「メッセンジャーのマネタイズは無理」と言われていた

小野:ちょっとまた、スライド。

これ、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、「WeChat」中国、ウェイシンとかとも呼ばれてますが。これ、聞いたことない方どのくらいいらっしゃいますか? ほとんどいないですねこの業界は。

既に知っている方多いと思いますけど、中国のいわゆるLINEのライバルにも当たるかなという。メッセージングアプリからスタートしていて、マンスリーアクティブユーザーが今、3億、4億近いところまで伸ばしていて。

これで面白い動きが起きているのは、中国のスマートフォンのベンチャーで、シャオミーってのがとても有名だと思うんですけども、そのシャオミーのスマートフォンがウィーチャット上のEC、決済サービスで、10分未満で15万台売れたと。

これ結構衝撃的なニュースで、もちろん、シャオミーの端末自体がメチャクチャ人気があるというのも背景にあると思うんですけども。逆にこれは日本でもスマートフォン上でもそうですし、LINE上でもそうですし、非常に可能性としては大きく感じるニュースだと思うんですが、このニュース見た時、率直にどんな風に感じたかってあたりを。

舛田:もともとLINE上でもフラッシュセールってのをやっていて、日本とか台湾とか、タイかな? 限定してやってるんですが、やっぱり相性がいいんですよね。相性がいいので、すぐ売れる。ただ、ウィーチャットの15万台はやばいですよね、数字として。中国だからっていうのもありますが、ウィーチャットのスピードや規模には感心をしています。

小野:これ、なかなかPCだと見られない数字感かなと思うんですが、一方スマートデバイス、「スマデバファースト」って形でヤフーさんもスマートデバイス化を進めてると思うんですけども、ヤフー的にはこの辺りのスマートフォンを中心とした動きってのは、どんな風に見てるんですか。

小澤:スマートフォンに主戦場が変わって、一番驚いているのがこういう流れでして、LINEさんもそうなんですけど、コミュニケーションとかメッセージングっていうのは、そこからの派生サービスとかマネタイズが難しいと言われていて、どちらかというと、とあるサービスに対する補完だった時代が長いんです。

Hotmailなんかまさにそうで、Hotmailから派生してeコマースになったなんて聞いたことないですよね? ICQとか、そういうメッセンジャー系も単体では大負け、副サービスでも上手く作れず、ヤフーメッセンジャーも閉じるんですよ。閉じたのかな? というように、コミュニケーションとかメッセンジャーサービスっていうのは、そこからの膨大なトラフィックを他に活かせないって言われ続けてきたのが、今までのインターネットで。

LINEはチャットではなく、プラットフォーム

舛田:私もLINEのローンチの際に言われました。

小澤:そうですよね。これがLINEさんとかがしっかりコマースだったりゲームだったりで、マネタイズ出来るようになった。このシームレスの流れとかが、今までどうしても出来なかったことが、何で出来るようになっちゃったのかなってとこが、知りたいんで教えてください。

小野:舛田さん、教えてください。

舛田:一言でいうと、スマートフォンだからですよね。例えばLINEの競合でWhatsApp、よく名前が上がりますよね。そして「WhatsAppと我々の違いって何ですか?」ってよく聞かれるんですが、「プラットフォーム」なんですよね。プラットフォーム化していて、いろいろなコンテンツやサービス、オンラインもオフラインも含めてどんどんどんどん繋がっていく、どんどんコミュニケーションの入り口を通っていろんな展開をしていくっていうのが、違い。

例えば、WeChatとか我々っていうのは、いわゆる「セカンドジェネレーション」なんですよね。スマートフォンのインスタントメッセンジャーの中で。最近、例えばシリコンバレーとかいろいろな国の方々もですね、オフィスに遊びに来てくださるんですけど、だいたいサービスよりも、このビジネスモデルは何だって言ってくるわけですよ。

だいたいインスタントメッセンジャーは、サブスクリプションで課金をするか、もしくは売り切りか、ないしはSNSみたいに広告で儲けると。基本的にはそのモデルっていうのが世界の潮流だったと思うんですが、我々がLINEを作ったときに、それではサービスを継続されられないだろうなと思ったんですよ。そして、その旧来のモデルではスマートフォンでのコミュニケーション、メッセンジャーの価値を最大限出せないんじゃないかなと思ったので、メッセンジャーの中にいろいろ入れていくことを考えました。

