時間の使い方には「2種類のモード」がある

高橋浩一氏:今日は「時間の使い方を2種類のモードで考える」というお話をしたいと思います。

最近読んだ本の中に、『YOUR TIME』という時間の使い方に関する本があります。これは、時間の使い方や仕事を効率化するという考え方ではなくて、時間の認識そのものを変えましょうという本です。

一言で言うと、従来のタイムマネジメントとか、仕事の段取りの本とはかなり一線を画した本だなと思います。そもそも人は「時間」をどのように捉えているかというところが、非常に新しい部分もあり、言われてみると「なるほど。そうだな」と、感じる部分もあります。

音声でお伝えできるところで、僕が一番インパクトが大きかったなと思ったのは、この本の最後のほうに出てくる「クロックタイム」と「イベントタイム」という2種類の時間の使い方のモードについてです。

まずクロックタイムというのは、時計の時間に合わせて行動するということです。例えば13時から打ち合わせをするとか、12時になったからお昼を食べようとか。そういうふうに、ある時刻が来たらこういうふうに行動する。

もともと、アメリカとかドイツのお土地柄というんですかね。そういう文化に根ざした時間の使い方はあるようなんですが、現代社会に生きる僕たちは、やっぱりなんだかんだこのクロックタイムがメインだと思うわけですね。

作業効率と人生の満足度、バランスを取る難しさ

一方でイベントタイムというのは、お腹が空いたから食べるとか、眠くなったから寝るみたいに、時計が何時を指しているかとは関係なく、そのイベントの始まりや終わりは時間に関係ないものであるという時間の考え方です。

例えば、生理現象とか気分といったところです。東南アジアやアフリカといった地域だと、基本的にはみんなイベントタイムで過ごしている。それで、最近僕がこのクロックタイムとイベントタイムという2つの概念を知りまして、どんなふうに日々の仕事や生活を変えていったのかというのを、このあとお話をしたいと思います。

『YOUR TIME』によると、イベントタイムというモードで生きると効果が上がるというか、人生の満足度や心の部分、感情の部分がすごく満たされる。一方でクロックタイムは効率は上がるんですが、クロックタイムだけだと、どこか精神に支障をきたしてしまうという話なわけですね。

言われてみると「確かにそうだな」と、感覚的にわかる気がしますよね。めちゃくちゃ時計の針で区切られた時間で過ごしていると、やっぱりだんだんおかしくなっていってしまうというか、そういう感覚ってあると思うんですよ。でも、時間を区切ってやっていったほうが、同じ時間あたりにこなせる仕事やタスクの量は増える。

じゃあ、これをどんなふうにバランスさせるかというところが、まさしく悩ましいところじゃないかなと思います。

25歳までは1秒、2秒を惜しんで仕事をしていた

クロックタイムは、時計の針に従って自分の行動を決めていく。イベントタイムは、逆に時計の針とは関係なく自分の行動を決めていくことだとした時に、僕はある年齢に差し掛かるまでは圧倒的なクロックタイム派でした。

仕事上のミーティングとかはもちろんなんですが、もともと一番クロックタイムを突き詰めるようになったのは25歳の時。起業することになって、とにかく時間がいくらあっても足りない。やることが多いわけですね。

働いても働いても、やっぱりまだ足りないということであれば、効率を上げようとなるわけです。どんなことをしたらいいのかというと、例えばメール1本書くのにどのくらいかかるかを計って、だいたいメール1本にかかる時間を徐々に縮めていくとか。

あとは、3回同じ文章を打ったら必ず辞書登録をするとか、2回同じところにアクセスしたらショートカットキーですぐにアクセスできるようにとか、とにかく効率をものすごく上げようとしていました。

あとは、ご飯も同じ時間に食べようとか。今振り返ると、20代のまだ若い時だからできたと思うんですが、ご飯もとにかくスプーンで食べられるものだけしか食べない。これは何かというと、スプーンでかき込むように食べるということですね。

「麺類でもいいじゃないか」と思われるかもしれないんですが、麵類だと熱いと一気に食べられなかったり、麵類を箸で急いで食べると、つゆがちょっと飛んだりするじゃないですか。それを気にするエネルギーがもったいない、みたいな感じでした。

厳密に言うと、別にスプーンで食べることだって飛び散るのは気にするんですが、とにかく本当に1秒、2秒を惜しんで仕事をする。

私生活と仕事など、シーン別に時間の使い方を変える

お昼ごはんをちょっと買いに行く時なんかは、考え事を付箋に書いて持って歩いていって。例えば弁当を買う時とかは、ちょっと並んだりする時がありますよね。そういったちょっと並んでいる間に、付箋に書いた考え事をするみたいに、ギリギリまで生産性を上げようということをやっていました。

ある年齢のステージまでは、それでもけっこういけたというか。同じ時間にこなせる量は増えますし、それによって結果として行動量が増えて成果が上がることもあるんですが、やっぱりどこかで限界が来るわけですよね。

僕の場合は、本当に「あ、これ危ないな」みたいに気づくまで、だいぶそのまま突っ走ってしまうことがありました。一番の支障は、人と一緒に仕事をすることが難しくなってくる。

どういうことかというと、とにかく待てなくて、過剰にせっかちになってくるわけですね。人と一緒にチームで働く時に待てないとか、気が短すぎるというのはかなり致命的。特にリーダーやマネージャーという立場になってくると、やっぱりよろしくない。

なので、それをある程度コントロールしようというか、もうちょっと人と話す時には落ち着いてゆっくりと、みたいに意識はするんですが、心の根っこはなんだかんだせっかちだったと思います。

それで40代半ばに差し掛かって、もう少し自分自身の人生のトータル満足度というか、いわゆるQOLみたいなものを考えた時に、さっきでいう「イベントタイムで生きよう」と、できるところから(時間の使い方を変えました)。

最近は、週末土日は筋トレをパーソナルで受けているので、そのパーソナルトレーニングの時は一応約束された時間に行くんですが、それ以外は休日に何か予定を入れるのを極力やめました。あとは平日の夜も、コロナの影響で外食が減ったということもあるんですが、ほとんど「夜何時以降はまったく時計を見ない」という状態に近くなってきています。

これによって、心の調子はけっこういい感じになってきているなというところもあります。ただ一方で、平日の日中はクロックタイムで進めないと物事が滞ることもありますので、このへんはうまくバランスを取っていかなくちゃいけないなと。最近はこんなふうに感じている次第であります。