目の錯覚はなぜ起こる?
脳が騙されるメカニズムを科学的に解説

8 Mind-Blowing Optical Illusions

脳はいつも周りの情報を処理し、理解しようとしていますが、いつもすべての情報を処理できるわけではありません。そんなとき、脳は過去の経験から状況を推測します。しかしときには、その推測によって騙されてしまうこともあるのです。「錯覚」と呼ばれるこの現象には、さまざまな種類があります。今回の「SciShow」では、8つの視覚的な錯覚について科学的に解説します。

残像の不思議

ハンク・グリーン氏:このビデオはイリュージョンです。私が画面で動き回っているように見えるかもしれませんが、実際はそうではありません。私はまったくの静止画で、その一連の静止画があなたの目の前で素早く表示されているに過ぎないのです。

あなたの脳がそれらの静止画を繋げることにより、私がまるであなたの目の前にいて動いているように見えるというわけです。あなたの脳はいつも周りの情報を処理し、理解しようとしていますが、いつもすべての情報を処理できるわけではありません。

あなたの感覚に頼って、実際になにが起きているかを理解する必要があります。多くの場合、あなたの過去の経験と進化に基づき、脳が状況を推測する必要があるのです。

通常、脳はこの点において素晴らしい働きをします。しかし一度脳が好む近道を見つけてしまうと、簡単に騙されてしまいます。それこそが「錯覚」です。

それはただの面白いトリックというだけではありません。これから紹介する8つの錯覚は科学者達に、眼と脳がどのように情報をプロセスし、視覚から入るさまざまな種類の情報を処理するかを教えてくれました。

あなたがYouTubeを見るときにいつも目にしているであろうありふれたイリュージョンから始めましょう。1つは、このようなビデオです。何でもあなたが見るものを脳が処理するには少しの時間が必要なので、ビデオは有効なのです。

もしあなたが突然どこかほかのところを見たとすると、15分の1秒間、あなたの脳はさっき見ていたものの情報をまだ処理している状況になります。なんでも今見ているものを処理するのに役に立つかもしれないからです。

この現象を「残像」と呼び、それによりビデオは脳をだますことができるのです。ビデオは、脳が前のコマを処理しきる前に、スクリーンには次のフレームが映し出されているのです。それにより自然にそれらのフレームが合わさって、連続する1つのものになるのです。そのようにして、膨大な静止画が動いているように見えるというわけです。

古い現像が残るもう1つの方法があります。明るい緑色の画面を1分ほど瞬きをせずに見つめ、素早く目を瞑ったり、白い壁を見たりすると、緑色があったところにマゼンタ色の四角が見えるでしょう。

そのマゼンタ色の四角は「残像」で、それは網膜疲労により生じます。眼球中の細胞が長い間活動していると、エネルギーが無くなってしまうのです。緑色のスクリーンを見つめているとき、眼球中の緑の錐体細胞は継続的に脳に対して、目の前に緑のものがあるというシグナルを送り続けます。その間、赤と青の錐体細胞はなにもしません。

それから他のものを見たとき、緑の錐体細胞は非常に休息が必要な状態になります。白い壁を見ているとしたら、それは緑と青と赤が平等に合わさった状態なのですが、緑だけ反応しなくなっています。

それで代わりに、眼球は脳に、緑でなく赤と青の部分があるもの、つまりマゼンタ色のものを見ているという信号を送ります。

「シェパードのテーブル」

ほかの細胞も過度に刺激されることがあります。それがウォータフォールイリュージョン(Waterfall illusion)または動きの余波(motion aftereffect)と呼ばれる渦の映像を見るときに生じます。この渦の中心を、なるべく瞬きをせずに見つめてください(実際は動画)。

その中心点から動かないでください。あなたはだんだん眠くなる……とても眠くなる……というのではありません。それでは今、私がどう見えますか? ちょっと膨らんで見えますか? ちょっと歪んで見えますか?

