プラットフォームの原理とは?

尾原和啓氏(以下、尾原):どうも雅さん。こんにちは。

IVP小林雅氏(以下、小林):こんにちは。

尾原『ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか?』いかがでした?

小林:インターネット業界っていうか、IT業界のプラットフォームの歴史が非常によくまとまっている本だなぁというのが感想です。

「プラットフォームとはそもそも何か?」というのが最初のほうに書いてあると思うんですけど、人が多く参加することによって価値が高まっていくというのは、原理原則そのままだなと思ってまして。

別にFacebookだろうがGoogleだろうが関係なくて、会社の組織であろうが、サッカーでもなんでもいいんですけど、あてはまる原理かなと思ったっていうのが正直なところですね。

細かいところで、例えばmixiの足跡とか事例が出てくるんですが、やはりそれなりにうまくいっているところは、工夫があるものだと思うので。

僕は投資をやったり、IVS(Infinity Venture Summit)みたいなコミュニティーも運営していますが、それぞれ細かいところに工夫があって、それが効いてくるのかなと思ったのが全体的な感想ですね。

尾原:そうなんでよすね。おっしゃるとおり、GoogleやFacebookとか、あの本で書いた大きいプラットフォームが生活の中で切り離せなくなっている一方、我々ってFacebookだったりGoogleによって、ある意味サッカーチームだろうが、ボランティアグループだろうが、自分たちで新しいプラットフォームを立ち上げられる時代に突入していて。

その中で一番の秘訣って、どうやってユーザーがユーザーを呼ぶ構造を作っていくかっていう工夫の話なんですよね。

コミュニティは成長のコントロールが重要

尾原:そういった中で僕が雅さんと『ザ・プラットフォーム』の対談の第一弾としてお話させていただきたかったのは、やはりIVSという日本のベンチャーの新しいものを全部生み出していっている最大のコミュニティーを作ったからです。

これが先ほど言ったmixiの足跡みたいなものから始まったのか、何故に始まっていったのかを、次にそういうプラットフォームを作ろうとしていってる人たち、それこそサッカーチームかもしれないけれども、そういう人たちに伝わるものがあればと思って、今日ここで対談を設定させていただいたんです。

小林:ありがとうございます。

尾原:そういう意味で本当にIVSってすごいじゃないですか。

小林:いえいえそんな……まぁ、そうですね、はい。

尾原:何故にああいう形になったのか、雅さんの哲学というか、その辺のところから話してもらえればと思いまして。

小林:わかりました。多分どのコミュニティでも、Facebookでも基本的に一緒だと思うんですけれども、参加者が集まれば集まるほど、価値が出やすいものであるっていうのはひとつですよね。

ですから今、参加人数が700人ぐらいになっていますけれども、最初の10年前は100人ぐらいだったんですよね。

100人から徐々に増えて。逆にそこの成長のコントロールをしていくっていうのが重要になるんですけれども。

IVSの価値

小林:今700人規模なんですけど、やはり700人のイベントに参加しておけば、いろんな人に挨拶ができる。これはみんなからよく感想で聞くんですけど、とても便利であるということですね。

いちいちアポ取ってると大変だけど、別に近況報告ってFacebookをやっている人がいたらそれを読めばよくて、「じゃあ書かれていないことって何をやってるんですか?」みたいな話になると思うんです。

でも、そういうのって立ち話でも十分じゃないですか。なので10分ぐらい話して、「いいねぇ、じゃぁまた今度会いましょう!」みたいにネクストステップが決まればいいという感じで、非常に利便性が高いと言えるかなと思いますね。

かつ、利便性が高い一方で、運営するのは結構しんどい、みたいな。

尾原:そうですよね(笑)。

小林:利便性と難易度が高いというのがあって、その2つがあるからどんどん集積していく。検索エンジンもやっぱり作るのが難しいから。そういうふうになっていくと思うんです。

尾原:おっしゃるとおりですね。結局Googleも、リアルタイムであれだけの量を、いわば質と量を凝縮させるって、もう大変なコストなので、二番手三番手がなかなか生まれにくいっていう構造ですよね。

