い人がいます。でも冷たい人です。もう1人、最高に頭がいいわけではないけれど、でもハートを持っている。どっちの人が魅力的ですか? やはりハートがある人がいいでしょうね。

ニケシュ:もちろんです。ただ、仕事では一番頭いい人と組みたいです(笑)。

孫氏:そうですね、一番頭がいい人(笑)。もちろん生産性向上ツールのロボットとしては、一番頭のいいロボットがいいですよね。

ニケシュ:じゃあ社長は私のことは、一番頭がいい人間だと思っているんですか? ハートがある人間だと思っているんですか?(笑)

孫氏:両方持っていると思いますよ(笑)。頭がいいことも大事です。ですが、やはりもっと重要なのは最高のハートを持っているということです。

だからこそ私たちは、優しい心を持ったペッパーをつくりました。ペッパーを受け入れた家族がハッピーになれるように、お客様がハッピーに感じられるように、人々を幸せにできるようにしたいんです。

このIT業界では、生産性向上に向けて、さまざまな取り組みがなされておりますが、私はそれ一辺倒にはなりたくない。もっと重要なことは、いいハートを持っているということなんです。だからこそ私たちはペッパーをつくりました。一番いいハートを持ったロボットです。

メディカル業界で起こるイノベーション

ニケシュ:シンギュラリティの未来ではなく、「今」を考えてみてください。過去10年間でさまざまなイノベーションがありました。インターネットの世界で、Facebook、Twitterもありました。さまざまなイノベーション。

例えば、電気自動車ですね。イーロンマスク、彼は火星に行こうとしているみたいですけど、さまざまなイノベーションがさまざまなセクターで起きてきました。

もちろん、サービス業界でもUberやAirbnbなどさまざまなイノベーションが生まれてきました。ほかにどんな業界に、まだイノベーションが足りないと思いますか?

逆にこれから新しいアントプレナーたちが、そこでチャンスを見出せるでしょうか? 20年、30年を展望するとどうですか?

孫氏:やはりメディカル業界ですね。従来型のものではなくて、将来メディカル業界というのはITを活用していると思います。スマートな、インテリジェントなかたちで活用することになると思います。

それが可能になれば、よりよい効果的な治療ができるでしょう。DNAベース、あるいは血液テストに基づいたものもできるでしょう。

ということで、メディカル業界は大きなチャンスがある、劇的に変わっていくと思います。

過去の電気製品、もちろんそれらは生産性向上に貢献しましたが、人が常にコントロールしなければいけなかったんです。24時間体制で監視が必要なものもありました。

でも、そうしたコンピューターがもっとスマートになれば、いちいちタイマーをセットしたりしなくてもいい。私が朝起きたら何が必要かというのをちゃんと自分たちで考えて、私たちのために機能してくれることになるでしょう。

例えば「もう起きる時間だよ」と言ってくれたり、あるいは、「明日は何時に起きますか?」というふうに、アラームクロックに何時に起きますと言えば設定してくれたり。そういうかたちで、さまざまな電気製品もスマート化していくと思います。

ニケシュ:メディカル業界ですね。それはその通りだと思います。あまり私たち自身の医療データがないですよね。例えば私が病院に行ったとき、私の血液を採取して分析して、というかたちですよね。そしてさまざまな問診を受けますね。

「今、どんなご気分ですか?」とか「気分が悪いから来てるに決まっているじゃないか!」と思うんですけれど、いろいろ説明しなければいけない。「1から10でどれくらい気分が悪いですか?」というふうに言われたり、「こんな痛みです。」と言ってもなかなかそれが伝わらない。

そういった情報が今はないわけですけれども、そういう情報が全部データ化されれば、それはメディカルの分野でも大きな違いを生むでしょうね。

孫氏:ええ、ビッグデータが重要なんです。あらゆるビッグデータです。さまざまなことのライフログですね。

ニケシュ:例えばこの部屋に入ってきたとき、血流が止まることなくあるわけですが、そのデータを取って、ドアのノブに触れようとしたとき、ドアが「ここにはバイ菌がたくさんあるから触らないで! 風邪の菌が入ってしまうよ!」と。そんなこともあるかもしれませんね。

あとは、先ほど、IOTの話が出ました。たとえば電化製品などがスマートになっていくということですが、先ほどのプレゼンで1人当たり1000のものがインターネットに接続している。それを、1人当たり持つことになると言っていましたよね。

孫氏:そうなんです。それは、電気製品だけではなくて、たとえば、ズボンや靴やメガネや、あるいは水を飲んだりするグラスなどもインターネットにつながることになるでしょう。

ニケシュ:でも、コップをインターネットにつないでどうするんですか?

孫氏:たとえば中に何が入っているか、カロリーはどれくらいか、あるいは、これを飲むと健康にいいのかどうかということまで(教えてくれる)。

なので、自分自身で何を飲もうとしているかを入力する必要がなく、そうした情報が自動的につながるんです。

ニケシュ:でも「タバコは害がありますよ」と言ってもタバコを吸う人はいますよね。だから、どんなアドバイスやデータが出ても関係ないんじゃないですか?

孫氏:無視したければ無視すればいいんです。

ニケシュ:例えばせっかく楽しくお酒を飲んでいるのに、センサーに「これは体に良くないよ、良くないよ」と言われたらどうですか?(笑)無視すればいいんですか? まあ、コンンピューターが悪いときは悪いと言ってくれるわけですね。気分に関係なく。

孫氏:本当に具合の悪いときは、飲まなきゃいいんです。ということで、椅子もテーブルもインターネットにつながることになるでしょう。

ニケシュ:そうなると社会全体への影響はどうなりますか? 例えば政府がすべてのデータを監視することになりませんか?

孫氏:そういう意味では、セキュリティというのは重要になってきますね。プライバシーは非常に重要になってくると思います。ですから、そうした情報に関する新しい規制も必要になるでしょうね。もちろん人だけでなく、コンピューターもスマートになってくるわけですから。

ニケシュ:その法律をつくるのは誰ですか?コンピューターですか? 人間ですか?

孫氏:コンピューターのアドバイスに基づいて、人間がつくります。

ニケシュ:なんか危険な感じがしますけれど(笑)。コンピューターはIQが10000ですから。いつ頃になりそうですか?

孫氏:徐々に起きていくと思いますね。

ニケシュ:私が生きている間にそういうことが起きるのかなと思って聞いていました。

孫氏:いやいや、こういったことは徐々に起きてくるでしょうね。Googleだって30年前には存在していなかった。でも今は、グーグルの検索のおかげでいろんなことを覚えていなくてもいいですよね。オンデマンドで情報が得られるわけですから。

ということで、こういう変化は一夜にして起こるわけではなくて、徐々に徐々に起きてくるわけです。でも、今から30年後に振り返ってみたとき、今から30年前は誰も携帯電話を持っていなかったですね。

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