みんな無意識に持っている「許されていない」という思い込み

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):善樹は、国の人たちとやるときも、このテンションなの? それとも、そのときは堅いの?

石川善樹氏(以下、石川):基本的に、このテンション。

佐渡島:このテンションで大丈夫なの?(笑)

石川:どうなんだろ、大丈夫なのかな!?

佐渡島:俺さ、そういう世の中に生きていないんだけど(笑)。むっちゃうらやましくて、そっちの世界にワープしたいわ。

石川:みなさんもそうだと思うんですけど、メール返すときとかに、「いつも大変お世話になっています」みたいな、あれがストレスなのね。

佐渡島:もしかして、善樹のメールは「いつも大変お世話しています」で始まるとか(笑)。

石川:だから、ちょっと前から「毎度!」とか「どうも!」みたいな、すごいカジュアルにメールをしてくる人なんだっていうので、我慢してもらってる感じかなあ。

佐渡島:善樹って、ちょっと第2の猪子(寿之)さん狙っている感じかな(笑)。でも、時間とか守るよね。

石川:守ります、遅刻はしない(笑)。でも、自分がなるべく生きやすいように、自分の流義を通しつつ、それを周りにも認めてもらえるようにというのをやっていて。

これ、参考にしている人がいて、研究者は総じて変な人が多いんですよ。森田先生という先生がいて、その先生はメールの返事とかが誤字脱字だらけで、メチャクチャな人なのね。

でも、「それでも許されているんだな」ということを見て、自分もそれやっていいんだって。だから、基本的にはこのテンション。「あざーす!」って言って。

佐渡島:その「許されてない」って、みんなが勝手に自分で思っていて、許されていることって、いっぱいあるよね。

石川:あると思う。だから、仮説というのはそうだと思うんだけど、「いつも大変お世話になっています」という、そういうふうにして返さないといけないっていう仮説を持っている。

佐渡島:意識してないけどね。

大物は誰からも口説かれていない

石川:それ、ぜんぜん本当はそうじゃないこともあって、例えば、(フィリップ・)コトラーに直接会いに行くというのは、やっちゃいかんみたいな。「会ってくれるわけないだろう」と。

佐渡島:「会ってくれるわけないだろう」と先に決めているのって、たぶんむっちゃあって。講談社に入ったときに気づいてびっくりしたのは、大物作家ってほとんど誰からも口説かれてないんだよ。

もう何年間も口説かれてないから、「ちょっとだけお会いしたいです」と編集者とかからくると、けっこう会っているんだよね。

石川:そうなんだ。大物すぎて……。

佐渡島:みんな、編集者が勝手に怖がっていて。なにか怒られるんじゃないかとか、先輩に「お前、なに会いに行っているんだよ」と言われるんじゃないかなと思ったりとか、いろいろ余計な心配しちゃって。大物はみんな誰も会ってないね。

石川:同じようなことをSMAPの中居さんが言っていて、中居さんの番組に出たことがあって、そのときに……。

佐渡島:そんなのに出たことあるの? さらっと言っているけど、芸能人でもないのに、なんで出たことあるの?(笑)。

石川:なんで出たかっていうと、なんでだろう!?(笑)。まあそれもご縁だよね。とにかく番組でお会いしたのね。話してくれたのは、あの人は友達がマジにいないんですよ。なんでいないかというと、もうまわりが、あそこまでいくと誰も誘ってくれないって。唯一誘ってくれるのが劇団ひとりさんなんだって。

劇団ひとりさんとかと一緒に麻雀をするというのが唯一の楽しみで、本当は女の子とかとも遊びたいんだけど、いろいろめんどくさいと。週刊誌も騒ぎ立てるし。だから、結局、男同士で麻雀をするというのしか、今、楽しみがないんだと言っていて。

偉くなると声をかけられないんだなって。コトラーもそうなんだけど、紹介してくれた友人がコトラーに実際に会いにいったときは、学会だったんだって。会場でコトラーがポツーンとしている。大物過ぎて、みんな声をかけられないみたいな。

これはいったれと思って「Hello.」って言って、「I know you very well.」みたいな感じだったみたい。

(会場笑)

石川:そんな感じで「Oh, really?」みたいな(笑)。そんな感じで会ってくれたんだって。

対談したい人リストを常に持ち歩いている

佐渡島:行動力はけっこう武器だよね。今日手伝いにきているコルクのインターンも、うちのスタッフとのメールのやり取りだとひと月後ぐらいに初面接することになっていたの。あそこにいる女の子だけど。

でも、堀江(貴文)さんと俺のトークショーのところに来て、「私、今度、面接するんです。本当はもっと早くメールを送っていたのに、返事をなかなかもらえなくて」と。

「インタビューでインターンとかウェルカムって言っていて、インフォにメール送ったのに返事しないの、なんでですか!?」って問い詰められて(笑)。

「いや、ごめんごめん」みたいになって、「それじゃあ、ちょっと早く来るか?」みたいな感じで、今日のイベントに来てる。

石川:それは確かにそうかも。例えば、俺、「対談したい人リスト」というのを常に用意していて。最近まですごく会いたくて実現したのは、プロゲーム選手の梅原大吾さんという人がいて。

僕は対談したい人リストというのを常に作っていて、雑誌の編集長みたいな人に会ったら、まずそれみせてお願いするのね、「この人たちと対談したいっす」と。

佐渡島:ほか、誰?

