2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
コーポレートと事業部門が手を取り合い、経営を推進する仕組みと組織とは?(全1記事)
提供:DIGGLE株式会社
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畠山遼氏(以下、畠山):今日のセッションに入る前に、なぜこのテーマかというところも含めてお話ししたいと思います。こちらは2024年5月に経済産業省が出している、製造業の現状と課題と、今後向かっていくべき戦略についてのレポートで
その中で、経営企画と事業部の分断が、1つの組織的な日本の課題として、取り上げられています。こういったところをフックに、今日はお話を進めていければと思っております。
さっそく最初のテーマに入っていければと思います。経産省のレポートにもありましたが、経営管理という領域において、経営企画部門と事業部の間で「分断」という表現がされていました。
(分断の)間で発生する課題がいくつかあるかと思うんですけど。いろいろな会社さんを見られている中で、鷲巣さんから一般的にどういったものがあるかを教えていただけますでしょうか?
鷲巣大輔氏(以下、鷲巣):グロービスという学校自体はわりと教える専門なので、僕も研究というところは少ないんですが。
たまたまゼミのようなものをやって、日本にFP&A(Financial Planning & Analysis:財務計画・分析)が浸透していくうえでの壁は何かということで、日本の会社さんのヒアリングをさせてもらったんですよね。
やはりこの問題は大きくて、いわゆるコーポレートと事業部の間の分断はけっこうあると。具体的に言うと、事業部は「なんとしてもこれをやりたいんだけど、稟議を上げなきゃいけないんだ」。稟議を上げようと思うと、「NPV(正味現在価値)出さなきゃいけないんだ」。
数字を叩いてみたらなんか良い数字が出ないから、鉛筆なめなめして、とりあえず取り繕って出す。それで実際に稟議は通ったんだけど、あとあと見てみたら爆死したみたいな話が、わりと多いんですよね(笑)。
鷲巣:要は、お互いが疑心暗鬼になっちゃってるというか。事業部側からすると、経営企画は「おめえ社長にチクるんだろう」という感じになって「敵だ!」と思っちゃうし、経営企画からすると「事業部サイドの言ってることは信用できない」みたいな。
けっこうヒアリングをしていて、そもそも最初からメンタルの部分で壁があるなという……全部が全部じゃないですけど、そう思われてる会社さんはわりと多かった気はします(笑)。
それで1つ思ったのは、ガバナンスだとか言われるようになったのは、日本においてはここ10年ぐらいじゃないですか。『伊藤レポート』(経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書の通称)が出たのは2014年なので。
そう考えると、それまではやはり、そうじゃないロジックで事業推進が行われていたことはどうしてもあるのかなとは思うんですよね。
それで、10年前に「ガバナンスを効かせましょう」「投資家に対して説明責任を果たしましょう」と。まあ言うても10年なので、そこがかたちとしてまだ会社の中に浸透しきれてない部分があるのかなというのがまず所感ですね。
畠山:ありがとうございます。そうですよね。経営管理側がけん制して、事業部がやりたいというところで、やはり溝が生まれやすいかなと思うんですけど。新貝さんは、今までご経験の中で分断を感じられたことはありますか?
新貝仁那氏(以下、新貝):うーん……うちの場合、そうならないようにしてきたというのがあって(笑)。FP&Aだけじゃなくて、コーポレート全ファンクションにおいてですね。
そもそも「現場」と「コーポレート」の分断が起きないようにするという意味でも、できるだけ(コーポレートが)「事業を行ったりする上でのenabler(ある事象の成功・目的達成を可能にする人)であれ」というようなことをずっと話してはいるので。
特にFP&Aなどといった、いわゆる予実管理などのファンクションにおいても、同じようにやっているところはありますね。すみません、回答になってないんですけど(笑)。
畠山:いえいえ、ありがとうございます。うまくやられてきたというところで(笑)。
新貝:いえいえ。組織が小さい時にやっていかないと、大きくなるとけっこう取り返しがつかないかもと思ってやってます(笑)。ただ、その中で1つ思っていたのが、実はうちの経営陣は、「事業が大好き」というメンバーでチームとして経営してるんですね。
部門を見ているCxOが協力的であるということが、それぞれの現場レベルまで浸透しているのは(成功要因として)1つあるのかなと思いました。
畠山:ありがとうございます。ここ最近は、この分断を解決する手段の1つとして、FP&Aという言葉が出てきてるかなと思うんですけど。鷲巣さんからご説明をいただいてもよろしいですか?
