コミュニティは3年寝かせたほうがいい
IVS・小林雅氏×尾原和啓氏が語るプラットフォーム運営の哲学

尾原和啓×小林雅 #1/2

『ザ・プラットフォーム』10分対談
に開催

マッキンゼー、Google、楽天などを経て、現在12職目のFringe81執行役員・尾原和啓氏が2015年6月9日に新著『ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか?』(NHK出版新書)を発売。その刊行を記念して、インフィニティ・ベンチャーズLLPの小林雅氏との対談が行われました。日本最大級のベンチャーコミュニティIVS(Infinity Ventures Summit)を運営する小林氏は、コミュニティ運営の際に、どのような点を重視しているのでしょうか? コミュニティを大きくしていく際の哲学や、場所としての価値の作り方などについて語っています。

プラットフォームの原理とは?

尾原和啓氏(以下、尾原):どうも雅さん。こんにちは。

IVP小林雅氏(以下、小林):こんにちは。

尾原『ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか?』いかがでした?

小林:インターネット業界っていうか、IT業界のプラットフォームの歴史が非常によくまとまっている本だなぁというのが感想です。

「プラットフォームとはそもそも何か?」というのが最初のほうに書いてあると思うんですけど、人が多く参加することによって価値が高まっていくというのは、原理原則そのままだなと思ってまして。

別にFacebookだろうがGoogleだろうが関係なくて、会社の組織であろうが、サッカーでもなんでもいいんですけど、あてはまる原理かなと思ったっていうのが正直なところですね。

細かいところで、例えばmixiの足跡とか事例が出てくるんですが、やはりそれなりにうまくいっているところは、工夫があるものだと思うので。

僕は投資をやったり、IVS(Infinity Venture Summit)みたいなコミュニティーも運営していますが、それぞれ細かいところに工夫があって、それが効いてくるのかなと思ったのが全体的な感想ですね。

尾原:そうなんでよすね。おっしゃるとおり、GoogleやFacebookとか、あの本で書いた大きいプラットフォームが生活の中で切り離せなくなっている一方、我々ってFacebookだったりGoogleによって、ある意味サッカーチームだろうが、ボランティアグループだろうが、自分たちで新しいプラットフォームを立ち上げられる時代に突入していて。

その中で一番の秘訣って、どうやってユーザーがユーザーを呼ぶ構造を作っていくかっていう工夫の話なんですよね。

コミュニティは成長のコントロールが重要

尾原:そういった中で僕が雅さんと『ザ・プラットフォーム』の対談の第一弾としてお話させていただきたかったのは、やはりIVSという日本のベンチャーの新しいものを全部生み出していっている最大のコミュニティーを作ったからです。

これが先ほど言ったmixiの足跡みたいなものから始まったのか、何故に始まっていったのかを、次にそういうプラットフォームを作ろうとしていってる人たち、それこそサッカーチームかもしれないけれども、そういう人たちに伝わるものがあればと思って、今日ここで対談を設定させていただいたんです。

小林:ありがとうございます。

尾原:そういう意味で本当にIVSってすごいじゃないですか。

小林:いえいえそんな……まぁ、そうですね、はい。

尾原:何故にああいう形になったのか、雅さんの哲学というか、その辺のところから話してもらえればと思いまして。

小林:わかりました。多分どのコミュニティでも、Facebookでも基本的に一緒だと思うんですけれども、参加者が集まれば集まるほど、価値が出やすいものであるっていうのはひとつですよね。

ですから今、参加人数が700人ぐらいになっていますけれども、最初の10年前は100人ぐらいだったんですよね。

100人から徐々に増えて。逆にそこの成長のコントロールをしていくっていうのが重要になるんですけれども。

IVSの価値

小林:今700人規模なんですけど、やはり700人のイベントに参加しておけば、いろんな人に挨拶ができる。これはみんなからよく感想で聞くんですけど、とても便利であるということですね。

いちいちアポ取ってると大変だけど、別に近況報告ってFacebookをやっている人がいたらそれを読めばよくて、「じゃあ書かれていないことって何をやってるんですか?」みたいな話になると思うんです。

でも、そういうのって立ち話でも十分じゃないですか。なので10分ぐらい話して、「いいねぇ、じゃぁまた今度会いましょう!」みたいにネクストステップが決まればいいという感じで、非常に利便性が高いと言えるかなと思いますね。