ただし、これには条件があって、例えば5000万人いるからといって横にサービスを置いておいたら使ってくれるかといったらそうじゃないんですよね。そこが若干、ポータルと違う。ポータルの場合はそれを「検索」が結んでたんですよね。

LINEのようなメッセンジャーは、そこは「コミュニケーション」でしか結べないので、例えばゲームの中にもコミュニケーション入れますし、マンガの中にも入れますし、eコマースの中にもまだ、LINEモールの中でいうと充分じゃないんですが、入れていきますし。

こういったフラッシュセールっていうのも、まさにその流れなので、我々が「プラットフォーム オン プラットフォーム」を展開していく中で、必ず忘れちゃいけないなって思うのは、コミュニケーションとある程度関係性を持っていないと、我々がやる意味がないし、ユーザーにも使ってもらえないんだろうなって思ってます。

人が多ければなんでもできるわけじゃない

小野:これ、プラットフォームという考え方で非常に重要な議論だと思うんですけど、ヤフーさんは一方で、検索、情報の流れってところで、プラットフォームだったと思うんですけども、まさに同じように新しいサービスを加えたから、例えばコマースのサービスを置いたからそこですぐにうまく行くというわけじゃ決してないと思うんですよね。

このあたり、ヤフーさんとしての考え方。いかにトラフィックをそちらに持っていくか。ここはどのように考えてらっしゃいますか?

小澤:ヤフーが新しいサービスを作るのが不得意だって言ったら、過去頑張ってきた人に怒られますけども、でもやっぱりショッピングが今の状態にあったり、ソーシャルメディア、何度もやろうとして失敗したり、ローカルサービス系とかも一番を取れてるわけではない。まさに、人が多いところにサービスをくっつければうまくいく、ということでは全くないということだと思います。

プラットフォームとしてメインで使われてるコンテンツが、メインで使われている目的にどれだけ合致してるかってことがとても重要であって。知恵袋はめちゃくちゃ合致してる訳ですよ、知りたいという人に対して検索エンジンとは別の形で回答を、人対人でやれてくわけですからね。

小野:それって元々検索のキーワードが多かったという背景があるんですか。

小澤:おっしゃる通りだと思いますね。結局ですね、プラットフォームの横展開の難しさっていうのはすごくあってですね、リアルで言ったら、プラットフォーム、電車のところに駅ビルがあって、そこにレストランがあればうまくいくけど、車の工場があってもうまくいかないみたいな。

でも、それをやりがちなんですよ。人が多いから何でもいけるんじゃないかっていう。そこのストーリー性とか人の導線の引き方とか、強烈に重要で。やっぱり、eコマースってのは、悪くはないとは思いますけど、すごく上手に導線を引かないとうまくいかないっていう事例だと思います。

オークションの発展ってのは、また別の軸だと思ってるんですけども、ヤフーとしてうまくいってるものは、「天気」とか「路線」とか、基本的に全部調べる軸です。そうじゃない「楽しむ」とかそういったものは、検索で調べてその先でやるからね。

コミュニケーションを取るとかっていうのは、そういう目的意識をもってらっしゃらない方、もしくは、その先のものを知りたい方だったりするのに対して、調べてる先でコンテンツ自体を提供してしまうのを上手に出来てこなかったのが、今までだったと思います。

舛田:我々も、いつもそう思ってるんです。これは我々だけではなくて、サービスの本質ですよね。関係がないことをやってもしょうがない。誰も求めていないってのがあるので、大規模だろうが小規模だろうがほとんど変わらなくて。多分、リアルだろうがネットの中だろうが、あまり変わらないんじゃないかなと思いますね。

66億円のインセンティブをユーザーに支払ったWeChat

小野:さっき中国のWeChatの話が出ましたが、これは非常に面白いっていうか新しい動きだなと感じていまして。例えばプラットフォームといえばそれこそ、Facebook、Twitter含めて、彼らもコミュニケーション軸にやってますけども、こういった動きって本当になかったと思うんですよね。