鷲巣:僕の一番最初のキャリアはP&Gという会社でした。当時のP&Gには、FP&Aという言葉はなかったんですけど、まさに今我々が話してるFP&Aがありましたと。当時はまだぜんぜん小さい会社で、売上……言っちゃダメなのかな。ちっちゃい会社でした(笑)。
僕が当初いた化粧品事業部って、数百億円レベルの事業ユニットなんですけど、経理じゃなくていわゆるファイナンス部門が5人いたんです。工場経営とはまた別に、いわゆる事業部付きのビジネスパートナー。ファイナンスの役割でもって意思決定をサポートする部門がありました。
これは30年前なんですけど、(仕組みとしてはすでに)あったんですよね。そもそもアメリカの会社はわりと、そういうところの価値に重きを置きがちだった感じです。
これはちょっと別件ですが、今お見せしているのは資生堂さんのジョブディスクリプションですね。求人サイトでFP&Aをどんなふうに定義しているかというと……。
期待される役割は、「ブランドの収益管理」「事業部シニアメンバーのビジネスパートナー」「ファイナンス部門の変革リーダー」であり「チームの育成・強化」ですと。だから、従来の経理財務とは、ちょっと求められてるものが違うんだなと。
それで、明らかに「これはビジネスパートナーなんです」と、いわゆる戦略を推進するための部門として最初に位置づけられています。これがわりと外資特有なもの。
次のページを見ていただきたいんですけども、やはり組織的にデュアルレポートと言いますか。事業本部長にレポートしつつコーポレートのCFOにもレポートするという段階で、かなりバランス感覚を持たなきゃいけない部署だなと思います。
鷲巣:事業部サイドは「事業を推進したい」、コーポレートサイドは「ガバナンスを効かせたい」「投資家に対する説明責任を果たしたい」ということで、どうしても思っているプライオリティが違うので。
その中で、「事業部に対してガバナンスを効かせつつ、成功確率を高めるような意思決定をしなければいけない」というのがFP&Aに課せられた使命だと。デザイン的には最初からインストールされていた感じですよね。
アメリカの会社はご存じのとおり、株主がすごく強いので。僕がいた2000年頃は、P&Gのエントランスに株価ボードがあって、「今日の株価はいくらですよ」と出ていました。
僕はだいたい株価が100ドルぐらいの時に新婚旅行へ行って、帰ってきたら50ドルだったんですよ。「分割したのかな?」と思ったら、ただ単純にフォーキャストをミスって大暴落したということだったんですけど、その次の瞬間にCEOはいなくなりましたからね。
やはりそれぐらい、投資家、非常勤役員、取締役の権力って強いので。事業部としても、投資家に対する説明責任を果たさなきゃいけないというのが最初からあるので、けん制というか分裂というか、そもそもアジェンダの中の1つに入っていますよね。
10年前に伊藤レポートが出てきてから、「さあ、ガバナンスをどうしましょうか」となっているところは、いいとか悪いとかじゃなくて。当然日本の成り立ちはそうだったので、別に否定するつもりはまったくないんだけど、やはり(アメリカの企業などと)日本の企業とはぜんぜん違うんだろうなとは思いますよね。
畠山:ありがとうございます。FP&Aの概念をご説明いただいたところで、実際どのようにに導入していけばよいのかは、大事なところかなと思っています。Linc'wellさまで、そのへんの取り組みをされているとうかがっているので、さっそくトークテーマ2の最初のほうへ。
新貝:その前に、もう1回だけ戻っていただいて、私がもともといた職場の話とかもできたらなと思います。前職では、私自身がFP&Aを立ち上げる時のレポーティングラインが、欧米の方だったんですね。
ご自身でも、むしろCEOとしてFP&Aの機能を率いてきた人だったので、FP&Aもまたいわゆる欧米型の発言権のしっかりある組織でした。なので、当時一番若い経営メンバーとしてやっていた私自身の発言権があるところにも驚きました。
それこそFP&Aの機能として、例えば買収案件を精査する時に、「こういうふうに考えると、やはりこういうところが実際には達成できないプロジェクトなんじゃないか?」という意見を入れてみると、やはりそこへの信頼が厚いというのもあったと思います。
今いるのはピュアな日本の組織で、CSOが経営戦略部、私がCFOとしてコーポレート部を見ているかたちになっていて。つまるところ、いわゆる海外型のFP&Aとちょっと違う取り組みをしなきゃいけないのかなと思ったんですけど。
もしかしたら、日本のスタートアップなどは、特にこういう仕切りになっちゃっているところが最近増えてきたような気がするんですけど。
