面接官に「会社の課題」を聞くのはOK

K:もう1つ(質問)いいですか? 説明会とか面接の逆質問で社員さんとお話をする時に、基本会社のいいところしか言ってなさそうだなと思うんですけど、ちょっとブラックなところとか、ネガティブな点をどうやって知ればいいのかなって思っているので、何か教えてほしいです。

安藤:それはこちらの質問で、面接官の名前で「〇〇さんから見て、この会社の課題だと思っているところがあれば教えてください」と言ったらいいと思います。そしたらたぶん「私は今、こういう課題があると思っている」と話しますよね。こちら側の質問でそれはたぶんコントロールできるんじゃないかなと思いますね。

K:聞いていいのかな? って思ってしまうんですけど。

安藤:ぜんぜん大丈夫ですよ。「悪いところを教えてください」と言うよりか、「課題だと認識されていることがあれば教えていただきたいです」というのは、ふつうに聞いてもらったほうがいいと思います。聞くべきだと思います。

面接官トレーニングにしても、「そういうのを聞かれるから想定しておいてください」と言っています。考えておかないとしゃべらないですからね。突然聞かれた時に面接官側も嘘をついたり、盛ったりとかしてはいけないと言っています。

「課題は課題だと認識しています」ときちんと伝えたりとか、それに対してこういう打ち手、対策を取ろうとしているとか、この課題はこういうふうに今後変えて行かないといけないと思っている、みたいなところもきちんとセットで説明できるようになっているはずなので、そういう意味ではKさんは聞いてあげていいと思います。

K:わかりました。ありがとうございます。

「当社に入ってどのように活躍したいですか?」に対する答え方

鳥本:ありがとうございます。どうでしょう。他にもぜひこの機会なんで。Sさん、声出してもらっていいですか?

S:大丈夫です。

鳥本:お願いします。

S:面接の時の質問なんですけど、「当社に入ってどのように活躍したいですか?」みたいな内容を聞かれたことがあったんですけど、その企業さんでどういうものを今、プロジェクトとしてやっているかとかは、企業さんのほうがよく知っていらっしゃると思うので。

実際に私が言ったことをやれるようにしてあげるとかじゃなくて、私のポテンシャルを見るために聞いてくださっていると思うんですけど、どこまで具体的に「御社に貢献できると思います」というか、「こういうことをしたいです」という話をしたらいいのかちょっと悩んでいて。というのも具体的にどのようなことをされているのかが、こちら側はわからないので。

安藤:確かに。その面接官の質問というのはそんなに実はイケてなくて、あまり望ましくないんですけど、もしそれを聞かれたら、何を目的に聞かれているかというと、「うちの会社でどういうふうに働きたいですか? 何をしたいですか?」ということですよね。それはほぼニアリーイコール志望動機です。

志望動機イコール「自分の仕事の軸」。こういう仕事をして、こういう価値観があって、こういう軸で会社とか仕事を探している。だから将来こういう仕事に携わりたい。こういう仕事をしたいです。それに御社は合致しています。だから御社でもこういう仕事をしたいです」同じじゃないですか。それで大丈夫です。ほとんどそれを聞いているのと一緒ですね。

S:わかりました。その時には考えてなかったので、だいぶ軸をずらして話をしてしまったんですけど。

安藤:でもSさんが想像されるのはそのとおりで、会社のことってふつうに「わからんわ」ってなるじゃないですか。どんなプロジェクトがあって、どんな部署で何をしているのか、「そこまで知らんわ」ってなるじゃないですか。

だからそこを面接官もわかっているはずなんですよね。本当は。「御社のプロジェクトでこういうのがあると思うんですけど、私はここに関わってこういうことをやっていきたいです」というのを求めているわけではないということですよね。

S:ありがとうございます。

面接で見ているのは「自己認識の正確さ」

鳥本:ありがとうございます。続けてMさん、手を挙げてくださっているので、質問お願いしてもいいですか?

