なぜ?
営業マンが自社の広告コピーを書く時代に--コピーライター・小霜和也氏

自前コピー、自前PR。自前広告の時代 #1/5

コピーライター・小霜和也氏と戦略PRの第一人者、本田哲也氏が「自前コピー、自前PR。自前広告の時代」をテーマに対談。小霜氏は、企業が広告コピーを内製化する昨今の流れを分析し、その3つの原因を紹介します。データドリブン、企業カルチャー、そして広告業界への不信……、コピーライターとして第一線で活躍する小霜氏が広告の未来について語ります。

「自前広告の時代」

司会:ただいまより第150回紀伊國屋サザンセミナー「自前コピー、自前PR。自前広告の時代」と題し、『ここらで広告コピーの本当の話をします。』の著者、小霜和也さんと、『最新戦略PR入門編・実践編』の著者、本田哲也さんによるトークイベントを開催いたします。

小霜さんは、博報堂に入社されコピーライターとして活躍後、独立。株式会社小霜オフィスや、no problem LLC.などの代表として活躍されています。また、本田さんは、セガの海外事業部を経て、PR会社フライシュマン・ヒラード日本法人に入社。

その後、グループ内起業でブルーカレント・ジャパン株式会社を設立し、代表に就任。戦略PRの本を書かれ、広告業界にPRブームを巻き起こすなど、活躍されています。本日は「自前コピー、自前PR。自前広告の時代」をテーマに、コピーライティングとPRの考え方についてお話しいただきます。

それではお二人にご登壇いただきます。早速講演会を始めさせていただきます。小霜さん、本田さん、どうぞよろしくお願いいたします。

小霜和也氏:今日はご参加ありがとうございます。何か少しでも今日は皆さんのお役に立てるものを持って帰っていただけるようにしゃべりますので、よろしくお願いします。最初の僕のパートの「自前コピー」なんですけれども、僕のパートのアジェンダです。

まず、大手の広告主も含めた広告業界全体のコピーの自前化というのが起きていまして、何でそういうふうな流れになっているのかという背景を、自分の解釈で説明してみようと思っています。その次に、中小企業、自営業、士業の方、案外と僕の本をそういう方たちが読んで、参考にされているということがわかって、そういう方たちのための自前コピーの書き方というものを説明しようかなと思います。

そして最後に、じゃあ、僕らプロという者は何のためにいるのかということについてちょっと言及して、本田さんのパートにつなげようかなと考えています。

自前化されつつあるクリエイティブ

まず1つ目の話ですね。大手広告主はマーケティングの自前化というのをほぼ終了していると思っています。以前はプレゼンに行くと、大体その広告代理店のマーケティングのパートから始まるんですよね。マーケティングの人の話があって、「調査の結果こうですよ」とか「全体のコンセプトはこうなりますよ」というのがあって、クリエイティブで僕が説明して、その後メディアプランとかSPとかって流れになるのが一般的だったので、だから僕は大体2番目にしゃべるんですよね。

でも今は1番目からしゃべるというふうに大体なっています。マーケティングは広告主が自前でやるので要らないということになっていて、そういうプレゼンがほとんどですね。じゃあ、今、中のマーケティングをしている人たちが何をやっているかというとですね。

「ストラテジックプランナー」というふうに名前を変えていたりしていますけれども、クリエイティブの局に組み込まれたり、PRの局に組み込まれたり、そういう中で全般的なコミュニケーションプランナーみたいな形になっていたりするということになっています。

広告主は、「マーケティングというのは自分たちでやる」というふうになっていて、いよいよ「クリエイティブも自前でやる」ということになってきているのかなという感じです。僕も、企業研修に呼ばれることが増えてきて、マーケティングとかやっている人たちに、「コピーの書き方を教えてくれ」とか「ネーミングのやり方を教えてくれ」とかって言われるんですよね。

「いやいや、それって自分たちでやらなくていいじゃないですか。外に出せばいいじゃない!」って言うんですけど、「いや、そこはもう自分たちでやることになってますから」って言われることがあるんですよね。

外注しないのはプロへの不信感が原因!?

いよいよそういう時代か……、と思ったりしているんですけれども。じゃあ、何でそういうことになっているかということなんですが、背景としてこういうことがあるかなと。1つはデータドリブン、あるいは、テクノロジードリブンということがあるかなと。

もう1つは、企業カルチャー、ブランドカルチャーを自己管理しようということもあるだろうと。さらに言うと、プロ不信。そもそもプロへの不信感みたいなものも何となくあるのかなという気がします。ちょっとここを詳しく言っていきますと、データって基本的に門外不出なわけですよね。外に出さないものだったりするわけです。

例えば、通販会社とかが非常にティピカルな例だと思うんですけど、「自分のところでこういうコミュニケーションをやったら、こういう効果が上がった」とか、クリエイティブであればA/Bテストみたいなことを言いますけれども、何をやったら、どう効果が上がったか。

あるいは、自分のWebサイトにお客さんが訪れた場合、どういう属性の人がいるのか、その人はどういうルートをたどってここに来ているのか、みたいなデータをいっぱい持っていて、データに基づいていろいろな打ち手を考えていくわけですけれども、これはやっぱり外に出さないわけですね。広告代理店にも渡しづらいところがあると。

そうすると、自然に、それに基づいてクリエイティブするクリエイターというのは「やっぱり自社にいたほうがいいよね」っていう話になっていくということがあるかなと思いますね。それから、データとかテクノロジーに基づいて比較するっていうのは、「属人性からの脱却」という意味もあると思うんですよ。

