「喜怒哀楽が激しくないといい作品は生み出せない」コルク佐渡島氏が語る感情の必要性

佐渡島庸平×石川善樹 「大胆な仮説を全力で実現していくということ」 『ぼくらの仮説が世界をつくる』刊行記念 #3/6

作家エージェント「コルク」経営者の佐渡島庸平氏による初の著書『ぼくらの仮説が世界をつくる』刊行記念イベントが下北沢B&Bで開催。予防医学研究者の石川善樹氏をゲストに迎え、それぞれの“自分のルール”について語りました。

西野亮廣氏に誘われてお笑いのイベントに出演

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):善樹のよさというか、すごいところは、いろんな話が、論文とかそういうので事例が出てくるというのが得意技。

それは得意技として、意識してやっているの? それとも、論文とかを普段読みまくっているのを、まだやっているの?

石川善樹氏(以下、石川):一応、読んでいる。

佐渡島:生き字引的に最新の論文とかがわかるのが、すごいよね。

石川:そう。それは別になにかに使えると思って読んでるわけじゃないのね。自分が知りたいことが先にあって、それに関する論文はないのかっていうので調べているの。

佐渡島:今、なに知りたい?

石川:聞きたい?(笑)。

(会場笑)

石川:最近、むっちゃ腹立っていることがあって、これはちょっと調べたい。この前、僕はキングコングの西野(亮廣)さんと……。

佐渡島:トークショー一緒になることあるよ。

石川:本当に? 俺、同級生なのね、西野さんって。年齢が一緒。仲よくて、このあいだ、一緒に「石川さん、一緒にお笑いのイベント出ましょう」と言われて、出たんだよ。

(会場笑)

佐渡島:「サーカス!」? 出た出た、俺も。

石川氏がGLAYのライブを見て覚えた怒り

石川:一緒に出たときは、僕と西野さんとか、あと、オリエンタルラジオの中田(敦彦)さんとか、ウーマンラッシュアワーの村本(大輔)さんとかいろいろ出ていて、そこでトークしたんですけど。(話を)するときに、「コンテンツの本質ってなんだろう?」って考えたのね。

「今、めっちゃ人を集めている人ってどんな人なんだろう?」って。でも、最新のことよくわかんないから、自分の学生時代を振り返って、「GLAYがすごく人を集めていたな」と。

GLAYが10周年記念コンサートで、幕張で10万人だか20万人だか集めていたときの、あの映像を見てみようと思った。あのとき、キャーキャー言われているイメージがあったので、それをやったら、けっこうお笑いのライブに使えるんじゃないかなと。

佐渡島:なにをやったの?

石川:見て、僕、愕然として、怒りを覚えたんですけど、TERUというボーカルの人が、「みんな、聞いてくれ」と言うんですね。「信じられるかい? GLAY、もう10周年だよ」って。観客が「キャー!」となって。

「ちょっと待て」と思ったんですよ。僕、このダイエットの研究をやって、10年になる。「聞いてくれ。ダイエットの研究して、10年だよ」って。その話をして会場がワーッてなるイメージがわかなかったんですよ。

で、「聴いてください。『pure soul』」って、言ったから。『pure soul』がどういう歌かっていうと、「なに不自由のない暮らしだな」という歌なんですよ。「だけどなにか満たされぬ」と。

ちょっと待てと。僕はダイエットという(研究をして)、よっぽど人の悩みに寄りそっている。

(会場笑)

石川:TERUは「なに不自由のない暮らしだな」と言って、そんなので「キャー!」と言われているのを見て、腹立ったの。

泣かせるコンテンツの特徴とは?

もっとよく考えると、ミュージシャンとお笑い芸人の違いを考えたときに、お笑い芸人って基本的に同じ話を繰り返していると飽きられる。ミュージシャンは同じ曲を繰り返し演奏しても「キャー!」って言われていて。

「これはいったいなんなんだ」と思ったんだよ。何度でも繰り返しに耐えうるコンテンツと、1回きりのコンテンツと。1回で飽きられちゃうコンテンツがあるのかと。

「ちょっと待てよ」と。「漫才とかは1回聞くと飽きるけど、落語って何回聞いてもおもしろいって言われているコンテンツだな」といろいろ考えていって、そこから自分の興味がどんどん膨らんでくるんだよ。

「人の心を動かすのはなんなんだ」というところだけで、笑いだけじゃなくて喜怒哀楽というところを考えたいなと思って。その泣くっていうところ、感動ってすごく大事だと。

笑わせることよりも感動させるほうが簡単だろうと思ったんですよ。「泣かせるって一体なんなんだ」というので、きっと、泣かせる歌の特徴とか、泣かせるコンテンツの特徴を研究している人がいるに違いないと思って、そこまできて初めて情報を調べだすんだよ。そうするとやっぱりあるんだよ。