M:よろしくお願いします。先ほど会社側のネガティブな面は聞かないと言わないみたいなお話もあったと思うんですけど、こちら側も基本的にはポジティブな面のみを伝えるイメージがあって、ちょっと嘘をついているような気分だなって個人的に思うのですが、マイナスな面を自分から伝えないほうがいいのでしょうかということを質問したいです。

安藤:それは伝えてもらってかまいません。まったく問題ないし、そこでちょっと関係している話をします。さっきの経験(学習)サイクルを回しているかどうかを見ているという話をしたんですけど、面接官が見ているもう1つのポイントがあるんですよ。このポイントはどの業界、どの会社でも一緒です。

それはみなさん自身が自己分析をやるという話があるじゃないですか。自己分析って自分の強みとか弱みとかを把握するって、たぶんみなさんも把握されていると思うんですけど、きちんと自分のことをわかっているかという「自己認識の正確さ」。これを面接では見ていたりします。

これも面接官側の基本的なやり方なので、たぶんあると思うんですよね。

よく面接で「あなたの強み、弱みは何ですか?」って言われて、みなさんMさんが今言ったように、弱みは聞かれているけど言っちゃいけないと思って、けっこう無茶ぶりなんですけど。

「私の強みはこうです。弱みとしてあえて言えば、責任感がありすぎることですかね」とめっちゃ言うんですよ。それは「強みとして言っているやろ」という話なんですけど。

ということは、つまり弱みって言わないほうがいいんじゃないかと思っているということですよね。そんなことはないので、きちんと自分のことを理解していて、「私はこんな弱みがあると思います」ということを、「この子、正確に理解しているな」ということが、実は評価得点になっているということですね。

「強み・弱み」を聞くのは、ギャップがないかをチェックするため

鳥本:「面接官ってどこを見ているんだろう」というは、けっこう事前の質問の中でもよく出ているので、安藤さんの「そういうことを知りたくて、だから質問としてこんなアウトプットになっているんだよ」という話は、なるほどなとすごく思いながら聞かせてもらっていました。

安藤:面接官の質問で「みなさんの強みとか弱みって何ですか?」っていうのは、みなさんの「主観」を聞いているんです。

「主観」というのはそもそも「どういう軸で会社を探しています」ということと、「私はこういう人間だと思います」ってこういうことが「主観」なんです。

この「私は責任感があることが強みです」「慎重なところが弱みです」に対して「うちの会社に合っていませんね」「合っていますね」ってジャッジしちゃいけないんです。主観は主観なので本当に思っているだけかもしれない。事実じゃないかもしれないじゃないですか。

だからそれだけでジャッジすることはなくて、でもじゃあ何で面接官はこれを聞いているの? というのは「ギャップがないかチェックする」ためなんです。

ギャップというのは何かというと、ふつうに面接で会話している中で、学生時代がんばってきたガクチカの話を聞いたり、これまでの人生のこととかを聞いていった時に、面接官は「この子はこういう人物だ」「こういう性格なんじゃないか」とか、「こういうことに価値観を持っているんじゃないか」って、頭の中で人物仮説を立てるんです。

それと本人が言っていることに著しく乖離があると、この子は自分のことがわかっていない可能性が高い。つまりギャップが高い、強いと認識される。このギャップが問題なんです。

自分のことがわかっていない人は、入社後に伸び悩む可能性が高い

安藤:ギャップが著しくあると、自分のことわかっていないな。自分のことがわかっていないということは、入社後に伸び悩む可能性が高いということが、人事の世界では当たり前なんですね。

なぜなら自分の課題を認識していないということなので、自分の課題が認識していないと、できていないことを「できていない」と思わないので、改善できないんですよ。自分の認識が低すぎて、できていないのに「いや、私できていますから」ということになっちゃうわけですよ。

