“いいモノを作ろう”という考えは古い–コピーライター・小霜和也氏が語った、勝てるビジネスの条件

自前コピー、自前PR。自前広告の時代 #5/6

コピーライター・小霜和也氏と戦略PRの第一人者、本田哲也氏が「自前コピー、自前PR。自前広告の時代」をテーマに対談。本パートで、「いい商品を作れば売れる」時代から、ビジネスモデルで勝つ時代へ変化していると語る小霜氏が、その流れを汲んだ広告手法について紹介します。

「何をつくったら売れるのかわからない」という悩み

司会:では、次の質問。こちらの方にお願いします。

質問者:小霜先生のほうにちょっとおうかがいをしたいのですが、私はスタートアップビジネスのコンサルをしております。正直言って、今スタートアップをやられる方々の1番の悩みが、「実は何をつくったら売れるのかがわからない」というものが圧倒的に多いのですが、本を読ませていただいて、色々感じているのは、今までの商品企画、サービスでもいいんですけど、企画のあり方というものがもう通用しないような時代になりつつあるのかなと。

逆に言うと、ユーザーさんのハッピーシナリオみたいなものを先に考えて、それに合うような商品、サービスをつくっていくというような、ひょっとして今までとは全く逆のプロセスが要るのかなという印象を受けているんですが、今後のあり方としてどんなあり方になりそうなのか。その辺のご意見をいただければと思います。よろしくお願いします。

小霜和也氏(以下、小霜):スタートアップ企業の定義なんですけど、一般的にはスタートアップ企業っていうのは新しいビジネスモデルで立ち上げる企業のことをいいますよね。そこはベンチャー企業と違うところで、ベンチャー企業は古いビジネスモデルであっても入るっていうこと。

それで、おっしゃっていることに、僕はちょっと矛盾を感じたんですけれども、ビジネスモデルありきで始めるのがスタートアップ企業のはずなのに、スタートアップ企業の人がそこで悩んでるっていうのが、何か前提がおかしいような気がするんですけれども。

商品から、ビジネスモデルの時代へ

質問者:おしゃっている意味はよくわかるんですが、現実にスタートアップをやられる方が商品を考えるときに、例えばさっきのおむつで言えば、吸収率が2倍になった商品をつくれば売れるのか。それとも違う商品をつくらなきゃいけないのか。

こういう分野をやりたいという意識はあっても、特に私はIT系なのでサービスが色々あるんですけども、なかなか思いが定まらない。あれをやってみたりこれをやってみたりとやっているうちに実は資金が尽きてしまうと。

そういうケースが非常に多いもんですから、商品を考えるときのプロセスをアドバイスするとして、「逆に考えなさい。むしろ、エンドユーザーのシナリオを考えてからやったほうがいいよ」とか、あるいは、今のものをベースにしたアプローチの延長線上で一旦やった上で、市場とのインタラクションを考えて決めていけばいいのか、その辺のアドバイスをどうしたらいいのかなというのを考えてます。

小霜:先日、青山学院で「経営と広告」みたいなテーマで講義したんですけれど、今の企業の戦いというのはビジネスモデルの戦いですよね。今までは商品の戦いだったわけですよね。「いい商品を出せば勝つ」というね。今はもうその様相が違っていて、「より効率的なモデルを考えた企業が勝つ」っていうふうになってきてますよね。

例えば、僕はずっとゲームの広告をやってきたんですけれど、これまでの発想でいうと、ゲームクリエイターっていうのは「もっと面白いものをつくろう。もっと面白いものをつくって、もっと色んな人が楽しめるものをつくったら勝つ」っていうふうに思ってたわけだけども、でも、ソーシャルゲームとかスマホゲームっていうのは、その発想でいくと「すごく面白いゲームをつくったんだから、1,000円でダウンロードしてくれよ!」っていうふうにやるべきところを「無料でダウンロードしてくだいさい」と。

それで「アイテムを使ったら課金しますよ」っていうふうにモデルを変えたら勝っちゃった! という話でね、そこはもう商品として面白いか、面白くないかっていうところも飛んじゃってるわけですよね、次元がね。

