面接官もトレーニングをしているし、緊張もしている
鳥本:みなさんメモも取りながら聞いてくださっていたので、チャットで質問するのが難しかったかもしれないんですけど、今質問ある方がいたら、この場でぜひうかがってみたいんですけど、いかがですか?
安藤:「面接官をトレーニングする」というのはそのとおりで、面接官もトレーニングしないと面接下手な人ってやはりいますからね。みんな最初からうまいわけじゃないんです。
やはり面接の適性がある人とない人がいるので、そういう意味で言うとこれは現実的には、みなさんもわかりやすい説明が必要になるし、本当に面接官のスキルが高くて、その中でも一番上手い人は、普通に会話している中で勝手に引き出されますからね。
でも、そういう人たちばかりじゃないので、わかりやすい説明はある程度準備しておいたほうがいいと思います。でもその上で普通の会話なので。
もう1つは面接官も緊張しているということです。みなさんも緊張しているんですけど、面接官も緊張していて、そうするとけっこう怖いじゃないですか、見た目とかも。オンラインだと特にですよね。
会ったことのない社会人の大人が、表情もあんまりよくわからなくて、質問だけ投げかけてくるって「この人は何を考えてその質問をしているのかな」と思いますよね。それって緊張しているんです。それでみなさんも緊張がうつるじゃないですか。「ちょっと怖いから緊張するな」と思うんですけど、「緊張している」と言っていいんです。
そうしたら面接官は「あっ、緊張しているからそれを解きほぐそう」というマインドになるので。実は緊張を解きほぐすのも、面接官の役割なんですよ。だから僕もよく面接官にトレーニングする時に「最初からいきなり質問に入るのは絶対駄目ですよ」と言っています。
面接官の人たちには、学生さんが入ってきたら、「今日迷わなかった?」とか、「最近寒いけど大丈夫?」「体調崩していないですか?」みたいなそういうアイスブレイクから入るように言っています。
学生さん側がちょっと話せるようになってきたなと思ったら「じゃあちょっとご質問に」と。ぬるっと入っていって知らない間に普通に会話ができて、その人の人生のこととかを聞いていったりできているのが、上手い面接なんですよ。気づいたら30分終わっていたみたいな。
鳥本:ジャッジしたいというより、きっとみなさんも本当は、普通に話してほしいという感じですね。
安藤:そうなんです、そうなんです。
鳥本:「さぁ、採点してやるぞ」というよりは(笑)。
安藤:本当にそうです。
企業にとって、新卒採用は「お祭り」
安藤:特に、新卒採用って会社では、本来祭りのようなものなんですよ。楽しいことなんです。みなさんからすると「たまったもんじゃない」と思うかもしれないんですけど、一番若い人たちを会社に新しく迎え入れるのって会社としては全体として普通にうれしいことなんですね。
だから、面接官の人たちはそこに関われているという感覚があるので、基本的にいろんな学生さんと会いたい。でも現実的には採用できる枠があるので、そこはもちろんジャッジはしないといけない。
けど、人事側もやはりいろんな学生さんと話して、その人の人生を知りたいというのをベースに面接官を選んでいるんですね。だから嫌味な人とか、ちょっと会社でくすぶっている人は基本的には面接官にならないです。
だってその人と話して、みなさんが「この会社に行きたいな」と思えないですもんね。「うちの会社はこんないいことをしている」とか、「俺はこんな仕事していて、こんなおもしろい仕事をしているんだよ」というのが話せる人。そして、その仲間を探しているという人。これはぜんぜん嘘じゃないですよ。
純粋にそういう人たちを面接官として「誰にしようかな」と選んでいます。でも年が離れている学生さんと話すのはあまり慣れていないので、緊張しているんですよ。そういう意味で自分から「緊張している」と言うのはありですし、そういうふうに自然に会話できると一番いいんじゃないですかね。
鳥本:新卒採用はお祭りというのはすごいおもしろいですね。でも確かにうちもやはり楽しみというか、「どんな子が来てくれているんだろう」とか、「こんなふうに『いい』って思ってくれているんだ」とか、「学生さんから見るとこういうことって気になっているんだ」というのは、やはり教えてもらうことがすごくたくさんあるなと思います。
安藤:ありますね。
鳥本:「今の子たちってこういうことを知っているんだ」と教えられることがたくさんあるので。
安藤:そうなんです。
面接官は気をつけるべき「学生もカスタマーである」という事実
安藤:あともう1つ、面接官に学生さんと面接する時に気をつけてほしいというのは、学生さんも普通にカスタマーなんですよね。つまりお客さんになるじゃないですか。
