2024.11.29
“マニュアル作成が進まない問題”をAIで解決 管理者の負担も軽減できる、先進AIツール活用法
竹林氏、島津氏、石井氏による会場質疑(全1記事)
提供:株式会社ZENTech
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金亨哲氏(以下、金):ここからは、会場からの質問をお三方に答えていただくかたちで進めて行こうかな思っています。きっかけが1つ欲しいなと思うので、石井さんからまずお2人に質問をしていただいて、その後鼎談のような流れでお願いします。
石井遼介氏(以下、石井):わかりました。さっそくお2人にお聞きしたいんですけれども。
島津さんのプレゼンで紹介があった8つのステップのなかで、最初に「観察」がありましたよね。しーさん(竹林一氏)のスライドのなかには、「あ、うちは旅館なんだ」と気づいて(社員が行動を)変えたという話がありました。
そこにもなにか「観察」が入っているんじゃないかと思ったんですけれども。観察は、言うは易く行うは難しという感じているんですが、一体なにをどう見ているのかをぜひお2人にお聞きして、それをきっかけにしたいなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
島津清彦氏(以下、島津):僕は、店舗やオフィスを、気づかれないくらい遠くから見ることですね。中で働いている様子を外から見る。
入った後でいうと、入口が整理整頓されているか、バックヤードが整理整頓できているか、掲示物はわかりやすいか、とか。普段から見えるような情報と、あとは目だけではなくて感覚ですね。入った瞬間の直感、空気感をすごく大事にしているところはありますね。
竹林一氏(以下、竹林):会社に入ってからすぐの時に、自分なりの仮説を考えます。
会社が赤字になっているのは、なにか軸がずれているんですね。人間だって背骨がずれていたら腰が痛いじゃないですか。その軸がなぜずれているのか、ある種の仮説を持ったうえで、仮説と現場の状況を観察していくのがすべてのベースになっています。どの会社に行っても、そのパターンで観察していますね。
それで、生産工場に行った時も、一つの仮説としては、旅館と同じサービス業のグループにあるからじゃないか、というものがあったんですよね。うちは旅館となにが違って、なにが一緒なんやろとか。なぜ他の製造業とうちは違うのかなと見てたんですね。
例えば、時計を買う時に、時計を作っている工場を見てから買う人はいないですよね。これはつまり製造業です。車を買う時に、トヨタがちゃんと作っているのかを見てから買う人はいないんですけど、うちにお客さんがたくさん来ているということは、プロダクトというよりプロセスを売っているんです。
そういうものが最初はわからなかったんです。なぜお客さんはわざわざ来るんやろって。仮説とずれていたら、まず仮説を直しますし、その繰り返しですよね。軸さえ作ってあれば、「うちは旅館なんや」ということが腹に落ちる。そうしたら、あとは「どうやったら良い旅館になるのか」というところに軸が合ってくるんです。
求心性が勝手に生まれると、みんなが考えることが同じになってくるんです。観察というのは、「軸と現場でなにがちゃうんやろか」を重ね合わせて見ることですね。
島津:僕ももう一点。現場廻りの時は事前にかならずいろんな情報を持って行っていましたね。具体的に言うと、履歴書や異動履歴、年収と直近のボーナスがいくらだったか、というところまで全部見ます。顔と名前が一致しない時も、顔が見えたら「あ、◯◯さん」という感じでやっていましたね。なんだか様子がやっぱりおかしいなという時は、調子が悪いとか評価がたまたま低かったりというのが全部表に出ていることがけっこうあるんですよ。だから、必ず全部の資料やデータを見て、仮説を持つのはすごく大事だと思っています。
金:ありがとうございます。それでは会場から質問をお聞きしていきたいと思います。
質問者1:ありがとうございます、とても勉強になりました。私はコンサルタントなんですけど、親会社がすごい巨大グループで、階層構造が強すぎたり、マイルールがあったりして、聞いてないのに地雷になってしまったりすることがあります。お客さまが聞いても、このヒエラルキーを崩すのは厳しいなあと思うんですけど。
