しくじり社長に聞く失敗体験

平尾丈氏(以下、平尾):本日は「挑戦する人生」ということで、いつもは学生の皆さまに「これからの人生に関して挑戦してもらいたい」というテーマでやっていくセッションなんですが、今回は初めてプロフェッショナル、起業家の皆さんに向けたバージョンという形になります。私はモデレーターのお役目をいただいております。

今日は「成功・失敗を通じて学ぶこと」と書いてありますが、皆さん成功者ですから、成功体験に関してはいろんなインタビューがググれば出る時代です。だから成功に関しては調べていただきたいと。今回私のほうでモデレートさせていただくにあたって、テーマを絞りました。こちらです。

(会場拍手)

平尾:ありがとうございます。いいですね。だんだん盛り上がってきました。IVSに新しい旋風を巻き起こしていきたいと思いまして……テレビ局の関係者の方がいたらすいません。あとで謝りに伺います。

某テレビ局さんがやってらっしゃる番組は私も大好きでございまして、今回はその社長バージョン「しくじり社長 俺みたいになるな!! in IVS」を行います。皆さん、拍手をお願いします!

(会場拍手)

会ったことのない女優との結婚報道

平尾:これから大御所、親分の皆さんに自己紹介をしていただきたいと思ってるんですが、私も1回やりますので同じような形で。「愛情、友情、(平尾丈)」はいらないですから(笑)。

事前にテーマとして直近の失敗を教えてほしいとお願いしておりますので、「直近のしくじり」をお話いただけたらと思います。

私は2013年11月に東証マザーズに上場させていただきまして、わりといろんな引き合いもふえて、いろんなところでお話しさせていただくこともふえました。なので、皆さんの中にはたぶん古い話とか生い立ちとかをご存知の方もいらっしゃると思うんですが、直近のしくじりを。

私は独身でございまして。実は上場してすぐの2014年度に某女優の方と「結婚したんじゃないか」という噂が出た、しくじり社長のじげん・平尾丈です……こんな感じで。

川鍋一朗氏(以下、川鍋):そういうネタなんだ(笑)。

平尾:これは皆さんの参考にならない話です(笑)。しかも私はお会いしたこともないのに、「30代の元リクルート・起業家の方と結婚した」と(報道で)出て、「もう平尾丈じゃねえか」と。そういうことで、その方のお名前と自分の名前を並べた検索クエリが爆発的にふえました(笑)。

その後、勝手に「平尾丈、結婚して離婚したらしいよ」みたいな話も出ました。運営の方しかあんまり盛り上がってないのでさらっといきたいなと思ってますが(笑)。実はこれ、エアしくじりでございます。

こんな感じで自己紹介をしていただければと思います。まず、今回のテーマの親分である真田さん。もういろんな伝説を、ミナミのクラブで……これはまずいですか?(笑)いろんなのがあると思いますが、直近のしくじりを教えてください。

経営者歴30年・KLab真田氏の失敗体験

真田哲弥氏(以下、真田):KLab株式会社、真田です。学生時代からビジネスをやってますから、ど素人から経営を始めました。19歳のときに会社をつくって、その頃は何もわかってないど素人が勢いだけでやってますから、数々の失敗をしています。10代からやっていると、僕は経営者歴が30年なわけですよ。その辺の演歌歌手より長い。

経営者の皆さんにシェアする価値がある話をしたいと思いますが、僕の中で直近の失敗として痛烈に認識しているのは……。

当社は2009年からソーシャルゲームの領域に新規参入して、グッと力を入れはじめました。それがイケる感じになってきて、2012年から2013年にかけてソーシャルゲームのブームに乗って社員を大量に増やし、固定費をグッと上げて、一気に成長を狙うという戦略を取ったんですね。これが見事に外しました。

拡大に踏み切るときのタイミングと拡大の仕方というのは、ベンチャーの経営者にとってすごく大事だと思うんです。ベンチャーを経営していて、何度か横ばい状態から社員数も固定費もP/L上の費用もグッと増やしたり、B/S上のキャッシュをガッと使ったりして会社を成長させるタイミングというのが、社歴の中で何度かあるはずなんですね。

当社も今年で15周年なんですけども、最初は社員4人からスタートしてちょっとずつ増えていく中で、何回かグッと社員を増やすタイミングがありました。当然皆さんもあったから、それなりの企業になっているはずです。ウチもそうですね。それを乗り切って成功して、規模が拡大していくわけです。

規模を拡大するタイミングがないとなかなか成長はないんですけど、その失敗が致命傷になることも多くて。経営者にとって一番大事な意思決定だし、成功して大規模化していく上ですごく難しいポイントだと思っています……こういう堅い話でいいの(笑)?