特にBtoCと言われる、消費者向けにサービスとか商品を作っている会社は直接的に(面接に来た学生が)お客さんになるので、変な対応したり圧迫面接とかしたらその会社の商品を買いたくなくなりますよね。それでいいんです。
そういうふうにジャッジしてもらっていいんです。面接官にも「皆さんもジャッジされていますよ」と伝えていますし、例えばBtoBの会社で一般消費者向けに商品とかはやっていなくて普通に企業間取引の会社でも、その学生さんが取引先の社員になる可能性はあるわけですよね。
その時に反応がどうか、感触はどうかというのを考えると、面接は普通に、気持ちよく帰ってもらうのがやはり面接官として一番大事ですよねとインプットされています。だから、まさに木村さんがおっしゃったようなところですね。
受けていた会社がお客さんになっているって、これは本当にあります。就活の時にいろんな業界を受けるんですけど、そもそも自分が興味ある業界ってけっこう範囲が近いところが多いんですよ。そうすると自分が社会人になった時に、その会社と関わることは可能性としては多くなるという、よくありますね。
「いずれは辞めよう」という気持ちを面接で伝えるのは危険
鳥本菜々美氏(以下、鳥本):Nさん、また連続になっちゃうんですけど、手を挙げてくださったので、せっかくの機会なのでお願いします。
N:さっき「新卒採用はお祭り。本当に楽しみにしている」とおっしゃってた中で、この質問するのはどうかなと思ったんですけど、セカンドキャリアを考えた上での面接って、人事の方にとってどう映りますか?
安藤健氏(以下、安藤):セカンドキャリアを明確に伝えるということですよね。
N:そうです。
安藤:そうですね。これは難しい問題で、個人的にはけっこう博打だと思います。今まさに日本の働き方が変わっている最中なんですよ。だから人事の人とか会社によっては、「セカンドキャリアを見据えて、ふつうに御社を1社目として選んでいる」と伝えるのは、ぜんぜんオッケーなところもあれば。
やはり古い会社さんなどは、まだまだ「1社に勤めたらずっと働き続けてほしい」という前提で採用しているところもあるので、そこは学生さんが事前に見極めることは難しいですよね。そういう意味でいうと、自分の内側に持っているのはぜんぜん問題ないですし、転職が当たり前の世の中なのでそれは持ちつつも、それを明言しないほうがいいかもしれないですね。
実際にある調査で、みなさんの1個上の先輩かな。23卒の学生さんが、新卒で入る会社をゆくゆくは転職しようと思っている割合って、全体の何割だと思います? 人事の世界ではけっこうざわついた結果でした。Nさん、何パーセントくらいあると思いますか?
N:ざわつく数字。8割とかですか?
安藤:さすがにそこまで高くないです。
N:そこまで高くない(笑)。
安藤:5割か6割くらいあります。つまり新卒で入った人たちの半分が、最初から「いずれは辞めよう」と思って入っているんですよ。これは驚異的な数字で今まではなかったことなんです。だけどこれだけ転職が当たり前になってきている世の中で、「うちはそんな奴は認めん」みたいな、そんな会社続きますかという話ですよね。
人事も気づき始めてはいるんですけど、でもちょっとまだ過渡期で変化の最中なので、そこを明確に「御社は1社目としてしか選んでいません」というのはちょっと危険ですね。
N:ありがとうございます。
エントリーシートだけでジャッジしていることはあまりない
鳥本:ありがとうございます。じゃあYさん。挙手してくださっているんで、ミュートをぜひ外してもらって。
Y:大丈夫です。
鳥本:お願いします。
Y:ありがとうございます。面接で話し方とか質問に答えていると思うんですけど、私自身も大学2年生で、まだ面接とかちょっとよくわからないんです。エントリーシートとかSPIとか......本当にごめんなさい。よくわからないんですけど、自分の感覚的に(面接の前に)「簡単な学力試験」と「自分のアピールを書く文章」という種類があるのかなと思っていて。
面接の前にふるいに掛けているのかなと思っているんですけど、エントリーシートも面接で話すように、リーダー経験とか売上を上げたとか何を集めたとかじゃなくて、さっき言っていたような経験学習サイクルをまとめた「過程」を書いたESのほうが、見てもらえるんでしょうか。
安藤:そのとおりです。面接で見ていることも、エントリーシートで見ていることも一緒です。実はエントリーシートだけでジャッジしていることって、正直あまりないんですね。例えばSPIとか玉手箱って「適性検査」と言われるものなんです。性格テストもあるけど、数学の問題とか国語の問題出てくるじゃないですか。「それと一緒にエントリーシート、2つ両方出してね。それが書類選考だよ」と言われている時は、9割は適性検査だけでジャッジしています。
