食べられるカビ、食べられないカビ

ハンク・グリーン氏:食パンが4分の3くらい残ってしまって、小さな、青や緑のふかふかした点があるのを見て、「あー、食べても大丈夫かなー」。たぶん食べないほうがいいとわかっていても悩んでしまったことってありませんか? でも、なぜでしょう?

これは食べても大丈夫なのに……。

これを食べてはいけないのはなぜでしょうか?

世の中にはカビがたくさんあります。とくに台所には要注意です。この質問の答えをお教えしましょう。

食品に生えるカビは、ほかの多くのカビと同じく、微小の菌で、空中を飛び回る極小の胞子が成長してできるものです。

それは空気中を常に飛び回っていて、今この瞬間にもこの周りを飛んでいます。驚くべきことに、カビ胞子の長さは3~40マイクロンで、我々の毛髪の幅は125マイクロンですから、本当に小さいものです。

十分な水分、温度、養分があり、コンディションが整ったときに胞子がそこで成長するのです。ちょうどいいことに、人間が好むのと同様の温度を、カビも好むのです。冷蔵庫の冷たさも、ある程度の時間が経過すれば、カビが生えてしまうのを防ぐことができません。

カビが生えるとどうなるか?

例えばカビがおいしい桃の上に生えるとしましょう。

初期の段階で胞子は、カビ菌の糸状の根を果物の深くに放出します。あなたが初期のカビのサインに気が付くころには、すでにマイセリアと呼ばれる糸が桃の奥深くに浸透しているのです。

これを見るのはほとんど不可能です。カビのサインである、変なふさふさのものや緑の点々や白い粉上のものなどは、菌が積み重なって、そのころまでにはおいしくなくなっているであろう桃の上層に上ってきた結果のものです。

胞子の作り出す茎部の尾の部分によりカビの色が決まります。

カビは効率的な有機生物で、成長が早く、マイセリアムが有機物に侵入しそれを分解するときに酵素が放出されます。ほかの菌糸とは異なり、カビは自身の食物を先に消化し、そのあとそれを食べることにより、速いスピードで成長することができるのです。

カビが生えている部分を切り取って残りを食べれば、危なくはないと聞いたことがあるかもしれません。これは基本的には本当です。とくにリンゴ、ジャガイモ、玉ねぎ、ハードチーズのチェダーやスイスなどのかたい食物であれば、マイセリアが宿主にすばやく浸透することはできないからです。

それでもその食べ物がやわらかい場合、例えばソフトチーズやベリー類、肉類などの食品に生えたカビの部分を削ったり切り取ったりするのはお勧めしません。

それらを食べれば病気になってしまうでしょう。いくつかの種類のカビにより、マイコトキシンという有毒の科学化合物が形成されるからです。マイコトキシンはマイセリアムの周囲に形成されます。とても長期にわたって生息するだけでなく、その多くは宿主の食物が加工され、加熱されても死なないのです。

マイコトキシンを作りだすカビは多くの場合、穀物やナッツ類にみられます。セロリなどの他の食物にも生えることもわかっています。

マイコトキシンで一番危険なタイプのものはアフラトキシンと呼ばれ、それは2種類のカビにより作り出されます。この自然界に生息する毒素は発がん性であることがわかっています。

通常それはトウモロコシ、麦、オイルシード、ピーナッツのなかにみられます。実際多くの科学者は、よく聞く危険なピーナッツアレルギーは、ピーナツそのものではなく、アフラトキシンに対する反応によるものであると考えています。ほかの食物起因のカビはそれと比べると、アレルギー反応や湿疹、ひどい感染症の程度は少ないです。

もちろんカビの中にはマイコトキシンを形成しないものがあり、食べても全く問題ないものもあります。とくに臭いチーズの種、ブルーチーズやゴルゴンゾーラ、ステルトンなどにみられるカビです。

これらは実際、特定のカビ胞子のイントロダクションとして作り出されたものです。その中の1つのペニシリウムロックフォルティは、ペニシリンとして知られる抗生物質を作るのに用いられていた胞子と同じ種類のものです。

これらのチーズに含まれるカビは複雑な有機分子を分解してシンプルに変化させるため、チーズの繊維状構成を滑らかにしてくれるのです。

そのうえ、結果としてユニークな味とにおいを生み出してくれるのです。しかしカビの生えたチーズにはほかのカビが生えないというわけではありません。ですから次回6ヵ月たった熟成した塊のチーズを食べるときには気を付けてくださいね。