何かを行なうときに重要な「タイミングルール」

キャサリン・アイゼンハート氏(以下、キャサリン):バウンダリールールとハウツールールは簡単でしたが、今度はちょっと難しいルールを説明しましょう。

タイミングルール。これの習得はちょっと難しいですが、デッドライン、リズム、シークエンスで、物事を始めたり止めたりするのに役立ちます。

不眠症に関するタイミングルールとしては、特にお年寄りに有効ですが、疲れたら寝て、同じ時間に起きるというものです。

ビジネス関連でPixarからの例をお話しします。「トイストーリー」についてです。これは4年かかって制作された作品です。これが成功した後に幹部達はこう考えました。「4年かかるこの作業をどうビジネス化するのか。長すぎるし、トップレベルの才能はどうやって見つけるのか」

そこで考えた結果、毎年映画を発表するという答えにたどり着きました。そこで毎年、休日シーズンを狙いサンクスギビングにリリースすることにしました。つまり、毎年休暇シーズンにリリースというルール設定です。

でもそれは簡単なことではありません。なぜなら、4年かかることを1年区切りで処理していかなければいけないからです。1年目から4年目で何をしたかという把握もしないといけない。つまり映画工場ともいえるパイプラインを作ったわけです。クオリティによってはちょっと時期がずれることもありますが、ほとんど毎年サンクスギビングにリリースしています。

あるコンクリート会社が持っていた「ストッピングルール」

次の例はPrimekssという会社からです。知らない人もいると思いますが、これはコンクリートの会社です。最近あんまりコンクリートについて聞かないですが、実はコンクリーとセメントは世界の二酸化炭素汚染第3位の原因です。地球温暖化の主な発生原因でもあります。

そこで彼らは新しいコンクリートを作ることにしました。古代エジプトまで遡り、古代エジプトやローマ人もまた、コンクリートを大量消費していたことが判明しました。ただ、当時のコンクリートは血液と馬の毛を加えて作られていました。それを現代に置き換えて血液と馬の毛に代わるものを加え、新たなコンクリートが完成しました。

コンクリート製造にかかるCO2消費を半分に抑え、コンクリートそのものの消費、つまり割れにくいコンクリートという、すばらしい商品を作りました。

問題は売り方なのです。まずラスベガスのトレードショーに行き、多くの人がそのコンクリートに興味を持ちました。でも誰をビジネスパートナーにするかを選ばなければいけなかった。そこでいくつかのシンプルルールにたどり着いたのです。

1つは、1つの土地に1つのパートナーというものでした。とてもシンプルです。2つめはちょっと違い、レーザースクリーンマシーンをもっている会社を選ぶというものでした。ちょっとなじみが無い言葉ですが、コンクリート界ではそれ持っているということは革新的でクオリティが高い証のようなものです。

3つめは、タイミングルールで、3ヶ月毎に新しいパートナーを作るというものでした。小さい会社なのでそれがベストだったのです。そうやることによって、エンジニアリングや営業といった内部活動を同期できたのです。

タイミングルールのなかでも、ストッピングルールは特に難しいといえます。これはいつ止めるかについてのルールです。始めることはできてもなかなか止められない。

Primekssには、ストッピングルールもありました。それは、3ヶ月で商品を売れない場合はパートナーをやめるというものでした。遅いしあんまり興味がない、間違えたから次へ進む、という具合に。

ストッピングルールを守れなかった登山家の悲劇

彼はスティーブ・ブランクです。Lean LaunchPadで知られています。事業を始めるにあたってのシンプルルールが彼にはあります。いくつかは顧客探しに関するものです。外に出て100人と直接話すのが最初のステップだという彼の理論は有名です。しかし止め時についても彼はルールがあります。

100人と話した後に、彼らは何か問題を抱えているか? これがまず1つめ。2つめは、彼らがその問題を解決したがっているか? 3つめは、それに彼らはお金を払えるか? 4つめは、我々はその問題を解決できるか? というものです。

1つでもノーといえるなら、それはうまくいかないという考えです。「問題があるか」「お金を払って解決するのか」「我々に支払うのか」「我々は解決できるか」というものですね。