企業のカルチャーを根本から理解できるのは社内の人間だけ

今までは、「この人、クリエイターだよね。何か、人の心を打つようなすばらしいアイデアを出したり、言葉を書いたりしてくれるよね」という、その「人」に頼るところが大きかったわけだけども、今はそうではない。

データを見ていくと、「このターゲットにはこういうところを言っていけば刺さるね」ってことがわかってくるから、変な話、すごい大手有名通販会社のコピーは営業さんが書いていたりするんですよね。コピーライターじゃなくて。

本当に、データに1番近い、わかっている人って営業さんだったりするので、そういう人たちが書いていたりという実態が、実はあったりするんですよね。「そういう人でも書けるだろう」っていう、そういうことにはなってきている。

それから、「マーケティング3.0」みたいな言い方をすることもありますけども、今、コモディティ化っていうことは言われていて、USP(Unique Selling Proposition)という「商品優位性」、他とは違う「売り」というのがなかなかできないと。

例えば、スティーブ・ジョブズさんが頑張ってiPhoneをつくったら、たちまちAndroidが出てくるというね。何を出してもすぐにキャッチアップされてしまうという時代の中で、じゃあ、どうやってお客様に自社商品を選んでもらうかと。

そういったときに、「商品じゃなくて、商品を出している企業が好きだから買うんだ!」っていうふうにしていくべきだし、そうなりつつあるという流れの中で、その企業が持っているカルチャーって大事なわけですよ。そのカルチャーを損ねるようなことはやっぱりしたくないし、そのカルチャーをベースに、どういうふうに調整して行くかということも企業の1つの課題になっているわけですね。

じゃあ、そのカルチャーって、外の人はわかるのかって言ったら、わからないわけですよね。コピーライターを呼んできて「うちのカルチャーはこうなんで、これに基づいてコピー書いてくれ」って言われても、そんなのわからない。言葉で聞いてわかった気になっていても、やっぱり体に入っていないから、何かやっぱりずれてきちゃう。

だったら、自分のところに毎日通ってきて働いている自社のクリエイター、コピーライターに、ちゃんとそのカルチャーに基づいたクリエィティブをさせたほうがいいだろうということにもなってきているというのがあります。

プレゼンして、企画が通ればほったらかし…

それからもう1つ、広告業界誌では「大成功!」って言われている非常に目立つキャンペーンとかあるわけですよ。でも実態は、「全然成果につながらなかった」「社長、カンカン!」みたいな、そういうことは、実はよく聞くんです。本当に(笑)。

外から見たらわからないので、「あのCMはちょっと目立ったよね」「話題になったよね」となっても、「それで商品はどうなったの?」というところまでは、どうせ表に出さないわけで(笑)。売れたら「売れた!」って言いますけど、売れなかったら「売れなかった」とは言いませんからね。わからない。

広告主からすると、「外のプロは信用ならない」と。そんな人に頼んで、「私に任せたらすごい、すばらしいことやりますよ!」っていうのを信じて、騙されるのはもうやめようと。「自分たちでちゃんとコピーライターを育てようじゃないか!」というふうになっていったりするわけですよね。残念ながらそういうムードも今あるかなと思います。

余談ですけど、何年か前に、僕が競合プレゼンに行って、プレゼンが終わってから得意先の宣伝部長が、「もしこの企画に決めたら、小霜さんがやってくれますか?」って言うんですよ。「何を言っているんだろう?」と思ったんですよ。

「やるに決まってるじゃないですか! だって僕が提案しているんだから!」と。そうしたら「本当に? 以前、プレゼンしてきた企画に決めたら、その人プレゼンしたら、他の人に任せて、来なくなっちゃったんですよ」って言うんですよ(笑)。

それで、「ちゃんとやってくれますか?」「そりゃ、やりますよ!」みたいな話もあって、結構ひどい仕事をしている人が意外といる。そういうこともあって、「有名な人でも信用しないぞ」というクライアントが増えている。そんな気がします。

データドリブンとターゲットインサイトの役割分担

そんな中で、広告主、事業主側にクリエイティブがいるとして、じゃあ、エージェンシー、あるいはフリーのクリエイティブとどういうふうに役割分担していくのかということなんですけど、恐らく、事業主側のクリエイターというのはデータドリブンライターみたいな性質になっていくんじゃないかなと思います。

それに対して、外のライターというのはターゲットインサイトライターっていう性質になっていくんじゃないかなと。つまり、やっぱり客観的視点というのは、いずれにしても必要なんですよね。いくら広告主の中でクリエイターを育てていても、その人ってやっぱりそこの人だから、客観的に見るっていうことができなくなっていっちゃうんですよね。

自分のことが1番わからないっていうことで、傍目八目っていうこともありますけれども、外から見てどうなんだと。つまり、ターゲットの、生活者の視点で見てどうなんだってことが見れるのは、やっぱり外部の人なので、そこのところはやっぱり外部に任せるっていうことが1番いいし、それは今からも崩れないと思うんですね。

だから、中にいるデータドリブンの人と、外にいるターゲットインサイトをつかめる人。「ターゲットから見たら、こういうふうに見えてますよ」とか「ターゲットはこういうことを大事にしているし、こういう欲求があるし、こういう不安がありますよ」っていうね、そこを掛け合わせていくっていう役割分担、そういう関係性になっていくんじゃないかなと自分は思っています。

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