動きの余波はさっきお話したマゼンタの四角の、動作版とも言えるでしょう。眼球には動作と、異なる方向の回転を判別する特別な細胞があります。それらは世界であなたをナビゲートするのを助ける、非常に重要なものですが、色彩錐体細胞と同様、使いすぎてしまうことがあります。

科学者たちは先ほどの渦巻きを見るときにその現象が起こると言っています。一方向に回転する渦を検知した細胞は持続的に信号を送り続けます。その間逆方向の回転を検知する細胞はなにもしません。

私が画面でに再び現れたころには、信号を送り続けていた細胞は疲れ果ててしまっていて、隣人たちと揃って脳に、私が回転していないという信号を発するのが間に合わなかったのです。

それにより脳は私が渦とは反対方向に回り始めたと勘違いしてしまい、渦とは逆方向に回転しているかのように見えてしまったのです。これをウォータフォールイリュージョンと言います。なぜなら、十分長い間滝を見つめ続けていると、後から岩が空に向かって上がっていくように見えるからです。

「シェパードのテーブル」は認知科学者のロジャー・シェパードから付いた名前で、彼は1990年にそのイリュージョンについて説明しました。これらのテーブルは見たところまったく違う形に見えます。

1つは長細く、もう1つは短くずんぐりして見えます。しかし実際はまったく同じ形と大きさで、向きを変えたので、一方が水平に、一方は垂直に見えたにすぎないのです。

このトリックは遠近法を使ったものです。線路の写真によく見られる手法です。

線路はほとんど垂直の線がたくさんあるように見えます。しかし、あなたの脳は、あなたから遠ざかっているからそう見えるということを知っているのです。それゆえにあなたには2Dの線ではなく、3Dの線路が見えるのです。

あなたの脳は、シェパードの垂直なテーブルを見るときも同様な働き方をします。長いほぼ垂直な線は、距離があることを示していると推測するのです。つまり、左側のテーブルは見た目より長いと判断するのです。

このイリュージョンは実は1850年代にまで遡ります。ドイツ人心理学者のアドルフ・フィックが、通常人には、垂直な線は水平な線より長く見えるということに気がつきました。しかし1世紀後にシェパードが出てくるまでは十分に科学的に説明がされることはありませんでした。

日本人デザイナーが作った錯覚

スピニング・ダンサーのイリュージョンは、日本人ウェブデザイナーの茅原伸幸により2003年に製作されました(実際は動画)。

約3分の2の人たちは、このダンサーは左足を軸にして時計回りに回転していると思うのですが、ほかの人たちは右足を軸にして逆時計回りに回転しているように見えるのです。それに頑張れば回転を切り替えることができる人もいるのです。これは「両義的イルージョン」と呼ばれ、有名な「ウサギとアヒル」のイルージョンや「ネッカーの立方体」もそれと同じ原理です。

「両義的イルージョン」では、あなたが見ている物がなにかを判断するのに必要な情報が十分ではないため、異なる人々の脳内で異なるさまざまな推測がなされ、異なる結果がでるわけです。

スピニング・ダンサーのようなイリュージョンに関して多くの人はあなたが右脳型か左脳型かがわかると言いますが、それは本当ではありません。あなたが光とカメラアングルをどのように捉えるかにかかっているだけなのです。

多くの人は自動的にダンサーを上から見ていると捉えるため、手の動きを追います。そのように捉えるならば時計回りに回転しているように見えます。ほかの人たちは彼女を下から見ていると捉え、足に注目するため、反時計回りに回転しているように見えるというわけです。ですからダンサーはどちらの方向に回転しているようにも見えるのですが、それはあなたの脳が映像をどのように捉えるかにかかっているのです。

脳がさまざまな推測をしているために騙されているのだと気づくことのできるイリュージョンは沢山あります。脳は複雑なのです。この絵をみてください。

AとBの印がついた四角の灰色は濃さが違って見えます。しかし、本当はまったく同じ色なのです。

これはチェッカー盤イリュージョン(Checkered square illusion)と呼ばれています。あなたの脳は影の推測をするのです。しかしそれ以外の錯覚も関係しています。それは「側方抑制」と呼ばれるものが関係しています。