かつ、利便性が高い一方で、運営するのは結構しんどい、みたいな。

尾原:そうですよね(笑)。

小林:利便性と難易度が高いというのがあって、その2つがあるからどんどん集積していく。検索エンジンもやっぱり作るのが難しいから。そういうふうになっていくと思うんです。

尾原:おっしゃるとおりですね。結局Googleも、リアルタイムであれだけの量を、いわば質と量を凝縮させるって、もう大変なコストなので、二番手三番手がなかなか生まれにくいっていう構造ですよね。

小林:特にイベントなんて、テクノロジーも何もないじゃないですか。

尾原:その代わり素晴らしいオペレーションですよね。

小林:だから、できるだけ「そういう価値を生み出すものは何か?」というのに気をつけて運営はしてます。だからGoogleとかFacebookみたいな、ある意味インターネットサービスの規模みたいなことはまったくない。

700人ぐらいのインターネットサービスなんて、世の中たくさんあると思うんですけども。正確に言うと、700人以上ですね。その中で価値をどのようにしていくのかが重要かなと考えていますね。

お互いにとって価値のある人だけを集める

尾原:そういう中で2つほど質問があるんですけども、とはいえ最初の100人から700人って、量を増やすことは簡単じゃないですか。そうじゃなくて、やっぱり先ほどおっしゃった「価値」をどういうふうに育んできたか。その最初の階段って何だったのでしょうか。

あと最近感じてらっしゃる「価値をどう作っていくか?」ということの変化、最初と今みたいなところをお伺いしたいんですけれども。

小林:そうですね。今も変わらずなんですけど、最初からやっていることとしては、基本的には既存の参加者からの推薦、口コミで増やしていく。最初はホームページもなかったんですよね。

尾原:あっ、そうなんですか。

小林:僕のブログで「なんかやってます」くらいしか書いてなく、「いったいこのイベントは、どこから申し込んだらいいのか?」っていうぐらいのユーザビリティのなさだったんですけども。

尾原:あははは(笑)。

小林:ユーザビリティ全くなし、みたいな(笑)。ですからIVSが何年から始まったかっていうと、ホームページにあるのが2009年ぐらいからなので、知らない人からすると2009年からやっていると思われてるんですけど、実は2004年からやっているんです。

そこまでホームページすらなかった。このインターネット時代にですよ。それぐらいクローズドにやっていこうと思っていました。それで徐々に増やしていく。つまり参加するとみんなが知り合いというか、知り合いの知り合いが多いということで、非常に心地が良い。

例えば3人で話しているときに、誰かの知り合いが輪に入ったときに自然と会話になっていけるというようなイメージですね。

これが100人からいきなり1000人になると、誰も知らない、みたいなことが起こりうると思うんです。そうではなくて気軽に立ち話して数人で話しているときに、1人か2人がちょこっと入ってご挨拶、みたいなことが非常に自然である。それが理想的な姿なんですよ。

最初はホームページすらなかった

尾原:自然であるっていうとこがポイントですよね。バーニングマンとか他の海外のコミュニティをやっている時に言われるのが、コミュニティ3年の原則というのがあって。

TEDとかバーニングマンとか、いろんなフェスとか流行ってるから、みんな最初から大きくしようとするんですよね。でも、「3年は寝かせたほうがいい」ってみんな言うんですよ。

それは雅さんがあえてホームページを設けなかったのと一緒で、仲間が仲間を呼ぶというのが3年蓄積すると、結局仲間が財産となって、周りが周りを呼ぶ構造を作ってくれるから表に出してやっても薄まらない。

だけど3年以内にやっちゃうと、パッと広がって薄まっちゃって、コミュニティーとしてのカルチャーがなくなる、ということをバーニングマンの中ではよく言ってたりしますね。

小林:ですから、イメージがつくと思うんですけども、数人で固まって話しているようなところが自然にできるよと。

あと、経営者の方ってだいたい異業種交流会ってあんまり好きじゃないんですよね。

あんまり意味がなかった集まりとか、20人と名刺交換して1人もいい人いなかった、自分にとっていい人がいなかったっていう、よくある経験を必ずされていると思うんです。

でもIVSではそうじゃない。つまり名刺交換した人はみんな役に立つというか、お互いにとって価値があるものを目指していますね。

もちろん10人中10人がそうなるかっていうと、そうならないんですけれども、少なくとも8割ぐらい、終わってから「10人中7、8人は話して良かったね」となると継続するというか、「良かったね」という感想になると思うので。