Y:ああ。
安藤:実を言うとエントリーシートは多くの場合見ていないです。ではエントリーシートはどこで使っているかというと、面接の時にみなさんの話を聞くためのシートとして使っています。
エントリーシートは「面接の時の参考資料」として使っている
安藤:みなさん考えてみていただきたいんですけど、例えばある会社にエントリーしました。その会社に、他にエントリーしているライバルの学生さんが何人いるかって、わかんないですよね。大手企業とかだとそれこそ1万人とか、2万人、3万人とかエントリーするんですね。
仮に1万人エントリーするとします。1万人エントリーした中で、エントリーシートと適性検査を受ける人って、そこからギュッと縮まりますよね。何人くらいかというと、平均が5,000人から4,000人くらい。エントリーを出すのは半分くらいなんです。
私がエントリーシートを作っている側なのでわかるんですけど、だいたい1枚1,000字なんです。だいたい250文字の設問が、4問くらい設けられているんですね。
「あなたの学生時代がんばったことを教えてください」250字。、「チャレンジした経験を教えてください」250字、「当社を志望した理由を教えてください」250字みたいなそんな感じで、エントリーシートが書かれます。その1,000字を5000人分みるのは、無理ですよね。
Y:難しい。
安藤:難しいです。もう1つぶっちゃけ言うと、4,000人分のエントリーシートを何人の人事で見ているかというと、2人くらいです。人事部って大手企業でもすごい少ないんです。僕が知っている会社だと、IT系の大手企業でエントリー数8,000人くらいいる会社さん。エントリーシートはそのうちの2,000人くらい出すんですけど、人事担当者は1人しかいない。
エントリーシートと適性検査SPI、どっちも受けてもらって、SPIでジャッジして、合格を決める感じです。エントリーシートはそういうふうに使われています。それから面接の時の参考資料として使っていることが多い。
多忙な人事が人を見極める3つの方法
安藤:人事でも「新卒の専属担当の人」ってけっこう少なくて、中途採用の担当もやっていたり、社内の研修担当をやっていたり、労務の給与計算とかもやっている人が多いです。
Y:うーん、なるほど。
安藤:ありがとうございます。採用活動って人を集めて、説明会とかで「うちの会社はこうだよ」って情報提供して、選考・見極めをして、最後口説くというのがプロセスなんですよ。みなさんはこれに乗っかっていくわけですね。
その中で人を見極める方法っていうのは3つあるんです。1つは適性検査。これは質問手法と言われる見極めの方法なんですけど、ぶっちゃけ言うとネガティブジャッジ。センター試験の足切りみたいなもんです。そういうかたちで使われる。
しかもこれは性格検査も取っているので、みなさんの性格もわかる。性格がわかるとのちに「この子にはこういう情報を提供したほうが刺さるだろうな」という、つまり口説きに使えるんですね。そういうののためにもSPIを受けてもらったりとかしています。
次に観察法というのはグループワーク。これはグループディスカッション、聞いたことありますかね。グループワークというのは学生さん同士で集まって、いろいろ議論してもらうのを面接官が見ていて、「この子はいいな」というのを見ていく。これ、観察しているわけですよね。
集団内の立ち回りを見ています。でもフォローできないですよね。面接官介入しないから。それはできないです。フォローというのは口説きのことです。「みなさん、うちの会社いいよ」とグループワーク中は言えないのでできない。
最後、面接なんですよ。一人ひとり30分とか1時間掛けてやるので、パワーが掛かって大変なんですけど、ジャッジと学生さんの口説きが両方できます。だいたいみなさんが経験するのはこの3つです。
選考では「人材の粒感」を揃えている
安藤:で、これをどう選考フローに分けていくかというと、例えばさっきの例の通り、1万人のエントリー者がいた時、最終的に採用予定人数が10人だとしたら、1万人をどう10人にまでふるいに掛けていくかというのを考えていきます。
それで1次選考から2次選考、3次選考、X次選考......と選考を切っていくんです。この時に新卒採用というのは終りの時期があるので、6月までに終わらせたいなとか、8月までに終わらせたいなという企業側によって違うんですね。この”いつまでに選考を終了させるか”という選考時期も踏まえて、何回選考をやろうかというのを考えます。
