西野亮廣氏に誘われてお笑いのイベントに出演

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):善樹のよさというか、すごいところは、いろんな話が、論文とかそういうので事例が出てくるというのが得意技。

それは得意技として、意識してやっているの? それとも、論文とかを普段読みまくっているのを、まだやっているの?

石川善樹氏(以下、石川):一応、読んでいる。

佐渡島:生き字引的に最新の論文とかがわかるのが、すごいよね。

石川:そう。それは別になにかに使えると思って読んでるわけじゃないのね。自分が知りたいことが先にあって、それに関する論文はないのかっていうので調べているの。

佐渡島:今、なに知りたい?

石川:聞きたい?(笑)。

(会場笑)

石川:最近、むっちゃ腹立っていることがあって、これはちょっと調べたい。この前、僕はキングコングの西野(亮廣)さんと……。

佐渡島:トークショー一緒になることあるよ。

石川:本当に? 俺、同級生なのね、西野さんって。年齢が一緒。仲よくて、このあいだ、一緒に「石川さん、一緒にお笑いのイベント出ましょう」と言われて、出たんだよ。

(会場笑)

佐渡島:「サーカス!」? 出た出た、俺も。

石川氏がGLAYのライブを見て覚えた怒り

石川:一緒に出たときは、僕と西野さんとか、あと、オリエンタルラジオの中田(敦彦)さんとか、ウーマンラッシュアワーの村本(大輔)さんとかいろいろ出ていて、そこでトークしたんですけど。(話を)するときに、「コンテンツの本質ってなんだろう?」って考えたのね。

「今、めっちゃ人を集めている人ってどんな人なんだろう?」って。でも、最新のことよくわかんないから、自分の学生時代を振り返って、「GLAYがすごく人を集めていたな」と。

GLAYが10周年記念コンサートで、幕張で10万人だか20万人だか集めていたときの、あの映像を見てみようと思った。あのとき、キャーキャー言われているイメージがあったので、それをやったら、けっこうお笑いのライブに使えるんじゃないかなと。

佐渡島:なにをやったの?

石川:見て、僕、愕然として、怒りを覚えたんですけど、TERUというボーカルの人が、「みんな、聞いてくれ」と言うんですね。「信じられるかい? GLAY、もう10周年だよ」って。観客が「キャー!」となって。

「ちょっと待て」と思ったんですよ。僕、このダイエットの研究をやって、10年になる。「聞いてくれ。ダイエットの研究して、10年だよ」って。その話をして会場がワーッてなるイメージがわかなかったんですよ。

で、「聴いてください。『pure soul』」って、言ったから。『pure soul』がどういう歌かっていうと、「なに不自由のない暮らしだな」という歌なんですよ。「だけどなにか満たされぬ」と。

ちょっと待てと。僕はダイエットという(研究をして)、よっぽど人の悩みに寄りそっている。

(会場笑)

石川:TERUは「なに不自由のない暮らしだな」と言って、そんなので「キャー!」と言われているのを見て、腹立ったの。

泣かせるコンテンツの特徴とは?

もっとよく考えると、ミュージシャンとお笑い芸人の違いを考えたときに、お笑い芸人って基本的に同じ話を繰り返していると飽きられる。ミュージシャンは同じ曲を繰り返し演奏しても「キャー!」って言われていて。

「これはいったいなんなんだ」と思ったんだよ。何度でも繰り返しに耐えうるコンテンツと、1回きりのコンテンツと。1回で飽きられちゃうコンテンツがあるのかと。

「ちょっと待てよ」と。「漫才とかは1回聞くと飽きるけど、落語って何回聞いてもおもしろいって言われているコンテンツだな」といろいろ考えていって、そこから自分の興味がどんどん膨らんでくるんだよ。