私自身の分担で言うと、経理、法務、人事労務と経営企画、総務・ITなどのコーポレート部を見ています。これはどちらかというと経営企画のところで、ガバナンスや内部統制がメインになっています。また、実は今日も出席しているんですけど、11月から入ってもらったメンバーがいて、予実管理は財務企画・IRでやっているんですね。
他方、経営戦略部はCSOのラインになっていて、事業上はここがかなり肝です。事業KPIの開発を現場とデイリーでやっていて、ダッシュボードも作って、中計の数字もここでやると。
新貝:あとは、例えば来期の計画のトップダウンの数字のファシリテーションも経営戦略部でやっています。そこで決まったら初めて財務企画・IRが主導となって、ボトムアップの計画を作ってという感じになるんですね。なので、うちの場合はFP&Aの機能が、経営戦略部と財務企画・IRを両方足して、何かになっている感じです。
ただ共通しているところとしては、現場に寄り添ってはいるんですね。やはり現場から信頼関係があるかたちなので、例えば「これはあかん」となったら、話を聞いてもらえるというメリットがあるんですけど。
そういう意味で、今うまくできている状況ではあるものの、まだまだ「今後どういうふうに進化していったらいいのかな」というのは毎日考えていて、今日はそのヒントが得られたらいいな、なんて思っていました(笑)。
畠山:ありがとうございます。経営戦略部がけっこう事業に寄り添いながら、ビジネスパートナーに近いかたちで進められていて、コーポレート、株主サイドに近いところが経営企画で担当されているような。
新貝:(株主サイドに近いところは)財務企画で担当していて。財務企画で主に見ているのは、人事の要員計画とかその他販管費。(Linc’wellは)広告費もあるビジネスなんですが、事業にひもづくものであるトップライン、粗利、広告費あたりを経営戦略部が見ているので。それ以外の販管費の部分の人件費やその他販管費は財務企画・IR中心で、各部長さんと連携しながら見ていっている感じですね。
畠山:ちなみに、経営戦略部と財務企画・IRの間で、今日のテーマの分断みたいなところって気になりますよね。
鷲巣:そうそう。
新貝:分断は……分断がないようにしているというのと。(会場の)どこかにいるかな? CSOとは本当にデイリーで話をしていて、この財務企画・IRのポジションのメンバーが入ってくる時には、2人でリクルーティングをしていっています。
なので、当時はそことのかけ合わせで、例えば事業KPIや事業開発みたいなものにも、(財務企画・IR担当者が)一時的に出向するかたちで取り組んでみてもいいんじゃないかという話をしていて、実際にやりました。もうちょっとやったほうがいいと思うんですけど。
これは後の話になるんですけど、FP&A人材はIRにも登用できるし、実は(事業部側とコーポレート側の)双方の行き来があるのですごく希少な人材です。最近、その両方(ができる人)をどんどんプールして、大きな人材プールを作っていくと、おもしろいんじゃないかなという仮説を持っています(笑)。
鷲巣:たぶんそれは、1つのサービスになるような気がしますね(笑)。
新貝:(笑)。
鷲巣:でも、僕はこれはすごく大きな学びがあったなと思っています。先ほどいわゆる「現場に寄り添う」というお話をされたじゃないですか。
経営戦略部が現場に寄り添いつつも、財務企画・IRとかなりクロースにやって、投資家の意見もちゃんと聞きつつ調和させる。だから、経営戦略部がキーマンであり、かなりいろんな意見を吸収しつつ、昇華させるような感じがしています。
新貝:そうです、そうです。
鷲巣:だから、この部門の動き方が分断を作るか・作らないかを決めちゃっているぐらい、かなり重要なポジションなんですよね。
新貝:すごくコアです。ここがうちの特殊なところで、(経営戦略部メンバー、また、経営戦略部を率いている)CSOがすごく優秀な人間で、特にCSOは上場株投資を長くやっていた経験があります。だからこそ、事業部と両方をブリッジできているんじゃないかなという仮説まであります。なので特殊ですね。ラッキーだったということなのかもしれませんけど。
畠山:ありがとうございます。鷲巣さん、たぶん欧米型のFP&Aをそのまま日本に入れてもなかなか難しい中で、Linc'wellさんの取り組みってどう感じられましたか。
鷲巣:そうですね。僕にとってはすごく大きな発見だったんですけども。日本の会社には経営企画という非常にコアなファンクションがあり、一方で経理財務がFP&Aを導入したいという思いがあったりとかね。
2023年のKPMGのCFOサーベイでも、8割のCFOの方が「FP&Aを入れたい」と言うけど、経営企画と(バッティングしないように)どうやって入れるのかというのが、どうしても現実的な問題になるじゃないですか。