だから、まず自己認知の度合というのを1つは図って、そのためにあなたの強み・弱みはなんですか。正直に教えてほしい。これがMさんへの回答になります。

その時に「私の強みはこうです。弱みはこうです」と正直に話すのと同時に、裏づけになる事実も話したほうがいいです。これは「面接官側も聞いてください」と言っているし、周囲からの認知も聞きたいと思っています。これも自分から言えるとたぶんスムーズだと思います。

というのも、「私は過去の経験でこういうことをやってきました。こういうふうに考えていました。周囲からもこういうふうに言われています。だから私は強みとか弱みというのはこういうふうに認識しています」これが大事なポイントですね。

面接官は「志望動機」より「選社基準」を聞け

安藤:さっきちょっと付随して言うと、「就職志望、なんでうちの会社なの?」って聞くなと私は言っているんですけど、だってそれって会社や仕事を選ぶ基準と一緒だから。そっちのほうが学生さんは答えやすいですよね。志望動機より選社基準を聞けと言っているんですね。

「私はこういう業界に行きたい」とか「こういう仕事に就きたい」ということだけじゃなくて、それって学生さんが学生時代にこの業界がいいとか、この職種がいいというのって動くんですよ。その業界経験していないじゃないですか。その職種も経験してないから、自分の中での想像でしかないんですよ。

それを本気として受け止めるんじゃなくて、というよりかはどういう仕事の働き方をしたい、ワークスタイルとか、私は仕事においてどういう瞬間にモチベーションを感じる、やる気を感じるかという、こういうのを聞きなさいと言っています。

だから面接官はそれを聞きたい。みなさんも「この業界がいいです」「この職種がいいです」だけではなくて、例えば楽しい人たちと一緒に働きたいのか、おもしろい仕事をしたいとか、知名度がある会社で働きたいのかって、仕事のやる気の源泉ってみんな違うんですよね。

これ、「モチベーションリソース」と我々は言っているんですけど、こういうのも人事は聞きに行きますし、みなさんもこれを想定しておくと話しやすいかなと思います。さっき話していたのと一緒ですね。最初は浅い場合が多いので、ジャッジ基準にしないでください。

どちらかというと最後のほうでジャッジ基準に、最終面接ではジャッジ基準にはなります。最初は「これでジャッジするな」と言っていますし、それが当たり前になっています。

面接官が「仕事のやる気の源泉」を聞く理由

安藤:あとは、ワークスタイルとかモチベーションリソースを聞くのは何のためかというと、「この学生ほしいな」となった時に、口説くための情報としてやっています。ジャッジというか口説きなんですよね。

これ、どういうことかというと、例えばMさん、質問しちゃうんですけど、Mさんってモチベーションの源って、誰と働くかが大事なのか、どこで働くかが大事なのか、仕事自体にモチベーションをもっておもしろい仕事をやりたいのか、この3つだったらどちらかというとどれですか?

M:最後のおもしろい仕事。

安藤:おもしろい仕事をしたい。

M:はい。

安藤:僕が面接官でMさんのその情報を聞いたら、Mさんがうちの会社にほしいとなった時に、「Mさん、前におもしろい仕事をしたいと言っていたけど、うちの会社、こんなおもしろいことあるよ。うちの仕事の魅力ってこんなんだよ。このプロジェクトってこんな世の中に影響力あるんだよ」という話をすると、たぶんMさんは「おもしろそうな仕事だな」と思ってくれると思うんですよね。

M:はい(笑)。

安藤:そういうふうに口説きに使うんですよ。「こういうために聞け」と言っているので、面接官もこんなふうに聞いていくというのが多いです。ちょっといろいろ前後しましたが、こんな感じで最初のMさんの質問にもう1回答えると、弱みもきちんと明確に伝えたほうがいいです。自分の強みは盛らないほうがいい。自分のことわかってないってなっちゃうから。自分のことがわかってないというのはマイナスのイメージなので。

M:ありがとうございます。

自己分析とは「経験学習モデル」に沿って過去を思い出すこと

鳥本:ありがとうございます。今、Cさんが手を挙げてくれたので、次にいいですか?