石川:将棋の羽生さんとか。あとは外人もそうなんだけど、デビッド・ケリーとか、デザイン会社やっている人がいたり(注:デビッド・ケリー氏は、デザインコンサルタント会社IDEO創設者で取締役。スタンフォード大学教授でもある)。

佐渡島:そういうときって、例えば、羽生さんとか、かなりガッツリ調べているの?

石川:調べない。

佐渡島:調べないんだ? スゲーな、善樹(笑)。

ハーバードで言われた「とにかく調べるな」の真意

石川:なんとなく直感があって、「この人とは、絶対感性合うだろうな」っていうので、なんだろうな……。佐渡島くんは逆に調べるの? 大物作家さんに会うときって。

佐渡島:作家のことは完全に調べる。作家は、編集者が会いにきているのに自分の作品を読んでないと、信頼してくれないから。

さすがに「次にどういう作品をつくるか」という打ち合わせで、今までの作品の流れを知らないといい提案できないから、さすがにそれは仕事として最低限のマナーかな。

だって、患者さんを診るときに、今までの病気がどんなのか見ないってありえないじゃん。それとたぶん同じだと思うよ。さすがに編集者と作家が会うとき、過去の作品を読んでおくというのはね。

でも、ほかの経営者と会うときとか、そういうときはあんまり俺も調べないね。

石川:確かに、研究だとすごい俺も調べるかな。あ! だけど、どれだけ情報を仕入れるかというところで、考え方を完全に変えられたのは、ハーバードだったんですよ。

日本の大学にいるときは、とにかく情報をたくさん仕入れて、過去の研究とかいっぱい調べてから「なにがわかっていてなにがわかってないのかをまず調べろ」と言われていたんだけど、ハーバードでは「とにかく調べるな」と言われた。

情報を入れれば入れるほどそれに惑わされるから、まず自分で……偏見なんですよ、決めつけでいいからアイディアを出せと。出したあとに調べろと言われて。

これって、でも、クリエイターの人たちはそうやっているのかなと思うのが。ある映画監督がいて、彼がどうやって映画づくりを学んだかというと、ちっちゃい頃に映画館ってあまりないじゃん? 映画に関するプロットが、雑誌とかに200行くらいしか書いてないんですよ。「こういう映画です」みたいなの。

その200行だけから「これってどういう映画なんだろうか?」と想像したらしいんだよね。そのあとに、実際見ると「ここが一緒だな」とか「ここ、こうなんだ」みたいな。

佐渡島:それ、物語をつくる、超いい勉強になるよね。

石川:あー、そうだよね。研究もまったく同じで。まず自分で想像して、そのあとに知識を入れるという、そういうセットじゃないといいものはつくれないというのをハーバードで教わって。

決めつけがある人はおもしろい

佐渡島:決めつけがけっこうあって、そのあとに冷静な判断力がある人っておもしろいよね。決めつけだけの人もいるんだけど、それはそれでおもしろいなと思って。

石川:このダイエットのやつもそうなんですけど、研究はどうやってやるかというと、最初は決めつけなんですよ。例えば、「デブは部屋が汚い」みたいな。

(会場笑)

石川:めちゃくちゃなことを決めつけて(笑)。

佐渡島:いいね。みなさんもこれ、変な決めつけがある人、「私、実は、人のことをこう勝手にこっそり決めつけている」とかあったら教えてくださいよ(笑)。

石川:対談とかでも、僕、決めつけで、「こうなんじゃないですか?」って言って、「いや、違うよ」って言われて、「あっちゃー」ということよくある。それはそれでおもしろい。

佐渡島:『ドラゴン桜』も、勉強法を「こうやって勉強しろ」と言って決めつけて、それで引いて次の週に「例外もあるけど、基本こうだよ」っていう説明をするということの繰り返しなんだけど、決めつけで言われると意外と人の記憶にも残るし、理解しやすいんだよね。

みんな、変な決めつけないのかな? けっこうまじめに、決めつけも仮説と一緒だと思うんだけど。

僕、この本(『ぼくらの仮説が世界をつくる』)出して、仮説っていう言葉が嫌いになっちゃって。なんでかというと、誰かが俺になにか説明するときに「っていう仮説なんですけどね」ってつけるの。

石川:合わせてくるのね(笑)。

ぼくらの仮説が世界をつくる

佐渡島:「それでオッケーでしょ」みたいな感じでしゃべってくるから、すごく仮説という言葉が嫌になってしまって。

みんな、変な決めつけ、ないんですか? みんなの変な決めつけ、知りたいけど……。