そういうイメージをもとに参加者を増やしていくっていう基準です。つまり今の参加者が「この人と一緒にビジネスしたい」と思うような人を新しく追加して増やしていく。それがいわゆる参加基準になっていくということです。

コミュニティを豊かにする人の増やし方

尾原:そういう意味でIVSは横で見させていただいていて、ベンチャーの経営者から、ちょっとファイナンスの方を入れてみたり、ちょっとアーティストっぽいクリエイターの方を入れてみたり、コミュニティーの増やし方がすごく丁寧ですよね。

小林:そうですよね。あまり冒険せずに徐々にやっていってますね。例えば上場企業をカバレッジしている証券アナリストの方も今7、8人参加しているんですけれど、初めは3、4人からテストしているんですよね。それは株式市場の人が入ってきて、違和感があったらどうしようと考えたからで。

尾原:確かにそうでしょうね。ちょっと喋る側もドキドキしちゃいますよね(笑)。アナリストの方がいっぱいいると。

小林:一方で今もいろいろ問題になっているかもしれませんが、スタートアップと株式市場って、どうしても距離があるものなので。でも近づけていかないと意味がない。

実態を知ってもらいたいなということもあったので、そういうところを増やしていこうというのをやったりして。

問題意識というか目的意識をしっかり持ってやっていく。例えば「デザインとかクリエイティブが重要になってきているよね」って言ったときに、やっぱり業界が分かれているわけです。

尾原:そうですよね。どうしても二手に分かれちゃうんですよね。

小林:なのでそこからデザイン・クリエイティブ系の人をいきなり100人持ってくるのは難しいけれど、エッジの尖った、「この人すごいな」って自分自身が思えるような人をスピーカーに呼んでくるとかで徐々に増やしていけば、一番いいんじゃないかな、と。

尾原:まずはスピーカーとしてコミュニティの中に入って、それが徐々に徐々に参加者としてもコミュニティーを形成していくっていう順番なんですよね。

小林:そうですね。そうしないと、さっき言ったとおり、いきなりクリエイティブの人が来ても「残り500人知っていません」という話になるので。

やっぱり登壇者となって、ある程度そのプロモーションというか、「この人はこういう人なんだ」というのがわからないと、「この人一体誰?」みたいになっちゃうので、入りづらい。

だから入口をしっかり作ってあげるのが、すごく重要かなと思います。

IVSのボランティアスタッフはなぜ優秀なのか

尾原:ちょっとごめんなさい、10分越えちゃうんですけれども、最後にあまり表で語らない話としてもう1個、IVSって運営者側のボランティアが素晴らしいですよね。

小林:そうですね。

尾原:あのモラルの高さとかクオリティーの高さっていうのはどういうふうに作られていくのか。すごく持続的ですよね。

小林:1つは、スタッフを募集しているわけじゃなくて、成長機会を提供しているって言ってるんですね。

尾原:おお。リクルートっぽい。

小林:ここに行くと最先端の話も聞けるし、いろんな人に会える。モチベーションの高い仲間、スタッフがいるので一生の友になる。というような売り文句というか、実際そうなんですけれども、それでやっているので、結果として、それを求める人が来るわけで、モチベーションも高いんですね。

つまり自分が成長したいと思っている人は、お互い認め合いたいとか、尊敬し合う仲間なので、手を抜いた仕事をしないんですよ。

そういうふうにすることによって、自分自身がモチベートされている人が集まり、かつお互い刺激し合って高め合う。

オペレーションも、スポンサーの資料とかを紙袋に詰め込む仕事があるんですけども、すげーつまんない仕事だと思うんです。けど、みんな明るく楽しくやってるんですね。いかに効率よく綺麗にやるかっていうことを楽しくやっている。

尾原:そこも成長なんですね。

小林:そういう作業を、いろいろ会話をしながらやる機会がある。基本的には色んなチームに分かれているんですけれども、そこは一緒にやりましょうっていうことにしたり、そういう工夫をしてますよね。