スタートアップ企業は、ビジネスモデルありき

小霜:今おしゃってる悩みっていうのが、「商品をどうするか」みたいなことじゃないですか。だから僕は、そこがもうスタートアップ企業じゃないんじゃないかって感じがするんです。スタートアップ企業っていうのは、本当にそれを利用する人とサービスとの新しい関係、利益をどう取るかってことも含めた、新しい関係をつくって、競合よりも効率よく収益を上げるってことだと思う。

それありきだと思うんですよね。それがあった上で、じゃあその商品、どのぐらいの料金にすれば一番効率がいいのかっていうのをデータで追っていってやるっていうことだと思うんですよね。ただ、もしかするとビジネスモデルの手前のものとして、その企業をつくる人の持っている独自のノウハウとかは持ち味とか、あと「志」ですよね。

「こうしたい」「こういうふうに幸せにしたい」っていう。そこから出てくるのが「じゃあ、こうしたらもっといいじゃないか」っていうビジネスモデルだと思うので、何かそれを飛ばして「商品をどうする?」っていうのが、不思議な感じがちょっとしたかなと。

質問者:指摘のポイントはよくわかります。むしろ、ビジネスモデルを先に描いた上で、「こういうハッピーシナリオつくるために、この道具をつくるんだ」というふうに行けばいいんですけれども、どちらかというと、スタートアップの方々は、「ものを先につくってしまおう。それから考えよう」というのが多いので、多分そこに矛盾があったんだと思いますね。いいコメントありがとうございます。

小霜:「ものよりも営業が先」っていう話があって、「ものをつくって売るんじゃ遅い!」っていう話がありますね。アメリカのビジネス界だと、「そういう順番はもう古い。売り先を決めてからものをつくれ!」というね。そうじゃないと間に合わないということなので、もしかしたら順番が古いんじゃないかなっていう感じが……。でも、僕、経営専門じゃないので、そっちはあまりちゃんとコメントできないですけど。

質問者:非常に貴重なご意見ありがとうございました。

広告コピーと戦略PRにおける「言葉づくり」の違い

司会:そのほか、質問のある方いらっしゃいますか? じゃあ、そちらに2名いらっしゃるので、そちらで最後にしたいと思います。

質問者:大学でマーケティングを教えております。どうもありがとうございます。私の質問は広告コピーをつくるときと、戦略PRを行うときの言葉づくりっていうのは同じでしょうか、違うんでしょうかっていう質問です。

例えば、新しいお客さんとの関係づくりをしたいという場合のコピーのつくり方と、世間を動かして影響を生み出すという場合の言葉の使い方、つくり方っていうのは何か違うのかなと。あるいは、本質的に同じなのかなというのが、私がおうかがいしたいところです。ちょっと大きな質問で申し訳ありませんが、何かご意見があれば教えていただければと。

本田哲也氏(以下、本田):ここで食い違うとあれなんですけど、先に私から意見を述べると、結論から言うとそこは違うんだと思うんですよね。ただ、本質は一緒。要するに、「何をしたいのか」とか「どういう関係をつくるべきなのか」、あるいは、「この商品、サービスの本質的なよさは何であるか」っていうここのコンセプトで考え方は一緒です、としたときに、それが手法の話としての広告クリエイティブ、キャッチコピーをつくるのと、戦略PRをやるためというところで、僕は、表現としては違いが出てくると思うんですね。

特にPRのほうっていうのは、逆を言うと、「これはこの商品のコンセプトを表しているんですけど、PRしたいんです」と言っても、できない場合がある。それは何かというと、その言葉自体に社会性が全然ないときですね。「言いたいことはわかるんだけど、それって何か広告のコピーだよね」っていうことをいくらPRのキーワードにしようとしても無理なんですよ。

もっとわかりやすく言うと、「それがNHKとか、新聞とか、ネットメディアのヘッドラインに来ますか?」っていうのが非常にわかりやすいことであって、そういう報道の中に入っていって違和感がない。つまり、それが取り上げてもらえる言葉かどうかっていうところがPRのプロのポイントになってくるんですね。

だから、言いたいことが同じでもPRのほうの表現っていうのは、ニュースとかテレビ番組とか、そういうところに自然に入っていくような言葉にする。そういうことに変換していくことのほうが多いですね。