僕はLinc'wellさんの活動は、1つの大きなヒントになるような気がしています。経営企画とLinc'wellさんの(例でいう)財務企画・IRと事業部サイド。特に投資家サイド、事業部サイドの橋渡しになる経営企画が(Linc'wellさんのように)立ち振る舞えれば、ブリッジになるんだろうなと思ったし。
鷲巣:何よりも、分断は意思だなと思ったんですよね。経営企画の仕組みは確かにあるんだけど、経営戦略部がどう立ち振る舞うかという意思を持っているからこそ、分断がないとも言えるんだろうなと。これはおもしろいですよね。すごくアプリケーションが広がるアイデアじゃないかなと、自分自身は思いましたね。
新貝:おっしゃるとおり、意思ってすごく大事だなと思っていて。ファンクションがあったとしても、それがどういうふうに機能していくのかも意思じゃないですか。個人的には、現在の構造が必ずしもベストではないかもしれないと思うんですよ。かつ、どういう建て付けにするかによって、意思も影響される部分はあると思うんですけれども。
でも、今これがワークしているキーファクターは、経営戦略部がどういうふうに立ち振る舞っているかなんだろうなと思っています。あとは、財務企画・IRとの連携もそうですし、CxOとどういうふうに連携しているかで決まってきているなと思います。
畠山:ありがとうございます。Linc'wellさんはうまくいっている取り組みだなと思っています。ちなみに、鷲巣さまはいろんな会社さんの「FP&Aを入れよう」という取り組みを見られていると思うんですけども。その中で、うまくいく取り組みとうまくいかない取り組みは、何が成否を分けるんですかね?
鷲巣:そうですね。全部意思で済ませたら簡単なんだけど(笑)。それで済ますと、みなさんたぶんすごく納得いかないと思うから。僕が思い描いた1つの例は、やはり「まずはFP&Aという組織をつくりましょう」という会社は多いと思うんですよね。でも、それでうまくいっているかというと、うまくいっていないところがけっこう多くて。
僕が知っているところでは、日本のけっこう有名なビューティー系の会社がFP&Aを入れました。FP&Aの人材がいないから、外から経験者を引っ張ってきて入れたんですが、結局大失敗したんですよ。「(FP&Aの人は)なんか偉そうに正論だけ言っているな」「現場のほうはぜんぜん響かない。動かない」という話になって、もう1回作り直したらしいんですよね。
鷲巣:どうやって作り直したかというと、FP&Aの人間を、もともと製造です、もともと営業ですという社内のプロパーから募って集めました。そういう人たちは、その部門でもエースだったりするから、かなりパワーゲームだったらしいんだけど。
そういう人たちをFP&Aに入れて、ファイナンスのトレーニングをしっかりやり、いわゆる「価値創造って何なの?」というトレーニングをしっかりした上で、現場にもう1回戻しました。
この人たちは何ができるかというと、現場の人たちがずっと持っていた価値判断基準というんですかね。その会社は(事業内容が)ビューティーケアなので、美しさとかすっごい大事なんですよ。NPV(正味現在価値)とかより美しさなんですよ。
NPVよりも美しさなんだけど、美しさを数字で語ることができるような人間がボコボコいるので、そこから物事がうまく走り始めたということはおっしゃっていましたね。
そこのCFOの方は「溶け合わせる」と言っていたんだけど。いわゆる定量的な判断やサイエンスとしての意思決定の判断軸と、現場が大事にしている価値観みたいなものを溶け合わせない限り、やはり物事は動かないという話はしていました。
美しさだけでやってもガバナンスは効かないし、ファイナンスだけの話をしたって何も美しくないから。これを溶け合わせるところにかなり力を入れていたし、やり方としてはプロパーの人間を入れたんだけど、パンチラインで「意思」という言葉を使うとするんだったら、それも大きな意思なのかなと思いましたね。
だから、議論上等みたいな感じだと思うんですよ。「自分の意見はあいつの意見と違う。じゃあ、聞くのやめよう」というのが、分断じゃないですか。そうじゃなくて、「あなたの意見は違うよね。俺の意見も違うよね。わかっているんだけど、両方大事でしょ? ぶつかり合わせましょう」というところに踏み込むのが、けっこう大事なポイントなのかなと思いましたね。
畠山:ありがとうございます。意見は分かれるものという前提で、そこをぶつけないことが、やはり良くないよねということですかね。
鷲巣:そう。だから、今回のテーマも「分断はなぜ起こるのか?」ですが、「起こるんじゃねえの?」みたいな話を、ちょっと控室で話していましたけど。(大事なのは分断が)起こった先かなと思って。Linc'wellさんは、このあたりってけっこう建設的な議論をされているんですか?