「人の心を動かすのはなんなんだ」というところだけで、笑いだけじゃなくて喜怒哀楽というところを考えたいなと思って。その泣くっていうところ、感動ってすごく大事だと。

笑わせることよりも感動させるほうが簡単だろうと思ったんですよ。「泣かせるって一体なんなんだ」というので、きっと、泣かせる歌の特徴とか、泣かせるコンテンツの特徴を研究している人がいるに違いないと思って、そこまできて初めて情報を調べだすんだよ。そうするとやっぱりあるんだよ。

佐渡島:なるほど。ちょっと待って、なんだろうね? 聞く前に考えたいんだけど、ちょっとみんなも考えてみてください。

石川:これ、たぶん言っちゃうとおもしろくないんです。自分のなかの決めつけだから、自分が感動したりとか泣いたりするとき、例えば、各務っていう友達が亡くなったときは泣くんですよ。

「あれ、なんで泣いたんだっけ?」というのを、もう1回自分のなかで振り返ってみたりとか。

佐渡島:自分のなかで経験したことがないことに対して、泣くのって意外と難しいよね。

例えば、なんだろうな。恋愛とかでも、やっぱり振られたことがないと、意外とそのときの気持ちとかって追体験できなくて。だから、追体験できる要素というか、経験があるというのはすごく重要な気がするけどな。

仮説を持つための前提条件は喜怒哀楽の激しさ

石川:これもハーバードで教わったことなんだけど、仮説を持つための前提条件としてなにが大事かっていうと、喜怒哀楽の激しさと言われているんだよね。自分の感情がものすごく豊かに動いてないと、結局その感情からしか生まれないのね。

感情から仮説だったり決めつけというのが生まれて、そこからだんだんブラッシュアップしてロジカルなものにしていくっていうのが研究のプロセスなんだよ。

佐渡島:それは知的な作業だよね。

石川:GLAYのTERUのMCを見て腹が立つっていう(笑)。それに腹が立つっていう感情の追い方をしないと、研究って進まないのね。

佐渡島:漫画家とか小説家の発想って、そういう感じだよ。ベートーベンの『運命』だったっけな、ミラン・クンデラが『存在の耐えられない軽さ』という小説でベートーベンの『運命』のなかに「そうでなくてはならない、そうでなくてはならない」という、まるですごい人生が決められているっていうかたちで高らかに歌うところっていうのが、「借りた金は返さなくてはいけないのか? そうでなくてはならない、そうでなくてはならない」と言っているだけだというエピソードがあって。

卑近なことが、芸術の高みまでいくというのは、意外とよくある。

コンセプチュアルな、難しいこととかを考えて芸術にしているわけじゃなくて、日常のなかの感情を重要視して、作品ができている。

石川:本当、そうかもね。研究者も結局身の周り30センチくらいで、すべてはこと足りるのよ。身の周り30センチで起きていることに対して、感情をものすごく動かして研究にしていくということをやっている人たちなの。

佐渡島氏にマジ切れしたインターン

佐渡島:感情が重要っていうのは、すごくよくわかる。だから、社員を採用するときも、感情を重視している。なにかいい作品をつくる人は、感情の喜怒哀楽が激しくないと最後、つくれないだろうなと思う。だから、僕、社員をいじるようなことをいっぱい話す。

石川:それでどういう感情を持つんだろうかという。

佐渡島:そうそう。インターンに「どんな恋人いるの?」って聞いていたら、「いや、私、ちょっと最近振られて」「どうやって振られたの?」とか聞いたら、「なんでそんなこと聞くんですか」と、急に怒りだして。

「コルク来たい」と自分からやってきたのに、5分くらい僕と話して、マジ切れしていたから、「勇気あるやつだな」と思って(笑)。

喜怒哀楽が激しくて、成長の見込みがあるなと。「別れたって、いい男が一杯いるから大丈夫だよ。22歳じゃ、いい男、まだ知らないだろう」とか言ったら、「いい男知ってますから!」ってまた怒りだして。「こいつ、よく怒るなー」と観察してた。

(会場笑)

石川:怒ったということだけじゃなくて、客観的にハッとまた見られるという能力がすごく大事で。

佐渡島:そうそう、怒るだけだと意味ないからね。