パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題

豊間根青地氏(以下、豊間根)、岩本紘佳氏(以下、ヒロカ):仕事をもっとおもしろく。「シリョサクTV」です、お願いします。

豊間根:今日はパワポ資料の手戻りのお話をしたいと思います。上司に確認してもらいながら作っていくんだけど、何回も修正指示をされ、手戻りが多すぎて「あぁ!」となっている人に、「そういうふうに考えればいいのか」という気づきをお伝えできる動画にしたいと思います。ヒロカは手戻りが多いですか?

ヒロカ:今もなくはないとは思うんですけど、昔はすごく多かったと思います。やはり研究でやっていた時は、自分の中で構成とかもうまく組めていなかったので。あと、あんまり確認をしていなかったのも原因かなと思うんですけど。

その中でトヨマネさんと出会い、トヨマネイズムを教えていただいて、前提確認とかを(確認)できるようになってから、少し減った印象はありますね。

当時は完成してから見せていたんですよ。それで、「そういうのじゃないよ」みたいな感じで、「うわ、今までの時間が溶けた!」って(笑)。

修正の無限ループから脱出する4つのポイント

豊間根:ちょうど今日はその話をしようと思うんですが、パワポ資料の手戻りが多いってけっこうあるんですよね。修正指示をもらって、修正して提出して、また修正指示されて、修正してと。もう無限ループに陥って時間が溶けていく人はけっこういるんじゃないかなと思います。

一番のポイントは、「抽象で握る」ってことなんですよね。具体的にしすぎず、抽象的な段階で上司と方向性を握るのが、今日の一番のポイントです。

今ヒロカが言った、「完成版をいきなり見せちゃうと良くないよね」という話にまさに通じるところがあって。要するに「目的を握る」「箇条書きで握る」「紙とペンで握る」、あと「早めに握る」っていう4つが、今日の「抽象で握る」ことのポイントです。

なんでそう言えるかというと、これはほかの動画でも話していますが、資料は問題解決の道具なわけですね。問題解決というのは、現状と理想の間のギャップを明らかにして、それを埋めることです。

例えば社内であるプロジェクトを提案する時だったら、決裁者がまだその企画の内容も特徴も何もわかっていない状態から、「なるほど、それはいい企画だね」「じゃあ、承認するよ」という状態に持っていくために、口頭で説明するだけだと納得してもらえないから、資料を使うと。

たぶんみなさんが手戻りしまくって困っている資料も、聴き手に納得してもらうための道具として使っているはずなんですよね。

それは、「聴き手の問いに答える」と言い換えることができます。例えば、この「どうしてこの予算を承認するべきなんですか?」という問いに対して、「弊社の課題を解決する優れたプロジェクトだからです」という答えをぶつけるための道具が、資料です。

この聴き手目線の問いを決めるのが重要なんですよね。何を伝えるか、何を書くかって話じゃなくて、聴き手がどういう問いを持っていて、それにどう答えるかが、資料作りの本質なわけです。

「手戻りが多い人」にありがちなこと

豊間根:要するに、誰がどういう問いを持っているかを明確にして、その問いを分解していく。例えばプロジェクトであれば、「今我が社はどんな状況にあるのか?」「それを自分はどう捉えているのか?」「なぜこのプロジェクトが必要なのか?」「具体的に何をするのか?」「いつ、どんな方法で評価するのか?」「達成できるとどんなメリットがあるのか?」「まずは誰が何をするべきなのか?」みたいな問いを並べて、その問いを全部潰せばいい。

一番大きな問い、「なんでこれを承認するべきなの?」という問いに答えられるように、問いを並べてつなげた上で、それに答える。問いに1個1個答えて、最後にパワポで伝わりやすくする、この一連の流れが資料作りなんですね。なので、要はこの問いを立てて答えを整理して、伝わりやすくする、この3ステップがきちんとできているのが良い資料だと。これは前にもお伝えしました。

これは左からだんだん、抽象から具体になっているんですよ。問いは目に見えない概念で、すごく抽象的なんですよね。それにぶつける答え(を設定するには)、具体的な情報をスライドとか資料で、より目に見えるかたちにしていく。