平尾:そうですね(笑)。突っ込みどころが……。

真田:学生相手にしゃべるんだったら、もうちょっとおもしろい話がいっぱいあるんですけど(笑)。ヤクザに監禁されたときの話とか。それをここでやってもしょうがないから、経営的な話でいいですか。

ネット業界とエンタメ業界で異なる意思決定の法則

平尾:切り込ませていただきたいと思っているのが、真田さんがそこでわりと投資を強くされているのは、私もインターネット業界の端っこで経営してますから見てたんですけど、ソーシャルゲームの金脈があって「ゴールドラッシュだ」というときで、ある程度投資していかないと、というフェーズじゃないですか。

それはしくじったという話なのか、それとも投資として見たときに、今のKLabさんが「もう一度やるならどういうふうにすれば最適だったか」という……どう思われますか?

真田:ソーシャルゲームって、ネット業界のようでエンタメ業界だと思うんですね。エンタメ業界的なことは初めてだったので、僕はそのときネット業界の感覚で経営判断をしてしまっていたという認識が、今となってはあります。

エンタメ業界っていうのは、ハズレの確率がネット業界よりだいぶ高いんですね。当たり外れが。ここで言ってるエンタメ業界っていうのは映画だったり、アニメだったり、音楽、タレントプロデュース、ゲームだったりというところで、理論上は正しくても当たらないものは当たらない。良いコンテンツが売れるとは限らない。

お金をかけたコンテンツが売れるとは限らないっていう、ネット業界での感覚とはだいぶ違う「外れるかもしれない」という恐怖心をもっとしっかり持って、外れる確率を織り込んだ上で意思決定しないといけない業界なんです。

今となってはそのへんは十分わかっていて……十分ではないですね。なかなか当たらない苦しさ、せっかくお金かけて一生懸命長期間作ってもまったく当たらないことがあります。

「これおもしろい、これやろうよ」という意思決定をしたにもかかわらず、まるで当たらないことがあったり、その逆で「そんなのいけるの? わからんけどやりたいんやったらやってみろ」というものが大ヒットして、「俺の感覚じゃわからねえよ」みたいなことがあるのがエンタメ業界なんですね。

そういうことは、やってみて初めて知った。ネット業界の意思決定の法則とエンタメ業界の意思決定の法則はかなり違うんですね。今だったら、あの拡大の仕方はしなかった。

エンタメ業界の人材育成の難しさ

平尾:人(人材採用)のところは、社長さんと話していると、KLabさんだけじゃなくていろんなソシャゲの皆さまの中でいろいろある。「人をいっぱい採るべきか」とか「広告宣伝費に寄せていくやり方もあるのかな」とか「プロダクト開発に寄せてくか」とかあるんですけど、今だったらどう変えるかということをお一言だけ。

「ここにドライバーがあったんじゃないか」というのはどう思われますか。

真田:エンタメ系の人材というのは、ネット系より育つのにすごく時間がかかるので、促成栽培すると質が下がるんです。ネット系でもそうなんですけど、質を見極めるのがネット系より難しい。

ネット系だろうが何系だろうが、企業は促成栽培すると人が育つ前に組織が拡大するから組織が荒れる。それで組織の生産性が落ちたり、不穏な空気が流れ出してまとまりが悪くなる。

これはどこの業界でも必ず起こるんですけども、知見、知識とか経験が文書化されてたり、しっかりと明文化できるような知識がネット業界には多いんですね。だから、研修とかで教育ができる要素が比較的あります。

それに対してエンタメ系はそういう要素が低い。そのため、失敗して経験しながら獲得していくものが多い。だから人の成長が遅い。

そういう中で、ネット系の感覚で規模拡大を図ったことが僕の経営ミス、判断ミスだったという認識をしており、今だったらもう少しじっくりやっていますね。

平尾:いいですね。めちゃくちゃ勉強になりますね。これは公開しちゃって大丈夫ですか?

真田:実際にそれでいったん業績が悪化して、今は立ち直ったあとで言ってますから。当時だったら言えなかったですよ(笑)。業績が悪化して再度成長カーブに乗せた、今だから言える話なので、ぜんぜん公開していただいて結構です。

平尾:めちゃくちゃ勉強になります。たぶん今は裏番組でも「スマホの潮流」という話をやっているので、おそらく最新の話が出てきてると思うんですが、今日は本当に一生モノのお宝になるようなナレッジをいっぱい掘り下げて……。

真田:そうですね。隣で聞いてるスマホの潮流は、3ヵ月後には古い話になってますから(笑)。