新貝:みんなロジカルな人間の集まりではあるので、ただぶつかり合うというのはないんですけど。
それぞれの見ている部門や役割の中だとこうだと。ただ、最終的に到達しなきゃいけないゴールや達成しなきゃいけないものがこうだから、「こういうふうにしましょう」と合意するので。おっしゃられているような、いわゆる衝突は「ある」んだと思うんです。怒鳴っているとかではないんですけど。
鷲巣:(怒鳴っているような形の衝突)じゃなくてね。
新貝:やはりそれがあるからこそ、それぞれの部や人の役割が、実は機能しているということでもあるのかなと思っています。何でも「それ、いいですね。はい、はい」と言っていたら、実は違いますし。(そういうこと)なのかなと思いますね。
あと、先ほどちょっと控室でもお話ししていたんですけど。こういうふうに言ってはいけないんですが、個人的にはコーポレートファイナンスの世界にいた人間だからこそ、逆に財務ばかりが先行している欧米型の運用には注意をしていて。
今の時代はむしろ、ちょっとそう(財務先行)じゃないのかなって。ステークホルダーを意識するとなると、難しいことなんですけど、やはり全方位的にやっていかなきゃいけないことがあって、より多くの人の意見が盛り込まれているほうが、経営上は正解なんじゃないかという。
どっちつかずにならないようにするのはもちろんあるんですけど、そういう意味でも、衝突はあるべきなのかなというのはありますね。
鷲巣:建設的な衝突っていうんですかね。
新貝:はい。唯一あるのは、例えば数字のターゲットとか、何か会社が向かっていかなきゃいけないものについて、みんながオーナーシップを感じてない状況があったとすると、そこはけっこう分断だし、問題なんじゃないかなと思いますね。
畠山:ありがとうございます。やはりどうしても(分断や衝突は)起きちゃうけども、そこに対してどう向き合っていくかというところかなと思います。
畠山:ちょっと話が戻っちゃうんですけど、先ほどビューティー系の会社さまの事例をお話しいただきました。じゃあFP&Aをやっていこうとなった時に、やはり人材が1つのテーマかなと思っていまして。
先ほどの事例だと、どちらかというと現場の方にファイナンスの知識を付けてという流れだったと思うんですけど、基本的な考え方としては、その流れが王道なんですかね?
鷲巣:どうかな。(社内の人材を育てるパターンと外部のFP&Aを連れてくるパターンの)両方見ていますけどね。FP&Aの経験がある人のほうが立ち上がりは早いとは思いますけど。
でも、先ほどのビューティーケアのケースであれ、本当に溶け合うかどうかが一番大事なポイントだったりするから。どうですか、新貝さん?