小林:特にイベントなんて、テクノロジーも何もないじゃないですか。

尾原:その代わり素晴らしいオペレーションですよね。

小林:だから、できるだけ「そういう価値を生み出すものは何か?」というのに気をつけて運営はしてます。だからGoogleとかFacebookみたいな、ある意味インターネットサービスの規模みたいなことはまったくない。

700人ぐらいのインターネットサービスなんて、世の中たくさんあると思うんですけども。正確に言うと、700人以上ですね。その中で価値をどのようにしていくのかが重要かなと考えていますね。

お互いにとって価値のある人だけを集める

尾原:そういう中で2つほど質問があるんですけども、とはいえ最初の100人から700人って、量を増やすことは簡単じゃないですか。そうじゃなくて、やっぱり先ほどおっしゃった「価値」をどういうふうに育んできたか。その最初の階段って何だったのでしょうか。

あと最近感じてらっしゃる「価値をどう作っていくか?」ということの変化、最初と今みたいなところをお伺いしたいんですけれども。

小林:そうですね。今も変わらずなんですけど、最初からやっていることとしては、基本的には既存の参加者からの推薦、口コミで増やしていく。最初はホームページもなかったんですよね。

尾原:あっ、そうなんですか。

小林:僕のブログで「なんかやってます」くらいしか書いてなく、「いったいこのイベントは、どこから申し込んだらいいのか?」っていうぐらいのユーザビリティのなさだったんですけども。

尾原:あははは(笑)。

小林:ユーザビリティ全くなし、みたいな(笑)。ですからIVSが何年から始まったかっていうと、ホームページにあるのが2009年ぐらいからなので、知らない人からすると2009年からやっていると思われてるんですけど、実は2004年からやっているんです。

そこまでホームページすらなかった。このインターネット時代にですよ。それぐらいクローズドにやっていこうと思っていました。それで徐々に増やしていく。つまり参加するとみんなが知り合いというか、知り合いの知り合いが多いということで、非常に心地が良い。

例えば3人で話しているときに、誰かの知り合いが輪に入ったときに自然と会話になっていけるというようなイメージですね。

これが100人からいきなり1000人になると、誰も知らない、みたいなことが起こりうると思うんです。そうではなくて気軽に立ち話して数人で話しているときに、1人か2人がちょこっと入ってご挨拶、みたいなことが非常に自然である。それが理想的な姿なんですよ。

最初はホームページすらなかった

尾原:自然であるっていうとこがポイントですよね。バーニングマンとか他の海外のコミュニティをやっている時に言われるのが、コミュニティ3年の原則というのがあって。

TEDとかバーニングマンとか、いろんなフェスとか流行ってるから、みんな最初から大きくしようとするんですよね。でも、「3年は寝かせたほうがいい」ってみんな言うんですよ。

それは雅さんがあえてホームページを設けなかったのと一緒で、仲間が仲間を呼ぶというのが3年蓄積すると、結局仲間が財産となって、周りが周りを呼ぶ構造を作ってくれるから表に出してやっても薄まらない。

だけど3年以内にやっちゃうと、パッと広がって薄まっちゃって、コミュニティーとしてのカルチャーがなくなる、ということをバーニングマンの中ではよく言ってたりしますね。

小林:ですから、イメージがつくと思うんですけども、数人で固まって話しているようなところが自然にできるよと。

あと、経営者の方ってだいたい異業種交流会ってあんまり好きじゃないんですよね。

あんまり意味がなかった集まりとか、20人と名刺交換して1人もいい人いなかった、自分にとっていい人がいなかったっていう、よくある経験を必ずされていると思うんです。

でもIVSではそうじゃない。つまり名刺交換した人はみんな役に立つというか、お互いにとって価値があるものを目指していますね。

もちろん10人中10人がそうなるかっていうと、そうならないんですけれども、少なくとも8割ぐらい、終わってから「10人中7、8人は話して良かったね」となると継続するというか、「良かったね」という感想になると思うので。

そういうイメージをもとに参加者を増やしていくっていう基準です。つまり今の参加者が「この人と一緒にビジネスしたい」と思うような人を新しく追加して増やしていく。それがいわゆる参加基準になっていくということです。