あなたの目が同じ色の大きなスペースを見ると、脳は同じような信号を受け取りたくないと思います。詰まったようになって、もっと重要なものに焦点を合わせようとするのです。それで眼球後方の神経が、あなたがなにをみているのかを要約するのです。そして脳に対して「このエリアは灰色で、このラインを超えたら明るくなる」と言った信号を送ります。

このチェッカー盤のイリュージョンでは、あなたの脳がAは明るいエリアに囲まれていて、Bは暗いエリアに囲まれているという信号を受け取ります。それゆえに脳がAは暗く、Bは明るいであろうという推測をしてしまうのです。それで、AはBより暗く見えてしまいます。

黒い点が見える「ハーマングリッド現象」

脳が光と闇を推測するために起きるほかのイリュージョンがあります。もしかしたらこのビデオのなかで気づかれたかもしれません。私がこのシャツを着るたびに多くの人がいつもこのことについてコメントします。それは「ハーマングリッド現象」と呼ばれます。明るい線の中に暗い部分を見る傾向があるために生じます。暗い色の四角をチェッカー盤の柄のように見ようとしてしまうのです。

しかし線を直接見ると黒い部分は見えません。このハーマングリッド現象では2種類の白い部分があります。4つの四角の間にある交差部分と、伸びた部分、つまり四角の間にある線の部分です。

ハーマングリッド現象のように、私のシャツの柄の中でも同じことが起きているのです。なぜならあなたの脳が周りの環境に影響を受けて異なる部分を推測するからです。

四角の間の白色はほとんどが暗い色に囲まれています。それで脳はこの小さな白い線はさらに明るい、白い線は側にある黒い四角の影にいるかのように捉えるのです。しかし交差部分ではその逆が生じます。交差部分の中心にある白色は四方が白色に囲まれていますから、脳はそこが実際よりも暗いと判断します。脳は黒い点を補おうとするのです。

その現象により、私のシャツの中に点がたくさんあるように見えるのです。シャツを直接みている時にはそうは見えません。

ここまでお話ししてきた現象は神経科学と心理学によるものでした。物理の法則に関係したイリュージョンもあります。「蜃気楼」がそれです。蜃気楼は、気温が逆転する時に生じます。暖かい空気の層がその上にある冷たい空気の層により、地表上に閉じ込められる現象です。

光は水の中と同様に、空気中で屈折します。しかしその量は空気の温度により変化します。もし地表の暖かい空気の濃度が濃く暖かさが十分ある場合、鏡のような役割を果たすことがあり、入ってくる光を曲げ、地表から跳ね返し、視界に戻すため蜃気楼は生じます。

空気は荒れやすいので蜃気楼は揺らめきやすく、ちょうど光が鏡ではなく水を映しているように見えます。砂漠にいる人が水溜りの蜃気楼を見たと聞くならば、これが理由です。しかし蜃気楼は有名な俗説を解説することができるかもしれません。「フライング・ダッチマン」と呼ばれる幽霊船の話です。

伝説によると、フライング・ダッチマンは海を永遠に航海する運命にあり、船乗りが時々水面に幽霊のような船を見ることがあるのです。しかし、その船は蜃気楼にすぎません。太陽が海上の空気を暖めた時、下方の空気の層を海水が冷たく保つ時に生じます。

これは砂漠で起こる蜃気楼とは逆の状況で生じる蜃気楼です。地表から跳ね返ったように見えるのではなく、光が曲がることにより、空中に浮かんでいるように見えるのです。地平線の上でそれが起こる時、船が浮かんで見えて、幽霊船のように見えるかもしれません。

ですから、時々存在することのないマゼンタ色の長方形が見えたり、たくさんの点のように私のシャツについて見えたり、水平線の上にフライング・ダッチマンが揺れ動いているように見えるかもしれませんが、それらは錯覚です。つまりあなたの脳、または物理の法則があなたを騙しているにすぎないのです。

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Hank Green(ハンク・グリーン)たちがサイエンスに関する話題をわかりやすく解説するYouTubeチャンネル。

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