佐渡島:なるほど。ちょっと待って、なんだろうね? 聞く前に考えたいんだけど、ちょっとみんなも考えてみてください。

石川:これ、たぶん言っちゃうとおもしろくないんです。自分のなかの決めつけだから、自分が感動したりとか泣いたりするとき、例えば、各務っていう友達が亡くなったときは泣くんですよ。

「あれ、なんで泣いたんだっけ?」というのを、もう1回自分のなかで振り返ってみたりとか。

佐渡島:自分のなかで経験したことがないことに対して、泣くのって意外と難しいよね。

例えば、なんだろうな。恋愛とかでも、やっぱり振られたことがないと、意外とそのときの気持ちとかって追体験できなくて。だから、追体験できる要素というか、経験があるというのはすごく重要な気がするけどな。

仮説を持つための前提条件は喜怒哀楽の激しさ

石川:これもハーバードで教わったことなんだけど、仮説を持つための前提条件としてなにが大事かっていうと、喜怒哀楽の激しさと言われているんだよね。自分の感情がものすごく豊かに動いてないと、結局その感情からしか生まれないのね。

感情から仮説だったり決めつけというのが生まれて、そこからだんだんブラッシュアップしてロジカルなものにしていくっていうのが研究のプロセスなんだよ。

佐渡島:それは知的な作業だよね。

石川:GLAYのTERUのMCを見て腹が立つっていう(笑)。それに腹が立つっていう感情の追い方をしないと、研究って進まないのね。

佐渡島:漫画家とか小説家の発想って、そういう感じだよ。ベートーベンの『運命』だったっけな、ミラン・クンデラが『存在の耐えられない軽さ』という小説でベートーベンの『運命』のなかに「そうでなくてはならない、そうでなくてはならない」という、まるですごい人生が決められているっていうかたちで高らかに歌うところっていうのが、「借りた金は返さなくてはいけないのか? そうでなくてはならない、そうでなくてはならない」と言っているだけだというエピソードがあって。

卑近なことが、芸術の高みまでいくというのは、意外とよくある。

コンセプチュアルな、難しいこととかを考えて芸術にしているわけじゃなくて、日常のなかの感情を重要視して、作品ができている。

石川:本当、そうかもね。研究者も結局身の周り30センチくらいで、すべてはこと足りるのよ。身の周り30センチで起きていることに対して、感情をものすごく動かして研究にしていくということをやっている人たちなの。

佐渡島氏にマジ切れしたインターン

佐渡島:感情が重要っていうのは、すごくよくわかる。だから、社員を採用するときも、感情を重視している。なにかいい作品をつくる人は、感情の喜怒哀楽が激しくないと最後、つくれないだろうなと思う。だから、僕、社員をいじるようなことをいっぱい話す。

石川:それでどういう感情を持つんだろうかという。

佐渡島:そうそう。インターンに「どんな恋人いるの?」って聞いていたら、「いや、私、ちょっと最近振られて」「どうやって振られたの?」とか聞いたら、「なんでそんなこと聞くんですか」と、急に怒りだして。

「コルク来たい」と自分からやってきたのに、5分くらい僕と話して、マジ切れしていたから、「勇気あるやつだな」と思って(笑)。

喜怒哀楽が激しくて、成長の見込みがあるなと。「別れたって、いい男が一杯いるから大丈夫だよ。22歳じゃ、いい男、まだ知らないだろう」とか言ったら、「いい男知ってますから!」ってまた怒りだして。「こいつ、よく怒るなー」と観察してた。

(会場笑)

石川:怒ったということだけじゃなくて、客観的にハッとまた見られるという能力がすごく大事で。

佐渡島:そうそう、怒るだけだと意味ないからね。

石川氏の今年のテーマは「怒る」

石川:俺、よくやっているのは、「自分は今日1日でどういう感情を抱いたかな」という、感情リストをつくるのね。

佐渡島:夜? 頭のなかで? それとも書くの?