経営者の視点だとできると思うんですけど、現場や若手が考えていったときに、なにをしていくのがいいのかなということをお聞きしたいです。
島津:僕は20〜30歳のころ、組織でそういうことがあったときには、会社のなかだけに固執しないで、外で人脈を作りながら自分の中でバランスを取っていましたね。社外にたくさんの仲間を作っていって、「これだけやってもダメだったら、この会社はダメだぜ」という気概を持ちながら努力するというんですかね。
自分がここに合っているかどうかの物差しを、中じゃなくて外に求めながら仲間をたくさん作っていきました。外からの風を起こす循環を起こしたりしていました。
竹林:なかなか難しいですね。僕も若い頃はぶつかっていたんですけど、さっきのぶつかる作用・反作用があるので、大きな力で跳ね返されるんですよね。「壁は潰しにいったらあかんな」と思っていて。いかに壁を避けていくかということです。もろに勝負ばかりすると、さっきの作用・反作用でしんどくなるということがわかってきましたね。その時になにをするかというのは3つくらいあって。
1つは、外の声を使うということです。社内でガチガチな人も、外から来た人に「あんたのとこの会社おかしいな」って言ってもらうと効果あるんです。外圧で変わるところは多いですね。
もう1つは、社内にタニマチ(贔屓客)を作る手ですね。これができたら1番いいんですけど。結局うまいことやっている人は、誰かタニマチがいるんですよ。タニマチがいないと、これまたしんどくて。大阪とかやったら谷町9丁目ぐらいまであるので、いっぱいあるんですけどね。
あとはバランスですね。会社内だけであかんかったら、場合によっては外に第3の空間をつくるとか。会社ごとに人事部があるからややこしいんので、日本の人事部とかつくったら「今日はちょっと違う会社行ってみるか」みたいな。2年ぐらい他のコンサルに行ってみるかって、会社ごとに移るような人事があってもいいんじゃないか。そういうことを秘密結社でやってるメンバーがいるんですけれども。そんなのもおもしろいかもしれんなと思いますね。
無理やり変えようとすると、さっきの作用・反作用で、行けば行くほど強い滝が落ちてきます。いかに滝に逆らわずに流れを変えていくかがポイントになってくるんですね。一番いいのはやっぱり外圧ですね。
金:ありがとうございました。次の質問を(お願いします)。
質問者2:ありがとうございます。竹林さんと一緒に月山で山伏修行をさせていただいた者です。いま、個人的な興味から、けっこうおもしろいマーケティングの原理というか、女性原理とキャリアの重ね合わせのようなことを調べ始めています。上司にオッケーをもらいながら、1日の仕事のうちの10%くらいを使わせてもらって、ずっと調べごとをさせていただいてる状態なんですけれども。
社内の秘密結社が、社外の人も呼び込んでどんどん膨らんで(いる)という、プロセスのところで質問があります。先ほどタニマチとおっしゃったんですけど、少し上の方に相談してみたらがんばってみて、と言われた時の、大きくしていく方法がなんだかわからなくて。
マネタイズができていなければプロの協力は仰げなくって。でも、女性同士で話すと「ほんとそれ」という話に行き当たってしまったんですね。自分で抱えたテーマがかなり大きい社会的な、いろいろな仕組みに関わってくるんだけれども、社会性が高すぎてマネタイズの仕方が全然見えないという話になってしまって。
どうすればいいのか、具体的なプロセスがわからないので、もしよろしかったらアドバイスをいただけませんか?
竹林:例えばオムロンには格言があって、創業者の言葉で「企業にとって利益は、人間にとっての空気と一緒や」というのがあるんですね。空気がなかったら生きていけへんと。企業も絶対利益を出せと言われるんですよ。
経営である限り、会社である限りは当然ですよね。ところが、最後に一言ついているんです。「でも息を吸うために生きている人間はいない」って。それがすべてのベースになってるんですね。
絶対金は儲けろと。でもそれは手段であって、いま言ったような社会的課題を解決するとか、そこがメインがあります。そのためにはお金が要るやろということです。だから絶対金も要るんですね。ただ、空気は必要やけど、「人よりたくさん空気吸うたろ」と思わないですよね。あります?