新貝:そうですね。実は私は、事業部側の方がという事例はあまり見たことがなくて。自分のバックグラウンドのせいなんですけど、前職も(FP&Aは)公認会計士の方や経理でした。今の我々のチームの人間は証券会社出身かつVC投資家の経験があるんですけど、どちらかというとファイナンス寄りだったんですね。
ただ、やはりそれぞれに共通しているのは、ファイナンスの理解はあるんですけど、そもそも事業理解をするかどうかって絶対マストのような気がしていて。
あとは、先ほどもちょっとお話ししていた内容と重なっちゃうかもしれないけど、やはり対話的なスキルとか、相手が何を考えて何を伝えようとしているのか、何を大事に思っているかをくみ取る力は、みんな共通していると思っています。
やはりFP&Aの人材って、実はミニCFO的ないわゆる経営幹部候補だと思うんですよね。そういうリーダーシップポテンシャルで、いろんな人の合意形成を図るenablerになれる人というソフトスキル的な要素もあるから。どこを入り口にしてもいいんですけど、そのハードスキル+ソフトスキルがけっこう必要なのかもなと思いました。
鷲巣:それは大賛成ですね。
新貝:やったー(笑)。
鷲巣:FP&Aって最近ホットワードだからよく聞くんですけど。(FP&Aという)組織を入れることがどうしてもわかりやすいし、そこからスタートだと思うんですけど、ソフトスキルは大事ですよね。
新貝:すごく大事だと思います。
鷲巣:先ほどの話じゃないけど、分断は起きるものなので、それを取りまとめるというか。
畠山:こう言うとちょっと陳腐な表現ですけど、やはりコミュ力みたいなものがけっこう大事なのかなって。
新貝:今日のこの一連のすてきなセッションの終わりが、それで帰結するのは正しいのかなというのは、ちょっと心配になりますが。
鷲巣:(笑)。いや、でもそれは避けて通れないような気がしていて。だから、ガバナンスを効かせる議論も、結局そこじゃないですか。
多面的な意見を単に調整するんじゃなく、戦わせて次のレベルに昇華させることが、FP&Aだけじゃなくて、マネジメントに求められているとするのであれば、それができるような人材や組織文化を作ることは、とても大事なテーマのような気がしますね。
新貝:ですね。最後にちょっと思ったのが、やはりFP&Aを担う方が経営的な発想を持てるように、上司の方も促すとか。やはりそういう目線で見ないと、たぶん適切な分析も働きかけもできないので、環境作りもけっこう大事なんじゃないかなと思いました。
畠山:最後に、今日は「FP&Aにこれからトライしてみようかな」という方もいらっしゃると思うんですけど、明日からできる何かというかたちで、お二人から一言ずついただけないでしょうか。
鷲巣:「意思」(笑)。いや、でもけっこう大事かなと思っていて。(FP&Aの)組織を作るよりも、多面的な意見を取り入れて、次のレベルに昇華させるぞという意思を、まず個人が持つこと。それを相手にも持ってもらうように働きかけることは、けっこう大事かなとは思いますね。すみません、こんなパンチラインで(笑)。
畠山:いえいえ、ありがとうございます。やはり意思は大事ですよね。やはり意思からすべての物事が始まるのかなと思います。新貝さんは、いかがですか。
新貝:これ、すごく難しい(笑)。どうしようかな。もしかしたら、「予実管理はしているけど、まだFP&Aとかそういったところには……」となっているんだとすると、まずは事業理解からなのかもと思っています。
やはり予実管理となると、コーポレートの中でも経理や財務といった、ちょっと事業から距離のあるところにいる方がやっている可能性もあると思うので。(先を見越した)フォワードルッキングなことよりも、(過去のデータに基づいた分析など)もう起こったヒストリカルな視点のほうが強い方が多いと思うので、苦手意識がある方もいらっしゃると思うんですよね。
そうすると、何が一番大事かというと、やはり事業理解。どういうPLの構造になっているか、それぞれのモノやヒトが動いて、どういうふうに数字になっていくのか。どういうところにセンシティビティ(感度)があるかを理解していくことが、けっこう大事なんじゃないかなと思いました。すみません、教科書的になっちゃった。
畠山:いえいえ、ありがとうございます。
鷲巣:大事ですよね。たぶんフォーキャストを作るとか、フォワードルッキングという話がすごく大事で。それがFP&Aにはすごく求められているものだと思うし、そのためには、事業理解をするというのも大賛成ですね。
畠山:ちょっと話し足りない感はありますが、いったんこちらでセッションは終わりにさせていただければと思います。鷲巣さんと新貝さんに、拍手をお願いいたします。ありがとうございました。
鷲巣:どうもありがとうございました。
(会場拍手)
DIGGLE株式会社
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