このようにうちの会社がほしい人材に学生がマッチしているかどうかというのを、絞り込んでいくという流れです。さっきご説明しましたけど、人材の粒感を揃えていくというのが大事なんです。このエントリー者全体の段階では、粒が揃っていないんですね。バラバラなんです。会社へのマッチ度です。
だんだん選考を経て、粒揃いの人材になっていく。だから志望度が最後は測られるということなんです。最終面接一歩手前くらいではみんな粒が一緒だから。そして、最後差をつけるのは志望度でしかないということですね。
例えばうちの会社ではストレス耐性・主張力と傾聴力・リーダーシップ能力最後に志望動機をみるというのが、ジャッジする要件のように。
これをストレス耐性は適性検査で見極められるな。主張力とか傾聴力というのはグループディスカッションやったほうがいいな。次にリーダーシップ経験というのはどうなのかというのは、1次面接で見てみよう、のように決める
ここまで行くと、つまり最終面接まで行く前に、この3つがみんなクリアしている人たちなんですよね。ということは最後、志望動機でジャッジする。こういうふうに選考というのは考えられています。
だからさっきYさんがおっしゃっていただいたような、エントリーシートがあったり適性検査があったりとか、面接があるというのはその面接で何を見るのか。グループディスカッションで何を見るのかというのが決まっていて、そこに基づいて作られている。そんなロジックになっています。何か追加で質問とかあれば、Yさんもおっしゃっていただければと思います。
鳥本:Yさん、今ので大丈夫そうですか?
Y:はい。大丈夫です。ありがとうございます。
企業が「いつまでに内定がほしいですか?」と聞くわけ
鳥本:今挙手してくださったKさん。
K:お願いします。2つ質問があるんですけど、今の話の中で段階を踏んでいたと思うんですけど、最近「いつまでに内定ほしいですか?」という質問をたまに聞くんですけど、意図が何かわからなくて、それを教えていただきたいなと。
安藤:なるほど。「いつまでに内定がほしいですか?」と言われるんですか?
K:言われますね。
安藤:なるほどですね。いつまでに内定ほしいか。たぶんさっきもちょっとご説明した、この子は選考のスケジュールをどう調整したほうがいいかというところを、それによって考えていますね。その企業さんってわりと小規模の会社さんですか?
K:いや、そんなことはないような気がします。
安藤:何人ぐらいの従業員数の会社なんですか?
K:そうですね。
安藤:1,000人くらい。500人くらい。
K:たぶん1,000人とかはいそうだなと思っています。
安藤:1,000人くらいはいる。1,000人くらいだと確かにそういう質問あるかもしれないですね。これも裏側のお話なんですけど、選考のスケジュールの動かし方というのは、大きく分けて2つあります。
1つは例えばKちゃんさんに特化させた、Kちゃんさん最適でスケジュールを組むやり方。つまり「Kちゃんさん、次面接いつ行けます? 候補日いくつかもらっていいですか?」とか、そういうのでKちゃんさんに合わせて選考を動かしていくやり方。
もう1つは、超大手企業とかはもう1つのほうになるんですけど、「うちは選考スケジュール、説明会はこことこことここの日でやって、面接はこことここの日でやります。ここにちょっと来れない人は、みなさんここに日程合わせてね。来れないと辞退になります」というやり方の企業側に学生さんが合わせるやり方、2つあるんですよ。だいたい超大手企業さんは、そっち側でも学生さんが来るので、そういう意味でやっている会社さん。
本当に採用したい学生なら、学生に合わせて個別に調整したほうがいい
安藤:とはいえ、本来的にはいい学生さん、自社にマッチした学生さん、本当に採用したいんだったら個別に合わせたほうがいいですね。絶対。だって、うちの会社に合っているか否かと、その学生さんのスケジュール的にこの日程に来れるかどうか、本当は関係ないですから。
うちにマッチする優秀な学生さんでも、「この日どうしてもゼミで来れないです」ってあるわけですよね。だから本当は個別に調整していったほうがいいんですけど、それってものすごく工数が掛かる。パワーが掛かるので、大手企業さんはそれを凌駕するほどエントリーがいっぱいあるので、「まあいいや」としちゃっているんですけど。
もしかしたらKさんの今お話の会社さんというのは、個別に調整しているだと思います。だから「いつまでに内定ほしいですか?」それによって調整を早めたり、もう少し待っても大丈夫かな、そういうふうに判断しているということですね。
K:わかりました。ありがとうございます。