なぜ冬になると静電気が起こるのか

オリビア・ゴードン氏:冬になると、何でも金属のものが静電気でビリビリするので、世の中が地雷源になったように感じるかもしれません。

静電気のショックは、ちょうど髪の毛で風船をこするとその風船が天井に張り付くのと同じ原理、そして稲妻が起きるのと同じ原理で生じます。それを「摩擦帯電現象」と言います。

人類はそれを何千年にもわたり研究してきました。そして電気ショックを緩和する方法をいくつか見つけてきたので、あなたもいつもドアノブに触れるのを怖がる必要はありません。

しかし、千年単位で研究が行われてきたにもかかわらず、この日常生活で生じる現象についてわかっていないことがまだあります。「摩擦帯電現象」は、2つの電気的中性のものがこすり合わされて、その中に静電気が溜まり、一方は正に帯電し、もう一方が負に帯電する時に生じます。

これに関する一番古い記録は古代ギリシャの哲学者によるもので、彼は琥珀を毛皮に擦り付けると、それが羽毛や髪の毛を惹きつけるということに気がついたのです。それからというもの人間は「摩擦帯電現象」を研究して、どの物体が最もよく帯電するかの巨大な一覧表を作ってきました。

ほとんどの物体は絶縁体です。なぜなら1箇所に帯電させるからです。導体の場合は広がります。帯電し動いているものは、負に帯電した電子の場合も、イオン、つまり帯電した原子の場合もあります。それはどんな物体が関わっているか、どのように摩擦されたのかによります。

このビデオの中で私は電子が動いているという話し方をしますが、電子ではなくイオンが動き回っている場合でも、原理はほとんど同じになります。では、どのようにあなたが静電気でビリビリするのかを説明いたしましょう。

ポリエステルやゴムなどの物体は、余分な電子を持つのに適しています。それとは逆に、ウールは電子を放出する特性があります。あなたがカーペットに足を擦り付けると、電子の受容体が電子を放出する物体と擦れることになります。

それで、あなたの靴は負の帯電、カーペットは正の帯電状態となります。それら余分な電子はあなたの靴からあなたの皮膚に上がっていきます。なぜなら人体は優れた電気の伝導体だからです。

しかし金属は人体より優れた伝導体です。それで、あなたがドアノブをつかもうとする時に電子が体からドアノブにジャンプするのです。

それが生じるとき、あなたの手とドアノブの間に小さな稲妻が生じます。動く電子はあなたの手とドアノブの間の空気を温め、あなたはその熱を電気ショックの痛みとして感じるのです。

そのようなショックは夏場より冬場の方が多く生じます。なぜなら冷たい空気は暖かい空気に比べて湿度が保ちにくいからです。空気が暖かい場合、空気中の余分な水分は空気を導電性にします。それゆえ、湿度が高い日には、あなたが金属物に触れる前に、体内に帯電した電子が湿った空気中に漏れ出しているのです。

しかし冬場でも、電気ショックを受けずに済む方法はあります。帯電しやすい洋服を着ていると、静電気のショックは大きくなります。歩くたびに擦れたりすることが多くなる場合も同様です。

もし歩幅を大きくして歩き、ほとんど帯電することのないコットン素材の服を身につければ、ショックは緩和されるでしょう。周りから変な目で見られることはあるかもしれませんが、少なくとも痛みは少なくなるでしょう。

そのほかにも、ドアノブに触れる前に何か金属のもの、例えば鍵などに触れることが有効かもしれません。そうすれば電子がその金属からジャンプし、あなたの手の代わりに、鍵がその熱を帯びた空気の爆発を受けてくれるのです。

静電気についていまだにわかっていないことも

我々は「摩擦帯電現象」により電気ショックを受けるのをどのように止めることができるかについてはほとんど理解できていますが、なぜこの現象が起こるのかという根本的な点について、その多くは解明されていません。

1つわかっていることは、電子は互いにはねつけ合う性質があるため、余分な電子が表面に積み重なるのは困難です。それでも電子は重なり合います。科学者がこの問題を解決するのに何十年もの歳月を要しました。それにもかかわらず、いまだにその詳細については研究中です。

彼らが解明したところによると、電子は、ただ単に擦られることによって物体の表面に飛ぶのではないのです。電子は摩擦によりジャンプするのです。多くの場合、摩擦は、2つの物体の表面が互いに行き来する時、科学的結合が素早く結合したり離れたりすることにより生じます。そしてその科学的結合は多くの場合、電子を不均等に保持しているため、電子が結合した一方の側に多く留まるようになります。

その結合が離れる時、その表面には余分な電子が1つ2つあるため、それは電子受容体となります。しかし電子には自分の分子と共に留まる性質があるため、他の電子が近くにある分子に捕まるのをとどめません。それにより帯電されていきます。

それに我々は、「摩擦帯電現象」がどのようにその働きをするのかについて、はっきりとわかっていません。わかっているのは、雷雲の下部で氷晶と塵が互いにこすり合わされる時に負に帯電する傾向があるということですが、その理由についてはわかっていません。

密度の高い氷晶には負の帯電がなされる傾向があるため、その氷晶が雲の下に沈む時に、その負の帯電がそれについていくという可能性はあります。

もう1つの可能性は、氷晶の帯電が気温によって異なるため、雲の中の異なる温度の部分によって、雲の下部に負の帯電がされることにつながるというものです。そして雲の中で対流が生じ、それが様々な種類の氷晶や他の粒子を一緒に混ぜる時に影響が生じる可能性もあるのです。

これらすべてのアイデアがそれぞれの役割を果たしているのでしょうが、そのどれかが他方よりも重要であるかどうかはわかりません。それに、時には雲の下部に正の帯電が蓄積する場合もあり、それに関して説明するのはさらに難しくなります。

それに、これに関して直接研究をするのは難しいのです。なぜなら、嵐の雲の中を飛行するのは安全でないからです。そのため、我々は氷晶と水滴をぶつけるというスケールの小さい研究を研究所で行うしかありません。

ですから、私たちにわかっていることは、「摩擦帯電現象」により電気ショックが起こるということ、そして、静電気のショックはちょうど小さな稲妻と同じであるということです。

カーペットの上ですり足をすることと、雲の中で氷晶がこすり合わされることの間に、実は物理が神秘的に絡んでいるのです。