抽象からだんだん具体に落ちていくんだけども、手戻りが多い人って、この3の部分でグルグルしているんですよ。「これ、もうちょっと文字が大きいほうがいいかな?」とか、「ここの図形は四角じゃなくて丸のほうがいいかな?」とか。「いかにして伝わりやすくするか」をグルグルしていることが多い。

上司も、ちょっとイケてない人だと、本当は1とか2に問題があるのに、上司自身も気づいていなくて「ここはもうちょっと枚数減らしたほうがいい」とか「なんかわかりづらいんだよな。色をもうちょっと減らす?」みたいな感じになって、自分自身が1と2に気持ち悪さを感じているのに気づいていないことがけっこう多い。

手戻りが多いのは、基本的には2人とも3に(目が)行っちゃうことが多いからなんですよ。なので「どんな問いを立てているのか? それにどう答えるのか?」という部分を、情報の段階で明確にするのが大事なんですね。

いきなりパワポを開くのはNG

豊間根:手戻りが起きている時って、結局伝わりやすいとか伝わりにくいとかの話じゃなくて、「そもそもこの問いでいいんだっけ?」という部分に本質的な問題があることが、ほとんど。

それが「抽象で握る」ってことなんですね。だからパワポにするのは本当に具体の話なので、その前に、「そもそも誰に何を伝えて、どういう状態になったらいいんでしたっけ?」という、目的を明確にする。そのために、「じゃあ、今はどういう問いを立てているんでしたっけ? どう答えるんでしたっけ?」ということを、「Word」とかメモ帳でもいいから文字ベースで明確にしておく。

あとは、「明確にしたものを、どういう順番でどういうビジュアルで伝えていくか」。これもパワポにする前に、ざっくり紙とペンで書いておく。あと、これはそもそも論の話だけど、なるべく早めに握る。

ヒロカ:大事ですね。

豊間根:仕事を依頼された瞬間に目的が見えなかったら、その場で確認する。仕事を依頼されて、「わかりました」と言って、3日後までにやらなきゃいけないのに、3日後の15時になって、「あれ、これそもそも何のためにするんだっけ?」となったら、絶対に駄目なわけですよ。依頼された瞬間に目的がわからなかったら、「それは何のためにするんですか?」と必ず確認する。

上司がすべきこととしては、必ず抽象の部分から目的を明確にして依頼をし、(目的を)早めに握ってほしいと伝える。これが、パワポに限らず仕事の手戻りを減らしてスムーズに進めるための極意です。なので僕は常々、「いきなりパワポを開くな」と。

まず紙とペンで、「そもそも誰がどうなったらゴールなんでしたっけ?」「そのためにその人が持っているどういう問いに答えなきゃいけないんでしたっけ?」と(書く)。

「抽象で握る」ためのコツ

豊間根:例えば「いくらなの?」「競合と何が違うの?」「結局何してくれんの?」「いつまでにしてくれるの?」みたいな問いに対してどう答えるかを、文字ベースでざっくり決めておく。

それに対してどんな具体例や理由、根拠が必要かも、文字ベースで書いておく。これはシリョサク的には「Question・Answer・Reason」、QARの3点セットと言っていますけども、このQARを握っておくと、大きなぶれが起きづらいです。ということで、「抽象で握る」ですね。

結局、手戻りの問題はQAR、「Question・Answer・Reason」と、シリョサクでは「キメヘン」と呼んでいる、「聴き手・メッセージ・起こしたい変化」が握れていないことに問題がある。なのでそこを必ず早めに握るところから始めましょう。ヒロカさん、どうですか?

ヒロカ:でも「抽象で握る」って意外と難しくて、その時は、「わかりました、やります」と言って、理解できていると思っていても、いざ作業に取り掛かろうとすると、「あれ?」みたいな。

「これ、何やったらいいんだっけ?」みたいなのは、たぶんよくあることだと思っています。なので、依頼された時に「まずはこれってどういう目的なんだっけ?」と自分で考えてみて、その時点でわからないことをクリアにしておき、手戻りをできるだけ少なくするのが、パワポに限らずどんな仕事でも重要だなと思いました。

豊間根:間違いないですね。ということで、みなさんも「パワポ資料の手戻りが多いな」と思ったら、1回パワポから頭を外して抽象的な部分から握ることを意識してみてください。