最後に、ストッピングルールについて。この写真はエベレストです。「Into Thin Air」という本は読んだことあるかと思います。1996年に事故死した8人の登山家の話です。

登山グループのリーダーのスコット・フィッシャーにはストッピングルールがありました。午後2時までに登頂出来なかったら下山するというものでした。雪崩で死んだ彼らが登頂した時は午後4時でした。ルールに従っていれば、彼らはまだ生きていたかもしれません。しかし彼らはそうならず、悲劇が起きてしまった。

これらがシンプルルールですが、ストッピングルールは難しいのです。

ルールを作るときの3つのルール

次に、どうやってルールを作るかということについてお話ししたいと思います。

3つあります。「目的は何か?」「より多く、より少なく求めるものは何か?」「ハッキリする」

まず障害を発見しましょう。何が目的達成を拒んでいるかということです。そしてルールを構築する。障害の発見が、恐らく1番難しいことだと思います。

目的を決定する。またもやフットボールチームですが(笑)。

(会場笑)

スタンフォードのフットボールチームに関しては、賢いけれど賢くプレーできないという問題があります。そこまで優れたチームではありません。

シャノン・ターリーという、肉体トレーニング担当がいるのですが、フットボールチームというのは肉体トレーニングに力を入れます。何100ポンドのベンチプレスだったり、自己最高記録を書いたシャツを着ることだったり、とにかく強くあるということにフォーカスされがちです。

そこでシャノンは、強くあることから、けがをしないということに対象を変えたのです。モラル面だけでなく、戦略としても重要なことでした。彼のもと、最初の数年で、スタンフォードの大けがは90パーセントまで下がりました。目的は彼らの健康を保つということだったのです。どんなに優れた選手でも、不調だと試合に出られません。

つまり最初の例は、本当の目的(対象)は何かということでした。スタンフォードのフットボール選手だとケガをしないということですし、グーグルならトップコンピューターサイエンティストを雇うということになります。

Netflixが障害を打開するために使ったルールとは?

次のステップは障害を見つけるということですが、Netflixの場合だと、それは高騰するコンテンツ料金でした。ハリウッドはストリーミングの仕組みを理解し、Netflixに高額を請求してたので、彼らの予算は縮小していました。Netflixはオリジナル番組の制作を決定し、「House of Cards」は最初の作品となりました。HBOなどに対抗するためにも、話題になるというのが彼らの目的でした。

「Mad Men」や「Sopranos」が有名になったのは脚本が優れていたからでした。でも脚本では勝てない、そこで話題になり勝利するために彼らが考えたのが、どの世界のテレビもやっていないことでした。

彼らはAリストのディレクターを準備するということでケビン・フィッチャーを起用しました。彼は「Social Network」「Dragon Tattoo」「ベンジャミンバトン」を制作した人です。そうすることによって、「House of Cards」はユニークなものになり、単純に、いままでと違ったものが生まれたのです。それが話題になり、小さな画面での新たな体験となりました。

次に彼らが取り組んだ障害はプログラミングです。エンタメ業界では、1つがパイロットを買い取り、2〜3つまた買って、1年分のショーを買い、週に1回放送という感じが定例です。しかしNetflixは2年分のエピソードを買いました。そして最初の年に全てリリースしたのです。2年分を買い取り、一気見するというのは相当な打開策となり、かなり話題になりました。

彼らが実行した2つのルールというのは、Aリストのディレクターを起用し、一気買いして一気見させるということでした。ハリウッドのような会社にとってはリスキーに見えても、Netflixにとってはそうではありませんでした。なぜなら彼らは「House of Cards」は人気だと既にわかっていたからです。

過去のデータから、利用者が「Kevin Spacey」「David Fincher 」「イギリス版のHouse of Cards」を好きだということがわかっていたのです。そこで一気買いをして、結果支払いは少なめですみました。また、彼らは利用者が一気見するということも知っていました。つまり彼らは、独自の障害を発見し、それに沿ったルールを決定したのです。