石川:書いて。毎日やるわけじゃないんだけど、定期的にやっていて。

例えば、最近、自分は「怖い」という思いをしてないなという。「怖い」という感情を抱いてないなと思ったので、「じゃあちょっと、怖いという感情を感じにいこう」と思って、そのときにやったのは、『ウォーキング・デッド』っていうゾンビドラマを観るという(笑)。

佐渡島:わかりやすいなぁ(笑)。全部、作品で済んじゃうじゃん。

石川:それを観ていて、やっぱりおもしろくてさ、発見が多いんだよね。自分が今まであんまり体験していない感情を体験しにいくと、発見が多いというのすごく感じるし。

だから、怒りという感情も……僕、基本的にご機嫌なんですよ。だから、あんまり怒りという感情を持ってなくて、「怒りという感情を持たなきゃな」と思ったのが、去年の春だったんだよ。

佐渡島:それでTERUに怒ろうとしたの?

石川:それでTERUに怒ろうとして。ほかにも最近怒ったのが、オフィスが原宿にあるんですよ。原宿と渋谷にあって、代々木公園とか散歩したりするんですね。

春、こう歩いていたら、ブルーシートの上で大学生のサークルの人たちがキャーキャー遊んでるんですよ。「のどかでいいな」みたいに思っていたら、隣にいた子が「ふざけるな」と怒っていて。「リア充め!」みたいな。

確かにそういう目で見ると、リア充の男と女の大学生がキャーキャー騒いでて、「あ、なるほどね」みたいな。ブルーシートの上に乗ったことがあるかどうかというのは、リア充度を測る指標になるなと。

(会場笑)

石川:「ブルーシート仮説」というのをつくってみたらどうか。そいつを見ていて、「あ、そうか」と。

ああいうリア充に対して怒るという感覚は自分にはないなと思って。そこから、今年のテーマとして怒るっていうことをもっとやろうと思って。

「怒るぞ」と思っていると、TERUを見たときに「ふざけるな!」と怒って(笑)。

よい問いの条件は、解けること

佐渡島:ほかに怒ったことはある?

石川:けっこうあるある。最近怒ったやつだと、年上の部下を持った女性がいて、「年上の部下が使えない」って怒っていたんだよ。

年上だから、経験も知識もあるでしょうと。自分のやり方でやろうとすると。どう考えても、私の言っていることが正しいと。「年上の部下が使えないわね」とブチ切れていたんだよ。そのブチ切れている女の人に、俺はブチ切れ返したんだよ。「ふざけるな!」って。

なんでかというと、僕は「よい問いとはなにか」ということをよく考えるんですよ、研究者なので。

よい問いの条件の1つに「解ける」ということがあるんです。この女の人の考えている問いというのは、「年上の部下に対して、自分の言っていることに従わすことができるか」という問いだった。

佐渡島:今のはすごく重要だよね。「解ける問いを立てる」というのが。

石川:それで解けないと思っているんだったら、それは問いそのものが間違っている。「その問いが間違っている」と言って、「確かに」ってなったんだけれども、なんでそんなことなったかっていうと、ある場所で僕は「問いの技法」っていうイベントをしたのね。

「よい問いの条件とは? 1、解ける」となったんですよ。みんな、ポカーンとしていて、「そりゃそうだろう」みたいな顔していたんだよ。

「そりゃ、よい問いの条件は解けるってあるだろう」と。その話をしたのに、そのあとで……。

佐渡島:それを言っているからね。

石川:「解けないと思っているんだったら、その問いが間違っている」と言って、ブチ切れるという。

達成できる目標を立てる

佐渡島:それはかなり本質的だよね。昔、心理学の本を読んで、目標の立て方っていうのも、「達成できる目標を立ている」というのがすごく重要だって、学んだ。

達成できない目標を立てて「自分はどうせダメだ」とかいうサイクルに入る人は、けっこういて。「自分が立てている目標が達成できるものなのかどうか」ということを考えるっていうのは、すごく重要。

石川:仮説もそうだし目標っていってもそうかもしれないけど、結局、よい問いとかよい仮説の条件は、いろいろ考えて2つしかないなって思ったんだよ。

1個は「解ける」っていうことと、もう1個は「おもしろい」ということに尽きるなって。おもしろくて解けるなという、そういう仮説とか問いとか目標を見つけられる人って、すげぇ少ないなと思って。

佐渡島:日常会話だと、なんとなくの形容詞ってけっこういいんだけど、目標とかだとダメで、例えば「いい人になる」っていう目標。「いい人」って定義されていないから、一生なれないの。だから、達成できない目標なんだよね。

石川:そこに向かっているかどうかも、よくわからないよね。

佐渡島:そうそう。だから、確認できるように目標をつくるっていうのがすごく重要で、うちの会社の若いやつの仕事の仕方を見ていると、「今年はコルクに貢献できるようになる」とか、そういう目標を立てていて。なにをもって、貢献とするか、よくわからないから目標だから、「これ、苦労するな」って、思うんだよね。