(会場笑)
竹林:「今日はこんな小さな部屋に入るから、先に多く空気吸うといたろ」って思わないですよね。年率何パーセントずつ空気吸うとか、10パーセント多く吸うとか。そんなやつおらへんのですよ。
例えば秘密結社は、まずみんなのWillが集まってきて、次に大事になってくるのは、いつまでもその「秘密」じゃないんです。唐揚げ協会にしても丼協会にしても、次になにをやらなあかんかというと、ビジネスモデルとかマネタイズです。それが見えてきた段階であれ、全部オープンしてるんですよね。
ビジネスモデルの設計ができる人を入れておいて、ロングタームでも良いんです。ロングタームだけ見せると企業は持たないので、直近でも儲かるところとか、あるいは儲からないんだとしたら、それを会社がPRに使えるとか。
お金だけじゃないんですよね。うまくいったらそこがフックになって、企業イメージを上げてくれます。その間にビジネスが立ち上がっていくという見せ方ですね。ここまで設計できる人は絶対いります。
秘密結社型のビジネスモデルをやる人は自分のWillを持った人なんですけど、僕の友だちはそのビジネスモデルとか、どこからオープンにしていくのかとか、大義名分がないと会社としてもやっぱりあかんので、そこの設計をいかにするかというグランドデザインをしています。
絵が描ければ、大義名分が出てくるんです。もともと儲けるためだけじゃないかもしれないので、それが採用の役に立つというのであればそれでも良いんです。あるいは、女性が活き活きしている姿を見せるなら、それは直接の利益にならないですけども、間接的に効果はありますよね。
その見せ方も僕はデザインだと思うんですよ。お金やったらビジネスモデルにいきますし、その場合もデザインですよね。会社を動かすための大義名分がないとあかんので、それが採用なのかPRなのかCSRなのか、あるいはちょっと先のビジネスモデルなのか。そのデザインができる人を、僕は「承人材」と言っています。そんな人をアドバイザーに就けるとかですね。もし良かったら無償でも相談に乗りますけれども。
質問者2:本当ですか? いま言いましたね?
(会場笑)
金:たしかに言いましたし、聞きました(笑)。
金:あと2問くらい受けられたらなと思うんですけれども、どなたかいらっしゃいますか?
質問者3:本日は貴重なご講演をいただきありがとうございました。私は5,000人くらいの企業に勤めておりまして、その中で有志を集めてイノベーションの仕組みづくりをやろうということで、いま5人ぐらいのメンバーで進めています。
仕組み化するところで、転結型に対して、起承をどう仕組み化していくかというところで、なかなか進まない現状がございます。そこで、少し大きめの企業の中で起承をどうやって仕組み化していくかに関しておうかがいしたいと思っております。
例えば組織を転結型と起承型にわけてしまうほうがいいんでしょうか? いくつかそういう事例もあると思うんですけれども、そういった観点でアドバイスをいただけたらと思います。よろしくお願いします。
竹林:例えば、起の人材が育つのか育たないのかで、欧米でおもしろいのは、起承は大学とベンチャーに任せておけというんですね。転結は成功したら買うというんです。それはもう、良い悪いじゃなく、明確なビジネスモデルなんですよ。
その会社がどんなモデリングを目指すかによって、やり方が変わってくるんです。僕はイノベーションの起こし方も、グラフのデザインがいるので闇雲にやっていってもダメなんです。どんなイノベーションの起こし方をするかという設計が必要になってくるんですよね。
そんなイノベーションもあるし、基本的に僕は起の人は育てることはできないと思っています。そもそも起の人が大企業に入ってくるかという話もあります。つまり、起は企業にいる必要はないかもしれないんですよ。
外のベンチャーをウォッチングしていって、(企業に)承の人さえいたら、起の人がいるベンチャーをどう巻き込んで、会社のビジネスモデルに(あわせた)エコシステムを作れる。そういうデザインができれば、(そこから先は)転結で動き始めるんですよね。