尾原:なるほど。よくあるエピソードですけれど、城を作る石切の話ってあるじゃないですか。石切職人で、すごくつまらなく仕事をしている人間と、すごく楽しそうにやっている人がいて、楽しそうにやっている奴の話を聞くと、「俺は100年続く城の一部、いちばん大事な基礎となる石を切っている。だからこの仕事が楽しくてしょうがないんだ」っていう。

まさに今のチラシの話もそうですよね。IVSの参加者の方々のユーザーエクスペリエンスをどれだけ気持ちよくして、その中でどれだけ触発された会話ができるかをサポートして、そのサポートを通してボランティアの方も成長するっていう。

動画がスタッフのモチベーションを刺激する

小林:例えは変わるかもしれないですけど、それってやっぱり、教会を作るとか城を作るとか、ゴールがどうなるのかを見せることが、すごい重要なんですよ。

つまりスタッフで参加して成功した起業家、例えばAnyPerkの福山太郎君とか。彼のインタビュー動画(IVSスタッフから世界で活躍する起業家へ)が人気なんですよね。

尾原:あれ、すごくいいですよね。

小林:ああいう「こういう人になりたい」「目指すようになりたい」っていうのを語っている言葉が重要で。なりたい姿を見せると、今やっているスタッフ業務が繋がっていくんだっていう。それがすごい重要かなと思ってますね。

だからそういうスタッフの喋る動画、リクルーティング動画(IVSがいかに運営されているのか?)をいっぱい作ってたり、ログミーでも書き起こしたりするんですけど、あれをやってから一気に人が増えましたね。

尾原:なるほど。やっぱりあれ、勇気出ますもんね。

小林:スタッフの話って、「スタッフ募集します」っていう要項ぐらいしか書けないじゃないですか。「すげえ楽しい。刺激的です」って言ってもイメージつかないですよね。なので、ああいう動画、ビジュアルを見せるっていうのは非常に重要。

エネルギーをもらうには、まずエネルギーを周りに与える

尾原:そうですね。ごめんなさい。最後にちょっと時間過ぎちゃったんですけども質問があるのが、そういう話を雅さんってすごく楽しく語るじゃないですか。その雅さんの原動力って何なんですか?

小林:やっぱりイキイキしたというか、自分を成長させたいとか、成功したいって思う人は、目が輝いていると思うんですけど、そういう人と接するのが楽しいということですね。

逆に言うと僕はイベントの主宰しかやってなくて、たまに手伝ったりするんですけれども、主宰してそういうのを輝かせることが面白いというか。それがベンチャー投資をしている理由でもあるんですけども。

輝ける人たちと一緒に仕事をすると、僕も輝けるかもしれない。僕も若返るとか、僕も楽しいとか。

尾原:(笑)。エネルギーをもらえますよね。

小林:エネルギーをもらえるので。それって相互作用の部分が大きいじゃないですか。エネルギーをもらえるし、もらった分は返そうよということなんで。

逆にいうと自分がエネルギーを持って仕事をするには、周りの人がエネルギーを持っていないといけないっていうことの裏返しなので、自分だけ元気になることはない。

運動とかではないので、仕事とかそういうのは、常に周りがあって自分がある。自分自身がそうなるためには、周りをそうしていかないといけない。

尾原:そういうことですよね。いやー、いいっすねぇ!(笑)。小林雅さんは、目を輝かす人を増やすプラットフォーマーってことですよね。本日は長々とありがとうございました!

小林雅(こばやし・まさし) インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナー。東京大学工学部卒業後、アーサー・D・リトル(ジャパン)、エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)を経て独立し、2008年1月からインフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナー。インフィニティ・ベンチャーズ・サミットの企画・運営責任者を務める。

尾原和啓(おばら・かずひろ) Fringe81執行役員、PLANETS取締役。マッキンゼー、Google、楽天執行役員リクルート(2回)等を経て、現在12職目。バリ島から各役員を兼務し人を紡いでいる。TED日本オーディションなど私事で従事。前著『ITビジネスの原理』はKindle総合1位、ビジネス書年間7位。詳細プロフィール

<続きは近日公開>

theplatform『ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか?』

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Occurred on , Published at

尾原和啓氏 10分対談

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