C:ありがとうございます。質問します。さっきお話に出た経験学習モデルみたいなところが、少し気になっているんですけど、学生時代に経験学習モデルを意識して活動してきましたよという学生って、すごく少ないんじゃないかなと僕は思うんですね。

その結果、就活が始まった時に、そういうしゃべり方をしたほうがいいと言って、足りない要素を埋めていくようにして嘘をつき始めるというか。

安藤:(笑)。

C:話を誇張しちゃうというのがあるあるなんじゃないかなと、僕は思ってたんですけど。安藤さんや人事の方々の目線では、経験学習モデルサイクル誰しも持っているというか、無意識に回せているのに気づいてほしいみたいなニュアンスで、この質問をされているという理解で合っていますか?

安藤:就活で「自己分析をやりましょう」と言われているのは、これを思い出してほしいんですよね。経験学習モデルに沿って、自分の過去のエピソードを考えてみてほしいんです。自己分析、よく学生さんがあの時何をして、何をしたかだけしか思い出していないんですよ。

そうじゃなくて、やってほしい自己分析というのは、あの時何をして、それを内省して、そこからどんなことを学んだなというのを思い出して、それで次に「他に活かしていたことってなかったっけな」と考える。これが自己分析です。

社会人の研修でも、学生と同じ自己分析をする

安藤:Cさんが言うとおり、学生時代に経験学習サイクルを常に意識しながら、目の前のことをやっているという人は、ほとんどいないんじゃないですか。なんでかというと、社会人もそうやってやってない。僕らもやっていないですよ。

ふつうに仕事してて、目の前のことを一生懸命やっているだけです。でも社会人は、例えば3年目が終わったタイミングとかで振り返るというのを作ろうと求められているんですよね。

だから社会人向け、既存の社員の人たち向けの研修も、そういうことをやる機会を作っているという感じが多いです。入社した時に、新入社員研修があるじゃないですか。そのあと3年目くらいにもう1回研修があるんです。だいたいどこの会社でも。

その時、みなさん3年でいろんな経験してきましたよねと。それを経験学習サイクルに従って振り返ってみてください。これはみなさん就活生が自己分析でやっていることと同じことです。みなさんも大学時代を3年間くらい経験しているんです。今までこんなことを経験したなとか、そこから何を学んだなというのを振り返る。3年くらいがいいスパンなのかもしれないですね。自己分析ではそれをやってほしい。

そこが面接の時にあらかじめきちんとできていると、スムーズに会話ができるので、他の必要な情報をいっぱい取得できるからいいんですよね。でもそれをまったくやっていないで、面接の場で考え始めちゃうと、30分、60分という制限時間の枠内で終わらないので、情報量が足りなくてNGになるんですね。だから事前に準備としてはやってもらえればオッケーです。

見ているのは、経験学習サイクルによって得た「人となり」

C:ありがとうございます。ということは、経験学習モデルをどれだけの精度で回せているかという能力じゃなくて、経験学習サイクルによって、どんな価値観を得ていたのかみたいなところで、人となりを判断するための質問という理解で合っていますか?

安藤:そうです。そうです。

C:ああ、そうですか。ありがとうございます。

安藤:経験学習サイクルを回すことが習慣としてついているかは、できればベストではあるんですけど、その習慣がついているかどうか確認するのって、その時じゃないとわからないですよね。自己分析をしている時に経験学習に従って考えるということ自体も、別に問題ないんです。その時やっているのか当時やっていたのか、結果会って話している時に差はつかないので。

Cさんが就活する前にやってきたのか、就活の自己分析の時にやったのかって、僕は経験を聞いていてどっちでやったのかわかんないですし、どっちでもいいんですね。やっているということがわかれば。複雑なんですけど、そういうふうに見ています。

C:ありがとうございます。結局行動量の話になるのかなと思って、気になって質問させてもらったので良かったです。

安藤:はい。

鳥本:ありがとうございます。