広告コピーにおける「タグライン」と「キャッチフレーズ」

小霜:本にも書いたんですけれど、広告のコピーの役割って大きく2つあると思うんです。それは、タグラインとキャッチフレーズっていうふうに分けましたけど、タグラインというのは商品とかサービスの価値を規定する言葉。キャッチフレーズっていうのは要するに興味とか意識をつかむための言葉ですよね。

タグラインっていうのは基本的に同じだと思うんですよ。それは商品そのものなので、例えばさっきのおむつの例で言うと、「赤ちゃんの睡眠を守ります」みたいな言葉がタグラインだとすると、これは変わらないわけですよ。

何が変わるかと言うと、キャッチフレーズというのは手法なんですよね。手法だから、例えばこのキャッチフレーズの役割をPRが負うこともあるでしょう。あるいは、ネットのテクノロジーが負うこともあるでしょう。ネットだったら、もう「マス」っていう考え方じゃなくて「ワントゥワン」的にそういうものを求める人にダイレクトにリターゲティングすることもできるので、キャッチフレーズはいらないわけですよね。

そうすると、そういう手法としてのキャッチフレーズをPRに持ち込むっていうと、ここは変なことになっちゃって、ただバッティングするだけっていう。だから、いわゆるキャッチフレーズをPRでは使いませんよというのは、そういうことですよね。

ネットのリターゲティングだったり、コンテンツマーケティング的なものとも相性があんまり合わないかもしれない。そういう意味で言うと、広告コピーの商品の価値を定義する部分、これはそこに全部落としていくという話なのでどんな手法であっても変わらないでしょう。ただ、キャッチフレーズというのは当然変わっていくでしょうっていう。そういうふうな整理でいいかなと思います。

ただ、僕は2つに分けていますけど、1つで2つを兼ねるという場合も往々にしてあるので、そういうこともあってちょっとわかりにくいというか、コピーライター自身もわかっていない人が多いので。外から見ると、さらにわからないっていう部分があると思うんですけどね。そこをごっちゃにしないで整理すると見えてくるんじゃないかなと、そんなふうに考えています。

質問者:どうもありがとうございました。

ターゲットを絞ると、意外と広く届く

司会:最後、後ろの方にお願いします。

質問者:本日は貴重なお話ありがとうございました。端的に質問します。恐らく広告づくりにおいて、クライアントであったり、商品担当の方が、非常にクリエイターとぶつかるところというか、相入れにくい部分で、ターゲティングというところがあると思います。

つまり、ターゲットを絞れば絞るほど効果、効率がいいということは教科書的にはすごくわかるんですけれども、商品づくりをしている人ですとか、まさに自前広告をつくろうとしているという人たちがあまりに狭く感じてしまって、不安になるっていうことがあるかと思います。

具体的に言いますと、先ほどのタグラインに関しては、「生涯スポーツのための整骨院があります」っていうのは、多分、すばらしく受け入れられると思うんですけど、キャッチコピーに関しては、ややスポーツというイメージからか、男性的な印象を受けるような、男性に届きやすいような言葉がいくつかあったかと思うんですけど。

実際にはそういう現場には当然ですけど、女性も大変多くいらしたりすると思うんですが、その辺の割り切りの問題かと思うんですけれども。先ほどのような、例えば「80歳、シングルプレーヤーですが、何か?」みたいな言葉で十分女性にも届くものなんでしょうか。

小霜:そういうふうにクライアントに言われたら、「じゃあ、女性にも届く言葉にします」で終わります。「じゃ、来週持ってきます!」って言って(笑)。

質問者:なるほど。わかりました。

小霜:ただ、傾向としてはやっぱり幅広くターゲットを設定したいというのがあるので、誰にでも届くような言葉にしたいって思いがちなんですけど、絞っていったほうが意外と広くとれるっていう傾向は最近あると思うんですよね。

例えば、通販なんかをやるときに、キャッチフレーズで「50歳」とかで始まったほうが40代、60代も来たりするんですよ。広くとりたいからといってターゲット感を曖昧にすると、結局、誰も来なくなる。どっか決めて切り込んでいくっていうほうが、結果的には来るっていう。今はそんな感じだと思います。

質問者:わかりました。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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