その承の人材だけは、絶対に作らなあかんのです。転結はどっちかというと、課題解決型のなぜなぜ分析なんですね。承人材は、そもそもという、課題発見型なんです。「そもそもうちの会社なにをやったらいいんやろな」「そもそもなんでこの事業がいいんやろな」ということです。
上位概念が出てくるんですけど、上位概念はなかなか現場でも否定できないんですよね。上位概念ができていたら、それをやるための転結の既存事業の参入もかかってくるんですよね。
絶対にやるべきは、承としてもグラウンドデザインをどう描くのかというところ。人材は徹底的に育成しなあかんなと思っています。じゃあ「起承が大切や」と言うて、起承ばっかりやったら会社は潰れますから。儲けてくれてる転結は必要なんです。起承が多い会社はややこしいですから。
起承と転結をわけてしまうとなにが起こるかと言うと、「出島や出島や」と言うんですけど、起承だけじゃ、ちょこちょこと立ち上がるだけで、でかいビジネスにならないです。転結のパワーと人とお金が使える時に巨大なビジネスになってくるんですけど、転結に近寄らずに出島で起承だけ回してたって、絶対でかくはならないです。新規事業部門やるときも、起承ばっかり集めるんじゃなくて起承転結を集めておく。それもちゃんとしたデザインですよね。
起の人は、最初はおもろいこと言うてるんですけど、グランドデザインを描いて、個別のビジネスモデルになってきた時にはもう、興味が薄れているんです。もう他のことを言っていますから。お前が言うたテーマをここまで持ってきたのに、お前が最後までやれって話ですよ。もうそんなの興味あらへんですから。それは転結の得意な人が回していくんです。起承転結がわかった上で、どうデザインしていくのかが重要になってきますね。
それは会社の風土によってやり方は違っていて、それがわからないままに闇雲に出島を作ったりCVC(Corporate Venture Capital)を作ったりしても、それぞれが個別で動き始めるから、全体のトータルのデザインにならないんですね。そのトータルのデザインをどうするのかが、よくオープンイノベーションの講座などで講演させてもらっていることですね。
石井:そのグランドデザインについて、例えばどういったことを押さえるのが大事なんでしょうか?
竹林:僕はグランドデザイナーに、軸だけ押さえろと言っています。その軸がなにかというと、例えばEMSという会社はもの作りのサービス業だったんですよね。みんな製造業やと思ってるんで、サービスについて知らんのです。
それがないとリングには上がれないんですけど、リングに上がった時に「あんたの得意技はなにか」を言えるか。一言で「我々の得意技はバックドロップです」と言えるかどうかが軸なんですよね。それをグランドデザインの人は描けるんです。この会社の軸はこれや、という感じですね。
どちらかというとコンサルの感覚というよりも、デザイナーとかPR、糸井重里さんのコピーライティングのような感じです。要はファクトを集めた上で、「どこで切ったらその商品がよく見えるのか」というのを提示するんです。どこの軸で切ったら、この会社(の軸)が一番よくわかって、従業員の腹に落ちるようなメッセージを出せるのかですね。もう、僕はそれしか考えていないので。
ただ、ファクトもないとあかんので、コンサルが集めたファクトと、どこで切るかですね。「キレがあるのにコクがある」ということです。キレもコクもないのに勝手なことを言うたらあかんのですけど、「キレもあるのにコクもある」という一言だけで、ユーザーの心に響くんですよね。
これが軸なんだと。これだけ考えてるんですね。それを1枚の絵で描けるか、一言で表現できるか。これが端的に刺さると、あとは転結を動かせます。否定できないですからね。
金:ありがとうございます。時間がもう21時ということで、一旦こちらの方で終了とさせていただきたいと思います。この後、石井さんも島津さんもいらっしゃるかと思うので、個別に質問のある方はお尋ねいただければと思います。それでは竹林さん、島津さん、石井さん、本当にありがとうございました。
(会場拍手)
株式会社ZENTech
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