今まで我々日本も含めて、ひょっとしたら中国も含めて、どちらかというとインターネットはシリコンバレーが中心になって動かして、日本もタイムマシンで、中国は日本からさらにタイムマシンで遅れてるみたいなイメージがあったんですが、最近の動きはどこか逆転しつつあるかな、なんて思ってまして。

その流れでですね、もう1つWeChatネタで。これも非常に面白い現象だなと思ってまして。これは何の記事かというと、今年の中国の旧正月、2月ですね。WeChat上で中国版ウーバーってのが幾つかあって、WeChat上でタクシーを呼べるんですけども、何と1ヵ月で2100万台のタクシーがWeChat経由で実際に呼ばれて、そのうち200万件がWeChat上で決済が行われたと。

このキャンペーンが凄まじいのは、当然これはタクシー業者側へWeChat上で払える機能の提供も必要ですし、ユーザー側にも使ってもらわなきゃいけないんですけども。強烈なインセンティブキャンペーンをやっていて、WeChatを使ってタクシーでお金を払う度に、一日に上限はあったはずなんですけども、1日500円くらいをドライバーにも払うし、お金を払ったユーザー側にも数百円戻すという、メチャクチャなプロモーションコストかけて、トータルで66億円のボーナスをドライバー側とユーザー側に出してですね。

要は、なかば強引に使わせて、決済のリテラシーに慣れさせるみたいなことをやったわけですよね。この辺の動きって、世界ではほとんど例がなくて、もちろんLINEも含めてですけども、こういう、単に物を買うだけでなくて、世の中の消費の決済プラットフォームでもあるわけですよね。このような展開ってのも可能になるのではないかという、いい事例になると思うんですよ。この辺りどのように見ていたかっていうのを是非教えていただきたい。

決済は最強のサービス

舛田:先ほどコミュニケーションがある種のポータル化しているみたいな話をしましたけど、まさにこれ良い事例。今までPCだったらこんなこと出来ないわけですよね。スマートフォンのコミュニケーションの中でタクシーを呼べて、そして、当たり前ですけど、そこからタクシーが呼べるんだったら、そこから決済をしなきゃ辻褄が合わないわけですよね。

これはタクシーですけども、それ以外だって、ピザ呼ぶでも何でもいいですし、いろんなものが決済できるわけですよね。そういった世界へ、メッセンジャーもそうですし、いろんなサービスが向かおうとしておる。特にオフラインとの結びつきを強くするってとこが世界中で次のターゲットとされていて、それをものすごいスピードで進めてるのが中国のWeChatですね。日本でこの規模でやろうというのは、人口規模・経済規模としてなかなか難しいところがあります。

小野:そもそもこれだけのコストをつぎ込めるかっていう。

舛田:ただ、キャンペーンの獲得単価的には良かったみたいですけどね。

小野:単純に考えれば、1件あたり決済させるために、せいぜい1000円いかないわけですよね、1000円以内で決済ユーザーを捕まえられるという。考え方によっては非常にリーズナブルかもしれないですね。小澤さんはヤフーとしても、個人としても、このニュースにどんな風に感想を持ってますか。

小澤:決済は今最大って言ったら、VISA、MASTER。インターネットで買おうが、リアルで買おうが何%か落ちるんですよ、カード会社に。これ最強だと思うんですよね。デバイスが変わろうが、リアルだろうがインターネットだろうが、決済のプラットフォームなのかな?

決済の肝心なところを握っておくと、そういうことが起きるって、とてつもないことなので、WeChat、今のユーザー数をベースにそこを握り込みにいく。Alipay(アリペイ)があれだけ頑張ってる状況ですから、当然ヤフーもそうですしLINEさんもそうですし、究極的にはインターネット・リアル関係なく最も使われる決済になる。

そこに対して何らかのビジネスを仕掛けていくっていうのは、多分プラットフォーム思考のある方は絶対全員考えますよね。それはやっぱり、このくらいのコストをかけても体力のある会社ってのはやってくると思うんですよ。次の世界のカード、Alipay(アリペイ)自体は本気でひっくり返しに行ってるわけですよね。