石川:目標設定の仕方ってさ、生まれてから一度も習わないよね。

佐渡島:習わない。習わないから、自分で心理学の本とか読んでやってくけどね。

なにをやらないのか決めるのが大事

石川:日常生きているだけで、おもしろいことが、自分を奮わせてくれるものがあり過ぎちゃって、やりたいことが多過ぎて「なにをやらないのか決める」というのがすごく大事だなって、ようやく最近気づくに至って。

最近のルールとして、例えば、打ち合わせは火、水、木しか入れないと決めたのね。金、土、日、月は自分がいろいろ物事を考えるために使おうと。

今まではそういうルールって、自分はあまりしてなかったなと思って。相手のところにいろんな打ち合わせだなんだって入れていると、あんまり自分の人生を自分で生きているという感じが、とくに去年はしてなくて。

制限を加えるということがあるんだなと気づいて、今年からそうしている。

佐渡島:時間を自分に取り戻すというのは難しいよね。今、会社をやっていると、それはすっごく難しく感じるな。

石川:例えば、会食とかも放っとくと入ってくるから、会食は月に何回までとか決めるしかないなと思って。よく考えると、例えばユニクロの柳井(正)さんとかは会食しないよね。決めているなと思って。そっちのほうがいいんだろうなって思ったんだよね。

佐渡島:俺も基本、ランチとか朝ごはんに回しちゃっているもんね。

石川:夜はやらない。

佐渡島:夜も毎晩入っているけど、できる限り。

石川:なるべく回して。そうだよね。なんとなくやっちゃっていることというのをまず自覚して、それを変えていくということがおもしろいよね。

ZOZOの前澤氏はパソコンを撤廃しようとした

佐渡島:最近、なにか変えたことある?

石川:けっこうあるね。例えばLINE。LINEの通知を切るとか。

佐渡島:LINEの通知? プッシュが来ないようにするとか? 自分の見たいときしか、見ないと。

石川:あと、一番変えたのが、研究者はよく自分のことを振り返るんですよ。さっき、感情を振り返るという話をしたし、もうちょっと客観的に違う側面から、「朝起きてから夜寝るまで、自分は一体なんの行動をしているだろうか」ということをよく考えたときに、そうすると、1日のほとんどの時間をパソコンと向き合って過ごしているなと思ったんだよ。

「それって本当に自分がしたいんだっけ」と思って、「いや、したくない」と。じゃあ、パソコンと過ごす時間を何時間までって決めるとか、その代わりにもっと歩くこと。研究者は歩くことで発想が出ることがあるんですね。

パソコンと向き合う時間を減らして、歩くことの時間を増やそうというのは、この半年ぐらいやっているかな。

佐渡島:『インベスターZ』の取材で、ZOZOの前澤(友作)さんに会いにいったときに、前澤さんが「みんな、社員、パソコン向かって仕事した気になっているから、会社からパソコンを撤廃する」って。「パソコン使うの禁止にしよう」と言ったら、役員会で猛反対にあって、さすがに全員が反対したからそれだけはできなかったって。

(会場笑)

石川:それはけっこう、本質な気がしているよ。最近、もう1個変えようと思っているのがメール。メールの返事でえらく疲れると。なにかをやった気になるじゃん。なにも進んでないのに。

メールを一切使わずに仕事をうまく回していく方法ってないだろうかというのを考えて。まず名刺にメールアドレスを載っけるというのをやめなきゃいかんなと思って。さっそくやめんたんですよ、もう。

佐渡島:やめている人、意外といるよね、時間の使い方で。だって、挨拶のメールとか来て、その返事を書かないと感じ悪くなっちゃうけど、送ってこなかったら返事書かなくても感じ悪くない。

石川:そうそう、まず名刺にメールアドレスを書かないというのが大事なんだなと。

佐渡島:僕もそれやりたいと思ったけど、作家の代理人で作家のことで問い合わせするのに、僕が連絡を拒否しているって、作家に対して申し訳なくてできない。(笑)

石川:それって、たぶん解決策の1個でしかなくって、ほかにもちゃんと考えたらあると思うんだよね。

「そもそもメールってなんのためにあるんだっけ?」と思ったときに、ちゃんとコミュニケーションを取りたい人たちとコミュニケーションをとるための道具なのに。

じゃあ、「今自分が知り合っている人のなかで、本当にコミュニケーションをちゃんととらなきゃいかん人とコミュニケーションをとれているだろうか」って考えたときに、目先のとりあえず今来たメールに返すことにエネルギーを取られていて、大事にすべき人を大事にできてないということも反省したの。

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